4 / 58
謎のイケメンと出会った件②
しおりを挟む嘘だと言ってほしい。
教室に到着するなり、黒板に書かれている座席表を見ると、なんとあたしはあの早月くんの隣になっていた。
席は出席順になっているけれど、どうやら縦ではなく横へ横へと決められているらしい。
…早月くんは、出席順はあたしの次。
うわー、これはマズイな。
そう思って独り頭を悩ませていたら、ようやく美桜もそれに気がついて言った。
「あ、良かったね!翔太くんの隣!」
よくない!!
あたしの席は、教卓から見て前から2列目の左端から2番目だし、
早月くんは前から2列目の一番左端(廊下側)だ。
あぁ、さっきあんなことがあったのにこれは気まずすぎる。
そんなことを思いながらも仕方なく自分の席に行くと、そこへたくさんの女子生徒達を引き連れた早月くんがやって来た。
ってか、あんなにモテてるのにあたしは今まで全く早月くんの存在を知らなかったなんて…。
なんかちょっと、そっちの方が今は不思議だな。
あたしはそう思いながらもなるべくそいつを見ないようにスマホを弄っていたら、早速早月くんの声が聞こえてきた。
「僕の席どこー?」
そんな早月くんに、教室にいる女子達がここぞと言わんばかりに積極的に言った。
「翔太くんはね、2列目の廊下側!」
「一番端だよ!」
「工藤さんの隣!」
女子達はそう言うと、早月くんを席へと案内する。
「くど…え、世奈ちゃん隣なの!?」
すると後ろからそんな嬉しそうな声が聞こえて、思わずあたしは身構えた。
来ないで、と唱えてみたけどきっと無理だ。
早月くんはだんだんあたしに近づいてくる。
あーもう、わざわざあたしの名前を出して「隣」なんて教えてくれなくたっていいのに。
いやそうでなくてもすぐバレるんだけどさ。
そう思っていたら、早月くんが背後からふっとあたしの顔を覗き込んできて、言った。
「よろしくね?世奈ちゃん」
「!」
早月くんはそう言って、ふんわり優しく微笑んだ。
「よ、よろしく…」
さっきのこともあって、あたしが目を合わさずにそう言うと、早月くんは突如「かーわいー!」とか言って叫び出した。
…わ、わけわかんない。
周りにいる女子達の視線が痛いくらいに突き刺さってくるけど、そんなの無視無視。
悲しいかな。こういうのはもう慣れてるし。
あたしが早月くんから視線を外したまままだスマホを弄っていると、懲りない早月くんは言葉を続けて嬉しそうに言う。
「ね、世奈ちゃん。これって運命だと思うんだけど、世奈ちゃんはどう思う?」
「!?…えっ、」
あまりにも早月くんがストレートに言うもんだから、あたしは思わず持っていたスマホを落としそうになった。
だけど慌ててそれを支えて、びっくりして早月くんを見遣る。
「…運命とかないから」
そしてあたしが思ったことを素直に口に出してそう言えば、「僕はあるって信じてるよ」と自信たっぷりにそう言われた。
ってか、運命って…。
早月くんて頭の中女子みたい。
運命なんてそんなの、あるわけないのに…。
そう思ってまたスマホの画面に視線を戻せば、あたしはフォトギャラリー内で、ある画像を見つけた。
「!」
それは、凄く大事だった五人目の元彼とのツーショット画像。
消せばいいのに、消せない宝物。
きっと今まで付き合った中で、一番と言って良いほどあたしが本気になった相手。
あたしはふいにそれを見つけると、隣にいる早月くんに見られない内にスマホを閉じた。
「…」
貴斗くん…。
元彼達はみんな、あたしを好きだと告白してくれて、それぞれ付き合っていた。
でもあたしは、特にほとんど本気で好きなわけじゃなかった。
それなりに楽しかったけど、あたしは自分が「愛されてる」っていう実感だけで満足だったのかもしれない。
だけどただ、五人目の元彼、貴斗くんだけは違った。
初めて、「愛したい」という人に出会えた。
その当時まだあたしは中学二年だったけど、子供なりに本気で好きだった。
でも…彼は兄貴に会った直後言ったんだ。
『…なんだ、俺なんかいらないじゃん』
『え、』
『ごめん。俺、世奈と別れる』
なんか急に自信なくした、と。
付き合っていたのは、20人の中で一番長い2カ月。
兄貴になるべく会わせないようにしていたのに、貴斗くんとのデート中に偶然兄貴に出会してしまったのだ。
『世奈!』
兄貴が、街中で大声を出してあたしを呼ぶから…。
独りそんなことを考えていたら、何やら視線を感じて隣を見た。
「…?」
すると、そこには壁に寄りかかりながらあたしに身体を向けて座る早月くんの姿があって…
それだけならまだ許せるかもしれないけど、早月くんはスマホをあたしに向けて構えていた。
げ、これってもしかして…!
