兄貴がイケメンすぎる件

みららぐ

文字の大きさ
9 / 58

隣の男が乙女すぎる件③

しおりを挟む
最悪だ。
何か変なふうに勘違いをされている気がする。

「大丈夫か?工藤」
「は、はい…あのっ、」
「早月には厳しく言い聞かせるからな」
「…、」

あれから、早月くんとキスをしようとした瞬間から。
そのシーンをたまたま先生に目撃されてしまったあたし達は、速攻職員室に連れて来られた。
しかし目撃してしまった先生は、どうやらあたし達の様子を見て、早月くんがあたしを襲おうとしていたように見えたらしくて。
それに気がついた早月くんが、さっきから先生に必死で弁解しているのだ。

「だ、だから!僕じゃないんだってば!」
「ばかやろー!お前じゃなかったら誰なんだよ!ったく、神聖なる科学準備室を犯行現場にしやがって」
「違うんだって!元々世奈ちゃんは三年の男数人に襲われてて、それを僕が助けに入ったのが真実なんだってば!」
「だからその三年の奴らなんていなかったじゃねーかよ、」

先生はそう言うと、厳しい顔をして早月くんを見る。
…まあ確かに、側から見ればそういうふうに見えなくも…ないんだろうけど。
あたしはさすがに早月くんに申し訳なくなって、先生に言った。

「…あの、先生ほんとに違うんです。早月くんは、全然悪くないんです。悪いのは、誤解されるような行動を先にとったあたし自身で…」
「え、世奈ちゃんこそ悪くないよ!」
「ううん。元はと言えばあたしが簡単に科学準備室に入ったのがいけなかったの。それに…早月くんに抱きついたの、あたしからだし」

あたしはそう言うと、何だか自分がした行動が恥ずかしく思えて、なんとなく下を向く。
早月くんはあたしを助けてくれたヒーローだから、悪者にはしたくない。
しかしあたしの言葉を聞くと、先生が難しい顔をして言った。

「…とは言ってもなぁ、工藤」
「…」
「先生も、そんな容易に工藤の言葉を聞き入れるわけにはいかないんだよ。まぁ、そりゃ確かに教師は生徒を信じるべきではあるけどさ」
「何でですか?早月くんはほんとにっ…」
「何せコイツ、これが初めてなわけじゃないからな」
「…え」

先生はそう言うと、ジロリと早月くんに視線を移す。
…初めてじゃ、ない…?
え?それってどういう…?
先生のその言葉にあたしは疑問を抱いて早月くんを見るけれど、一方の早月くんはその先生の言葉に視線を全く関係ない方向に向けていて。
こっちを、見ようとしない。

「…初めてじゃ、ないって…?」

そしてたまらずにあたしがそう聞くと、先生が言った。

「前にもあったんだよ。美術準備室で似たようなことが。その時は相手の女子生徒がすげー泣いてて、早月は担任にこっぴどく怒られた。そうだったよな?早月、」
「…だから、僕は女の子を無理矢理に…とか、そういうことはしないって」
「嘘つけ。じゃああの時なんで相手の女子生徒はあんなに泣いてたんだよ。しかもお前にやられたとまで言ってたんだぞ」
「…、」

先生のそんな言葉に、さっきまであんなに必死で弁解していた早月くんが黙り込んでしまう。
…早月くん…?
何だかそんな早月くんの横顔が悲しげに見えて、あたしはもう一度早月くんの無実を証明しようと口を開いた。

…しかし、開いた時だった。

「まぁとにかく、工藤。今回の話は親御さんに伝えるけど、いいな?」
「…えっ!?」
「えっ!?って言われても、生徒手帳に書いてあるだろ。生徒自身に何かあったらすぐに包み隠さず保護者に報告する、みたいなさ。
……あれ?…あっ。お前の場合、確か親御さんっつーか…」
「!!」

そして、先生がいきなりそんなことを言うから。
まさか先生、兄貴のこと言おうとしてる!?
そう思ったあたしは、兄貴のことだけはこの場で口にしてほしくなくて、慌てて先生の言葉を遮った。
早月くんに聞かれるのはマズイ!

