【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて

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謁見の間。

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謁見の間の扉が開くと同時に丸いものが、皇帝の足元まで飛んできた。赤い液体をばら撒きながら。
その丸いものと目が合う。

「「「「ひぃ!! 」」」」
皇帝共々その場の貴族たちは悲鳴をあげた。丸いものは言わずと知れた、皇帝の近衛騎士たちの頭であった。皇帝を護らんとリフターの前に立ち塞がるが、簡単に命を刈られていく。

大剣を片手て振りながら、人間を人間だったものに変えていく。白い壁を赤い液体で染め上げ、謁見の間の赤い絨毯をどす黒く変えていく。

エセ司令官だった貴族たちは逃げ出そうとした処を、首のない人間だったものに弾き飛ばされ壁にぶち当たった。全身を壁に打ち付け、床に転がる。骨が折れ、内臓が破裂していた。顔の穴という穴から血がひたたり落ちている。 

「ひいぃ!! 」
逃げ出そうとする皇帝の王座にリフターの大剣が突き刺さる。皇帝は剣に阻われ、王座に拘束される。

「どこに行く? 」
リフターが問い掛ける。
既に皇帝を護るべき者たちは、床に転がっている。生きているのは壁にぶち当たった貴族たち、断末魔の息をあげのたうち回っている。
謁見の間に差し込む昼間の光が、床に流れる赤い液体をきらきらと煌めかせている。

皇帝は目の前に黒い髪の死神を見る。リフターの感情のない琥珀色の瞳が皇帝を垣間見ている。それは背筋を凍らせるほどの静寂な瞳。

「あ、悪魔め!! 」
皇帝は恐怖をふるい払うように叫んだ。

「たかが、一人の娘の為に此処までやるのか!? 」
謁見の間の床に転がる、人間だったものに目を向ける。無惨に引き裂かれ、押しつぶされ、赤い液体の海に沈んでいる。

「儂が、帝国が何をした!? 」
リフターの娘を処刑したのはソルトルアー国であり、手を貸したのはシュガーレ国の王女。帝国は確かに戦を仕掛けて、リフターが娘の処刑に間に合わなかった。だがそれは帝国の所為ではない。悪いのはリフィルを殺した国で、既にその国を滅ぼし復讐は遂げているはずだ。

「お前たちは、俺とリフィルとの語らいを邪魔する者。」
「な、何を言っておる? 娘は既に処刑をされて亡くなっているではないか!! 」
皇帝は叫んだ。

「何を言っている。娘が、俺のリフィルが死ぬわけがないだろう。」
「 ーー!? 」
リフターは首を傾げ、感情の伴わない声で言った。

「リフィルは渓谷から飛び降りたんだ、彼奴等に虐められて。」
リフターは皇帝に一歩近づく。

「だが、リフィルを虐め蔑んだ奴らはもういない。」
リフターはゆっくりと皇帝に近寄って来る。琥珀色の瞳が皇帝を見据えて逃さない。

「リフィルは、俺の娘。俺の、俺たち一族の血を受け継いでいる。渓谷から落ちたくらいで死ぬはずはない。」
「な、何を……。」
皇帝はリフターが何を言っているのか、分からなかった。

「虐め蔑んだ奴らがいなくなっても、リフィルは出てきてくれない。護れなかった俺を、怒っているのだ。間に合わなかった俺を、許せないのだ。」
「………」
「間に合わなかったのは帝国の所為だ、だからお前たちもなくさないとリフィルは出てきてくれない。」
リフターは王座に覆い被さるように、皇帝を見下ろした。

リフターは娘の死を納得出来ていなかった、リフィルの遺体を見てはいない。何時しかリフターは、嘘の言葉を信じていた。


『遺体は見ていない。』
本当に死んだのか。

『処刑された。』
何故、リフィルが処刑されるはずはない。

『渓谷から飛び降りた。』
そうだ、虐められて蔑まれて哀しんで。

『遺体を見てはいない。』
きっと、何処かで生きている。

愛する娘を護れなかったリフターは自分を責める。遺体を見てないリフターは、リフィルが何処かで生きているのではないかと思ってしまった。出てこないのは自分が護れなかった事を怒っているから。

「そ、そんな馬鹿な事が!! 」
声をあげる皇帝の肩をリフターは強く掴んた。ボキボキと肩の骨が砕ける音が静まり返った謁見の間に響き渡った。
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