「ちょっと!撮ろうとしてるでしょ!!」
思わず席から立ち上がって早月くんのスマホを掴んでやれば、早月くんは「あ~…」と残念そうな声を出す。
そして、キッと睨みつけるあたしに早月くんが言った。
「…撮ろうとしたんじゃないもん」
そう言って、拗ねたような顔をして、また一言つけ加えた。
「…動画撮ってただけだもん」
え、動画!?
「だ…誰の、」
「もちろん、世奈ちゃんの」
いや、結局撮ってんじゃん!
「ね、早月くん。それ盗撮って言って、犯罪なんだよ。知ってる?」
あたしはそう言って早月くんのスマホの画面を暗くすると、タン、とそれを早月くんの机の上に置く。
しかし早月くんは、きょとんとした顔であたしに言った。
「え、僕堂々と撮ってたよ」
「だってあたし知らないし」
「やだな、気づかなかっただけでしょ。何だか物思いに耽ってたみたいだし?」
そう言って、クックッと可笑しそうに笑うそいつ。
その言葉にあたしはそれ以上何も言いたくなくなって、「とりあえず、それやめてよね」とだけ言ってまた自分の席についた。
「はいはーい」
あぁ…早月くんといると何か調子狂う…。
何だか朝から凄く疲れたあたしは、もう隣だけは見るまいと決めて前だけを向いたのだった…。
13
あなたにおすすめの小説
ポンコツ気味の学園のかぐや姫が僕へのラブコールにご熱心な件
鉄人じゅす
恋愛
平凡な男子高校生【山田太陽】にとっての日常は極めて容姿端麗で女性にモテる親友の恋模様を観察することだ。
ある時、太陽はその親友の妹からこんな言葉を隠れて聞くことになる。
「私ね……太陽さんのこと好きになったかもしれない」
親友の妹【神凪月夜】は千回告白されてもYESと言わない学園のかぐや姫と噂される笑顔がとても愛らしい美少女だった。
月夜を親友の妹としか見ていなかった太陽だったがその言葉から始まる月夜の熱烈なラブコールに日常は急変化する。
恋に対して空回り気味でポンコツを露呈する月夜に苦笑いしつつも、柔和で優しい笑顔に太陽はどんどん魅せられていく。
恋に不慣れな2人が互いに最も大切な人になるまでの話。
7月14日 本編完結です。
小説化になろう、カクヨム、マグネット、ノベルアップ+で掲載中。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ
桜庭かなめ
恋愛
高校生の麻丘涼我には同い年の幼馴染の女の子が2人いる。1人は小学1年の5月末から涼我の隣の家に住み始め、約10年間ずっと一緒にいる穏やかで可愛らしい香川愛実。もう1人は幼稚園の年長組の1年間一緒にいて、卒園直後に引っ越してしまった明るく活発な桐山あおい。涼我は愛実ともあおいとも楽しい思い出をたくさん作ってきた。
あおいとの別れから10年。高校1年の春休みに、あおいが涼我の家の隣に引っ越してくる。涼我はあおいと10年ぶりの再会を果たす。あおいは昔の中性的な雰囲気から、清楚な美少女へと変わっていた。
3人で一緒に遊んだり、学校生活を送ったり、愛実とあおいが涼我のバイト先に来たり。春休みや新年度の日々を通じて、一度離れてしまったあおいとはもちろんのこと、ずっと一緒にいる愛実との距離も縮まっていく。
出会った早さか。それとも、一緒にいる長さか。両隣の家に住む幼馴染2人との温かくて甘いダブルヒロイン学園青春ラブコメディ!
