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街の中のとみぃ
26話。復興
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魔物討伐を行い、その後俺の二つ名決定戦が行われ見事神官長さんの案が採用された翌日、俺とアイリスさんはそれぞれ別方向へと確認に出ていた。
俺は南、アイリスさんは昨日に引き続き西側を担当している。
「あ、使徒様!」
街の南側を魔物の気配を探りながら歩いていると、正面から歩いてきた武装を整えた5人組に声を掛けられた。
俺の二つ名、決まったの昨日の夕刻なのに広まるの早くない?
「こんにちは。魔物居ました?」
「こんにちは。今日はまだ見ていませんね。これも使徒様たちのおかげです」
俺が挨拶をすると、代表して立派な鎧を身につけて背中に大剣を背負ったイケメンが挨拶を返してくれた。
いいなぁ、俺もあんな顔に生まれていたらなぁ……
「そうですか、俺もかれこれ見て回ってますけど、うさぎ一匹……うさぎだから一羽? 見ていませんね」
一羽二羽って数えるのは日本独自か? わかんないや。
「こちらにはもう居ないのかもしれませんね。これなら明日明後日には復興作業が始められるかもしれません」
聖堂のある街の東側は女神像の力に守られていたためほとんど被害は出ていないらしい。
魔物もほとんど入り込んでいなかったので、東側に関しては今日から復興作業が開始されていた。
「それもこれも全ては使徒様と姫騎士様のおかげです。本当にありがとうございました」
5人は揃って頭を下げる。
こんなところでやめて欲しい……
それよりアイリスの二つ名は「姫騎士」で固定になりそうだな……
「やめてください。たまたまですから」
「たまたまでもなんでも、使徒様たちがこの街に来ていなければ……今頃この街は滅びていたでしょう」
話を聞いてみると、彼らは5人組の冒険者パーティで、この街というか小国家郡の中でもそれなりに有名なBランクパーティらしい。
この街が悪魔の襲撃を受けたその日、彼らも街に居た。
「最初こそ俺たちが悪魔を討伐するんだって意気込んでいたのですが……悪魔の姿を見た瞬間に無理だと悟りました」
悪魔を見て即座に撤退を決断したらしい。
ここで即座に撤退を決断出来るところが腕利きと言われる所以だろう。
若さと勢いで上り詰めたパーティなら玉砕してそうだし……
撤退を決断した後、彼らは住民を守りながら街の東側へ避難、リーダーの彼が大怪我を負いながらも多くの住民を守れたと誇らしげに語っていた。
「実は俺、使徒様に傷を治してもらったんですよ」
「そうなんですか? すみません、覚えが……」
あの時は数百人単位で治療してたからなぁ……
竜の血を舐めながら行う治療はデスマーチのごとく中々ハードだったよ。
「本当になんとお礼を言っていいか……」
もう一度頭を下げようとするリーダー、もうこれ以上褒めないで欲しい。
「頭を下げないでください。俺が悪魔と戦って勝てたのはたまたまですし、皆さんが助かったのは運が良かったからです」
「しかし……」
「もうお礼は十分です。助かったのは皆さんの運が良かったから……それで納得出来ないのなら、皆さんの日頃の行いが良かったんですよ。話を聞いた限り、襲撃当日の皆さんの行動も立派なものだったと思います」
「使徒様……はい」
自分で言っておきながら何様? という感じだが、どうやら受け入れてもらえたらしい。
俺はトラック運転手。
怒られたり文句を言われたりは日常だったのだが、褒められたりお礼を言われたりすることは滅多になかった。
だからあまり褒められると大変に居心地が悪いのだ。
「じゃあ俺は行きますね。皆さんお気を付けて」
「はい! 使徒様もお気を付けて!」
彼らと別れて歩き出す。
彼らは正面から来たのだから俺は脇道に入ってみようかな?
しかし、やはり褒められるのは慣れないな……
嫌な気分では無いのだけど、居心地が悪い。落ち着かない。
ディスられてる位の方が気が楽だ。
それから太陽が真上に来るまで街の南側を探索してみたが、魔物は一匹も見つからなかった。
お腹も減ってきたので一度聖堂へと戻ってくると、アイリスも探索を終えたのか戻ってきていた。
「トミー、お疲れ様ですわ」
「お疲れ様。そっちはどうだった?」
「西側に魔物は居ませんでしたわ。トミーの方は?」
「南側にも居なかったよ」
お互いの成果を報告し、労い合いながら借りている部屋へと戻る。
戻る途中に世話係さんに昼食を頼むのも忘れない。
「さて……これからどうする?」
「北側にも魔物が居ないことが確認出来たなら移動するべきですわ」
おや? もう少しゆっくりするのかと思ったけど、アイリスはさっさと移動するべきって意見か。
「その心は?」
「次にいつどこで悪魔が現れるのかわかりませんので、どこに現れても向かいやすいエフリに向かうべきだと思いますわ」
「なるほど」
神託アプリに出現予報が来ても俺たちがすぐに向かえなかったら意味が無いからな。
何処へ行くにもアクセスのいいエフリで待機するのはいい考えだな。
「そういえば」
スマホの確認を忘れていた。
昨日戻ってから確認しようと思っていたのだが、二つ名決定戦で盛り上がりすぎて忘れていた。
「それが『すまほ』ですの?」
「うん。神託アプリは……これかな?」
ホーム画面に見慣れないアプリが表示されている。
パッと見初日の出とかそんな感じの表示なんだけど……これだよね?
