兄貴がイケメンすぎる件

みららぐ

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ライバルが強敵すぎてヤバイ件

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健はよく、昔からあたしにキスをしていたから。
まさか今日健にキスをされるなんて思っていなかったあたしは、咄嗟にそいつの口元を右手で塞いだ。
塞いで、その理由を聞きたくて、あたしは口を開いて健に問いかける。

「…なんで?」
「…」
「何で健は、昔からそうやってあたしにキスするの?」
「…、」

『…健くん』
『ん?』
『どうして世奈にいつもチューするの?』

そしたら健はやっぱり、昔と同じ言葉を口にした。

「…世奈が可愛いから」
「…、」
「昔から、そう言ってるじゃん」

『世奈ちゃんが可愛いから』

…懐かしいな。
あたしがそう思っていると、そんなあたしにまた健が言う。

「あと…世奈のわがまま聞いたげるんだからキスくらいいいじゃん」
「…」

そう言ってまた、キスをしようとするから。
それを遮るように、あたしは健に言った。

「“今日は何なりとお申し付け下さい”」
「……ソウデシタ」
「外に出てからじゃないからね。今からもう始まってるんだから!」

あたしは健にそう言うと、「行くよ!」と。
そいつを部屋の外に連れ出す。
玄関に出て靴を履き、ドアを開けると空の様子を見た健があからさまに嫌そうに言った。

「…げ、すげぇ雨降ってんじゃん」
「だからそう言ったでしょ。雨降ってて寒かったって」
「今日はやめにしない?」
「“今日は何なりとお申し付け下さい”」
「…わかったよ」

あたしの言葉に健はそう言うと、渋々傘を開く。
するとやっと出掛けようとしたその瞬間、そんなあたしに健が何かに気がついたように言った。

「…あ」
「うん?どしたの?」
「ついでに返しに行けば?イヤリング」
「…え」

だって家隣なんだし、と。
玲香ちゃんの家を指差す健。
そんな健の言葉に、あたしはチラ、とその家に視線を遣る。
…正直、それはマジで気が進まない。
ってかそんなことわざわざ思いつかなくていいのに。
あたしはそう思うと、その家に背を向けながら健に言った。

「…いいよ。明日渡すからそれで」
「え、そう?」

それに、玲香ちゃんのことだから、今からパンケーキ食べに行くなんて言ったらついて来そう。そんなの絶対イヤ。
今渡しておけば楽なのに、なんて言う健を、あたしは半ば強引に目的のお店まで連れて行った。

…………

そして一方、その頃。
カフェ“Green”にて。
透明の傘を閉じて、僕はお店の中に入る。
外は雨が降っているせいか、お客さんはこの前来た時よりもわりと少なくて。
僕が来店したら、世奈ちゃんのお兄さんが笑顔で僕に言った。

「いらっしゃいませ」

「一名様ですね」とそう言われて、この前と同じカウンターの席に案内される。
今日、どうして僕がこのカフェにやって来たのか。
正直今回は、お兄さんと少しでも世奈ちゃんの話をしたくて。
先週は、カフェが結構混んでてそれが出来なかったから。

お兄さんは先週の僕のことを覚えてくれていたようで、「先週は慌ただしくて申し訳ありませんでした」なんて、そんなの気にしてないのに。
だから僕は、そんなお兄さんに言った。

「いえ、全然。っていうかこの前来た時に食べたサンドイッチ美味しくてビックリしました。あれ、お兄さんが作ったんですか?」
「ああ、あれは厨房にいる部下が。まぁ作り方を教えたのは僕ですけどね」
「え、レシピ知りたいくらいです」
「それは企業秘密ですから」

僕の言葉にお兄さんはそう言うと、人差し指を自身の口元にやって、ニッコリ笑う。
…やっぱり、そんな姿さえ、同性の僕から見てもイケメンだ。めちゃくちゃサマになってる。
するとお兄さんがメニューを僕に渡してきたから、今日はスイーツのページを見て、やがて問いかけた。

「…スイーツで何かオススメとかあるんですか?」
「えっと…あ、パフェあたりがよく褒められますね。まぁ僕の妹がここ来た時にいつも食べるやつなんですけど」
「!」

世奈ちゃんが!
お兄さんの言葉を聞くと、僕はすかさず反応してしまう。
思わずバッとお兄さんの方を見ると、そんな僕にさすがのお兄さんも気がついたようで「何か?」と問いかけられた。
だから僕は、イチゴパフェをオーダーして、その後言った。