「あ、あーっ!先生、あたし別にそんなっ…伝える必要はないと思うんですよ!」
「いや、でもなぁ…」
「だ、だって…怪我したとかでもないし!ほらっ、見ての通りピンピンしてますから!報告無用ですっ」

そう言って、無理矢理にでも笑顔を作ってみる。
お願いだから兄貴のことは口にしないで。
というか、そうじゃなくてもこんなこと伝えないでほしい。
あたしが学校でこんなことされたって兄貴が聞いたら、マジで殴り込みに行きそうだから。
そんなことされたらもう学校に行けない。

だけどあたしのそんな言葉に、悩んで見せる先生。
「でもなぁ…」と頭を抱えている。
そして一方、隣にいる早月くんは珍しくちょっと落ち込んでいて。
黙り込んだ、まま。
しかし、次の瞬間…

「っ…世奈!?」
「!」

職員室の入口の方から、突如ドアを開ける音とともに聞き慣れた声が出て聞こえてきて。
その声に顔をあげて目を向ければ、職員室の入口には何故か健がいた。

「!!…健、」

突然の健の登場に、あたしはびっくりして少し目を見開く。
何でここに、健が…?
しかも走って来たのか、若干息きらしてるし。
そんな健に先生もどうしたのかと聞けば、健が呼吸を整えながら言った。

「…や、世奈が、科学準備室で三年の先輩達に襲われてるって聞いて…助けに行ってやれって、言われたから」
「!」

もしかして、あの時途中で抜けた先輩が…?

「それ聞いて速攻で科学準備室行ったけど、誰もいねぇし、他の場所探したけど見つからないしで、もしかしたらもう誰か助けに来たのかと思って、職員室に来てみたら…」

健はそこまで言うと、あたしの隣にいる早月くんにふいに視線を移す。
そして悔しそうな表情を浮かべるから、そんな健に、話を聞いていた先生は…

「…え、まさか本当に早月は…あ、今日は本当にそういうこと!?」

そう言って、早月くんに目を向ける。
そんな先生に、早月くんがまた呆れたように言った。

「だから、僕は世奈ちゃんを助けただけなんだって」

なんだか健のおかげで、一件落着した瞬間だった。
しかし…

「ごめんな、早月!いや何せお前が前科持ちだからさ、信じちゃいけないと思って!けど証言が増えたからたぶん信じてもいいな」
「当たり前だよ。ってか前科持ちとかそれもあんまり言わないでほしいな。世奈ちゃんが聞いてるから」
「いやすまんすまん。…あ、でも工藤、お前は…」

ふいにまたそう言って向けられる視線。
でももう言われなくてもわかる。
今日のことを何がなんでも保護者の兄貴に伝えたいらしい。

「…ま、後で家に電話して、その時に今日のこと伝えるから」

先生はそう言うと、早速あたしの家の電話番号を聞いて来た。
しかし、聞いて来た直後に健が言った。

「あ、先生それ俺伝えようか?」
「んー…でもそういうのは、教師の俺から伝えた方が…」
「別に大丈夫じゃね?そんな大事になるような話じゃないんだし。それに、ヘタに先生から伝えると……世奈の保護者ってすげー怖いから…ね?」
「………じゃあ、伝えてくれる?そか、お前は工藤の幼なじみだもんな。うん。なら安心だ」
「そうそう。それにどーせ今日は、世奈ん家泊まりに行く予定だし、俺」
「!?」

そんな健のいきなりの言葉に、思わずびっくりして顔をあげるあたし。
え、何それあたし聞いてない!

…もしかして、わざとなのか。
健はそう言うと、明らかに不機嫌になった早月くんに今度は目を向けた…。







しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

ポンコツ気味の学園のかぐや姫が僕へのラブコールにご熱心な件

鉄人じゅす
恋愛
平凡な男子高校生【山田太陽】にとっての日常は極めて容姿端麗で女性にモテる親友の恋模様を観察することだ。 ある時、太陽はその親友の妹からこんな言葉を隠れて聞くことになる。 「私ね……太陽さんのこと好きになったかもしれない」 親友の妹【神凪月夜】は千回告白されてもYESと言わない学園のかぐや姫と噂される笑顔がとても愛らしい美少女だった。 月夜を親友の妹としか見ていなかった太陽だったがその言葉から始まる月夜の熱烈なラブコールに日常は急変化する。 恋に対して空回り気味でポンコツを露呈する月夜に苦笑いしつつも、柔和で優しい笑顔に太陽はどんどん魅せられていく。 恋に不慣れな2人が互いに最も大切な人になるまでの話。 7月14日 本編完結です。 小説化になろう、カクヨム、マグネット、ノベルアップ+で掲載中。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ

