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僕を好きだと言ったのは君だろ。(レイヴン殿下×アイシャ公爵令嬢)
しおりを挟む自分と変わらない背丈に感じていた背がいつのまにかずっと大きくなっていたことに、背中から覆い被され逃げる手を大きな掌に纏めて捕まえられて気付く。
もういやだ、性行為がこんなに重くて苦しいなんて知らなかった。泣き喚いて静止しても優しいはずの彼は止まらなくてこわい目をして私を見下ろしてる。
ごぽりと、出されたものが膣から溢れそうになった瞬間彼の長い指が大陰唇を開いてぐぷり♡と痙攣が止まらないどろどろの膣に侵入した。
「こら、溢したら駄目だろアイシャ。ちゃんと、子を成せるように奥に擦り付けてあげるね」
「ぃ″あッ⁉︎♡♡ぁ、ん~~ッ″‼︎‼︎♡♡」
筆の似合う傷のない真っ白な手が思っていたよりも節ばって男性の手をしていたことを嫌でも意識してしまう。
散々嬲られた腹側の良いところをゴリゴリと容赦なく削られて目の奥がバチバチとスパークしているのに、その瞬間に弱い子宮口を指の腹で撫でられて、景色がひっくり返るような衝撃が背に走った。
むり、むり、もう、もうむりなのに、しぬ、しんじゃう、
大体、なんで、わたしはもう、あなたの婚約者じゃないのに
なんで、子を成すなんて、
「———考え事?」
「…ぇ」
ピタリと彼の指が止まって低いテノール声が背に落ちる。
怒気を感じる声色に反射的に身体が硬直して、なにか彼に不機嫌になる行いをしてしまったと察するがどうすれば機嫌を取れるのかなんてアイシャには分からなかった。
「駄目だろう?アイシャ。僕と居るのに上の空なんて、そんなに退屈だった?——なら、嫌でも集中できるようにしてあげないとね」
彼の声は穏やかだった。優しい彼の笑顔が頭に想起する、にこりと顔が見えないのに彼が微笑んでいるような気になる甘い声。でも、アイシャはもう知っている。彼は私を許したわけでも怒りを鎮めたわけでもなくて、これは死刑宣告だと。
先ほどまで純潔だったことを示す赤い血は潮と白濁で滲みシーツに薄ピンクの染みが拡がっていた。汗でぐちゃぐちゃになった婚約者を見下ろし、レイヴンはふと口元が綻ぶ。
(僕を愛していると君は言っていたけれど、それってどんな種類だったのかな)
婚約者のアイシャは貴族でありながらとても真っ直ぐな性格だ。王家に並ぶ公爵家の血筋で家柄も良く品行も良い。
貴族たる者領民のために勤めなさいと教えられた言葉のまま行動するし、僕の婚約者として将来の王妃候補になってからは国の顔になる者として努めてくれていた。
貴族の裏社会を知りながらも裏表なく真っ直ぐ微笑む太陽のような笑顔が、僕は好ましいと感じていた。
アイシャは会う度に僕に”愛している”と言ってくれた。
『おはようございます殿下』と挨拶するような軽い口調で、世間話の延長線で愛を語る。
ずっとずっと昔からそうだった。僕らが婚約を結んですぐの時は彼女も奥ゆかしかったけど、”想っていることは言葉にしないと伝わりませんから”と言って恥ずかしそうに愛を捧げてくれたのを覚えている。
——僕を愛しているという君の言葉が、僕にはどうにも軽く聞こえたんだ。
———『僕を好きだと言ったのは君だろ。』———
王城の応接間は、冬の午後の光を柔らかく受けていた。磨き上げられた床に反射する白がどこか現実味を奪う。
その中央に置かれた長椅子にアイシャは背筋を伸ばして座っていた。向かいには父と母、そして王家の使者。
重苦しい空気は言葉が発せられる前から私の胸を圧迫していた。
「――本日は、急な話で申し訳ありません」
そう前置きして、使者は口を開いた。
「今代の“聖女”が、先日正式に顕現されました」
その一言に、胸が小さく跳ねた。
