兄貴がイケメンすぎる件

みららぐ

文字の大きさ
42 / 58

京都旅行がタノシスギル件−繋−

しおりを挟む
「……健」
「んー?」
「あの…話が、あるんだけど」
「…?」

あたしがそう言うと、健が不思議そうにあたしの方を見遣る。
言うなら今しかない。
あたしはそう思うと、ゆっくりと口を開いて言った。

「あ…あたしね、やっぱり早月くんと…」
「……え」

しかし、あたしが伝えようとしたその瞬間…

「っ、ちょっと待った!」
「!…え、」

健にその言葉を何故か遮られた。
遮られてあたしが真っ直ぐに健と目を合わせると、そこにはついさっきまでとは打って変わって全く余裕のなさそうな表情をした健がいて。
そいつが、見つけた野良猫の頭に手を遣ったまま、言った。

「…それ、今言わなきゃいけないこと?」
「……だって、」
「わり。俺今それ聞きたくねぇわ」

健はそう言うと、「やっぱ旅館戻ろ」と一足先に歩き出す。
そんな健に、あたしは言うべきかどうか少し悩んでしまって…。
それでもそんな健を追いかけてまた言おうとしたら、その時いきなり目の前を見たことのない酔っ払いのおじさんに遮られた。

「あれっ、なに、お姉ちゃん独り?」
「!」
「もしかしてお友達とはぐれちゃったの?だったらおじさんにちょっと付き合ってよ~」
「えっ、や、あのっ…」

って、もう何でこんな時に!
しかもあたしはそのおじさんに腕を掴まれて、健のところに行くのを邪魔されてしまう。
急いで健の方を見ると、健はあたしに気づかずにどんどん先を行ってしまって…。

「い、今急いでるんで!」
「そんな冷たいこと言わないで~」
「離して下さい!」

あたしははっきりそう言うけれど、なかなかしつこいおじさんはあたしの腕を離してくれない。
そうこうしているうちに、おじさんにどこかに連れて行かれそうになるから…。
っていうか何で皆助けてくれないの!
それでもあたしは、少し離れてしまった健を呼んだ。

「っ、健!待って、助けて!健っ…!」

すぐに聞こえてくれるといいな。
でも、周りの音とかにかき消されたりしないかな。

「健!やだっ…お願い!助けて!」

……って…あれ?
何か今の状況と、似たようなことが、前にもあったような…。

「健、お願い待って!健っ…!!」

…あ。…確か、あの時は…科学準備室で男子生徒達に襲われて、あたしの声は健には聞こえていなくて。
代わりに早月くんが…科学準備室まで助けに来てくれて…。
しかし、そんなことを思いながら、おじさんに連れて行かれそうになっていると…。

「っ、おじさんコイツに何してんの!」
「!」

その時。
少し離れて行ってしまったはずの健が、いつのまにか目の前に戻ってきていて、そう言って間に入ってくれた。
…助けに来てくれた。
健の再登場にあたしが安堵していると、おじさんは「何だ、男いるのかよ」とあたしの腕をすんなり離し、その場を後にする。
健はそんなおじさんの背中を見ながらため息を吐くと、あたしの方を振り向いて、少し慌てた様子で言った。

「…っあ、世奈大丈夫!?」
「…」
「怪我っ…っつか、どっか触られたりしてない!?」

健のその必死な問いかけに、あたしは黙って首を横に振る。
そんなあたしに健は少し安心すると、やがて申し訳なさそうにあたしに言った。

「…ごめん。俺が自分勝手に戻ろうとしたから」
「…」
「でも、無事で良かっ、」

だけど、そんな健の言葉はほとんど耳に入って来なくて。
あの科学準備室でのことをさっきので思い出してしまったあたしは、健の言葉を遮るように、目の前の健に抱きついた。

「…!」

そして、抱きついたまま、呟くようにそいつに言った。

「…ありがと」
「…うん。あ、や、でも元はと言えば俺が悪いんだけど」
「何かヤダ…」
「ん?」
「こないだの、科学準備室で襲われた時のこと、思い出しちゃった。いっぱい健を呼んだ時の」
「…」
「…ごめんちょっとしばらくこのままがいい」

あたしはそう言うと、健の肩に顔を埋めながら、背中に両腕を回してぎゅうっと抱きしめる。
すると、そんなあたしの頭の上に、健が優しく手を乗せて言った。

「…頼ってくれるのは嬉しいけど、世奈チャン」
「…」
「周りにいる観光客の皆サンがめっちゃ見てるんだけど、俺らのこと」
「ウン」
「いや、ウンじゃなくて。俺結構恥ずかしい」

