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第十一章
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呆気なく手続きは終わりマンションに帰っていた。出されたコーヒーと豆乳を飲んでいると由香里は書類をいくつか持って来た。
「今から私の名義変更をするわ、嬉しいけど大変ね」
「電話連絡入れるだけだろ? 静かにしておくよ。
冷蔵庫からチョコを取り出し食べながら雑誌を読んでいた。
由香里は、一軒ずつ電話をしている。一時間ほどで終わったようだ。
「仕事より楽だったわ」
玄関先で物音がしている、静かに様子を見に行き覗き穴から外を見る、管理人が何かしているがすぐに立ち去った。玄関を開け確認すると部屋のネームプレートが姫野から荒木に変わっていただけだった。
リビングに戻ると由香里は何か考え込んでいる。
「どうした? 終わったんじゃないのか?」
「ええ、終わったわ。銀行のお金をあなたのところへ移すか迷ってるの」
「別々でもいいんじゃないか? 俺はどっちでも構わんよ」
「わかったわ、ゆっくり考えてみるわ。お昼過ぎちゃったけど何か作るわ」
書類をしまいキッチンに入っていった。
テーブルに付くといつものスタミナ丼だった。
「私が疲れたから今日もスタミナ丼よ、よかったかしら?」
「ああ、最近一日一回は食べないと落ち着かないからな」
「よかったわ私もなの、いただきましょ」
「このスタミナ丼を世間の疲れたサラリーマンに教えてやりたい、みんな元気になるぞ」
「今度ネットの料理サイトに投稿してみようかしら?」
「いいんじゃないか?」
「さっきの件だけど、やっぱり銀行のお金をあなたのところへ移動させるわ」
「好きにすればいい」
「車の名義変更もするから食べたら連れて行って」
「車は車検の時に切り替えればいい」
「そうなの? すぐに手続きしなくてもいいのね?」
「ああ、構わない。元整備士の俺に任せろ」
「わかったわ、銀行の方だけ何とかするわ」
由香里は通帳を出してきて電話を始めた。
何やら話し込んでいたがすぐに終わった様だ。
「あなた、銀行に直接行かないといけないらしいわ。
「やっぱりな、今から行くか?」
「もう銀行が閉まるわ、今度にするわ。あなたの通帳を借りてもいいかしら」
「いいぞ」
何も聞かず渡してやった。
俺はリビングに移りくつろぎ始めた。由香里が飲み物を用意して持って来て。ノートパソコンで何かし始めた。俺もチョコを食べながらノートパソコンを開く。
近辺のレストランを探したが、あまりいいとこはなさそうだ、高級レストランは多いがやはりハニーズが俺には行きやすい。
暫くすると由香里の用事は終わったみたいだ。通帳を返してきた。
「銀行口座を移動する手続きをしたわ」
「そうか、俺は構わんよ。俺は近所のレストランを探したがハニーズ程のところは見つからなかった」
「この辺りであそこ以上にいい店はないわ、私のお気に入りのレストランよ」
「それならいいが、一応今日は籍を入れた記念日だ。レストランで食事をしよう」
「そう言うと思ったわ、だから今日は何も用意してないわ」
「ちょっと出掛けるが、一緒に行くか?」
「ええ、行きましょ」
俺は山中と江口の携帯を持って出掛けた。港に着くと二つ共海に捨てた。
「俺の用事は終わったよ、どこか寄って帰るか」
「スーパーに寄って頂戴、スタミナ丼の材料が切れそうなの」
スーパーに寄ると由香里は買い物かごにいろいろ入れだしす、俺は黙って後ろを付いて行った。
「スタミナ丼の材料の他にも結構買ったな」
「二人分ですもの」
車に積み込みマンションに帰った。
由香里が冷蔵庫に食材を入れるのを見ていた。大きな冷蔵庫だがすぐに満杯になった。
「そろそろ散髪に行きたい、この前切ったのにもうボサボサで気になる」
「予約を取るわ」
由香里が電話をする。
「カットだけなら今でもいいそうよ」
「だったらすぐに行こう」
由香里はすぐ行きますと電話でいい通話を終えた。
すぐに出掛ける徒歩で五分程度だ。由香里もついてくる。
店に着くとすぐに呼ばれた。この前のスタッフだった。
「前回と同じにしてくれ」
「わかりました」
「前に来た時もだがこの時間帯は空いてるのか?」
「そうですね、朝から夕方近くまでは結構込みますがそれ以降なら割と空いています」
「だったら今度からもそうするよ」
「ありがとうございます」
鏡越しに由香里を見たが、スタッフと話をしている声が聞える。
「今日あの人と入籍したの、今度から姫野ではなく荒木で予約するわ。
「わかりました、おめでとうございます」
カットが終わり髪も洗ってもらった。
「何かつけますか?」
「いや、このままで構わない、ところであんたがこれからも俺の担当なのかい?」
「そうです、よろしくお願いします」
「こちらこそ、これからも頼むよ」
会計を済ましマンションに一旦帰る。自分でワックスを付けセットする。
「レストランに行こうか?」
「そうね、お腹も空いてきたわ」
「この前みたいな豪華なチキンのセットはよそう」
「私もそう言おうと思ってたところよ」
レストランに着くと、ウェイターが来る。
「今日は結婚記念日だ、チキンのセットじゃなく極上ステーキで頼むよ」
「かしこまりました、他にご注文は?」
「ガーリックライスとグラタンを頼む」
席に案内された。
「明日はまたショッピングモールへ行くぞ」
「先に銀行に寄ってもらってもいいかしら」
「ああ、時間は十分にある」
料理が運ばれて来る、特製ダレも付いてくる。
「食べながら話そうじゃないか」
「いいわよ」
ステーキから手を付ける。何度食べても美味い肉だ。
「こんな肉はスーパーじゃ手に入らないな」
「近所のお肉屋さんになら置いてあるかもしれないけど、こんなに分厚いのは置いてあるかしら?」
「今度見にいこう、家でも食べたい」
「ガーリックライスとグラタンは簡単よ」
「いいな、再現してみてくれ」
食べ終わると、散歩がてらにコンビに寄ってATMで現金をおろし、アイスをいくつか買って帰った。
二人でアイスを食べながら明日の予定を再確認した。
「午前中に銀行で、午後から買い物で決まりだな、それでいいか?」
「ええ、いいわ。何を買いに行くの?」
「まだはっきり決まっていない」
「まあいいわ、見て歩くだけでも楽しいし」
「じゃあ、さっさと風呂に入って早めに寝よう」
「もう沸いてるわ」
いつもの様に二人で入り、体の流し合いをした。風呂から上がるとまたアイスを取り出し食べる。
「あなた、そんなに食べるとお腹壊すわよ」
「この程度なら問題ない、駄目なのは牛乳だけだ」
食べ終え、残った豆乳を飲み干し寝る準備をし、ベッドに入る。
久しぶりに由香里を抱いた。
アラームで目覚めると、由香里に言った。
「もう一応仕事も辞めたんだし、アラームの時間を変えないか?」
「規則正しい生活リズムは大切だわ、でも少し早いわね少しずらしましょうか」
由香里はアラームを一時間だけ遅らせた。
「これでいいかしら?」
「ああ、それでいい」
キッチンのテーブルに付いて豆乳を飲みながら朝食を待った。
出てきたのはスタミナ丼だった。
「朝からこれか? 美味いからいいが」
「昨夜久しぶりに抱いてくれたでしょ、疲れたんじゃないかと思って作ったの」
「気が効くな、遠慮なく戴こう」
スタミナ丼と豚の生姜焼きをペロリと平らげた。
「朝からこれもいいな、一日の活力の源になりそうだ」
「作るのが簡単だから助かるわ」
豆乳を持ってリビングに行き新聞を広げるが大した記事は載っていない、週間天気予報だけチェックしすぐに新聞を畳む。
「銀行三つとも回るから早めに用意しておいて」
すぐに着替え俺も通帳と印鑑を用意した。
「俺は何時でも大丈夫だ」
「私も用意出来たわ、出ましょうか?」
