兄貴がイケメンすぎる件

みららぐ

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隣の男が乙女すぎる件②

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まるで、地獄を見ているみたいだった。

いくら叫んでも誰も助けに来ない科学準備室で、数人の男子生徒達に囲まれて。
視界の端に映っているカメラ。
今のこの様子が、後で早月くんに見られるなんて…そんなこと考えたくもない。

「っつか俺らラッキーじゃね?こんな可愛い子とヤレるとかさ」
「マジそれな」
「俺一度でいいから工藤さんとヤッてみたかったんだよね~」

そんな会話を聞きながら必死で抵抗するけど、床に押さえつけられている手はビクともしないし。
やめて、と言ってもアッサリやめてくれるはずもなく。
泣きたくないけど泣きそうになりながら、なんとかやめてくれる方法を考えてみる。

だけど、いくら考えても無駄で。
体に這う手に集中してしまう。
嘘でしょ?
誰とでもヤラせてくれるなんて、そんなのただのウワサで、あたしは正真正銘の処女なのに。
それなのに、こんなのってない。
………でも。

「相沢くーん、頑張ってー!」
「!」

次の瞬間、窓の外からふいに聞こえてきたのは。
女子生徒達のそんな言葉。
「相沢くん」という名前を聞いて、あたしはようやく気がついた。
…そうだ。この科学準備室は、グランドに面している場所にあって、二階だけど上手くいけば外に声が届くかもしれない。
……グランドではサッカー部の健が部活中だ。
上手くいくかはわからないけど…

あたしはそう思うと、勇気を出して窓の外に向かって叫んでみた。

「健、助けて!健!!」

お願い、届いて。
健に届いて!

「お願い健!今すぐ助けて!健っ…!!」

…繰り返しそうやって呼んでみるけど、ちゃんと健に届いているのかは怪しい。
何せ健はモテるし部活の時も女子生徒達がたくさん応援に来てるから、その声にかき消されてたらやだな。
そう思いながら、叫んでいると…

「無駄無駄。いくら叫んでも助けになんか来ねぇよ~」
「健て、サッカー部の相沢だろ?なに、工藤さんも相沢のこと好きなんだ?」
「…健…?…あっ!!」
「…?」

すると、その時。
あたしの叫びを聞いていた男子生徒達のうちの一人が、やがて何かに気がついてそんな声を上げて手を止めた。
そしてその人の声に、仲間達が「何だよ」とめんどくさそうにその人を見遣る。
そして、あたしも一旦その人を見ると、ふいに目が合って…その人が言った。

「まさかっ…工藤さんって相沢の幼なじみの!?」
「?…おい、どうしたんだよ。別に何でもいいだろ?そんなことは」
「っ……や、よくねぇわ!ラッキーだとか思ってたけど、俺やっぱやめとく!」
「はぁ!?何で!」
「帰る!お前らもほどほどにしといた方がいいぞ!じゃあな!」

その人はそう言うと、少し顔を青くして、逃げるように科学準備室を後にする。
…どうしたんだろ。いや、一人でもやめてくれて助かってはいるけど。
あたし自身もその理由がよくわからないまま、だけど他の人の手は止まってくれなくて、再び健を呼んだ。

呼んだ、その時だった。

「っ…何してんだよ!!」
「!」

窓の外に気をとられていたら、突然入口の方からそんな怒鳴り声が聞こえて、あたしはそこに目を遣った。
誰かが助けにきてくれた。
それに気がついたと同時に視界に飛び込んできたのは、なんと早月くんの姿で。

「早月くんっ…」

まさか早月くんが助けに来てくれるなんて思っていなかったあたしは、思わず涙目で早月くんを見つめる。
だけど一方、助けに来てくれた早月くんは、このあたしの状況を目の当たりにすると、キレたように男子生徒達に言った。

「お前ら人の大事な女に…!」
「や、何キレてんの。お前のファンから言われてやってんだよ?俺らは」
「んなこと知るか!やってることが汚ねぇんだよ!」

そう言うと、早月くんは室内に入ってきて、女子の先輩達が置いていったカメラを手に取る。
そして、言った。

「…これが証拠だな」
「!」
「三年生って、今年大事な年だよね。こんなのが出回ったら、進学とか就職…どうなっちゃうのかな?」

翔太くんがそう言うと、それを聞いた男子生徒達は…

「っ…クソ!」

翔太くんの手から素早くカメラを奪い返して、科学準備室を後にした。

「…最初から気づけよ」

そんな男子生徒達を見た早月くんはそう呟くと、今度は床にぺたりと座ったままのあたしに目を遣る。

「っ…世奈ちゃん、大丈っ…!」

しかし早月くんはあたしの姿を目の当たりにすると、突如顔を赤くしてすぐに目を逸らした。
今のあたしの格好が、さっきの三年生の男子生徒達のせいで、上半身の露出が多いからだと思う。
早月くんはあたしから目を逸らすと、言った。

「っ…あ、み、見えてない!見てないから安心して!」
「…」
「僕はそんな卑劣な男じゃないから!…あ、制服は無事?なんなら僕のブレザー、」

だけど。
早月くんが助けに来てくれて、やっと行為が止まったこの状況になんだか安堵したあたしは、安心感からか何だか泣けてきて。
制服を着なきゃ、というよりも。
それよりも先に、思わず早月くんの言葉を遮るように…そいつに真正面から抱きついた。

「!」
「…、」
「…あ、せ、世奈ちゃん、気持ちは嬉しいけど、服を着てくれないと目のやり場に困るっていうか…」
「…かった、」
「え、」
「こわ、かった…。誰も、助けにきてくんないかと、思った…」

あたしはそう言うと、早月くんを困らせているのをわかっていながらも、先に涙が出て泣けてきてしまう。
だって本当にそうでしょ。
健に届かなかったらどうしようって。
ぜったいに諦めたくなかったけど、もしも誰も助けに来てくれなかったらって、そういう不安が心の中をほとんど占めていた。
だけど、早月くんが来てくれたから。

あたしが泣いていると、早月くんはそのうちにあたしの背中に両腕を回した。

「…あ、りがと」
「!」
「ありがとう、早月くん」
「…、」

本当にもう今は感謝しかない。
あたしが泣きながらそう言うと、やがてその言葉を聞いた早月くんが言った。

「…カッコよかった?」
「うんっ…」
「見直した?」
「見直した、」
「じゃあ惚れそうになった?」
「っ、なったよもー、」
「!」

早月くんのそんな問いかけにあたしが頷くと、早月くんは少しびっくりして目を見開く。
それは多分、あたしが予想外の答えを言ったから。
すると早月くんは、あたしの言葉を聞くと…

「…世奈ちゃん」
「うん?」
「チューしていい?」
「!」

そう言って、あたしの背中に回していた両腕を少しほどいて、あたしと至近距離で目を合わせる。
ストレートすぎるその問いかけに、今更だけど照れてしまうあたし。
早月くんからの視線に逃げて、なかなか返事ができずにいると、早月くんは…

「…お願い、一回だけ」

そう言って、少しずつ顔を近づけてきた。

「あ、ちょ…と、」

…キスまでほんの数センチ。
だけどあたしも目を瞑った、その時…

「お、お前ら何やってんだ…!?」
「!?」

…突如、先生の声が聞こえて、振り向けば。
科学準備室の入口には、偶然そこを通りかかったらしい先生があたし達を見ながら立っていた…。





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