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運命のつがい
憧れの先輩
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大学の研究棟にいらっしゃった教授に無事にレポートを提出し、さて帰ろうと入り口のドアを開けたら、藤代先輩とばったり会った。
「あれっ、日野くん。久しぶりだね。元気だったかい?」
「藤代先輩。お久しぶりです」
先輩と会うのは、僕が高村さんと初めて会った日以来だ。接点の少ない人だから、遠くに見かけることはあっても挨拶できる程の距離では会っていなかった。
食堂でのやりとりを見られたのが恥ずかしくて顔を合わせにくかったけど、軽く声を掛けてくれたところをみると、先輩の方は気にしてないみたいだ。ホッとした。
「レポートの提出?間に合ったみたいで良かったね」
「はい、何とか出来ました」
先輩のニコニコ顔につられて笑顔になる。
「今日は眼鏡なんだ。掛けてるところ初めて見たよ」
ふいに顔を覗き込まれた。いきなりだったので咄嗟に顔を隠すことができなかった。僕の顔を近くで見た先輩は、目の腫れに気付いたらしくハッとなり、痛ましそうな表情になった。
僕は、居た堪れなくなって下を向いた。
「……僕は教授のお使い。これ渡したら戻るんだ。日野くん、もう帰るなら途中まで一緒に行こうよ」
「はい」
触れて欲しくない事が分かったんだろう。先輩は気付かない振りをしてくれて、並んで歩く道すがらは、必修科目の事やコンビニの新商品など、たわいもない話をした。
「日野くんは相変わらず痩せてるよね。はい、これ」
しばらくすると先輩はポケットに入ってた飴玉をくれた。右の掌で受け取ると、左ポケットからクッキーが2枚出てきた。左手も添えて両手で受け取ると、今度は胸ポケットからキャラメルが出てきた。
「ふふ、ははっ、あはははっ」
次々と出てくるお菓子に目を丸くして、こらえきれずに笑ってしまった。
先輩はイタズラが成功した顔でニッコリ笑い、僕の両手を上下に挟むように包み、キャラメルをくれた。そして手を離すとき、そっと手首を撫でていった。手首の痣もバレていたのか。
先輩の優しさが沁みて、泣きそうだった。
僕が初めて藤代先輩と出会ったのは、ゼミの合同飲み会だった。
先輩は僕の一つ上の学年の大学生。専攻も学科も違うけれど、お互いのゼミの教授が仲が良くて飲み会で一緒になったのだ。
藤代先輩はαだけど、その中でも特に数の少ない稀少種という性種で、全ての能力が格別に優れている最上位の存在だ。だから超有名人で、いつも周りに沢山の人が集まっている遠い存在だった。
しかし、宴もたけなわになると酔潰れる人も出始めて席はあってもないような様相になり、気付けばすぐ近くに来られていた。
「日野くんだっけ。君、殆ど食べてないでしょ。みんなの世話はもういいから早く食べちゃいな」
「え、あっ、藤代さん! は、はい」
急に声を掛けてきた殿上人に目を白黒させて、鍋の麺を慌ててかき込むと、変なところに入ってブフォっと噎せてしまった。
「ゴホッゴホッ」
「あぁもう焦るから。落ち着いて」
笑いながら背中をトントンしてくれる優しい手に、アレ、この人思ったよりも親しみやすいぞ、と感じた。
オーラは凄いのに気さくで気配りが出来て優しい。あ、オーラって分かる?その人が発している気や雰囲気で、目に見えなくても肌で感じるやつだよ。存在感の大きな人ほどはっきりしてるけど、藤代さんのオーラは威圧するものじゃなくて、大きく包み込むような、暖かいものだった。
「すみません……」
恐縮してそう言うと、クスっと笑われた。
「そんなに硬くならないでよ。日野くんは酒井ゼミの子だよね。僕もあの教授にはお世話になってるんだ。半分酒井ゼミの生徒みたいなものだから、君は僕の後輩だな」
こ、後輩!?
「あ、そうだ。ねえ、先輩って呼んでよ」
「そんな、恐れ多い!」
無理ですと手を横に振っても笑いながら重ねて「呼んで」とゴリ押しをされる。ニコニコしてるのに無言の圧力。うっ、押し負けた。
「せ、先輩……」
「お、いいねぇ。なんだい、後輩くん」
いっきに親しくなったみたいに感じて頬にカーッと熱が集まった。あまり飲んでないけどお酒のせいにしておこう。
「ところできみは痩せてるね。もっと食べなよ。はい、これもこれも食べて」
そういって僕の皿に料理を取り分けてくれた。
この日以降、教授の所で会った時なんかによくお菓子をくれるようになるのだけれど、そんな日がくるなんてあの時の僕は想像もしていなかった。
その飲み会以降、喋る機会はほとんどないものの、構内に先輩がいると人が集まってて目立つからすぐに分かるようになった。そしていつしか見掛ければ気になって目が勝手に追うようになってた。
恐るべしαパワー。そうやって周りの人達を虜にしてるんだな。藤代先輩の周りにいつも人が多い理由がなんとなく分かった。
先輩は、優しくてかっこいい。
「あれっ、日野くん。久しぶりだね。元気だったかい?」
「藤代先輩。お久しぶりです」
先輩と会うのは、僕が高村さんと初めて会った日以来だ。接点の少ない人だから、遠くに見かけることはあっても挨拶できる程の距離では会っていなかった。
食堂でのやりとりを見られたのが恥ずかしくて顔を合わせにくかったけど、軽く声を掛けてくれたところをみると、先輩の方は気にしてないみたいだ。ホッとした。
「レポートの提出?間に合ったみたいで良かったね」
「はい、何とか出来ました」
先輩のニコニコ顔につられて笑顔になる。
「今日は眼鏡なんだ。掛けてるところ初めて見たよ」
ふいに顔を覗き込まれた。いきなりだったので咄嗟に顔を隠すことができなかった。僕の顔を近くで見た先輩は、目の腫れに気付いたらしくハッとなり、痛ましそうな表情になった。
僕は、居た堪れなくなって下を向いた。
「……僕は教授のお使い。これ渡したら戻るんだ。日野くん、もう帰るなら途中まで一緒に行こうよ」
「はい」
触れて欲しくない事が分かったんだろう。先輩は気付かない振りをしてくれて、並んで歩く道すがらは、必修科目の事やコンビニの新商品など、たわいもない話をした。
「日野くんは相変わらず痩せてるよね。はい、これ」
しばらくすると先輩はポケットに入ってた飴玉をくれた。右の掌で受け取ると、左ポケットからクッキーが2枚出てきた。左手も添えて両手で受け取ると、今度は胸ポケットからキャラメルが出てきた。
「ふふ、ははっ、あはははっ」
次々と出てくるお菓子に目を丸くして、こらえきれずに笑ってしまった。
先輩はイタズラが成功した顔でニッコリ笑い、僕の両手を上下に挟むように包み、キャラメルをくれた。そして手を離すとき、そっと手首を撫でていった。手首の痣もバレていたのか。
先輩の優しさが沁みて、泣きそうだった。
僕が初めて藤代先輩と出会ったのは、ゼミの合同飲み会だった。
先輩は僕の一つ上の学年の大学生。専攻も学科も違うけれど、お互いのゼミの教授が仲が良くて飲み会で一緒になったのだ。
藤代先輩はαだけど、その中でも特に数の少ない稀少種という性種で、全ての能力が格別に優れている最上位の存在だ。だから超有名人で、いつも周りに沢山の人が集まっている遠い存在だった。
しかし、宴もたけなわになると酔潰れる人も出始めて席はあってもないような様相になり、気付けばすぐ近くに来られていた。
「日野くんだっけ。君、殆ど食べてないでしょ。みんなの世話はもういいから早く食べちゃいな」
「え、あっ、藤代さん! は、はい」
急に声を掛けてきた殿上人に目を白黒させて、鍋の麺を慌ててかき込むと、変なところに入ってブフォっと噎せてしまった。
「ゴホッゴホッ」
「あぁもう焦るから。落ち着いて」
笑いながら背中をトントンしてくれる優しい手に、アレ、この人思ったよりも親しみやすいぞ、と感じた。
オーラは凄いのに気さくで気配りが出来て優しい。あ、オーラって分かる?その人が発している気や雰囲気で、目に見えなくても肌で感じるやつだよ。存在感の大きな人ほどはっきりしてるけど、藤代さんのオーラは威圧するものじゃなくて、大きく包み込むような、暖かいものだった。
「すみません……」
恐縮してそう言うと、クスっと笑われた。
「そんなに硬くならないでよ。日野くんは酒井ゼミの子だよね。僕もあの教授にはお世話になってるんだ。半分酒井ゼミの生徒みたいなものだから、君は僕の後輩だな」
こ、後輩!?
「あ、そうだ。ねえ、先輩って呼んでよ」
「そんな、恐れ多い!」
無理ですと手を横に振っても笑いながら重ねて「呼んで」とゴリ押しをされる。ニコニコしてるのに無言の圧力。うっ、押し負けた。
「せ、先輩……」
「お、いいねぇ。なんだい、後輩くん」
いっきに親しくなったみたいに感じて頬にカーッと熱が集まった。あまり飲んでないけどお酒のせいにしておこう。
「ところできみは痩せてるね。もっと食べなよ。はい、これもこれも食べて」
そういって僕の皿に料理を取り分けてくれた。
この日以降、教授の所で会った時なんかによくお菓子をくれるようになるのだけれど、そんな日がくるなんてあの時の僕は想像もしていなかった。
その飲み会以降、喋る機会はほとんどないものの、構内に先輩がいると人が集まってて目立つからすぐに分かるようになった。そしていつしか見掛ければ気になって目が勝手に追うようになってた。
恐るべしαパワー。そうやって周りの人達を虜にしてるんだな。藤代先輩の周りにいつも人が多い理由がなんとなく分かった。
先輩は、優しくてかっこいい。
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