「…妹さんって、」
「?」
「世奈さん、ですか?“工藤世奈”さん」
「!」

僕が思わずそう問いかけると、そう聞かれた一方のお兄さんは目をぱちくりさせて僕を見る。
…色んな意味で、ちょっとドキドキしたけれど。
やがてそんな僕の質問に、お兄さんが頷いて言った。

「そうですよ。え、もしかしてお客さん、僕の妹と同じ学校の方ですか?」
「っ、僕、世奈ちゃっ…世奈さんと同じクラスです!早月翔太っていいます!」
「え、ほんまに!」
「あの、実はこの前、世奈ちゃ…世奈さんに京都の旅行に誘われて。お兄さんからチケット貰ったからって。
今日はそのお礼を言いに来たんです。ありがとうございますっ!」
「あ、そうなんや!いや、え…いいんですよ。実は僕も二枚のうちの一枚は貰いもんなんで」

お兄さんはそう言って笑うけど、でも僕としては感謝しかない。
だって世奈ちゃんと思い出をいっぱい作れるチャンスだし。
でもお兄さんが男の僕も一緒に行くことをさほど気にしていないようで、内心ホッとしながら、僕はまた口を開いて言った。
…お兄さんには今日、言っておきたいことや聞きたいことがたくさんあるから。

「…あの、それでちょっと話しておきたいことがあるんですけど」
「あ、世奈のことですか?何か?」
「僕…単刀直入に言うと、世奈ちゃ…世奈さんに惚れてるんです」
「!」

僕がドキドキしながらそう言うと、それを聞いたお兄さんは、パフェを作っている手をピタリと止める。
そして、ちょっと目を見開いて僕を見るから。
そんなお兄さんに、僕は言葉を続けた。

「世奈さんにはもう自分の気持ちは伝えてあります。
で、彼女も多少それなりに僕に対して好意は…持ってくれてると思うんですけど、でもいつも何かが引っかかっているみたいで、あと一歩が進めないんです」
「…、」
「で、その原因は…この前、お兄さんにあるって聞いて、でもそれ以上はまだ聞かされてなかったんですけど」

僕はそこまで言うと、ふいにお兄さんから視線を外して下を向く。
…今日は聞こう、と思って来たけど。
多少それなりに覚悟は決めてきたはずだけど。
だけど僕は今日ここに来て、お兄さんと話してみて、改めて気がついたことがある。
もしかしたら…もしかしたら…。
すると、なかなか聞けないでいる僕に、お兄さんが察知したのか先に口を開いて言った。

「…僕は、妹には一番好きな人と幸せになってほしい」
「…?」
「せやから、世奈が心の底から笑ってくれるんなら、その相手が、えっと…早月くん、やっけ?早月くんでも僕としては全然それもアリやと思います」
「じゃあっ…!」
「けど、現状、それは正直難しいですよ。早月くんもようわかってるんちゃいます?」
「!」

お兄さんはそう言うと、ようやく出来上がったパフェを僕の目の前に置いて、言葉を続けた。

「…ほんまは、もう気付いてはるでしょ?」
「…、」
「僕と世奈は、ほんまは義理の兄妹です」
「!!」
「今マンションで、訳あって二人暮らししてます。世奈は、ほんまに幼い頃から寂し思いばっかしてきてるんです。
僕はどうしてもそんな世奈を知らん赤の他人やった時期もありますけど、でもは一番理解してる。正直、僕よりも」
「…アイツ…?」
「相沢健。世奈の、幼なじみの」
「!!」

…お兄さんの口から、相沢さんの名前が出た瞬間。
僕の中で、心臓がイヤな音を立てる。
また、だ。またアイツだ。
いつもいつも、いっつも。
するとそんなことを思う僕に、お兄さんが更に言葉を続けて言った。

「…どうですか?知りたいこと、知れましたか?これが真実です」
「…、」
「もし、今の話だけで世奈への気持ちが少しでもガタつくようなら、世奈のことは諦めて下さい」
「!」
「早月くんは、健には勝たれませんよ」






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