※特別編6が完結しました!(2026.1.21)
※小説家になろう(N9714HQ)とカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録や感想をお待ちしております。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
サクラブストーリー
桜庭かなめ
恋愛
高校1年生の速水大輝には、桜井文香という同い年の幼馴染の女の子がいる。美人でクールなので、高校では人気のある生徒だ。幼稚園のときからよく遊んだり、お互いの家に泊まったりする仲。大輝は小学生のときからずっと文香に好意を抱いている。
しかし、中学2年生のときに友人からかわれた際に放った言葉で文香を傷つけ、彼女とは疎遠になってしまう。高校生になった今、挨拶したり、軽く話したりするようになったが、かつてのような関係には戻れていなかった。
桜も咲く1年生の修了式の日、大輝は文香が親の転勤を理由に、翌日に自分の家に引っ越してくることを知る。そのことに驚く大輝だが、同居をきっかけに文香と仲直りし、恋人として付き合えるように頑張ろうと決意する。大好物を作ってくれたり、バイトから帰るとおかえりと言ってくれたりと、同居生活を送る中で文香との距離を少しずつ縮めていく。甘くて温かな春の同居&学園青春ラブストーリー。
※特別編8-お泊まり女子会編-が完結しました!(2025.6.17)
※お気に入り登録や感想をお待ちしております。
高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。
桜庭かなめ
恋愛
高校1年生の低田悠真のクラスには『高嶺の花』と呼ばれるほどの人気がある高嶺結衣という女子生徒がいる。容姿端麗、頭脳明晰、品行方正な高嶺さんは男女問わずに告白されているが全て振っていた。彼女には好きな人がいるらしい。
ゴールデンウィーク明け。放課後にハンカチを落としたことに気付いた悠真は教室に戻ると、自分のハンカチの匂いを嗅いで悶える高嶺さんを見つける。その場で、悠真は高嶺さんに好きだと告白されるが、付き合いたいと思うほど好きではないという理由で振る。
しかし、高嶺さんも諦めない。悠真に恋人も好きな人もいないと知り、
「絶対、私に惚れさせてみせるからね!」
と高らかに宣言したのだ。この告白をきっかけに、悠真は高嶺さんと友達になり、高校生活が変化し始めていく。
大好きなおかずを作ってきてくれたり、バイト先に来てくれたり、放課後デートをしたり、朝起きたら笑顔で見つめられていたり。高嶺の花の高嶺さんとの甘くてドキドキな青春学園ラブコメディ!
※2学期編4が完結しました!(2025.8.4)
※お気に入り登録や感想、いいねなどお待ちしております。
明日のために、昨日にサヨナラ(goodbye,hello)
松田丹子(まつだにこ)
恋愛
スパダリな父、優しい長兄、愛想のいい次兄、チャラい従兄に囲まれて、男に抱く理想が高くなってしまった女子高生、橘礼奈。
平凡な自分に見合うフツーな高校生活をエンジョイしようと…思っているはずなのに、幼い頃から抱いていた淡い想いを自覚せざるを得なくなり……
恋愛、家族愛、友情、部活に進路……
緩やかでほんのり甘い青春模様。
*関連作品は下記の通りです。単体でお読みいただけるようにしているつもりです(が、ひたすらキャラクターが多いのであまりオススメできません…)
★展開の都合上、礼奈の誕生日は親世代の作品と齟齬があります。一種のパラレルワールドとしてご了承いただければ幸いです。
*関連作品
『神崎くんは残念なイケメン』(香子視点)
『モテ男とデキ女の奥手な恋』(政人視点)
上記二作を読めばキャラクターは押さえられると思います。
(以降、時系列順『物狂ほしや色と情』、『期待ハズレな吉田さん、自由人な前田くん』、『さくやこの』、『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい』、『色ハくれなゐ 情ハ愛』、『初恋旅行に出かけます』)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる