おとぎ話の結末

咲房

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運命のつがい

運命の鎖

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 服を脱いだ先輩が仰向けに寝ている僕をギュッと抱きしめ、顔中にキスをしてくれてる。
 後ろから回った手は、ときどき頭をいい子いい子してくれて、ぴったりと重なった胸からは先輩の心臓の音がする。
 なんて素敵な夢なんだろう。
 嬉しくて、フワフワしてて、クスクス笑いが止まらない。

「ふふふ。せんぱい、くすぐったい」
「ふふ。くすぐったいの?晶馬くん、可愛い」
「ぼくかわいくないよ。ぶさいくだよ。できそこないなんだって」

 僕は、先輩の周りにいる綺麗な人達を思い出して悲しくなった。
 そうだった。先輩には、あの人達がいる。

「せんぱいもきれいなひとがいい?ぼくいや?」
「晶馬くんは不細工じゃないよ。凄く可愛い。ああ、どうしてこんなに可愛いんだろう。僕の晶馬くんが一番可愛い。晶馬、僕の晶馬、可愛い。大好き。愛してる」

 僕はビックリした。先輩が僕のこと好きって言った!

「せんぱいぼくのことすきなの?ほんと?ほんとにほんと?どのくらいすき?ちょびっとすき?いっぱいすき?」
「ふふふ。ビックリし過ぎてお目目が落ちそうだよ?好きだからつがいにしたいんだ。そうだね、晶馬くんが僕のこと好きなのよりいっぱい好き」
「ぼくのすきはすごくいっぱいだよ?それよりもいっぱいってすごくすごくいっぱいだよ」
「そんなにいっぱい僕のこと好きなの?ふふ、嬉しい。でも絶対晶馬くんの好きよりいっぱいだよ。僕は頑固なんだ、これだけは譲れないな」

 嬉しい。嬉しい。先輩大好き。世界がふわふわしてる。嬉しい。
 頭をなでてくれてた手がうなじから肩甲骨を辿って背中を下ると、背筋がぞわぞわした。先輩の唇があごを辿って胸のてっぺんをペロリとひと舐めすると、ゾワリ、と何か変な感じがした。

「?」

 何だろ……
 先輩の手が熱く張り詰めている僕の股間をそっと握った。

「きゃっ」

 パンッ

 驚いたけど嫌じゃなかった筈なんだ。なのに先輩の手を払いのけてしまった。

「??」
「……晶馬くん、この軟膏を使うね。痛みが治まる作用と筋肉が柔らかくなる作用の成分が入ってる。だから切れないとは思うけど、それでも体は拒絶反応が出てすごく痛いよ。ごめん」

 先輩は持ってきた薬のふたを開けて、中身を見せてくれた。それを人差し指と中指にたっぷりすくい、僕の分身と後ろの穴にたっぷりと塗り込めようとした。でもさっきまで欲しい欲しいと収縮を繰り返していた後ろはしっかりと閉じていて、まるで“あなたじゃない”と言わんばかりに緩まない。

「どうして?なんで?ぼくのからだへん。せんぱいぃ」

 欲しいのに。焦っておしりを指にぐいぐいと押し付けた。

「泣かないで。君が悪いんじゃないよ。できるだけそっとするからね」

 そう言って先輩は襞の周りに優しく薬を塗っていた中指をツプリと差し入れた。

「うわあぁぁあ」

 閉じた口に侵入してきた異物に、ザッと鳥肌が立った。物凄い違和感に血の気が引いた。

 「え?え?」

 ダメ。コレジャナイ。チガウ───アナタハチガウ!

 先輩はそのままぐりぐりと中をかき回し、抜き差しを繰り返して中指も揃えて入れた。
 違和感が凄い。
 僕は先輩の胸を手で押し、まって、違うと首を振ったけど聞いてもらえなかった。そのうちにも異物感は更に大きくなり、僕はパニックに陥った。

 チガウ。チガウ。ダメ。ソレハダメ!ダメ!アナタハダメ!

 かき回すだけかき回して、異物はゆっくりと出ていった。僕はほっとして力を抜いた。その直後、

「っぎ、いああぁぁぁあ!!!」

 違う異物に貫かれて背中を激痛が駆け上がった。腕を後ろ手にしてシーツを握り、上に逃げようと暴れたけど体をがっちりと抑えられて逃げられない。剛直はめりめりと力任せに侵入してくる。

 ナニ?ナニガオキテルノ?ココハドコナノ?
 コレハダレ?ナニヲシテルノ?

「いた、いたいぃぃ。だめ、ちがう、だめなの、たすけて、だれかぁ!」

 腕を突っ張り、シーツをかかとで蹴り、足をばたつかせて抵抗してるのに、ボクを抑え込むダレかはびくともしなかった。さらにずんずんと深く押し入ってくる。

 イタイ!コワイ。コレジャナイ。ダレ。ボクハナニヲサレテルノ。ボクハ……ボクハ……ダレカニ……

 オカサレテイル!

「いや、いや!だめ!いたい!だれか、だれかぁ!たすけて、たすけて!!」

 僕は泣きじゃくって大声で叫んで抵抗した。深く突き刺さった剛直を片足を折り曲げてまたぎ、体をひねって這いつくばって逃げの態勢を取った。すると、後ろから大きな体が覆いかぶさって僕を拘束した。僕の胸は早鐘を打って頭にぐわんぐわんと響いている。

「誰を呼んでいる?」

 すると、僕の耳元で静かで強い声が問うた。
 
「晶馬、誰に助けて欲しい?君が求めるのは誰だ」

 ダレ?誰?僕が助けて欲しいのは───

「……んぱい、せんぱい、せんぱい!たすけてせんぱい!せんぱい!!」
「晶馬、こっちを見なさい」

 あごを取られて背けていた顔を振り向かされた。

「あ……」
「君を抱いてるのは私だよ」

 
 そこには求めてやまなかった藤代ふじしろ先輩が、圧倒的なオーラをまとって僕を見ていた。どうやら僕はパニックになって、誰に何をされていたのか分からなくなっていたらしい。

「あ……せんぱい……せんぱい」

「もうお前は私のものだよ。誰にも渡さない。たとえそれが運命であろうと」

 先輩はそのままグッと腰を推し進め、僕の深いところでイってくれた。どくり、どくりと先輩の命の脈動が胎内に響く。それを夢のような不思議な気持ちで感じていると、うなじに血が出るほど深く噛みつかれた。

「ぎぃあぁぁぁぁ!」

 僕はそのまま気を失った。
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