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街の中のとみぃ
27話。報告
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「そうか、もう行かれてしまうのか」
「残念ですが……引き止めるわけにもいきませんね」
出発することを決めたので、その日の夕食後早速国王様と神官長さんにその報告をしている。
「それで、どこに向かわれるのだ?」
「まずはエフリに向かおうかと」
「エフリか、確かにあそこなら大陸のほぼ真ん中。どこへ行くにも便利だな」
「そうですね。エフリの神官長とは面識もありますので、紹介状を用意しておきます」
「そうだな、儂も周辺の国には顔が利く。紹介状と通行許可証を準備しておこう」
「助かります。ありがとうございます」
ここからエフリまではいくつかの国を経由することになる。
ファトスの王様が発行する通行許可証があるのとないのとではかなり違うだろう。
権威って大事。
「それは……二人ともマジックバックは所有しておるから当面の食料と資金、あとは馬か」
馬……乗ったことない……
エンジンさえ付いていれば何でも乗れるんだけどなぁ。
フルビットゴールド免許なのは俺の数少ない自慢なのだ。
「アイリスは乗れるの?」
「当然乗れますわ。貴族の嗜みですもの。もしかしてトミー……乗れませんの?」
「乗ったことないよ」
あれって上流階級の習い事でしょ? 母子家庭育ちの俺には縁のなかったものだよ。
一応よく行く倉庫の隣が乗馬クラブだったから、待機中よく眺めていたけど見るのと乗るのとでは全然違うだろうし、そもそも日本で経験あったとしてもこの世界で役に立つかどうかは分からないよね。
「使徒殿は馬に乗れないのか、なら馬車を準備しよう」
馬車か……馬車なぁ……絶対めっちゃ揺れるし、そもそもあんま速くないって聞いたことあるような気がする。
ちなみに馬なら五日前後、馬車なら一週間程らしい。
「国王様、俺……私は訓練がてら走って行きますので、アイリスに馬を一頭お願いします」
「トミー走りますの?」
「はい。多分馬車よりその方が速いです」
俺は竜の血無しでも時速30キロくらいでなら丸一日走れるのだ。
それが出来ないと聖竜さんに齧られるから……
あれ? 馬車とか馬ってどれくらい早いの?
俺よりだいぶ早い?
そうだ、魔力を増やすために【クリエイトトラック】して乗っていくのもいいかもしれない。
トラックなら時速50キロ~60キロくらいなら走れるはず。それなら馬より早いだろ。
魔力を増やすには魔力を使うことが一番だしね。
ただ、トラックに乗る場合道が舗装されてないから横転しないかだけが心配。
横転……うっ頭が……
「わかりましたわ」
よし、なら俺はダッシュ時々トラックで。
いや、【クリエイトトラック】出来るなら【クリエイトオフロードバイク】も出来るかもしれない。
トラックよりはるかに小さいから消費魔力も少なそうだし……後で試してみよう。
「トミーが走るなら……わたくしが背中に乗ってあげますわ!」
「……ん?」
今なにか聞こえたような……
「アイリス、今なんて?」
「ですからわたくしが乗ってさしあげますわ! ただ走るよりトレーニングになるでしょう?」
「ええ……」
「嫌ですの?」
「別に嫌ってわけじゃ……」
「べ、別にトミーにくっつきたいなんて思っておりませんわ! トミーにはさっさと強くなって貰って、悪魔との戦いでわたくしよ安全を確保するためですの! そう、わたくしのためですの! ですので決して勘違いなさらぬよう!」
「誰もそんなこと言ってない……」
分かってるよ。おんぶして欲しいだけなんでしょ?
きっと小さい頃にお父さんにおんぶしてもらった事ないんだろうなぁ……可哀想に。
微笑ましい気分でアイリスの相手をしていると、横から国王様と神官長さんの笑い声が聞こえてきた。
しまった、国王様の御前だってこと忘れてたよ。
「使徒様と姫騎士様は大変に仲がよろしいようで」
「そうだな、見ていて微笑ましい。若者はこうでなくては」
若者って……
俺38ですよ? 多分国王様たちとあまり変わらないですよ?
「そんな……お似合いだなんて……」
なんだかアイリスが急にクネクネし始めたが今は無視しておこう。
それより国王様たちの相手だ。アイリス、後で相手してあげるから今は大人しくしておいてね?
「そういうことらしいので、馬はいりません。お気遣いありがとうございます」
「あいわかった。使徒殿の訓練のためなら仕方あるまい」
国王様も神官長さんもなんだかニヤニヤしているが、俺たちの父子愛を目の当たりにしたのだから仕方ないことだろう。
「この光景を当たり前のものとするためにも復興作業には力を入れないとな」
それから少し雑談をしてから挨拶をして部屋に戻る。
その途中、アイリスが話しかけてきた。
しまった、後で相手すると心に決めていたのにそのままスルーして寝てしまうところだった。
「トミーは平然としていましたわね」
「なにをです?」
はて、なにか慌てるようなことあったかな?
「神官長様の言った『大変仲がよろしい』という言葉ですわ」
「それ、慌てるような言葉かな?」
別におかしいことは言われてないと思うけど……
あれ? もしかして仲がいいと思ってるのは俺だけ?
実はアイリスは俺の事そこまで好きじゃないの?
パパ臭い、嫌いみたいなこと言われるの?
言われたら病むよ?