とにかく開いて見ればわかる。
タップしてアプリを開いてみると、画面にデカデカと「神託」と表示された。
「なんですの? これ」
「さぁ? 押せってことなのかな?」
「神託」を押すと文字がパカッと割れて、何故かガチャのような演出が入る。
「凝ってるな……こんな凝る必要ある?」
「すごいですわね」
もっとこう、シンプルにすればいいのに。
「何か出てきましたわ。えっと……」
アイリスと一緒に出てきた文字を読む。
【1ヶ月以内の出現予定はありません】
無いらしい。
「なんて書いてありますの?」
読めないの?
普通に一緒に覗き込んでいたから読めるのかと思ってた。
まぁ、国が違えば文字が違うのは当たり前だし、そもそも世界が違うから文字も違って当たり前か。
森でアイリスから教わっていた時にアイリスが地面に書いた文字が普通に読めてたから失念してたよ。
「1ヶ月以内に悪魔は現れないって」
「1ヶ月現れないのは助かりますわね。その間にもっと光属性と聖属性に慣れておかないといけませんわ」
「時既に俺より上手いのに?」
魔法に関しては、間違いなく俺よりアイリスの方が上だ。
光属性と闇属性を扱えるというアドバンテージは今や無いも同然、光属性を獲得したアイリスに勝てる気がしない。
近接戦闘はどうだろう?
身体能力では勝ってると思う。しかし技術は……
俺の戦い方は聖竜さんとひたすら殴りあって培ったもの。例え百発殴られても、一発決めて沈めれば俺の勝ち。
だからアイリスのような華麗さは欠片もない武骨なスタイルだ。
俺とアイリスが魔法無しの近接戦闘をすれば、勝つのは俺だろうけど……パワーとスピード、タフさによるゴリ押しになるだろうな。
これはもっと華麗さを身に付けなければ。
俺は南、アイリスさんは昨日に引き続き西側を担当している。
「あ、使徒様!」
街の南側を魔物の気配を探りながら歩いていると、正面から歩いてきた武装を整えた5人組に声を掛けられた。
俺の二つ名、決まったの昨日の夕刻なのに広まるの早くない?
「こんにちは。魔物居ました?」
「こんにちは。今日はまだ見ていませんね。これも使徒様たちのおかげです」
俺が挨拶をすると、代表して立派な鎧を身につけて背中に大剣を背負ったイケメンが挨拶を返してくれた。
いいなぁ、俺もあんな顔に生まれていたらなぁ……
「そうですか、俺もかれこれ見て回ってますけど、うさぎ一匹……うさぎだから一羽? 見ていませんね」
一羽二羽って数えるのは日本独自か? わかんないや。
「こちらにはもう居ないのかもしれませんね。これなら明日明後日には復興作業が始められるかもしれません」
聖堂のある街の東側は女神像の力に守られていたためほとんど被害は出ていないらしい。
魔物もほとんど入り込んでいなかったので、東側に関しては今日から復興作業が開始されていた。
「それもこれも全ては使徒様と姫騎士様のおかげです。本当にありがとうございました」
5人は揃って頭を下げる。
こんなところでやめて欲しい……
それよりアイリスの二つ名は「姫騎士」で固定になりそうだな……
「やめてください。たまたまですから」
「たまたまでもなんでも、使徒様たちがこの街に来ていなければ……今頃この街は滅びていたでしょう」
話を聞いてみると、彼らは5人組の冒険者パーティで、この街というか小国家郡の中でもそれなりに有名なBランクパーティらしい。
この街が悪魔の襲撃を受けたその日、彼らも街に居た。
「最初こそ俺たちが悪魔を討伐するんだって意気込んでいたのですが……悪魔の姿を見た瞬間に無理だと悟りました」
悪魔を見て即座に撤退を決断したらしい。
ここで即座に撤退を決断出来るところが腕利きと言われる所以だろう。
若さと勢いで上り詰めたパーティなら玉砕してそうだし……
撤退を決断した後、彼らは住民を守りながら街の東側へ避難、リーダーの彼が大怪我を負いながらも多くの住民を守れたと誇らしげに語っていた。
「実は俺、使徒様に傷を治してもらったんですよ」
「そうなんですか? すみません、覚えが……」
あの時は数百人単位で治療してたからなぁ……
竜の血を舐めながら行う治療はデスマーチのごとく中々ハードだったよ。
「本当になんとお礼を言っていいか……」
もう一度頭を下げようとするリーダー、もうこれ以上褒めないで欲しい。
「頭を下げないでください。俺が悪魔と戦って勝てたのはたまたまですし、皆さんが助かったのは運が良かったからです」
「しかし……」
「もうお礼は十分です。助かったのは皆さんの運が良かったから……それで納得出来ないのなら、皆さんの日頃の行いが良かったんですよ。話を聞いた限り、襲撃当日の皆さんの行動も立派なものだったと思います」
「使徒様……はい」
自分で言っておきながら何様? という感じだが、どうやら受け入れてもらえたらしい。
俺はトラック運転手。
怒られたり文句を言われたりは日常だったのだが、褒められたりお礼を言われたりすることは滅多になかった。
だからあまり褒められると大変に居心地が悪いのだ。
「じゃあ俺は行きますね。皆さんお気を付けて」
「はい! 使徒様もお気を付けて!」
彼らと別れて歩き出す。
彼らは正面から来たのだから俺は脇道に入ってみようかな?