…だけど、それでも自分の中でさっきの出来事が思った以上に衝撃的だったらしくて。
あたし、まだ傷、癒えてないんだ…。
そう思いながら、あたしはしばらく健に抱きついたまま離れられずにいた…。

…………

「…ちょっとは落ち着いた?」
「うん、」

それからやがて旅館に戻ってくると、部屋の近くにある休憩所のようなスペースに健に連れて来られた。
そこにはソファーやテーブルもあって、それに自販機もいくつかあるし、今はあたし達以外に宿泊客がいなくてちょうどいい。
あたしが健の言葉に頷くと、健は少し安堵したように言った。

「…そっか。じゃあしばらくしたら部屋戻れよ。そろそろ早月も風呂上がってるだろ」
「…」

そう言うと、ふあ、と欠伸を一つしてソファーの背もたれに背中を預ける。
だけどその時、ふいに健のスマホに着信がかかってきた。
多分…いや絶対玲香ちゃんだ。
健はあたしを少し気にするけれど、やがてすぐにその着信に出た。

「…もしもし」
「…」
「…あ、ゴメン。今?…旅館にはいるよ。自販機んトコ」
「…」
「…や、すぐ戻るし。…え、ジュース?…いいよ、何がいい?」
「…」
「…レモンティーね。ハイ。…あ、あと、」

…でも、そう言って玲香ちゃんと話していると…

「…!」

その時、思わずウトウトしていて寝てしまったあたしの頭が、健の肩に寄り掛かった。
そんなあたしに、健が気がつくと…

「…世奈?」

一旦玲香ちゃんとの電話から離れて、あたしを呼ぶけれど…もちろんあたしは返事をしない。

「……あ、玲香?じゃあそろそろ戻るから。じゃあな」

そして健は着信を切ると、もう一度あたしの名前を呼んだ。

「世奈。世奈って。おい起きろよ」
「…」
「……マジか。熟睡してんじゃん」

健はそんなあたしにそう呟くと、もう一度あたしを起こそうとするけれど…昔から一度寝たらなかなか起きないあたしが、そんな簡単に起きるわけもなくて。
それを知っている健は、やがてあたしを起こすのをやめて、静かにあたしの寝顔を見つめる。
そして、見つめながら、さっきのことを思い出していた。

『……健』
『んー?』
『あの…話が、あるんだけど』
『…?』
『あ…あたしね、やっぱり早月くんと…』
『……え』

「……“付き合うことになった”?」
「…」

本当は、早月アイツが待ってる部屋に世奈を帰したくない。
今夜じゃなくても、いずれはアイツに抱かれて、世奈の全部を奪われてしまうなら……。

「…だめ。俺以外誰にも触らせんな」

健は呟くようにそう言うと、右手であたしの顎をくい、と上げて…そのままキスをした。

「…ん、」






しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

ポンコツ気味の学園のかぐや姫が僕へのラブコールにご熱心な件

鉄人じゅす
恋愛
平凡な男子高校生【山田太陽】にとっての日常は極めて容姿端麗で女性にモテる親友の恋模様を観察することだ。 ある時、太陽はその親友の妹からこんな言葉を隠れて聞くことになる。 「私ね……太陽さんのこと好きになったかもしれない」 親友の妹【神凪月夜】は千回告白されてもYESと言わない学園のかぐや姫と噂される笑顔がとても愛らしい美少女だった。 月夜を親友の妹としか見ていなかった太陽だったがその言葉から始まる月夜の熱烈なラブコールに日常は急変化する。 恋に対して空回り気味でポンコツを露呈する月夜に苦笑いしつつも、柔和で優しい笑顔に太陽はどんどん魅せられていく。 恋に不慣れな2人が互いに最も大切な人になるまでの話。 7月14日 本編完結です。 小説化になろう、カクヨム、マグネット、ノベルアップ+で掲載中。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ

桜庭かなめ
恋愛
 高校生の麻丘涼我には同い年の幼馴染の女の子が2人いる。1人は小学1年の5月末から涼我の隣の家に住み始め、約10年間ずっと一緒にいる穏やかで可愛らしい香川愛実。もう1人は幼稚園の年長組の1年間一緒にいて、卒園直後に引っ越してしまった明るく活発な桐山あおい。涼我は愛実ともあおいとも楽しい思い出をたくさん作ってきた。  あおいとの別れから10年。高校1年の春休みに、あおいが涼我の家の隣に引っ越してくる。涼我はあおいと10年ぶりの再会を果たす。あおいは昔の中性的な雰囲気から、清楚な美少女へと変わっていた。  3人で一緒に遊んだり、学校生活を送ったり、愛実とあおいが涼我のバイト先に来たり。春休みや新年度の日々を通じて、一度離れてしまったあおいとはもちろんのこと、ずっと一緒にいる愛実との距離も縮まっていく。  出会った早さか。それとも、一緒にいる長さか。両隣の家に住む幼馴染2人との温かくて甘いダブルヒロイン学園青春ラブコメディ!  ※特別編6が完結しました!(2026.1.21)  ※小説家になろう(N9714HQ)とカクヨムでも公開しています。  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

サクラブストーリー

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の速水大輝には、桜井文香という同い年の幼馴染の女の子がいる。美人でクールなので、高校では人気のある生徒だ。幼稚園のときからよく遊んだり、お互いの家に泊まったりする仲。大輝は小学生のときからずっと文香に好意を抱いている。  しかし、中学2年生のときに友人からかわれた際に放った言葉で文香を傷つけ、彼女とは疎遠になってしまう。高校生になった今、挨拶したり、軽く話したりするようになったが、かつてのような関係には戻れていなかった。  桜も咲く1年生の修了式の日、大輝は文香が親の転勤を理由に、翌日に自分の家に引っ越してくることを知る。そのことに驚く大輝だが、同居をきっかけに文香と仲直りし、恋人として付き合えるように頑張ろうと決意する。大好物を作ってくれたり、バイトから帰るとおかえりと言ってくれたりと、同居生活を送る中で文香との距離を少しずつ縮めていく。甘くて温かな春の同居&学園青春ラブストーリー。  ※特別編8-お泊まり女子会編-が完結しました!(2025.6.17)  ※お気に入り登録や感想をお待ちしております。

高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。

桜庭かなめ
恋愛
 高校1年生の低田悠真のクラスには『高嶺の花』と呼ばれるほどの人気がある高嶺結衣という女子生徒がいる。容姿端麗、頭脳明晰、品行方正な高嶺さんは男女問わずに告白されているが全て振っていた。彼女には好きな人がいるらしい。  ゴールデンウィーク明け。放課後にハンカチを落としたことに気付いた悠真は教室に戻ると、自分のハンカチの匂いを嗅いで悶える高嶺さんを見つける。その場で、悠真は高嶺さんに好きだと告白されるが、付き合いたいと思うほど好きではないという理由で振る。  しかし、高嶺さんも諦めない。悠真に恋人も好きな人もいないと知り、 「絶対、私に惚れさせてみせるからね!」  と高らかに宣言したのだ。この告白をきっかけに、悠真は高嶺さんと友達になり、高校生活が変化し始めていく。  大好きなおかずを作ってきてくれたり、バイト先に来てくれたり、放課後デートをしたり、朝起きたら笑顔で見つめられていたり。高嶺の花の高嶺さんとの甘くてドキドキな青春学園ラブコメディ!  ※2学期編4が完結しました!(2025.8.4)  ※お気に入り登録や感想、いいねなどお待ちしております。

明日のために、昨日にサヨナラ(goodbye,hello)

松田丹子(まつだにこ)
恋愛
スパダリな父、優しい長兄、愛想のいい次兄、チャラい従兄に囲まれて、男に抱く理想が高くなってしまった女子高生、橘礼奈。 平凡な自分に見合うフツーな高校生活をエンジョイしようと…思っているはずなのに、幼い頃から抱いていた淡い想いを自覚せざるを得なくなり…… 恋愛、家族愛、友情、部活に進路…… 緩やかでほんのり甘い青春模様。 *関連作品は下記の通りです。単体でお読みいただけるようにしているつもりです(が、ひたすらキャラクターが多いのであまりオススメできません…) ★展開の都合上、礼奈の誕生日は親世代の作品と齟齬があります。一種のパラレルワールドとしてご了承いただければ幸いです。 *関連作品 『神崎くんは残念なイケメン』(香子視点) 『モテ男とデキ女の奥手な恋』(政人視点)  上記二作を読めばキャラクターは押さえられると思います。 (以降、時系列順『物狂ほしや色と情』、『期待ハズレな吉田さん、自由人な前田くん』、『さくやこの』、『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい』、『色ハくれなゐ 情ハ愛』、『初恋旅行に出かけます』)

処理中です...