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夜のデートが切なすぎる件③
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「きったな。コイツこの水飲んでんじゃね!?」
あれから、さっきの女子達がトイレに現れてから。
あたしはホースの水を体中に勢いよくかけられた。
もう早月くんとこれ以上デート出来ないようにしてやる、と言われてデッキブラシでも服を汚される。
…お気に入りだった白いワンピースが……。
いや、服や体、髪だけじゃない。
大切なものがいっぱい入っている鞄までもう全部びっしょりだ。
「お、お願い、やめっ…」
「は?何?聞こえなーい」
「…っ」
すぐに逃げたいけど無駄みたい。
トイレの入口は仲間の女子に塞がれているし、そもそもこのトイレは立ち入り禁止らしく、だからきっと誰も入って来ないのだ。
あたしがそんなことを思っていると、目の前の女子達が不気味に笑いながら言った。
「翔太くん、アンタのこんな姿見たらドン引きよねー?」
「髪もぐちゃぐちゃ、服も汚れてるし」
「どーせならこのまま翔太くんのとこ戻ってみれば?ま、今の姿じゃデートなんて出来ないけど」
「ってかさ、いい加減気づけよ。翔太くんは皆んなのモノなの。誰のモノにもなっちゃいけないの。だからアンタみたいなのがいると凄い迷惑、」
そう言われて、汚れたデッキブラシで頭を押される。
どんなにデッキブラシから逃げようとしても、それはずっと追いかけてきて、女子達はやめようとしない。
…早月くんから、離れるんじゃなかったな。
あたしは未だ水をかけられながら、今更ながらにそんなことを思って後悔した。
…その間、鞄の中のスマホに着信がかかってきていて、ずっとバイブレーションがなったまま。
たぶん早月くんからだろう。
さすがに助けを呼ぼうか。
あたしはそう思ったけれど、今の自分の姿があまりに情けなすぎて、早月くんを呼べる勇気がない。
というか、そもそも目の前の女子達がそれを許さないだろう。
代わりにあたしからスマホを奪い取ると、何やら勝手に早月くんに文章を打ちはじめた。
「や、やめてっ…!」
しかし、そう言って止めに入った時には、既に遅くて。
その女子があたしにスマホを投げつけて言う。
「ハイ。翔太くんに、“楽しくないから帰る”って送っといた」
「!!」
そう言って、その言葉にあたしが愕然としているのを見ると、また不気味に笑う。
そして女子達はやっと満足してくれたのか、あたしにデッキブラシを投げつけると、その後「残念だったね」なんてようやくその場を後にした。
「翔太くんに近づきすぎるとこうなるんだよ」と、そんな言葉を残して。
「…~っ、」
…酷い。こんなの酷すぎる。
だって今更ながらに気がついた。
この前、学校のトイレで女子達が話していた早月くんの噂話。
あの時の女子達は今の女子達と多分同一人物で、あたしがトイレの個室にいるのを知っててわざとあんな話してたんだ。
…何で、そんなことにも気づかなかったんだろう…。
あたしはまだ何度も鳴り続ける着信に出ることも出来ず、しばらくその場から動けなかった…。
…………
それから、どれくらいの時間が経っただろうか。
あたしは女子達が離れて行ったあと、健に連絡を入れていて、「水族館まで迎えにきて欲しい」と頼んでいた。
だってこんなことを頼めるのは、健しかいない。
しばらくしたら水族館に着いたと連絡が入って、あたしは独り出口まで辿り着く。
…今の時刻、20時過ぎ。
そういえば、早月くんが言っていたイベントが始まっている頃だな。
…残念だな。
館内はイベント中だからかあまり人とすれ違うことはなくて、ようやく水族館を出ると、そこには連絡通り健がいた。
だけど、健はあたしの存在に気がつくと、驚いたような顔をして言った。
「!?…っ、え、お前何その格好…!」
「…、」
「聞いてないんだけど!え、全体的にびしょ濡れじゃん!」
そう言って、「水族館で水槽にでも落ちた?」とか聞いてくるから。
