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許さんぞ、シャンパーニュ。

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「今宵集まりし、紳士淑女の者たちよ。楽しんでいるだろう。」

はっ、シャンパーニュ。何を始めようとしているの? まさか。

「ディザート国より我が国の傘下に入りし者たちに、私王太子より感謝の意を伝えよう。」

待て、シャンパーニュ。そう云うことは国王である儂がすることだ。何を考えておるのだ? 

「この舞踏会で永遠のそなた達の伴侶を見つけ出し、我が国ソムリエールとの強い繋がりと繁栄をもたらすことを私は望もう。」

そうね、この場はまだ婚約者の決まってない者の為に開いた舞踏会ですもの。我が国に帰依してくれた紳士淑女、そして我が国の為に身を捧げて待ってくれた令息令嬢の為のお見いの場ですもの。

「だからと言って、無理に繋がりを強くしようと意に望まない伴侶を選ばなくても良いのだ。」

うむ、いい事を言うではないかシャンパーニュ。そうだ意に望まない伴侶を選ぶ必要はもう無いのだ。

「我が国を信じて傘下に入った者達には感謝しかない。その信頼には信頼で返そう。」
 
まあシャンパーニュ、立派になって。とても変態王太子の言うこととは思えないわ。

「帝国と対峙出来るほどの国力を持つことが出来たのは、一重にそなた達のおかげだ。この国の治める者として感謝に耐えない。」 
 
待て、シャンパーニュ。それは儂の台詞だ。儂の言うことではないのか?

「そしてその帝国とも、同盟を結び平和条約を得ることが出来た。なんと喜ばしいことか。」

シャンパーニュ、いつの間にそんなことを。儂は聞いとらんぞ。

なんてこと、わたくし聞いてませんわ。まさかそのためにロゼッタとカベルネ殿をこのチャラ皇子と娼皇女に宛がうと言うのですか?

「ベジタブル帝国の皇帝には既に話はついている。この同盟の平和も今宵は祝おうでわないか。」

同盟を結べたのは良いが、だからと言ってこんな道化にロゼッタを嫁がせるのか? あんな小娘とメルローを結婚させるのか?


先ほど言っていたことは何なの? 意の望まぬ婚姻はしなくてもいいと言っていたはずでは? ロゼッタがあんなチャラ皇子と結婚を望んでいると思っているの?

「そしてこのおめでたい日に、もう一つめでたい事を発表しよう。我が国の王女の婚約を。」

待て、シャンパーニュ!! 儂はこの婚姻を許していないぞ!! 勝手に決めるな、国との婚姻は国王である儂の仕事だ。お前の考えはよく分かった、帝国を乗っ取るつもりだな。こんな道化なら簡単に乗っ取れるからな。だからと言ってロゼッタを、妹を生贄に差し出すのか!!

「ロゼッタ、此方に来なさい。」

なに勝手なことをしているのシャンパーニュ。わたくし、絶対に許しませんわ。わたくし達が、動けないのをいいことに好き勝手やってるんじゃありませんわ。

「ロゼッタ、来るんだ。」

この変態息子!! 

「ロゼッタ、行かなくてもいいわ。」
「お母様。」 
「行かなくてもよい、ロゼッタ。」
「お父様。」

「国王陛下。もう既に決まったことです。」

この変態息子が!!

「ロゼッタ。王女としての義務を果たせ。」
「お兄様……。」

な、なんて冷たいの? それでもロゼッタの兄なの? 妹が可愛くないの? シャンパーニュ、あなたがそのつもりならわたくしにも考えがあるわ。

公の場で婚約を発表すれば、解消が難しくなるのだぞ。分かっているのかシャンパーニュ?

「ロゼッタ王女。」
「カベルネ様……。」

ロゼッタ、なんて悲しい顔を。許しませんわ、シャンパーニュ。妹を此処まで追い詰めて。

「さあさあ~行こ~う。ロゼッタちゃん~。」

手を差し出すな、道化!!

「ロゼッタ、早く来なさい。」
「国王陛下、王妃陛下。ロゼッタは王女の義務を果たします。」 
「「ロゼッタ!! 」」

許さんぞ、シャンパーニュ。
許しませんわ、シャンパーニュ。

「「クリスタル嬢に、言いつけてやる。」」

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