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bad end1.間違えた愛し他人
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しおりを挟む「フレちゃん!見てみて今回私が一番成績良かった!!」
「リセちゃん、外ではフレックス″隊長″って呼べって俺いつも言ってるよな?」
「これもフレちゃんの教え方が上手いおかげだよ~~!は~~!!フレちゃんだい好き!」
「おいリセ、話を聞きなさい、おいこら待て!!」
リセを引き取ってから6年。
18歳になった彼女は魔獣狩りの結果を掲げながら″褒めて褒めて″とばかりに自分に成績表を見せてきた。
褒められ待ちの犬みたいな顔してぎゃあぎゃあと笑い自分の手から離れ同期達の方は駆けていく。
(親代わりっていっても、俺も男なんだけど…)
6歳しか違わない歳の差なのに、安心しきった顔で″大好き″と平気で言う彼女にフレックスは伸ばそうとした手を下ろすしかなかった。
———始めは、かわいそうな子だと思ったんだ。
幼い時に親をなくして、屋敷の当主に厩舎番として拾われたと聞いた。
歳をきけば12歳と当主は言ったが、とてもそうは見えないほど慢性的な栄養失調で背が低かった。
学校にも通わず、親代わりの当主にも魔獣の囮程度に扱われた少女をここに居させてはいけないと思った。
だから、俺が保護者になっていずれは討伐魔術師の寮に入れてやろうと思っていたのに、
『親代わり、っていうには歳が近いか。…ま、俺のことは家族と思って何でも頼ってくれていいからね』
『…かぞく………』
あまりにもまっすぐした目で俺を慕う少女に、情が移ってしまった。
『好きなもん食べていいんだよ、腹一杯になったらあとは俺が食べてあげるからね』
『服も買いに行こっか。リセちゃんはどんな服が好き?』
『もっと甘えていいんだよ。俺はお前のこと妹みたいに思ってるから』
『フレックス″さん″じゃなくて、フレックスって呼びな?』
リセを引き取って衣食住を共にして一週間目、
栄養失調でほとんど脂肪がなかった少女は年相応に飯が食べられる程食欲が戻った。
死にかけた時のことを悪夢で見るのか、時々魘される少女を抱きしめて背中を叩いてあやしてやる。
昔自分が母親にそうしてもらったように、両親の愛を知らない少女の唯一の家族になるつもりでフレックスはリセを支えた。
『魔力の使い方も、覚えないとな。』
リセの家族になって一月がたった頃。魔術師候補生として彼女を正式に討伐魔術隊に加盟させた。
リセの魔力は人並み程度だったが、熱意は人一倍で『早く一人前になりたい』と勉強熱心に教えることを吸収した。
そのおかげで数年後には魔力が少なくても人並み以上の成果を残せるようになり、その頃には家族として自分を受け入れた彼女が、当たり前に家で帰りを待っていることが俺の支えに変わっていた。
毎日当たり前のように魔術師が死んでいく。
その中には俺の教え子もいて、身の守り方だって分かっていたはずなのに。
貴族の囮にされて、誰かの盾にされて、魔獣の餌にされて、
理不尽に命は奪われる。
とっくに慣れて、疲れてしまった。
そんな世界だから、特別な人間なんて欲しくなかったのに、
『おかえりなさい』と当たり前に笑うリセは、俺の心の欠けた部分を埋めてしまった気がした。
魔術師なんてクソみたいな仕事、させなければよかった。
彼女の成果は認められ、成人を機に俺が率いる『特務部隊』に配属された。
そこには俺が担当する後継者候補たちが何人もいて、
リセと歳が同じ同期達が彼女と同じ時間を過ごす。
その中で才能がないと笑われながらも努力する彼女は、ただ眩しかった。
——————
「アイアム、ナンバーワン!!!」
「たまたま運が良かっただけだろ。俺らの誰より魔力すくねぇくせに調子に乗んな」
「はー?負け犬の遠吠えにしか聞こえませんけどーー!?文句なら私より好成果納めてから言ってくれますーー?」
「ぐっ……、こいつ……」
(はー、イケメンの歪み顔さいこー!!)