いつもならその言葉に、何かしら反論しているんだろうけど。でも…
今ばかりは、凄く安心して。
思わず、健に真正面から抱きついた。
「…!」
「…っ、」
そして、抱きついた直後に健に言った。
「……もう帰りたい」
「…」
「楽しみにしてたのに…来るんじゃなかった、」
そう言うと、あたしは思わず泣けてきて。
どうしてこうなったのか。
健に理由も言わずに、健にしがみついてわんわん泣く。
そんなあたしに、健は戸惑いつつも何があったかは聞いてこなくて。
あたしの頭に手を置いて、優しく撫でてくれた……その時。
「っ、世奈ちゃん!」
「!」
少し離れた場所から、ふいに聞こえてきた早月くんの声。
その声に、あたしはびっくりして一瞬固まってしまう。
…早月くん。
イベント中なのに、もしかしてあたしのことずっと探してたのかな。
それでもあたしが健から離れずにいると、そんなあたしに近づきながら早月くんが言った。
「やっと見つけた…っ」
「…」
「ライン、見たよ。さっきのことは謝るからさ、お願いだから………てか何で相沢さんまでいるの」
早月くんはそう言うと、あたしから健の方に視線を移す。
あたしは早月くんに背を向けたままだから、早月くんの表情は声からしか読み取れない。
するとそんな早月くんに、健が言った。
「…何だ、世奈と今日一緒だったのってお前か」
「そうだけど。でも何で、」
「っつかお前世奈に何したの、」
健はそう言うと、あたしの頭に手を遣ったまま、鋭い目つきで早月くんを見遣る。
そして早月くんが答える前に、健が言葉を続けて言った。
「何があったか知らないけどさ、世奈が“来るんじゃなかった”って言ってすげー泣いてるんだけど」
「!」
「……お前もうコイツに近づくのやめてくんない?」
健はそう言うと、未だに泣いたままのあたしを、早月くんの目の前で抱きしめる。
…健のその言葉のあとに、早月くんの声はもう聞こえてこない。
本当はあたしも早月くんに言いたいことがあるはずが、今は言えなくて、やがて「行くぞ」と言う健に連れられて、水族館を離れた。
楽しくなるはずのデートが、無惨に幕を閉じた瞬間だった…。
あれから、さっきの女子達がトイレに現れてから。
あたしはホースの水を体中に勢いよくかけられた。
もう早月くんとこれ以上デート出来ないようにしてやる、と言われてデッキブラシでも服を汚される。
…お気に入りだった白いワンピースが……。
いや、服や体、髪だけじゃない。
大切なものがいっぱい入っている鞄までもう全部びっしょりだ。
「お、お願い、やめっ…」
「は?何?聞こえなーい」
「…っ」
すぐに逃げたいけど無駄みたい。
トイレの入口は仲間の女子に塞がれているし、そもそもこのトイレは立ち入り禁止らしく、だからきっと誰も入って来ないのだ。
あたしがそんなことを思っていると、目の前の女子達が不気味に笑いながら言った。
「翔太くん、アンタのこんな姿見たらドン引きよねー?」
「髪もぐちゃぐちゃ、服も汚れてるし」
「どーせならこのまま翔太くんのとこ戻ってみれば?ま、今の姿じゃデートなんて出来ないけど」
「ってかさ、いい加減気づけよ。翔太くんは皆んなのモノなの。誰のモノにもなっちゃいけないの。だからアンタみたいなのがいると凄い迷惑、」
そう言われて、汚れたデッキブラシで頭を押される。
どんなにデッキブラシから逃げようとしても、それはずっと追いかけてきて、女子達はやめようとしない。
…早月くんから、離れるんじゃなかったな。
あたしは未だ水をかけられながら、今更ながらにそんなことを思って後悔した。
…その間、鞄の中のスマホに着信がかかってきていて、ずっとバイブレーションがなったまま。
たぶん早月くんからだろう。
さすがに助けを呼ぼうか。
あたしはそう思ったけれど、今の自分の姿があまりに情けなすぎて、早月くんを呼べる勇気がない。
というか、そもそも目の前の女子達がそれを許さないだろう。
代わりにあたしからスマホを奪い取ると、何やら勝手に早月くんに文章を打ちはじめた。
「や、やめてっ…!」
しかし、そう言って止めに入った時には、既に遅くて。
