おとぎ話の結末

咲房

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りぃ

お留守番

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「晶馬くん今凄い音がしたけど大丈夫?」

 うわっ!

 出掛ける準備をしていた先輩が音に気付いて顔を覗かせた。

「だ、大丈夫です」
「そう?」

 そう言ったのにそのままやってきて僕の顔を覗き込んだ。近い近い、いろいろ思い出して赤くなってたのバレちゃうよ。ちょっとだけ及び腰になって上体を逸らしたのに、更に近づいてきて前髪をそっと分けられ、おでこにキスされた。

 チュッ

「赤くなってるよ」

 それは頬ですか、おでこですか。
 クスッと笑われた。これはバレてるな……

「痛いの痛いの飛んでけー」

 更にペロリと舐められた。先輩が舐めると傷の直りが早いんだけど、たんこぶにも効くのかな?
 そんなことを考えていたら抱きしめられ、腕の中で頭を撫でられた。

「ああ、もう心配。一人にしたくない。行くの止めようかな」
「ダメですよ。教授とご一緒するんでしょ?行かないと怒られますよ」

 先輩は大学で難病の遺伝子解析チームに参加していたんだけど、やっと念願の特効薬が出来上がったらのだ。薬学の世界では世紀の発明らしく、京都で開かれる化学療法学会に薬を開発した教授と一緒に参加することになったんだって。
 先輩の専門は世界経済なんだ。なのに専門外のそんなことまでやってたなんてほんとに頭いいなあ。

「そうなんだよね……はあ、仕方ない、行ってくるよ。お土産を買ってすぐに帰ってくるからね、待っててね」
「お土産はいいんです。気を付けて行ってきてください。……待ってます」
「晶馬くん……可愛い!」
「わわっ、もういいですって!ほんとに遅刻しますよ!」

 僕だってもっと一緒にいたいけど待ち合わせに遅れちゃうよ、早く早く!
 しぶしぶの体で出掛けた先輩を見送って、さて、と机に向かった。


 先輩は明日まで帰ってこない。
 京都に一泊の予定と聞いて、じゃあ今週の週末は会えませんねと言ったら嫌だ会いたい、帰ってきた時に部屋で出迎えてって言われたんだ。週明けに提出する僕の課題の事もご存知で、「部屋には資料と特A評価だった当時の僕のノートもあるよ、僕んちに泊まって書きなよ」と言われて飛びついてしまった。苦手な科目だったんだ。
 ご迷惑じゃないかなってすぐ僕が尻込みしちゃうから、先回りをしてくれたんだ。
 僕だって少しでも一緒に居たいから、お出迎えできるの嬉しい。

 という訳で折角のご厚意だから先輩が帰られるまでに課題のレポートを書き上げとかなきゃ!
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