聖女。それは国の象徴であり、王家と並び立つ存在。聖女が現れたということは、国の行く末に大きな転換が訪れるという意味でもあった。
「陛下並びに評議会の総意として……第一王子殿下の婚約者は、その聖女に変更される運びとなりました」
一瞬、音が消えたように感じた。
自分の呼吸の音だけが、やけに大きく耳に残る。
「……」
言葉が、すぐには見つからなかった。
視線を落とすと、膝の上で重ねた手が僅かに震えているのがわかる。
頭では理解できていた。聖女が現れれば、そうなるだろうと。王家の婚姻は常に国益が最優先だ。そこに個人の感情が入り込む余地なんてない。
それでも、いざ現実として突きつけられると、胸の奥がじくりと痛んだ。
「……したがって、アイシャ嬢と殿下の婚約は、破棄の方向で進めたいとのご意向です」
「この件はあくまで内密にお願い致します。正式な発表は、諸々の調整が済んでからとなりますから」
淡々と告げられる言葉のひとつひとつが、胸の内に積もっていく。
――国のため。
――民のため。
――王家の未来のため。
「……かしこまり、ました」
自分の声が、思いのほか落ち着いて聞こえたことに、内心で驚いた。ああ、こんなに身が切れそうな想いでも私は取り繕うことは出来るのね。
「聖女様とのご婚約が、国の益となるのであれば……それが、最善なのでしょう」
私の言葉に、父は安堵したように目を伏せ、使者は小さく頷いた。
「理解あるご判断、感謝いたします」
緊張の空気が和らぐと同時に、胸の奥に冷たいものが落ちていくのを感じた。
理解なんてしたくなかったわ。
理解しているからこそ飲み込んだ。
愛しているからこそ言葉を殺した。
それが正しい行いだと、知っているから。
――視線を上げると、部屋の隅に立つ彼と目が合った。
(レイヴン殿下…)
アイシャは反射的に微笑みかけそうになって、やめた。
今ここでそれをすれば、彼を困らせる気がしたから。
ずっと、私の一方的な恋幕だった。
彼にとっては政略結婚に過ぎない関係で、より良い婚約相手が現れたのなら挿げ替えることに彼が意を唱えるはずがない。
だって、この話し合いの最初から彼はそこにいた。
一言も発さず、ただ静かに、全てを見ていた。
(殿下は……どんなお気持ちで、これを聞いていらっしゃるのだろう)
彼の表情は穏やかで、いつもと変わらない。
けれど、視線が一瞬だけこちらに留まった時、胸がざわついた。
(何も、仰ってはくれないのね)
何も、言われない。
ただそれだけのことがなぜかひどく胸に刺さった。
「……失礼いたします」
話が終わり、立ち上がる時足元が少しだけふらついた。
それでも気づかれぬよう背筋を伸ばし、礼をして部屋を後にする。
扉が閉まる直前、ふとカチリと目が合った。
変わらず静かな表情のレイヴン殿下に、願ってしまった。
何か言ってほしい、と思った。
せめて一言でも。
けれど、
もう、静寂を耐えられない。
別れの場になるのなら、せめて私は貴方の前では一番綺麗な女でありたい。
扉が閉まる直前アイシャは花が開いたように柔らかく微笑み、息が詰まるような笑顔のまま扉が閉じた。
大好きでした。
レイヴン殿下。
きっとこの先別の殿方の元へ嫁いでも、私は貴方を忘れることはできないのでしょう。
貴方の側に居るときの柔らかい空気は、息が詰まる貴族社会でほっと胸を撫で下ろすような優しい時間だった。
貴方が道を示してくれるときの安心感は、期待に応えようと頑張る時の心の支えでもありましたの。
貴方に愛を告白するたび、困ったように少し照れる貴方の表情を見れるのは私だけだと思って、少し胸に悪い喜びを抱いておりましたわ。
愛してました。レイヴン殿下。
さようなら。
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