その女子があたしにスマホを投げつけて言う。
「ハイ。翔太くんに、“楽しくないから帰る”って送っといた」
「!!」
そう言って、その言葉にあたしが愕然としているのを見ると、また不気味に笑う。
そして女子達はやっと満足してくれたのか、あたしにデッキブラシを投げつけると、その後「残念だったね」なんてようやくその場を後にした。
「翔太くんに近づきすぎるとこうなるんだよ」と、そんな言葉を残して。
「…~っ、」
…酷い。こんなの酷すぎる。
だって今更ながらに気がついた。
この前、学校のトイレで女子達が話していた早月くんの噂話。
あの時の女子達は今の女子達と多分同一人物で、あたしがトイレの個室にいるのを知っててわざとあんな話してたんだ。
…何で、そんなことにも気づかなかったんだろう…。
あたしはまだ何度も鳴り続ける着信に出ることも出来ず、しばらくその場から動けなかった…。
…………
それから、どれくらいの時間が経っただろうか。
あたしは女子達が離れて行ったあと、健に連絡を入れていて、「水族館まで迎えにきて欲しい」と頼んでいた。
だってこんなことを頼めるのは、健しかいない。
しばらくしたら水族館に着いたと連絡が入って、あたしは独り出口まで辿り着く。
…今の時刻、20時過ぎ。
そういえば、早月くんが言っていたイベントが始まっている頃だな。
…残念だな。
館内はイベント中だからかあまり人とすれ違うことはなくて、ようやく水族館を出ると、そこには連絡通り健がいた。
だけど、健はあたしの存在に気がつくと、驚いたような顔をして言った。
「!?…っ、え、お前何その格好…!」
「…、」
「聞いてないんだけど!え、全体的にびしょ濡れじゃん!」
そう言って、「水族館で水槽にでも落ちた?」とか聞いてくるから。
いつもならその言葉に、何かしら反論しているんだろうけど。でも…
今ばかりは、凄く安心して。
思わず、健に真正面から抱きついた。
「…!」
「…っ、」
そして、抱きついた直後に健に言った。
「……もう帰りたい」
「…」
「楽しみにしてたのに…来るんじゃなかった、」
そう言うと、あたしは思わず泣けてきて。
どうしてこうなったのか。
健に理由も言わずに、健にしがみついてわんわん泣く。
そんなあたしに、健は戸惑いつつも何があったかは聞いてこなくて。
あたしの頭に手を置いて、優しく撫でてくれた……その時。
「っ、世奈ちゃん!」
「!」
少し離れた場所から、ふいに聞こえてきた早月くんの声。
その声に、あたしはびっくりして一瞬固まってしまう。
…早月くん。
イベント中なのに、もしかしてあたしのことずっと探してたのかな。
それでもあたしが健から離れずにいると、そんなあたしに近づきながら早月くんが言った。
「やっと見つけた…っ」
「…」
「ライン、見たよ。さっきのことは謝るからさ、お願いだから………てか何で相沢さんまでいるの」
早月くんはそう言うと、あたしから健の方に視線を移す。
あたしは早月くんに背を向けたままだから、早月くんの表情は声からしか読み取れない。
するとそんな早月くんに、健が言った。
「…何だ、世奈と今日一緒だったのってお前か」
「そうだけど。でも何で、」
「っつかお前世奈に何したの、」
健はそう言うと、あたしの頭に手を遣ったまま、鋭い目つきで早月くんを見遣る。
そして早月くんが答える前に、健が言葉を続けて言った。
「何があったか知らないけどさ、世奈が“来るんじゃなかった”って言ってすげー泣いてるんだけど」
「!」
「……お前もうコイツに近づくのやめてくんない?」
健はそう言うと、未だに泣いたままのあたしを、早月くんの目の前で抱きしめる。
…健のその言葉のあとに、早月くんの声はもう聞こえてこない。
本当はあたしも早月くんに言いたいことがあるはずが、今は言えなくて、やがて「行くぞ」と言う健に連れられて、水族館を離れた。
楽しくなるはずのデートが、無惨に幕を閉じた瞬間だった…。
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