「混んで待たされるのは嫌だからな」
すぐに車に乗り込み遠い方から周る事にした。遠いと言っても大した距離ではない、すぐに到着する、機械の番号札を取ると長椅子に腰を掛けたがすぐに呼ばれた由香里が用件を伝える、しばらくお待ち下さいと言われたのでまた座った。中年の男性が出てきて。
「荒木様、こちらへどうぞ」
と言われるがまま付いて行った、ソファーに座ると男が名刺を出してくる、支店長と書いてあった。
「荒木様は個人では当支店一番のお客様です、今日の用件は私が行います、通帳と印鑑をお借り出来ますか」
二人の通帳と印鑑を出した。
「少々お待ち下さい」
男が奥に消えた。
「こんなとこに呼ばれたのは初めてだ」
「貯金の残高が多いとこういう風な扱いを受けるわ、私は慣れたわ」
すぐに男が戻ってきて通帳と印鑑を返される。
「これでよろしいですか?」
由香里の通帳には変更済みと判が押されている、俺の通帳には由香里の貯金が移されていた。由香里がこれでいいわと言うと、新しいキャッシュカードが由香里に手渡される。
「ありがとう、今日はこれだけよ」
と立ち上がる、俺も立ち上がった。
「荒木様のお顔は覚えました、これからもよろしくお願いします」
と出口まで見送られた。
「∨IP対応だったな」
「あれだけの金額ですもの当然よ」
次の銀行に向かった。
結局残り二軒も同じ感じの対応で思ってたよりもあっさりと終わった。
一旦マンションに帰ると由香里は古い方の通帳とキャッシュカードにハサミを入れ捨てていた。
まだ昼前だったがショッピングモールへ向かった、駐車場に車を停め中に入る。
「お腹が空いたわ、飲食店も多いし何か食べない?」
「何が食いたい? お前の好きなとこで構わないぞ」
「私、ラーメンが食べたいわ今までほとんど食べたことがないの」
と言うので大手のチェーン店へ入った。
俺が豚骨チャーシュー麺を頼むと由香里も同じものを注文した。すぐに運ばれて来る。
俺はにんにくを潰し混ぜて食べた、由香里も真似をしている、食べ始めると。
「なにこれ、凄く美味しいわ」
と言い夢中で食べ始めた。すぐに食べ終え店を出る。
「ラーメンって美味しいのね、しかも安い」
「気に入ったか? だが店によって当たり外れが激しい」
「うちの近所にもあるかしら?」
「たくさん並んでたぞ、また食いに行こう」
「ええ、連れて行って。口直しがしたいわ」
と言い出したのでクレープ屋に寄った。
「ここのクレープも美味しいわね」
由香里はさっきから上機嫌だ。
「で何を買うの?」
「決めてないが時間はある、ゆっくり周ろうじゃないか」
いろんな店を見て回り、俺は一軒の時計屋に入った、腕時計を見て回る気に入ったのを何個か見つけると店員を呼び防水で頑丈なのを聞いた、二つに絞られた。
「お前ならどっちを選ぶ?」
「違いがよくわからないけどこっちの方が好みね」
由香里に聞こえない様に、店員に男女ペアでこれを買うと伝えた。一応ブランド品らしい。
高かったが会計をし、店を出た。
「俺の用事は終わった、まだ見て周るか?」
「半日で全部周るのは無理よ広すぎるわ、また今度にしましょ。楽しかったわ」
駐車場まで戻りマンションに帰った。
飲み物が出されたので飲みながら、さっき買った腕時計を取り出しはめてみた。
「似合ってるわ、いいデザインね」
もう一つ取り出し由香里に渡してやった。
「私の分も買ってくれたの?」
箱を開け腕にはめた。
「これは女性用ね、ペアの腕時計ね」
「結婚指輪の代わりだ、代わりを用意するって約束しただろ? 気に入ってくれたか?」
「ええ、気に入ったわ、ありがとう大事にするわ」
「防水で衝撃にも強いらしい、電波時計だから時間を合わせる必要もないぞ」
「嬉しいわ、お出掛けする時に使うわ」
こんなので良かったのだろうかと暫く考えた、由香里は貴金属に興味はないと言っていたがこれも貴金属に入るんじゃないか? しかし俺には他に思いつかなかった。
