【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて

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帰ろう、あの場所に。

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帝国の元帥閣下は今の状況に目を見張る。見慣れたテントの中で椅子に座り、机の上の地図を眺めている処で違和感を感じた。
(私は何故、テントの中にいる? )

帝国の帝都を甥である元皇太子と共に辺境の地に付いて安堵していた処だった。そして、帝都の滅亡と第二都市の虐殺を聞いた。
(この地図は……。) 

見覚えが無いはずはない、ソルトルアー国への侵略経路を模索するために見ていた物だった。

その時、一人の兵士がテントに飛び込んで来た。

「閣下!! ソルトルアー国の軍が引き返していきました!! 」
帝国軍の陣営で報告を受けた元帥は、総てを思い出した。

「………そうか。………ははっ。」
元帥は片手で顔を覆った、笑い声が漏れる。

「そうか……。神よ、感謝します。」
元帥は知らずに元凶の神に感謝の言葉を呟いた。まだ、思い出せていない兵士は元帥の態度に首を傾げた。




駆ける。駆ける、駆ける。
目の前の木々を後に流しながら森の中を駆け抜ける。

翔ける。翔ける、翔ける。
崖を飛び降り、気持ちは既に愛しい娘の元へと飛翔する。

『救うが、いい。』 

一族の血の元である、主からの言葉が頭の中を支配する。

救う、救う、救える。
愛しい者を、愛しい娘を、愛しいリフィルを。

歓喜に胸が震える、気持ちが高揚する、愛しさが溢れる。

急げ、急げ、急げ。
迫りくる濁流も滝のように降る雨も物ともせず駆ける。
気持ちが焦る、急げ急げ急げと。

水平線しか見えない荒野をかける。黒い集団は、夜昼なく走り抜ける。愛しい者の元へと。

愛する娘の元へと。
愛する姫の元へと。

一週間かかる道のりを休むことなく三日で駆け抜ける。

間に合え、間に合え、間に合わせろ。茶色の景色の中に緑が流れ出す。草原の向こう側に外壁を目にとめる。

リフィル、リフィル、リフィル。
愛しい娘よ。
リフターの黒い髪に飾られている愛しい人への髪飾りが光る。


「門を開けろ!! 」
副官がリフターがすぐ通れるようにと先行して門を開け放たてる。門番は怪訝に彼を見ると、その琥珀色の瞳を見て震え上がった。

思い出したのだ。

「刈られたくなければ、門を開けろ!! 」
恐怖で萎縮した体に副官の声が行動に移させる。震えながらも門番は門を解き放った。

黒い集団は、リフターは、門の中に滑り込んだ。王都に入り王城を目指す。黒い集団を見た者の中で、思い出した者は恐怖に震え逃げ惑った。刈られるあの恐怖に気が狂いそうになる。それを眠ったまま刈られた者たちが不思議そうに見ていた。


逢いたい、逢いたい、逢える。
やっと、やっと、逢える。

城内の玄関ホール迄馬で入り込み、大剣を背に階段を駆け上る。
黒い集団を見て、リフターを見た者は思い出した悪夢から逃れようと逃げ惑う。阿鼻叫喚する者たちには目もくれずリフターは愛する娘の元へと、駆け抜ける。

刈らなくてもいいのだ、邪魔さえしなければ。

愛する娘を救うのを邪魔さえしなければ、愛するリフィルに逢うことを遮らなければ。

大勢が賑わう舞踏会会場で、ただ一人立ちすくむ黒髪の令嬢がいた。綺羅びやかな者たちに囲まれ、悲しそうに俯いている。

「さあ応えろ、リフィル!! お前一人がやったのか!? それとも、」

愛しい愛しい俺の娘リフィル。帰ろう、我が故郷に。あの場所に。
お前を愛する者しかいないあの場所に。

もう一人にはしない。
何度でも叫ぼう、愛していると。リフィルの心が愛に溢れるように、その哀しみに溢れた心に染み込むまで。

愛してる愛してる愛してると、何度でも何度でも、何度でも。

リフィル、リフィル、愛しい娘。
帰ろう、愛するアニタの待つあの場所に。

リフターは静かに娘が断罪されている場所に、滑り込んだ。そして、優しくリフィルを抱きしめた。

帰ろう、リフィル。
みんなが、アニタが待っている。

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