しかし、やはり褒められるのは慣れないな……
嫌な気分では無いのだけど、居心地が悪い。落ち着かない。
ディスられてる位の方が気が楽だ。
それから太陽が真上に来るまで街の南側を探索してみたが、魔物は一匹も見つからなかった。
お腹も減ってきたので一度聖堂へと戻ってくると、アイリスも探索を終えたのか戻ってきていた。
「トミー、お疲れ様ですわ」
「お疲れ様。そっちはどうだった?」
「西側に魔物は居ませんでしたわ。トミーの方は?」
「南側にも居なかったよ」
お互いの成果を報告し、労い合いながら借りている部屋へと戻る。
戻る途中に世話係さんに昼食を頼むのも忘れない。
「さて……これからどうする?」
「北側にも魔物が居ないことが確認出来たなら移動するべきですわ」
おや? もう少しゆっくりするのかと思ったけど、アイリスはさっさと移動するべきって意見か。
「その心は?」
「次にいつどこで悪魔が現れるのかわかりませんので、どこに現れても向かいやすいエフリに向かうべきだと思いますわ」
「なるほど」
神託アプリに出現予報が来ても俺たちがすぐに向かえなかったら意味が無いからな。
何処へ行くにもアクセスのいいエフリで待機するのはいい考えだな。
「そういえば」
スマホの確認を忘れていた。
昨日戻ってから確認しようと思っていたのだが、二つ名決定戦で盛り上がりすぎて忘れていた。
「それが『すまほ』ですの?」
「うん。神託アプリは……これかな?」
ホーム画面に見慣れないアプリが表示されている。
パッと見初日の出とかそんな感じの表示なんだけど……これだよね?
とにかく開いて見ればわかる。
タップしてアプリを開いてみると、画面にデカデカと「神託」と表示された。
「なんですの? これ」
「さぁ? 押せってことなのかな?」
「神託」を押すと文字がパカッと割れて、何故かガチャのような演出が入る。
「凝ってるな……こんな凝る必要ある?」
「すごいですわね」
もっとこう、シンプルにすればいいのに。
「何か出てきましたわ。えっと……」
アイリスと一緒に出てきた文字を読む。
【1ヶ月以内の出現予定はありません】
無いらしい。
「なんて書いてありますの?」
読めないの?
普通に一緒に覗き込んでいたから読めるのかと思ってた。
まぁ、国が違えば文字が違うのは当たり前だし、そもそも世界が違うから文字も違って当たり前か。
森でアイリスから教わっていた時にアイリスが地面に書いた文字が普通に読めてたから失念してたよ。
「1ヶ月以内に悪魔は現れないって」
「1ヶ月現れないのは助かりますわね。その間にもっと光属性と聖属性に慣れておかないといけませんわ」
「時既に俺より上手いのに?」
魔法に関しては、間違いなく俺よりアイリスの方が上だ。
光属性と闇属性を扱えるというアドバンテージは今や無いも同然、光属性を獲得したアイリスに勝てる気がしない。
近接戦闘はどうだろう?
身体能力では勝ってると思う。しかし技術は……
俺の戦い方は聖竜さんとひたすら殴りあって培ったもの。例え百発殴られても、一発決めて沈めれば俺の勝ち。
だからアイリスのような華麗さは欠片もない武骨なスタイルだ。
俺とアイリスが魔法無しの近接戦闘をすれば、勝つのは俺だろうけど……パワーとスピード、タフさによるゴリ押しになるだろうな。
これはもっと華麗さを身に付けなければ。
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