桜庭かなめ
恋愛
 高校生の麻丘涼我には同い年の幼馴染の女の子が2人いる。1人は小学1年の5月末から涼我の隣の家に住み始め、約10年間ずっと一緒にいる穏やかで可愛らしい香川愛実。もう1人は幼稚園の年長組の1年間一緒にいて、卒園直後に引っ越してしまった明るく活発な桐山あおい。涼我は愛実ともあおいとも楽しい思い出をたくさん作ってきた。  あおいとの別れから10年。高校1年の春休みに、あおいが涼我の家の隣に引っ越してくる。涼我はあおいと10年ぶりの再会を果たす。あおいは昔の中性的な雰囲気から、清楚な美少女へと変わっていた。  3人で一緒に遊んだり、学校生活を送ったり、愛実とあおいが涼我のバイト先に来たり。春休みや新年度の日々を通じて、一度離れてしまったあおいとはもちろんのこと、ずっと一緒にいる愛実との距離も縮まっていく。  出会った早さか。それとも、一緒にいる長さか。両隣の家に住む幼馴染2人との温かくて甘いダブルヒロイン学園青春ラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2026.1.21)  ※小説家になろう(N9714HQ)とカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

まずはお嫁さんからお願いします。

桜庭かなめ
恋愛
 高校3年生の長瀬和真のクラスには、有栖川優奈という女子生徒がいる。優奈は成績優秀で容姿端麗、温厚な性格と誰にでも敬語で話すことから、学年や性別を問わず人気を集めている。和真は優奈とはこの2年間で挨拶や、バイト先のドーナッツ屋で接客する程度の関わりだった。  4月の終わり頃。バイト中に店舗の入口前の掃除をしているとき、和真は老齢の男性のスマホを見つける。その男性は優奈の祖父であり、日本有数の企業グループである有栖川グループの会長・有栖川総一郎だった。  総一郎は自分のスマホを見つけてくれた和真をとても気に入り、孫娘の優奈とクラスメイトであること、優奈も和真も18歳であることから優奈との結婚を申し出る。  いきなりの結婚打診に和真は困惑する。ただ、有栖川家の説得や、優奈が和真の印象が良く「結婚していい」「いつかは両親や祖父母のような好き合える夫婦になりたい」と思っていることを知り、和真は結婚を受け入れる。  デート、学校生活、新居での2人での新婚生活などを経て、和真と優奈の距離が近づいていく。交際なしで結婚した高校生の男女が、好き合える夫婦になるまでの温かくて甘いラブコメディ!  ※特別編7が完結しました!(2026.1.29)  ※小説家になろうとカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録、感想をお待ちしております。

明日のために、昨日にサヨナラ(goodbye,hello)

松田丹子(まつだにこ)
恋愛
スパダリな父、優しい長兄、愛想のいい次兄、チャラい従兄に囲まれて、男に抱く理想が高くなってしまった女子高生、橘礼奈。 平凡な自分に見合うフツーな高校生活をエンジョイしようと…思っているはずなのに、幼い頃から抱いていた淡い想いを自覚せざるを得なくなり…… 恋愛、家族愛、友情、部活に進路…… 緩やかでほんのり甘い青春模様。 *関連作品は下記の通りです。単体でお読みいただけるようにしているつもりです(が、ひたすらキャラクターが多いのであまりオススメできません…) ★展開の都合上、礼奈の誕生日は親世代の作品と齟齬があります。一種のパラレルワールドとしてご了承いただければ幸いです。 *関連作品 『神崎くんは残念なイケメン』(香子視点) 『モテ男とデキ女の奥手な恋』(政人視点)  上記二作を読めばキャラクターは押さえられると思います。 (以降、時系列順『物狂ほしや色と情』、『期待ハズレな吉田さん、自由人な前田くん』、『さくやこの』、『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい』、『色ハくれなゐ 情ハ愛』、『初恋旅行に出かけます』)

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

還暦妻と若い彼 継承される情熱

MisakiNonagase
恋愛
61歳の睦美と、20歳の悠人。ライブ会場で出会った二人の「推し活」は、いつしか世代を超えた秘め事へと変わっていった。合鍵を使い、悠人の部屋で彼を待つ睦美の幸福。 しかし、その幸せの裏側で、娘の愛美もまた、同じ男の体温に触れ始めていた。 母譲りの仕草を見せる娘に、母の面影を重ねる青年。 同じ男を共有しているとは知らぬまま、母娘は「女」としての業(さが)を露呈していく。甘いお土産が繋ぐ、美しくも醜い三角関係の幕が上がる。

処理中です...