兄貴がイケメンすぎる件

みららぐ

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早月くんが怪しすぎる件①

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「お小遣いを前借りしたいです」
「……」

月曜日の朝。
ゴールデンウィーク明け。
ダイニングテーブルの向かいの席でご飯を食べる兄貴に、あたしはそう言った。
あたしが改まってそう言うと、兄貴の箸の動きがピタリと止まる。
そして、そんなあたしに兄貴が言った。

「…珍しいな。何を買うねん」
「まぁ…いろいろと?」
「そのいろいろっちゅうんが怪しいでお兄ちゃんはそんな簡単にお金渡せへんで?」
「……」

兄貴はそう言うと、また黙々とご飯を食べ進める。
だってさぁ…月に三千円じゃあすぐ無くなっちゃうし。
でも…

「京都行った時十分お小遣い渡したったがな」
「…ですよねぇ」

実は京都に旅行に行く前に、兄貴から数万円くらい貰ったあたし。
それを喜んで受け取って、全部お土産代や自分の好きな物に使ってしまった。
でもね、今回あたしが欲しいものは。

「せやけど、ほんまに必要なモンなら俺が買うて来たるやん。何が欲しいん、言うてみ」
「…」

そんなことを言って真正面に座るあたしを見つめる兄貴に、あたしははっきりと言った。

「ブラジャー」
「!」
「サイズが合ってないって言われたからブラが欲しいの。放課後に買ってくるから、お願い!」
「…」

あたしがそう言うと、兄貴が黙って椅子から立ち上がり、通勤鞄から財布を取り出す。
そしてそこから五千円札を取り出して、それをあたしに手渡した。

「…あい」
「っ、わーありがとう!」

やった!五千円もあれば新しいのがいくつも買える!
あたしはそう思ってそれを喜んで受け取ると、早速学校に行こうと椅子から立ち上がって玄関に向かった。

「じゃ、行ってきまーす!」
「行ってら……あっ、っつか世奈、お前サイズ合ってへんてそもそもそんなん誰から言われたんっ、」
「ばいばぁーい!」

そしてあたしは兄貴のそんな言葉を遮ると、半ば無理矢理にその場を終わらせて玄関の外に出た。

「っ、行ってもうたし…」

…………

「え、相沢くんと付き合いだしたの!?」
「うんっ、」

その後。
学校に到着してからの、とある休み時間の廊下。
あたしは、美桜に京都旅行でのことを報告した。
いっぱい悩んだけど、結局健と付き合うことにした、と。
そう言ったら美桜は、「おめでとう」と嬉しそうな笑顔を見せてくれた。

「そっかそっか~、相沢くんを選んだのか~ついに!」
「うん。だって健はあたしの初恋の相手でもあるし、離れるの嫌だったんだもん。
それに、前に美桜が言ってた、自分が何かをしてあげたいって思う相手は健だと思ったし」
「…早月くんのことはもういいの?」
「あ、早月くんにはそもそもフラれる運命だったから」

それに、やっぱり兄貴の存在には敵わなかったみたいだからね。
あたしがそう思っていると、ふいに美桜が教室にいる早月くんを眺めながら言った。

「…そう言えば、早月くんが言ってたんだけど」
「うん?」
「………あ、ゴメンやっぱ何でもない」
「え?何それっ」
「ヤバ、早月くんに“世奈ちゃんにはまだ言わないで”って言われてるんだった。ごめん忘れて」

…まだ…?
…言わないで…?
……って、イヤ何なのそれ!

「っ、気になるよ!」
「え、気にしないでお願い」
「仲間外れにしないでよ~」
「そんなんじゃないけど、」
「教えて下さいお願いします」
「…、」

あたしがそう言うと、やがて美桜が少し考えたあとあたしに耳打ちした。

「あたしから聞いたって内緒だよ?」
「うんっ」
「実は、早月くん………」
「……えっ!?」

…………

やっと放課後になって、約束のカフェGreenの前に立つ。
本当は今日は気が進まなかったけど、行かなかったら行かなかったでめちゃくちゃ気になるし。

『お前、月曜日の放課後時間とれる?…世奈のことで話あんねんけど』

…この前、勇斗くんがそんなことを突然言うから、今日俺は部活を休んでここまで足を運んだ。
っつか、世奈のことで話って何。
あれからいろいろ予想して考えてみたけど、でも結局どれもパッとしなかった。
だけど、今日はもう聞ける。スッキリできる。
俺はそう思うと、やがていつものそのドアを開けた。

「…おお健、おかえり」
「ただいま」

店内に入ると、聞き慣れたBGMが耳に流れてくる。
表のカウンター付近にいるのはいつも通りの勇斗くん。
…と?

「あ、いらっしゃいませ。オキャクサマ、」
「っ…!?」

次の瞬間、目に飛び込んできたのは。
もう見慣れてるけど、この場所では全く見慣れていない人物の姿。

「っ…早月!?お前なんでここいんの!?」

何故か早月が、勇斗くんと同じウエイトレスの格好をして立っていた。
え、や、聞いてない。
全然聞いてないんだけど!
いきなりのそいつの登場に俺がビックリしていると、勇斗くんがそんな俺に言った。

「あ、よろしくな?早月くん、今日からこのカフェでバイトすんねん」
「っ…何で!」
「まぁ、高校生の一人暮らしやし、いろいろ大変やからって」

勇斗くんはそう言うと、俺をいつものカウンターの席に座らせる。
…確かに、それだったらバイトは必須なのかもしれないけど。
それでもわざわざ、このカフェでバイトしなくたって…。
俺がそう思っていると、やがて早月が聞いてきた。

「ご注文は何になさいますか?オキャクサマ」
「…オレンジジュースで。っつかお前学校終わって速攻ここ来たの?早くねぇ?」
「お仕事ですから」

早月は俺の言葉にそう言うと、一旦店内の奥に入っていく。
俺はそんな早月の姿を見ながら、ふいに勇斗くんに問いかけた。

「…勇斗くん」
「ん?」
「あの、早速なんだけど、世奈の話って…」
「ああ、アレな」
「すげー気になってるんだけど。早く教えて」

俺が待ちきれなくてそう言うと、勇斗くんは何故かカウンター裏にある棚からスケッチブックを取り出す。
そしてそれを開くと、あるページを俺に見せながら言った。

「…すまんな、健」
「エ、」
「これ、俺が考えたんちゃうねん。俺のオトン…つまり世奈のオトンから元々言われとったことやねん」
「!」

勇斗くんがそう言っている間、奥からオレンジジュースを持つ早月が再び現れる。

「…や、冗談でしょ?勇斗くん」
「すまんけど冗談とちゃう。これから俺が言うこと、全部守ってな?
世奈と付き合うにあたっての、10カ条」

その時…俺にオレンジジュースを持ってきた早月が、すぐ側までやって来る。
勇斗くんがそう言った瞬間。
早月が、ニヤリ、と不敵な笑みを浮かべた気がした…。





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