【完結】氷の王、クラウス。

❄️冬は つとめて

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    温もり。

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途だされた扉の前で茫然と立ち尽くすアルファ。
(何が何だ、かわからない。)
見かねた衛兵が声を掛ける。
「アルファ様、御部屋へお戻りを。」

「兄上!! 」
アルファは叫び、思い切り扉を叩いた。

「お止め下さいアルファ様。御部屋へお戻り下さい。」
「陛下の御命令です。」
衛兵達は、アルファの腕を掴んだ。
「黙れ!! 放せ!! 」
アルファは身を捩って腕を振り払らった。
今にも泣きそうな顔で踵を返す。
「「「アルファ様!! 」」」
「うるさい、誰もついてくるな!! 」
何時ものぽやんとしたアルファとは思えぬほどの荒々しい叫びであった。
「「「アルファ様!! 」」」
衛兵達は胸が詰まされて、誰も今のアルファを追うことは出来なかった。
もし誰か一人でもアルファを追っていれば、あの悲劇は起こらなかっただろう。
城の中なら安全と、独りになりたい気持ちを慮って衛兵達は選択を誤った。

アルファは、走った。
走って走って走った。
(アルバート様。)
目の前でアルバートの亡骸を連れて帰るエドガーの姿。
(ジェームズ様。)
兄が帰って来たと喜び勇んでいたジェームズの姿。そして、『急死です。』その一言だけを言って目を伏せたジェラルド。
(ジョルジュ、ブレイブ先生。)
父と母を毒殺したと黙って連れて行かれたジョルジュ。そして『自分はやってない』と、叫んでいたブレイブ先生。
(父上、母上。)
優しく微笑んでくれた両親。
(兄上……。)
冷たく自分を見据える兄の顔。

愛する者を次々と失ってしまったアルファ。最後の肉親である大好きな兄に冷たい態度をとられ、アルファは哀しみに沈んだ。

「兄上は、僕を疎んじているの? 」
アルファはいつの間にか離宮の近くの庭に辿り着いていた。離宮を見上げる。

「義姉上……。」
ふらふらと離宮に近づく。アルファは書類上だけの肉親に縋ってしまった。

離宮を護る兵を避け、アルファは窓辺に近付く。ただ窓辺に立ち尽くす。

「まあ、アルファ様。」
キャロットはアルファに気づき窓を開けた。
「どうなされたのです。」
優しく声を掛ける。
その優しい声がアルファの胸に突く。

「アルバート様が死にました。」
「えっ!? 」

(なんて役立たずなの。)
キャロットは口元を両手で押さえた。


「兄上に剣を向けたそうです。」
立ち尽くすアルファ。

(クラウス様のより剣は上だったのではないの? )
「詳しい話を……、中に入って下さいアルファ様。」
キャロットは周りを見回し、誰もいないことを確認する。
「窓からですが、お入りになって。」
立ち尽くすアルファの手を体を延ばして捕まえる。引っ張るとアルファは力なくキャロットに引き寄せられる。

「義姉上。」
「さあ、早く。誰かに見つかってしまいますわ。」
アルファは促される様にキャロットの部屋に足を入れた。今にも崩れそうなアルファをキャロットは抱き締める。

「兄上は、僕を疎んじているのでしょうか? 」
泣き入りそうな声。
「兄上は、僕を嫌いになったのでしょうか? 」
涙を流しながらアルファは、キャロットに縋った。キャロットは母の様に優しく抱き締める。

「兄上は、僕を……。」
アルファは体が大きくなったがまだ子供。愛する両親を、愛する者達を失って温かいぬくもりに飢えていた。

クラウスは愛する弟を殺したくないと遠ざけようとした。それが最も近づけてはならない者に近づける事になるとは思ってもいなかった。

「大丈夫ですわ、アルファ様。」
キャロットは母の様に優しくアルファの頭を撫でる。
「私が、折りますわ。」
優しく優しく語り掛ける。
「私が、亡くなった皆様の分まで貴方を愛して差し上げますわ。」
縋り付いて泣くアルファを抱き締めるキャロットの栗毛色の髪は蜘蛛の糸のようにアルファに絡みついている。
キャロットは獲物が舞い込んで来たと細笑んだ。
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