「あなた、浮かない顔をしてどうしたの?」
「いや、本当にこんな物で良かったのかを考えていた。よく考えればこれも貴金属の類だし、他の物にした方が良かったんじゃないだろうかとな」
「大丈夫よ、私はこれが気に入ったし嬉しかったわ、貴金属になるけど腕時計は別よ、それにあなたからのプレゼントよ嬉しくないはずがないじゃない、結婚指輪は要らないって言ったのは私よ、落ち込む必要はないわ」
「そうか、わかった」
由香里は大事そうに腕時計を置いた。
「わかってくれたのならいいわ」
由香里はコーヒーを一口飲むと。
「今夜はハニーズの記念日のセットを再現しようと思うの、近所にいいお肉屋さんがあるから見に行きましょ」
肉屋と言えば商店街の小さな肉屋しか思いつかなかった。
「ああ、行ってみよう」
歩いて数分のところに肉専門店と書かれた大きな肉屋があった。
「でかいな」
「私のお気に入りのお肉屋さんよ」
中へ入ると小太りの男がいる。
「いらっしゃい、おや姫野さんじゃないか」
「昨日から姫野じゃなく荒木よ」
「おめでたいね、あんたが旦那さんかい?」
「そうだ、ところで俺はこんな大きな肉屋は初めてだかなり揃えてあるのかい?」
「牛、豚、鳥の肉ならここで手に入らない肉はないはずだ、それに超新鮮な肉ばかりだ、結婚記念に安くしとくよ」
ガラスケースに並べられた肉を端から見ていく牛肉だけでもピンからキリまで揃っている様だ、ブランド品も並んでいる。
「お前肉はいつもここで買ってるのか?」
「そうよ、スーパーのお肉は薄いもの」
高級肉のところで品定めに入った。
霜降り国産和牛だ
「これかこっちかどっちが美味いんだ?」
「いい肉に目を付けたね、こいつは神戸牛と宮崎県産の肉だ近所のレストラン御用達の肉だ、数が少ないから早い者勝ちだよ」
「ハニーズを知ってるかい? あそこの肉の味が忘れられなくてね」
「ハニーズさんに卸してる肉はこっちだ」
「じゃあそれを二人前、分厚く切ってくれ」
「それといつもの豚肉も四枚戴くわ」
「ありがとう、用意するから待ってくれ」
「ここは店の奥でさばいてるらしいわよ」
「それでこんなに広いのか」
「お待たせ、サービスしといたよ」
「俺が払うよ、カードでもいいのかい」
「構わないよ、気に入ったらまた来てくれ」
店を出た、肉がずっしりとしていて重い。
「ハニーズと同じお肉が買えたわね」
「これは楽しみだ」
家に帰ると由香里は張り切っている。
「早速再現してみるわ」
とキッチンへ入っていった。
俺は腕時計を外し、冷蔵庫の豆乳をコップに注ぐ。ガーリックライスの美味しそうな匂いがしている。リビングに戻って待っていると、ステーキを焼く音が聞こえてくる。そろそろだなと思いテーブルに付いた。
食べ物が運ばれて来る、レストランの様に特製タレもついてきた。
「出来たわ、ステーキから食べて頂戴」
特製タレを両方に混ぜ、食べ始めた。
「これは美味い、レストランより美味いんじゃないか? 肉が口の中で溶けていく」
「本当に美味しいわね食べ切れるかしら?」
ガーリックライスも食べる、こちらも店と同じ味がしている。
味わってゆっくり食べた筈だが、すぐに食べ終えた。
「どうだった?」
「レストランで食べるより美味かったよ、大満足だ腹が満たされたよ」
「よかったわ、レストランで食べるより安上がりだしまた買っておくわ」
「頼むよ、ごちそうさま」
急に眠気が襲ってきたので、ソファーに横になった。
「今から私の名義変更をするわ、嬉しいけど大変ね」
「電話連絡入れるだけだろ? 静かにしておくよ。
冷蔵庫からチョコを取り出し食べながら雑誌を読んでいた。
由香里は、一軒ずつ電話をしている。一時間ほどで終わったようだ。
「仕事より楽だったわ」
玄関先で物音がしている、静かに様子を見に行き覗き穴から外を見る、管理人が何かしているがすぐに立ち去った。玄関を開け確認すると部屋のネームプレートが姫野から荒木に変わっていただけだった。
