【完結】私の婚約者は、妹を選ぶ。

楽しい旅行。

テンプレ（２）助けられる。

エリシアは泣きながら走った。
いつの間にか周りにいたはずのカップル達も関わり合いになりたくないのか、消えていた。　

「エドワード、様！！　」

だから走った。
丘を登って、助けてくれる人を探して。走る。


『エリシア。俺が奴らの気を引くから、君は助けを呼びに行ってくれ。』
エドワードはエリシアに囁いた。多勢に無勢、エドワードはこのままではエリシアを守れないと悟った。彼は大人だ、格好つけイキったりせずエリシアを逃がす方法を考える。

『助けを呼んでくれ』と、エリシアが逃げやすいように言葉を選ぶ。

（俺なら、最悪殴られるぐらいだ。エリシアには傷ついて欲しくない。だから……　）

エドワードは思いっきり、チンピラの前で惨めったらしく土下座をする。自分に気を取られて奴等が罵り自分が笑われれば笑われるほど、エリシアが逃げやすくなる。

「情けねえ男だなーー。」
「恥ずかしくないのか！！　」
「「「「ギャハハハ！！　」」」」
チンピラ達は、面白がって大声で笑う声がする。

（エリシア、逃げてくれ。できるだけ遠くへ、誰か大勢人がいる所まで。）

「御願いします、このとおりです！！　」
エドワードは頭を地に擦り付けて、神に祈った。

「おい、女はどこだ！！　」
（気づかれた！！　）

「あ、あそこに！！　」
「くそっ、捕まえろ！！　」
チンピラ達が、騒いでいる。

「させるか！！　」
走り出そうとしたチンピラの足をエドワードは掴んだ。体を張って、チンピラ達の足を掴み３人ほどがその場に転がせる。直ぐ立ち上がり、チンピラ達の行く手を阻む。だが１人では押さえることはできず、取りこぼした者がエリシアを追いかけて行った。

エドワードはそいつの後を追いかけようとすると今度は自分がチンピラに阻まれる。

「エリシア……　」
（誰か、誰か、エリシアを助けてくれ！！　）
心からの悲痛な想いであった。


「助けて、誰か助けて！！　」
（エドワード様を、エドワード様を、助けて！！　）
エリシアも顔を青ざめ悲痛な声をあげる。泣きながらも、助けを求めて足を止めない。

人並みの女性の身体能力であるエリシアは、息を切らして苦しくても走るのをやめなかった。

「助けて、だれか……　」
声が切れる。

（助けてエドワード様を！！　助けて、シエリア！！　）
エリシアは心からシエリアに助けを求めて、縋った。

「おい！！　待ちやがれ！！　」
後ろから聞こえる声に、エリシアは恐怖する。自分を追いかけてきてるのが分かった。

（エドワード様は？　）
自分を逃がすために残ったエドワードの事が気になる。

（まさか、まさか……　）
エリシアは頭を振って、最悪の結果を振り払う。

（捕まる訳にはいかないわ、エドワード様が逃してくれたんだから……　）
エリシアは必死に走る。だが段々と声が、足音が近付いてくる。

（エドワード様！！　エドワード様！！　）


「へへへっ。捕まえたぜ！！　」
「いや、放して！！　」
エリシアは腕を掴まれ、捕まってしまった。身を捩って逃れようとするが、チンピラは手を離さない。

「ヨナン様がお待ちだ、来い！！　」
チンピラは力を入れてエリシアを引っ張る。

「いや、助けて！！　お父様！！　」
逃れようと抵抗するエリシア。

「とっとと来い！！　」
声で脅すチンピラ。

「いや、助けて！！　お母様！！　」


バチーーン！！　と、チンピラが頬を歪めてその場から飛んだ。

「ひでぶー！！　」

変な声を出しながら、ついでに口から白いモノを飛ばしながらチンピラはエリシアから引き離された。