私に食ってかかってきたこの嫌味な同期は″ロイド″。
魔術物語の主要攻略キャラなだけあって派手な赤髪に見劣りしない掘りの深い顔立ちをした俺様系イケメンキャラ。
何かあるたび突っかかってくる生意気野郎くらいだけど攻略キャラなだけあって魔力量も同期の中で一番多い。
「やめなよロイド、…リセ今回も第一位おめでとう。すごいねリセは」
「セーニャぁ…!」
清楚な笑顔を浮かべる女性に話しかけられたリセは、あからさまに態度を変え表情を緩めた。
″セーニャ″、この世界のヒロインだ。
痛みのない茶髪が風に揺らめいでゲームと同じ可愛らしい顔がこちらを見ている。
(は~、今日もイメージそのまんまの可愛さ!フレックスが惚れるのも分かるよ、私が男なら間違いなく惚れてるもん)
「…でも、今日みたいな無理は、あまりしてほしくないかな」
「ん?」
「リセはたまにものすごく無茶をするから、命を軽く扱うみたいな戦い方は、わたしはやめてほしいよ。」
「ぅ……」
「おー言ってやれセーニャ!こいつ毎回運良く生き残ってるだけで早死にしそうなんだよ!」
セーニャが言う″無理″は、私が今日ロイドに集まる魔獣を惹きつけて、一人で分断し単独戦をしたことだろう。
私だって、無茶したくてしてるわけじゃない。
経験値不足なのか好感度不足なのかは分からないが、そうしないと今日ロイドは魔獣に食い殺されて戦線離脱をしていた。
でもそんなこと私が言ったってきっと誰も信じないだろう。
ロイドは同期の誰よりも魔力量があるし、魔術センスもフレックスから褒められる程だ。
でも、魔力がある人間は魔獣からは″極上の餌″に映る。
物語の進行上ロイドが死ぬような場面ではないのに、彼は今日一度私の目の前で多数の魔獣に襲われて死んだ。
だから私は″死に戻り″をして彼が死なない運命に書き換えた。
書き換えの途中で私も一度魔獣に食い殺されて死んだけど、どうせ私は死んでも死に戻りで過去に戻れるし、魔獣を殺してロイドも救える運命になるまで何度でもリセットすればいいだけのこと。
「…うん、心配かけてごめんね」
「ううん、分かってくれたならいいの。」
みんなは知らないよね。
私がこれまで何度死んだかなんて。
みんなが私の前で、何度死んだかなんて。
『みんな居るんだから、危険な真似はもうしないでね』と、悲しそうな顔をしてそう微笑むセーニャに、リセは『うん、ごめんね』と短く答えた。
私ね、同期のみんなが好きだよ。
好きなゲームのキャラだからとかじゃなく、みんなとこうして笑って話す時間が楽しいから。
だから友達が死ぬ運命なんて、生きたくないんだ。
(私は危険な目にあっても大丈夫なんて、言ったらまた心配かけるだけだよね)
『なんだよセーニャの言うことには素直に聞きやがって』とロイドが言う。その横槍を無視してリセは彼女に向き直った。
「そんなことよりさ、セーニャって誰か好きな人いないの?」
「…ぇ、……ええ!? な、なに急に!」
「え、何その反応…‼︎いるじゃん!その反応絶対いるじゃん!!え、顔あか!かわい!だれだれだれだれ!?ちょっと私にだけ教えて…」
「何言って…‼︎いない!好きな人なんていないから!!」
「いやいや絶対いるじゃん‼︎あ、ロイド達がいたら話せないよね、あっちに移動して…」
「リセのバカ!もう知らないから!!」
ヒロインのセーニャ。攻略候補の特務隊の魔術師たち。
セーニャが誰のルートに進むのかは分からないけど、
願わくばどのルートに進んでもこの同期の誰も欠けてほしくないと思ってしまう。
ここにいる人たちはみんな、セーニャに心を救われて幸せにならないといけないんだから。
だから、降りかかる火の粉の処理くらいは任せてよ。
「あんまり無茶ばっかしてっと、フレックス隊長に報告すんぞ」
「……なんで隊長が出てくんの」
「そりゃ、お前の無茶止めれんのはあの人だけだろ」
「…なにを勘違いしてるかしんないけど、別に私無茶してないし」
「何度も死にかけといてどの口が言ってんだよ。……あ、」
「…同期同士で話してるとこ悪いね。うちのリセがなんかやらかした?」
「待てまてまてお願い待ってロイドさん、あれ、そういや前に流行りのカフェのふらぺちーの?飲みたいとか言ってましたっけ?私たまにはカフェのコーフィも飲んでみたいな~~とか思ったりして、飲みに行きません???」
「コーフィじゃなくて、コーヒーな。」
「あれ、まさか保護者の前でデートの約束しよるん?やるやんロイド」
「ちょいセグエス今は茶化さないで頼むから。ね、ね?ロイドさん。何のみたい?セーニャも一緒にケーキとかどう?」
「私もフレックス隊長には知っておいてもらった方がいいと思うな」
「あー、いやー、さっきは調子にのってすみませんでしたセーニャ様。ケーキいくつでもご馳走するからちょっと話し合いできませんか???」
「…リセ、何のはなし?」
「…………………………なんでもないです。フレックス隊長」
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