リビングに戻ると由香里は何か考え込んでいる。
「どうした? 終わったんじゃないのか?」
「ええ、終わったわ。銀行のお金をあなたのところへ移すか迷ってるの」
「別々でもいいんじゃないか? 俺はどっちでも構わんよ」
「わかったわ、ゆっくり考えてみるわ。お昼過ぎちゃったけど何か作るわ」
書類をしまいキッチンに入っていった。
テーブルに付くといつものスタミナ丼だった。
「私が疲れたから今日もスタミナ丼よ、よかったかしら?」
「ああ、最近一日一回は食べないと落ち着かないからな」
「よかったわ私もなの、いただきましょ」
「このスタミナ丼を世間の疲れたサラリーマンに教えてやりたい、みんな元気になるぞ」
「今度ネットの料理サイトに投稿してみようかしら?」
「いいんじゃないか?」
「さっきの件だけど、やっぱり銀行のお金をあなたのところへ移動させるわ」
「好きにすればいい」
「車の名義変更もするから食べたら連れて行って」
「車は車検の時に切り替えればいい」
「そうなの? すぐに手続きしなくてもいいのね?」
「ああ、構わない。元整備士の俺に任せろ」
「わかったわ、銀行の方だけ何とかするわ」
由香里は通帳を出してきて電話を始めた。
何やら話し込んでいたがすぐに終わった様だ。
「あなた、銀行に直接行かないといけないらしいわ。
「やっぱりな、今から行くか?」
「もう銀行が閉まるわ、今度にするわ。あなたの通帳を借りてもいいかしら」
「いいぞ」
何も聞かず渡してやった。
俺はリビングに移りくつろぎ始めた。由香里が飲み物を用意して持って来て。ノートパソコンで何かし始めた。俺もチョコを食べながらノートパソコンを開く。
近辺のレストランを探したが、あまりいいとこはなさそうだ、高級レストランは多いがやはりハニーズが俺には行きやすい。
暫くすると由香里の用事は終わったみたいだ。通帳を返してきた。
「銀行口座を移動する手続きをしたわ」
「そうか、俺は構わんよ。俺は近所のレストランを探したがハニーズ程のところは見つからなかった」
「この辺りであそこ以上にいい店はないわ、私のお気に入りのレストランよ」
「それならいいが、一応今日は籍を入れた記念日だ。レストランで食事をしよう」
「そう言うと思ったわ、だから今日は何も用意してないわ」
「ちょっと出掛けるが、一緒に行くか?」
「ええ、行きましょ」
俺は山中と江口の携帯を持って出掛けた。港に着くと二つ共海に捨てた。
「俺の用事は終わったよ、どこか寄って帰るか」
「スーパーに寄って頂戴、スタミナ丼の材料が切れそうなの」
スーパーに寄ると由香里は買い物かごにいろいろ入れだしす、俺は黙って後ろを付いて行った。
「スタミナ丼の材料の他にも結構買ったな」
「二人分ですもの」
車に積み込みマンションに帰った。
由香里が冷蔵庫に食材を入れるのを見ていた。大きな冷蔵庫だがすぐに満杯になった。
「そろそろ散髪に行きたい、この前切ったのにもうボサボサで気になる」
「予約を取るわ」
由香里が電話をする。
「カットだけなら今でもいいそうよ」
「だったらすぐに行こう」
由香里はすぐ行きますと電話でいい通話を終えた。
すぐに出掛ける徒歩で五分程度だ。由香里もついてくる。
店に着くとすぐに呼ばれた。この前のスタッフだった。
「前回と同じにしてくれ」
「わかりました」
「前に来た時もだがこの時間帯は空いてるのか?」
「そうですね、朝から夕方近くまでは結構込みますがそれ以降なら割と空いています」
「だったら今度からもそうするよ」
「ありがとうございます」
鏡越しに由香里を見たが、スタッフと話をしている声が聞える。
「今日あの人と入籍したの、今度から姫野ではなく荒木で予約するわ。
「わかりました、おめでとうございます」
カットが終わり髪も洗ってもらった。
「何かつけますか?」
「いや、このままで構わない、ところであんたがこれからも俺の担当なのかい?」
