【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて

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レテの川は、潜らせない。

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「うるさい!! お前だって、あの女たちに騙されていたのだろ!! 」
指摘するように差し出されたリフィルの元婚約者の右手をリフターは斬った。 

『お前だって、あの女たちに騙されていたのだろ!! 』

ああ、そうだ。
この男の言うとおりだ、俺は騙されていた。アニタの妹だからと、信用してしまった。愛するアニタの妹が、ただの浅ましい人間だとは思わなかった。 

愚かな俺は、愛する娘をリフィルを失った。アニタに合わせる顔がない、命をかけて残してくれたリフィルを。

俺を許せアニタ。

いや、許すなアニタよ。

「う、うわあああああああっ!! 」

アフォガードは右腕を掴んで、喚いている。跪き背を丸め、ひたひたと手首の先から血を流している。

ああ、リフィル リフィル 俺の愛しい娘よ。何時からだ、俺がリフィルを疎んじていると思っていたのは。俺が嫌われていると、思っていた。

俺の呪われた血を、人間を刈るのに感情を持たない俺を。
 
ああ、なんて愚かな。
リフィルが王都に来たときから、それよりも前から俺はアニタの妹に騙されていたのか。

リフィル、リフィル、愛しい娘よ。

何年も辛かっただろう。
俺に疎まれてると思っていたのだな。辛かっただろう、哀しかっただろう。愚かだ、なんと俺は愚かなんだ。

リフィルの口から、愛しい娘の口から『嫌い』という言葉を聞くのを恐れ、ただ見守るだけだった。 

愚かなだ、なんて愚かなんだ。

リフィルよ、俺を憎め。

不甲斐ない父を憎め。

青ざめるアフォガードの顔をリフターは見ると、近くにいる辺境の者の持つ松明を受け取った。グシャリと、アフォガードの切り落とした右手首を踏みつぶし、一歩二歩と近づく。

「ぎゃあああああああ!! 」
アフォガードは悲鳴をあげた。

リフターはアフォガードを背中からゆるく踏みつけ、投げ出された斬った右手首の切り口に松明を押し付けた。ぷすぷすと肉の焼ける音と匂いが広がる。アフォガードは逃げることも出来ずに、熱さと痛みにのたうち回る。

「あっ、ああああああ!! 」

闇の中、松明の明かりに照らされる黒衣のリフターその感情のない表情は死神のようであった。

リフターがアフォガードに意識がいっている間に逃げようとしたアマージョと王は行く先を辺境の者に阻まれる。

「た、助けてお願い。なんでもするわ。」
アマージョが辺境の者に助けを乞う。

「そ、そうだ!! わしは何も知らなかったのだ、この二人が暴走して勝手におぬしの娘子を殺したのだ!! 」
王はリフターに聞こえるように、叫んだ。

「その男を殺すがいい、娘子の仇だ!! アマージョも好きにするとよい、側女にするなり奴隷にするなり好きにせよ!! 」
「お父様!! 」
「黙れ、アマージョ!! お前が、お前たちがこの状況を引き起こしたのだ!! 」
まるで虫けらを見る目で、娘を王は見た。そしてリフターに告げる。

「なんなら殺しても構わん、コヤツも娘子の仇だろう。」
「お父様!! 」
アマージョは父親の言葉に、驚愕する。あれ程可愛がってくれていたのに、どうしてかと。

「だから、わしは助けてくれ!! 」


浅ましい……、なんと浅ましい。
これが人間だ、自分が生き残る為に娘まで贄として差し出す。

なぜ俺は、リフィルを浅ましい人間の世界に預けてしまったんだ。
分かっていたはずなのに、人間は地位と金に己の魂を汚す生き物だということに。

愛するアニタよ、愛しいリフィルよ、美しい魂を持つものよ。美しい魂の光に醜い魂が見えなくなっていた。

明かりをとるように積み上げられた松明の焚き火、そこにリフターは大剣を突き立てた。ジリジリと剣が熱を持ち始める。

「あ、あああああ、あ 」
痛みと熱に気を失いかけるアフォガードの太ももに、リフターは熱した大剣を突き立てる。

「ぎゃあああああああ!! 」
刺されたと同時に、熱しられた剣が肉を焼く。焼かれた傷からは血は溢れない。

「楽にレテの川を潜れると思うな。」
琥珀色の瞳を光らせ、リフターは地を這うような声を出した。



 
❆ちなみにレテの川とは、日本の三途の川のようなものです❆






 

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