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幼なじみが冷たすぎる件①
しおりを挟む部活に入っていないあたしは、学校が終わるといつもそのまま真っ直ぐ兄貴のカフェに向かう。
夕方の『Green』は兄貴目当ての女子高生がたくさんいて、中に入るなりあたしはカウンターの席に座った。
「あーにきっ」
「おぉ、世奈。おかえり、」
あたしが兄貴に声をかけると、兄貴はあたしを見るなり優しく微笑む。
…うん、今日の兄貴もほんとイケメン。
しばらくあたしが兄貴を見ていたら、兄貴が「何か食う?」ってメニューを差し出してきて、あたしはメニューを受け取る前に「チョコレートパフェ!」とオーダーした。
兄貴特製のチョコレートパフェは、どこよりも絶品なのだ。
「かしこまりましたー」
兄貴はあたしのオーダーにそう言うと、早速パフェを作り始めた。
ちなみに、お金は、全て兄貴持ち。
しばらくスマホを弄りながらパフェを待っていたら、その時ふいに店のドアが開く音がした。
「いらっしゃいませー」
「…?」
兄貴や他の店員さんからそう言われ、入ってきたのは…
「!!…げ、」
あたしの幼なじみの、健だった。
健もあたしと同じ学校帰りで、スポーツバッグを肩にかけている。
「え、部活は?」
あたしが思わずそう聞くと、健は「うるせー喋んな」とだけ言った。
やっぱムカつくな、コイツ。
健はあたしから離れた席のカウンターに腰を下ろすと、兄貴に声をかけられていた。
「おかえり。何か食う?奢ったるで」
「マジで!?じゃあ、チョコレートパフェね!」
「ん、かしこまりー」
健はそうオーダーすると、兄貴にニッコリ笑顔を向ける。
…何だかあたしとの対応がだいぶ違うな。
ってか、チョコレートパフェって、マネしないでよね!
そう思ってキッと睨んだら、それを見ていた兄貴に「こら、世奈」と怒られた。
「…」
何であたしが…。
もとはといえば冷たすぎる健が悪いのに。
そう思って、あたしの前に戻ってきた兄貴に「ねぇ、なんで健が来たの?」と聞いたら、兄貴はパフェを用意しながら言う。
「なんでって、俺が呼んだからや」
「何で呼んだの、」
「まぁ…久しぶりに顔見たかったし?」
…そんな理由…?
「あたしは会いたくなかったな。…出来れば一生」
思わずあたしがそう呟いて顔を覆うと、兄貴が「まぁそう言うなや」と苦笑いを浮かべた。
「たった一人の幼なじみやんか」
「あのねぇ、そのたった一人の幼なじみに冷たくされてんのはどっちだと思ってんの!?」
そう言って出来るだけわざと声を大きくして、健に聞こえるようにそう言ってみたけど、
兄貴はそんなあたしを抑えるためか、タイミングよくあたしの目の前にチョコレートパフェを置いて言った。
「まぁまぁまぁ…これでも食って落ち着けや。な?」
「…」
だけど何だかんだ言って、スイーツには弱いあたし。
「…いただきます」
それ以上文句は言えなくなって、素直に黙ってチョコレートパフェに手をつけた。
そしてその一口分をスプーンですくって、口の中へと運ぶ。
まず、一口目。
…うん、やっぱ超美味しい!
上に乗っかっているチョコアイスとチョコソースが、あたしの口の中で甘い味を広げていく。
やっぱ、兄貴のチョコレートパフェは最高!
そう思っていたら、兄貴がもう1つ出来上がったチョコレートパフェを健に運んだ。
「ん、チョコレートパフェ」
「ありがと。久しぶりだね、勇斗くんが作ったチョコレートパフェ食べるの」
「お前サッカー部忙しいからな~」
兄貴はそう言うと、健と仲良く笑い合う。
健は、サッカー部のエースだ。
入部した時から先輩を越えちゃうくらいサッカーが上手で、その時からずっと顧問の先生にも期待されているらしい。
…まぁ、ほんとは上手いなんてコイツには言いたくないんだけどね。
なんて、そう思って健を眺めながらパフェを食べていると…
次の瞬間、あたしの視線に気がついた健が、ふとあたしを見た。
「!!」
そしたらバチッと目が合って、あたしは慌てて健から視線を外す。
……び、びっくりした。
思わず変に逸らしちゃったけど、大丈夫かな…。
そう思って恐る恐るまた健を見ると、健はあたしから視線を外してパフェを食べていた。
「…」
健も、昔から女の子によくモテている。
中学の時なんて他の女子が健に告白するために、あたしに「相沢くん(健)を呼んできて」なんてよく言ってたくらいだし。
まぁ、案の定あたしが健を呼んでも「そんなの誰が行くかよ」なんて言われたり、それか完全に無視されていたけど…。
だけど、何故か必ずアイツは来ていたらしい。
それでも、女の子からの告白を一度もOKしたことがないんだとか。
…何か、やっぱ、アイツはよくわからん。
そんなことを考えながらしばらくパフェをもくもくと食べていると、少しの間店の奥で仕事をしていた兄貴がカウンターに戻ってきて、健に言った。
「健、」
「うん?」
「悪いねんけど、このあと世奈マンションまで送ってーな」
突如そんな言葉があたしの耳に入ってきて、あたしはびっくりして顔を上げ、兄貴を見た。
「は!?」
え、いや、ちょっと、いきなり何言い出すの、この兄貴!?
そんな兄貴の言葉に、あたしは思わず椅子から立ち上がって言った。
「やだ!兄貴、あたし一人で帰れるよ!」
だけどそんなあたしの言葉に構わずに、兄貴は健に言う。
「俺まだ仕事が残っとって終わりそうにないねん。世奈をこんな暗いなか一人で歩かせたくないやんか」
兄貴は健にそう言うけど、健は少し気まずそうにあたしを見た。
あぁ、嫌なんだ。あたしと帰るのが。
あたしだって嫌だよ!
「や、でも、勇斗くん俺…」
健は少し嫌そうな顔をして何かを言いかけたけど、どうしてもあたしを送ってほしいらしい兄貴は、何やら今度はあたしに聞こえないような小さな声で、健に言った。
「…?」
「お前さ、そのままでええわけないやん!」
「え、」
「世奈、彼氏にフラれて今フリーやねんぞ。せやったらお前、今がチャンスなんちゃうの、」
「いや…だからってそんな突然、」
「アホか!お前な、俺が何のために今日お前をここに呼んだ、思てんねん。
ええから、男やったらビシッと決めてこい、」
兄貴はそう言うと、健の肩をバシン、と叩く。
何を話してたんだろう…?
内緒の話が全く読めないあたしに、兄貴が視線を移して言った。
「ほら世奈、それ食ったら大人しく健と帰れや。な?」
兄貴はそう言うと、超爽やかなイケメンスマイルをあたしに向けた。
その笑顔に、あたしは思わず「うん」と素直に頷いてしまう。
兄貴、カッコ良すぎるでしょ。
…そして、そんな兄貴の後ろで。
「…ふー。……っし、」
独り、自分に気合いを入れている健に、あたしは気付かない。
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