「そうです、よろしくお願いします」
「こちらこそ、これからも頼むよ」
会計を済ましマンションに一旦帰る。自分でワックスを付けセットする。
「レストランに行こうか?」
「そうね、お腹も空いてきたわ」
「この前みたいな豪華なチキンのセットはよそう」
「私もそう言おうと思ってたところよ」
レストランに着くと、ウェイターが来る。
「今日は結婚記念日だ、チキンのセットじゃなく極上ステーキで頼むよ」
「かしこまりました、他にご注文は?」
「ガーリックライスとグラタンを頼む」
席に案内された。
「明日はまたショッピングモールへ行くぞ」
「先に銀行に寄ってもらってもいいかしら」
「ああ、時間は十分にある」
料理が運ばれて来る、特製ダレも付いてくる。
「食べながら話そうじゃないか」
「いいわよ」
ステーキから手を付ける。何度食べても美味い肉だ。
「こんな肉はスーパーじゃ手に入らないな」
「近所のお肉屋さんになら置いてあるかもしれないけど、こんなに分厚いのは置いてあるかしら?」
「今度見にいこう、家でも食べたい」
「ガーリックライスとグラタンは簡単よ」
「いいな、再現してみてくれ」
食べ終わると、散歩がてらにコンビに寄ってATMで現金をおろし、アイスをいくつか買って帰った。
二人でアイスを食べながら明日の予定を再確認した。
「午前中に銀行で、午後から買い物で決まりだな、それでいいか?」
「ええ、いいわ。何を買いに行くの?」
「まだはっきり決まっていない」
「まあいいわ、見て歩くだけでも楽しいし」
「じゃあ、さっさと風呂に入って早めに寝よう」
「もう沸いてるわ」
いつもの様に二人で入り、体の流し合いをした。風呂から上がるとまたアイスを取り出し食べる。
「あなた、そんなに食べるとお腹壊すわよ」
「この程度なら問題ない、駄目なのは牛乳だけだ」
食べ終え、残った豆乳を飲み干し寝る準備をし、ベッドに入る。
久しぶりに由香里を抱いた。
アラームで目覚めると、由香里に言った。
「もう一応仕事も辞めたんだし、アラームの時間を変えないか?」
「規則正しい生活リズムは大切だわ、でも少し早いわね少しずらしましょうか」
由香里はアラームを一時間だけ遅らせた。
「これでいいかしら?」
「ああ、それでいい」
キッチンのテーブルに付いて豆乳を飲みながら朝食を待った。
出てきたのはスタミナ丼だった。
「朝からこれか? 美味いからいいが」
「昨夜久しぶりに抱いてくれたでしょ、疲れたんじゃないかと思って作ったの」
「気が効くな、遠慮なく戴こう」
スタミナ丼と豚の生姜焼きをペロリと平らげた。
「朝からこれもいいな、一日の活力の源になりそうだ」
「作るのが簡単だから助かるわ」
豆乳を持ってリビングに行き新聞を広げるが大した記事は載っていない、週間天気予報だけチェックしすぐに新聞を畳む。
「銀行三つとも回るから早めに用意しておいて」
すぐに着替え俺も通帳と印鑑を用意した。
「俺は何時でも大丈夫だ」
「私も用意出来たわ、出ましょうか?」
「混んで待たされるのは嫌だからな」
すぐに車に乗り込み遠い方から周る事にした。遠いと言っても大した距離ではない、すぐに到着する、機械の番号札を取ると長椅子に腰を掛けたがすぐに呼ばれた由香里が用件を伝える、しばらくお待ち下さいと言われたのでまた座った。中年の男性が出てきて。
「荒木様、こちらへどうぞ」
と言われるがまま付いて行った、ソファーに座ると男が名刺を出してくる、支店長と書いてあった。
「荒木様は個人では当支店一番のお客様です、今日の用件は私が行います、通帳と印鑑をお借り出来ますか」
二人の通帳と印鑑を出した。
「少々お待ち下さい」
男が奥に消えた。
「こんなとこに呼ばれたのは初めてだ」
「貯金の残高が多いとこういう風な扱いを受けるわ、私は慣れたわ」
すぐに男が戻ってきて通帳と印鑑を返される。
「これでよろしいですか?」
