おとぎ話の結末

咲房

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運命のつがい

発情期の翌日

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 一週間が経ち、頭にかすみが掛かったような状態から意識がはっきりしてきた時には、高村さんはもういなかった。
 部屋の中は、吐瀉物としゃぶつで汚れたタオルやクシャクシャに丸められたシーツ、いつ食べたのか知らない食べ物の容器なんかで散らかっている。僕のまわりには体を軽く拭いてくれたのか、使い終わったティッシュがあちこちに散らばっていたが、雑だったのだろう、体のいたる所がガピガピしている。お尻の穴あたりから内股にかけてが特に酷く、一面がゴワゴワしていた。
 ヒート中はむせるようなフェロモンの甘ったるい匂いで溺れそうだと思っていたのに、通常に戻った今の鼻には食べ物の残りカスのすえた臭いしかしない。

(こんなものなのかな……)

 運命のつがいと出会えば無条件で愛し合い、幸せになれると思っていた。

(いいや、運命なんだ、良かったんだよ。普通だったらこんな貧相な男、誰も相手にしないだろ?αの人達はΩを選び放題なんだ、綺麗な人に行くに決まってる。僕なんかに相手が見つかったのは幸運なことだ)

 いくら発情期ヒートとはいえ初めてだったのだ。お尻の穴を指で広げる事もされずにいきなり突っ込まれたら、筋肉は驚いて硬くなってなかなか入らない筈だ。でも僕の入り口は濡れそぼって柔らかくなり、高村さんを受け入れた。高村さんは切れたと勘違いしたけど、実際は体液が血で濡れたかと錯覚するほどいっぺんに溢れ出ただけで、切れていない。僕の体は初めての異物だというのにすぐになじみ、感じまくって善がり狂った。ここまで体の相性が良いなんて、普通ならあり得ない。

(吐いたのに怒鳴られたり殴られたりはしてない。手首を縛られはしたけど体も拭いてくれたみたいだし、悪い人じゃないんだよ。なにより、〈運命のつがい〉を望んでいたのは自分じゃないか)

 好きでもなく、よく知りもしない人に狂態を晒してしまった自分自身に、そう言い聞かせて納得させた。



 急に始まった発情期ヒートのせいで、受講しているゼミのレポートが提出日を過ぎてしまっていた。
 大学には連絡していたし、レポート自体は書き上げていたから今日中に持って行けば受け付けてくれるそうだ。体はだるかったけど仕方がない。出掛ける支度をしようと洗面所に立った僕は、鏡を見てギョッとした。

「うわっ、何これ、目がぱんぱん。腕もやばい。どうしよう、どうしたらいいの」

 どうやら泣きすぎて目が腫れてしまったらしい。そして手首には縛られた痣がくっきりと赤黒く残っていた。
 ちょっとでも隠れるようにと眼鏡と帽子を着用して、袖が長いTシャツを着て家を出た。
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