【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて

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「みんな、リフィルを愛している。」

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「う、うわあああああああっ!! 」

総てを思い出して、アフォガードは悲痛の叫び声をあげて白い会場に膝をついた。その叫び声を聞いて、そこに居る貴族たちもあの惨劇を思い出した。

悲鳴をあげて気を失う令嬢たちもいた。その場から逃げ出したい衝動があるが、体は動かなかった。リフターから逃げた処で、刈られる記憶が支配する。体は硬直し顔を青ざめる、息が苦しくなって卒倒しそうになる。その姿をリフィルは不思議そうに見ていた。

「お父様? 」
リフィルの声にリフターは優しく微笑んだ。

「リフィルは何も気にすることはない。」
優しい優しい声で、リフターは愛しい娘に語りかける。

「さあ、帰ろう。みんながリフィルを待っている。」
「私を? 」
(そんなはずは無い……私を、待っているなんて。)
リフィルは震えながら俯く。
優しく抱き寄せられた逞しい父の腕も、夢のように思われる。

(夢、夢よ。これは夢。お父様が私を愛していると、言ってくれるはずはないわ。)
それでもリフィルは夢だと確信しても、リフターの優しい腕に縋り付いた。

(お母様を殺した私を、愛してくれるはずはないわ……。)
リフィルは分かっていても、その夢にしがみ付く。目が覚めて悲しい思いをすることは分かっていたが、一時の幸せに心を弾ませる。

「さあ帰ろう、リフィル。」
動けなくなっている貴族たちも目に入らずに、リフターは大剣を背負いリフィルを優しくお姫様のように抱き上げた。

「お父様……。」
リフィルはぎゅっと、リフターの胸に耳をあてる。父の強い鼓動を感じる。 
(ああ、夢だわ。でも幸せな夢……このままずっと、ずっと目が覚めなければいいのに……。)

リフターはまるで宝物のようにリフィルを抱きかかえ、緊張走る静まり返った舞踏会を出ていった。リフターが会場を出ると、糸が切れた人形のように貴族たちはその場には崩れ落ちた。今回も刈られず捨て置かれた王族たちは、安堵のため王と王太子は失禁していた。王妃と王太子妃は、気が抜けて放心していた。

「わたくしは、悪くない。悪くないの……、わたくしは……。」
アマージョはその場に小さく蹲り、視点もそぞろにブツブツと呟いていた。

アフォガードは、黄色い髪を真っ白にして向け柄のように蹲っていた。

安堵のため放心した者たちのいる舞踏会会場は、あの時と違い人尿の匂いが漂っていた。

静まり返った会場には、息をする音だけが聞こえていた。

「許して、お姉さま!! 」
アニタの妹が、悲鳴をあげて許しをこうた。

「お願い、許して……。」
「お母さま? 」
母親のようすを不思議に見ながら娘は声をかけた。

「ゆるし……て、謝るから……、謝るから……。」
ゆっくりと立ち上がるとリフターたちが消えていった扉へと走り出した。

「待って、お母さま!! 」
娘も母親の後を追って会場を出る。



リフターが大事にリフィルを抱きかかえて、城の外に出ると辺境の者たちが待っていた。腕に抱き締められているリフィルを見ると辺境の者たちは歓喜の声を上げる。

「「「リフィル様!! 」」」
「「「姫!! 」」」
「「「ご無事で何より!! 」」」
優しい声と優しい琥珀色の瞳をリフィルに向ける。その光景はやはり夢の中の光景で、

「夢、やっぱり夢だわ。」
リフィルはリフターの腕の中で、涙を流しながら呟いた。

「夢じゃない、リフィル。……みんな、リフィルを愛している。」
リフィルは静かに顔をあげて父リフターの顔を見る。

「許してくれ、リフィル。」
悲しそうにリフターはリフィルに許しを乞う。

「もっと早くこうしていれば、リフィルに悲しい思いをさせなかった。」
リフターはリフィルを降ろし、向き合った。

「リフィルに嫌われていると思っていた。俺の中に流れる血を、厭われていると思っていた。」
「お父様……。」
リフィルは不思議そうにリフターを見る。

「どうして、お父様? 大好きよ。」
リフィルの優しい笑顔がリフターに向けられる。

「私こそ……お母様を……ころ、」
俯き呟くリフィルの言葉を遮るように声がかかった。

「リフター!! 」

リフィルが声のする方を見ると、叔母様が着ていたドレスが目に入り体を強張らせた。

「リフター。」

名を呼ぶ女性にリフターは目を見張る。そして、琥珀色の瞳を細めてそっと手を差し出した。





    
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