由香里の通帳には変更済みと判が押されている、俺の通帳には由香里の貯金が移されていた。由香里がこれでいいわと言うと、新しいキャッシュカードが由香里に手渡される。
「ありがとう、今日はこれだけよ」
と立ち上がる、俺も立ち上がった。
「荒木様のお顔は覚えました、これからもよろしくお願いします」
と出口まで見送られた。
「∨IP対応だったな」
「あれだけの金額ですもの当然よ」
次の銀行に向かった。
結局残り二軒も同じ感じの対応で思ってたよりもあっさりと終わった。
一旦マンションに帰ると由香里は古い方の通帳とキャッシュカードにハサミを入れ捨てていた。
まだ昼前だったがショッピングモールへ向かった、駐車場に車を停め中に入る。
「お腹が空いたわ、飲食店も多いし何か食べない?」
「何が食いたい? お前の好きなとこで構わないぞ」
「私、ラーメンが食べたいわ今までほとんど食べたことがないの」
と言うので大手のチェーン店へ入った。
俺が豚骨チャーシュー麺を頼むと由香里も同じものを注文した。すぐに運ばれて来る。
俺はにんにくを潰し混ぜて食べた、由香里も真似をしている、食べ始めると。
「なにこれ、凄く美味しいわ」
と言い夢中で食べ始めた。すぐに食べ終え店を出る。
「ラーメンって美味しいのね、しかも安い」
「気に入ったか? だが店によって当たり外れが激しい」
「うちの近所にもあるかしら?」
「たくさん並んでたぞ、また食いに行こう」
「ええ、連れて行って。口直しがしたいわ」
と言い出したのでクレープ屋に寄った。
「ここのクレープも美味しいわね」
由香里はさっきから上機嫌だ。
「で何を買うの?」
「決めてないが時間はある、ゆっくり周ろうじゃないか」
いろんな店を見て回り、俺は一軒の時計屋に入った、腕時計を見て回る気に入ったのを何個か見つけると店員を呼び防水で頑丈なのを聞いた、二つに絞られた。
「お前ならどっちを選ぶ?」
「違いがよくわからないけどこっちの方が好みね」
由香里に聞こえない様に、店員に男女ペアでこれを買うと伝えた。一応ブランド品らしい。
高かったが会計をし、店を出た。
「俺の用事は終わった、まだ見て周るか?」
「半日で全部周るのは無理よ広すぎるわ、また今度にしましょ。楽しかったわ」
駐車場まで戻りマンションに帰った。
飲み物が出されたので飲みながら、さっき買った腕時計を取り出しはめてみた。
「似合ってるわ、いいデザインね」
もう一つ取り出し由香里に渡してやった。
「私の分も買ってくれたの?」
箱を開け腕にはめた。
「これは女性用ね、ペアの腕時計ね」
「結婚指輪の代わりだ、代わりを用意するって約束しただろ? 気に入ってくれたか?」
「ええ、気に入ったわ、ありがとう大事にするわ」
「防水で衝撃にも強いらしい、電波時計だから時間を合わせる必要もないぞ」
「嬉しいわ、お出掛けする時に使うわ」
こんなので良かったのだろうかと暫く考えた、由香里は貴金属に興味はないと言っていたがこれも貴金属に入るんじゃないか? しかし俺には他に思いつかなかった。
「あなた、浮かない顔をしてどうしたの?」
「いや、本当にこんな物で良かったのかを考えていた。よく考えればこれも貴金属の類だし、他の物にした方が良かったんじゃないだろうかとな」
「大丈夫よ、私はこれが気に入ったし嬉しかったわ、貴金属になるけど腕時計は別よ、それにあなたからのプレゼントよ嬉しくないはずがないじゃない、結婚指輪は要らないって言ったのは私よ、落ち込む必要はないわ」
「そうか、わかった」
由香里は大事そうに腕時計を置いた。
「わかってくれたのならいいわ」
由香里はコーヒーを一口飲むと。
「今夜はハニーズの記念日のセットを再現しようと思うの、近所にいいお肉屋さんがあるから見に行きましょ」
肉屋と言えば商店街の小さな肉屋しか思いつかなかった。
「ああ、行ってみよう」
歩いて数分のところに肉専門店と書かれた大きな肉屋があった。