「別に……なんでもありませんわ!」
「そう? 何かあるなら言ってね?」
「ええ」
その後アイリスは口を尖らせて部屋に着くまで一言も喋らなかった。
どないせーっちゅーねん……
「おやすみ、アイリス」
「……おやすみなさい」
アイリスの部屋に着いたので就寝前の挨拶をすると、小声ながら返してくれた。
よし、これなら問題無さそうだ。
「残念ですが……引き止めるわけにもいきませんね」
出発することを決めたので、その日の夕食後早速国王様と神官長さんにその報告をしている。
「それで、どこに向かわれるのだ?」
「まずはエフリに向かおうかと」
「エフリか、確かにあそこなら大陸のほぼ真ん中。どこへ行くにも便利だな」
「そうですね。エフリの神官長とは面識もありますので、紹介状を用意しておきます」
「そうだな、儂も周辺の国には顔が利く。紹介状と通行許可証を準備しておこう」
「助かります。ありがとうございます」
ここからエフリまではいくつかの国を経由することになる。
ファトスの王様が発行する通行許可証があるのとないのとではかなり違うだろう。
権威って大事。
「それは……二人ともマジックバックは所有しておるから当面の食料と資金、あとは馬か」
馬……乗ったことない……
エンジンさえ付いていれば何でも乗れるんだけどなぁ。
フルビットゴールド免許なのは俺の数少ない自慢なのだ。
「アイリスは乗れるの?」
「当然乗れますわ。貴族の嗜みですもの。もしかしてトミー……乗れませんの?」
「乗ったことないよ」
あれって上流階級の習い事でしょ? 母子家庭育ちの俺には縁のなかったものだよ。
一応よく行く倉庫の隣が乗馬クラブだったから、待機中よく眺めていたけど見るのと乗るのとでは全然違うだろうし、そもそも日本で経験あったとしてもこの世界で役に立つかどうかは分からないよね。
「使徒殿は馬に乗れないのか、なら馬車を準備しよう」
馬車か……馬車なぁ……絶対めっちゃ揺れるし、そもそもあんま速くないって聞いたことあるような気がする。
ちなみに馬なら五日前後、馬車なら一週間程らしい。
「国王様、俺……私は訓練がてら走って行きますので、アイリスに馬を一頭お願いします」
「トミー走りますの?」
「はい。多分馬車よりその方が速いです」
俺は竜の血無しでも時速30キロくらいでなら丸一日走れるのだ。
それが出来ないと聖竜さんに齧られるから……
あれ? 馬車とか馬ってどれくらい早いの?
俺よりだいぶ早い?
そうだ、魔力を増やすために【クリエイトトラック】して乗っていくのもいいかもしれない。
トラックなら時速50キロ~60キロくらいなら走れるはず。それなら馬より早いだろ。
魔力を増やすには魔力を使うことが一番だしね。
ただ、トラックに乗る場合道が舗装されてないから横転しないかだけが心配。
横転……うっ頭が……
「わかりましたわ」
よし、なら俺はダッシュ時々トラックで。
いや、【クリエイトトラック】出来るなら【クリエイトオフロードバイク】も出来るかもしれない。
トラックよりはるかに小さいから消費魔力も少なそうだし……後で試してみよう。
「トミーが走るなら……わたくしが背中に乗ってあげますわ!」
「……ん?」
今なにか聞こえたような……
「アイリス、今なんて?」
「ですからわたくしが乗ってさしあげますわ! ただ走るよりトレーニングになるでしょう?」
「ええ……」
「嫌ですの?」
「別に嫌ってわけじゃ……」
「べ、別にトミーにくっつきたいなんて思っておりませんわ! トミーにはさっさと強くなって貰って、悪魔との戦いでわたくしよ安全を確保するためですの! そう、わたくしのためですの! ですので決して勘違いなさらぬよう!」
「誰もそんなこと言ってない……」
分かってるよ。おんぶして欲しいだけなんでしょ?
きっと小さい頃にお父さんにおんぶしてもらった事ないんだろうなぁ……可哀想に。
微笑ましい気分でアイリスの相手をしていると、横から国王様と神官長さんの笑い声が聞こえてきた。
しまった、国王様の御前だってこと忘れてたよ。
「使徒様と姫騎士様は大変に仲がよろしいようで」
「そうだな、見ていて微笑ましい。若者はこうでなくては」
若者って……
俺38ですよ? 多分国王様たちとあまり変わらないですよ?
「そんな……お似合いだなんて……」
なんだかアイリスが急にクネクネし始めたが今は無視しておこう。
それより国王様たちの相手だ。アイリス、後で相手してあげるから今は大人しくしておいてね?
「そういうことらしいので、馬はいりません。お気遣いありがとうございます」
「あいわかった。使徒殿の訓練のためなら仕方あるまい」
国王様も神官長さんもなんだかニヤニヤしているが、俺たちの父子愛を目の当たりにしたのだから仕方ないことだろう。
「この光景を当たり前のものとするためにも復興作業には力を入れないとな」
それから少し雑談をしてから挨拶をして部屋に戻る。
その途中、アイリスが話しかけてきた。
しまった、後で相手すると心に決めていたのにそのままスルーして寝てしまうところだった。
「トミーは平然としていましたわね」
「なにをです?」
はて、なにか慌てるようなことあったかな?
「神官長様の言った『大変仲がよろしい』という言葉ですわ」
「それ、慌てるような言葉かな?」
別におかしいことは言われてないと思うけど……
あれ? もしかして仲がいいと思ってるのは俺だけ?
実はアイリスは俺の事そこまで好きじゃないの?
パパ臭い、嫌いみたいなこと言われるの?
言われたら病むよ?
「別に……なんでもありませんわ!」
「そう? 何かあるなら言ってね?」
「ええ」
その後アイリスは口を尖らせて部屋に着くまで一言も喋らなかった。
どないせーっちゅーねん……
「おやすみ、アイリス」
「……おやすみなさい」
アイリスの部屋に着いたので就寝前の挨拶をすると、小声ながら返してくれた。
よし、これなら問題無さそうだ。
応援ありがとうございます!
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