「でかいな」
「私のお気に入りのお肉屋さんよ」
中へ入ると小太りの男がいる。
「いらっしゃい、おや姫野さんじゃないか」
「昨日から姫野じゃなく荒木よ」
「おめでたいね、あんたが旦那さんかい?」
「そうだ、ところで俺はこんな大きな肉屋は初めてだかなり揃えてあるのかい?」
「牛、豚、鳥の肉ならここで手に入らない肉はないはずだ、それに超新鮮な肉ばかりだ、結婚記念に安くしとくよ」
ガラスケースに並べられた肉を端から見ていく牛肉だけでもピンからキリまで揃っている様だ、ブランド品も並んでいる。
「お前肉はいつもここで買ってるのか?」
「そうよ、スーパーのお肉は薄いもの」
高級肉のところで品定めに入った。
霜降り国産和牛だ
「これかこっちかどっちが美味いんだ?」
「いい肉に目を付けたね、こいつは神戸牛と宮崎県産の肉だ近所のレストラン御用達の肉だ、数が少ないから早い者勝ちだよ」
「ハニーズを知ってるかい? あそこの肉の味が忘れられなくてね」
「ハニーズさんに卸してる肉はこっちだ」
「じゃあそれを二人前、分厚く切ってくれ」
「それといつもの豚肉も四枚戴くわ」
「ありがとう、用意するから待ってくれ」
「ここは店の奥でさばいてるらしいわよ」
「それでこんなに広いのか」
「お待たせ、サービスしといたよ」
「俺が払うよ、カードでもいいのかい」
「構わないよ、気に入ったらまた来てくれ」
店を出た、肉がずっしりとしていて重い。
「ハニーズと同じお肉が買えたわね」
「これは楽しみだ」
家に帰ると由香里は張り切っている。
「早速再現してみるわ」
とキッチンへ入っていった。
俺は腕時計を外し、冷蔵庫の豆乳をコップに注ぐ。ガーリックライスの美味しそうな匂いがしている。リビングに戻って待っていると、ステーキを焼く音が聞こえてくる。そろそろだなと思いテーブルに付いた。
食べ物が運ばれて来る、レストランの様に特製タレもついてきた。
「出来たわ、ステーキから食べて頂戴」
特製タレを両方に混ぜ、食べ始めた。
「これは美味い、レストランより美味いんじゃないか? 肉が口の中で溶けていく」
「本当に美味しいわね食べ切れるかしら?」
ガーリックライスも食べる、こちらも店と同じ味がしている。
味わってゆっくり食べた筈だが、すぐに食べ終えた。
「どうだった?」
「レストランで食べるより美味かったよ、大満足だ腹が満たされたよ」
「よかったわ、レストランで食べるより安上がりだしまた買っておくわ」
「頼むよ、ごちそうさま」
急に眠気が襲ってきたので、ソファーに横になった。
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長屋シリーズ一作目。
第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。
十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。
頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。
一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
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結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
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※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
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