51 / 81
旅の終わり
〈 side.藤代 〉 鎖より重い
しおりを挟む
「ただいま!」
マンションに帰りついて部屋のドアを開けると雑然とした廊下が広がっていた。ドアというドアが全て開けられ、廊下に服や小物が散らばっている。まるで泥棒にでも入られたかのような散らかり方だ。晶馬くんらしくない。顔から一気に血の気が引いた。
「晶馬くん、帰ったよ!」
開け放たれた部屋に飛び込んだけど肝心の晶馬くんがいない。どの部屋を探しても散らかっているのに、何処にもいない。
侵入者が部屋を荒らす中を晶馬くんが逃げ回ったのか?体中の毛穴から嫌な汗が一気に出た。
「晶馬くん!どこにいるの!」
クローゼットと僕の部屋が特に酷かった。クローゼットはあらゆる引き出しが開いて服が引き出され、床に落とされたものが廊下にまで点々と続いている。僕の部屋に行くと、僕が普段使っている小物やベッドのシーツ、掛け布団までもが無くなっている。
「……」
物取りにしては様子がおかしい。マキがこうなるまで放置しているのも変だ。
「晶馬くん!返事して!晶馬くん!」
最後に残ったのは最奥の部屋だ。そこは二人で篭もれるように音も匂いもシャットアウト出来るシェルターのような場所になっている。この部屋にいなければ……
「……ぃー、りぃー!りぃぃー!りぃぃー!」
ドアノブを引くと隙間から晶馬くんの声が聞こえてきた。
「晶馬くん!?」
急いで開けると部屋は真っ暗で、稀少種の目で暗視するとベッドで泣きじゃくる晶馬くんが見えた。
「りぃー!」
晶馬くんが転がるように降りて走ってくる。晶馬くんは自分の服の上に僕のシャツを着て、さらに僕のコートまで羽織っていた。途中で長いすそを踏んで転びかけたので慌てて掬って受け止めた。
「どうしたの晶馬くん!大丈夫?」
「りぃ……りぃ!りぃ!ぅわーん。ぁーん。りぃぃ、うぁーん。りぃぃ」
酷く泣いている。
目は腫れて鼻水も出て、涙で濡れてる顔に髪の毛が張り付いている。どれだけ長い間激しく泣いていたんだろう。手の甲で拭ってるけど涙は次々に零れてきて泣き止む気配がない。
一体何があったんだ……
「ぅあーん、ぅあぁ。りぃ、りぃー。りぃー」
「……」
ふと晶馬くんが座っていたベッドに目を向けると、不思議なものが見えた。
僕の部屋にあった筈のシーツや掛け布団、バスタオルやコートにネクタイ。その他の色々な布が撚り合わされ、ベッドの上で丸い堤防が築かれていた。堤防にはギターも揃いの茶碗も練り込まれていて、そこは歪に飛び出している。
楕円にへこんだ内側にはお菓子を入れていたキャンディポット、アルバム、僕のノート、腕時計、水晶の子馬。
なんとも奇妙で微笑ましいそれは……もしかして、巣?
Ωは激しく感情が高ぶると周りを大切なものや安心出来るもので囲い、その中で心を落ち着かせる本能がある。
晶馬くん、巣作りしちゃったんだ……
「可哀想に。不安だったんだね」
「りぃ、りぃ、りぃい……」
りぃ?
僕は両手で晶馬くんのあごを挟み、涙がポロポロとこぼれる顔をじっと見た。
僕がりぃなの?晶馬くん?
「……僕を呼んでいるの?」
晶馬くんがうんうんと頷いた。
「りぃ」
暗い部屋の中、一人でずっと僕を呼んでたのか。
「りぃぃ」
「……まるで小鳥が鳴いてるみたいだ」
晶馬くんはそれ以外の言葉を失ったみたいに僕のことを呼び続けていた。
迷子になった幼子のように泣き、全力で僕を呼んでいたんだ。僕はこんなにも求められていたのか。愛しくてたまらない。
目と頬をたどり、口の端から顎へ。流れ続ける涙をそっと吸い、髪のあちこちにキス。それでも止まらない涙を親指のはらで拭う。
「この前、晶馬くんは僕を大きな鳥に例えたね。だったら君は小鳥だ。可愛らしい僕の小鳥、泣かないでおくれよ」
「りぃ、りぃ」
泣き止もうと、「ひっ、ひっ」としゃくりあげるのに、涙は止まらない。
「りぃ……りぃー」
ひと時も離れたくないとしがみついてくる晶馬くんを抱えてベッドに向かった。掛布団で出来た、巣の柔らかな部分をそっと押し、ベッドの縁に並んで座る。
「困ったな、どうしたら泣き止んでくれるの?」
泣いているのは何故だろう。
雷を怖がっていたようだけど、音が遮断されるこの部屋でも僕を呼び続けたのだから雷はきっかけにすぎない筈だ。もっと根本的な問題なのだ。僕がいなかった事が悲しかったなら、今は安心している筈。未だに不安で恐怖に押しつぶされそうなこの子は、一体何に怯えてる?
この子。
そう、この様子はあの時と同じ、幼い子供だ。発情期になったのに高村が現れず、死ぬ程もがき苦しんだあの時。あの時も晶馬くんは子供返りをした。
晶馬くんは極限まで追い詰められると幼子に戻ってしまうようだ。多分小さい時に心に傷を負い、許容範囲を超えるショックを受けると心が今でもその時に戻ってしまうのだろう。その傷とは一体……
そうか、分かった。おそらく晶馬くんは小さい頃に大切な人と死に別れているのだ。それも心の準備をする暇もなく、突然。その体験が僕がいなくなる事を恐れさせている。
人は大切なものを失った体験をすると、再びの喪失を恐れるようになる。この子が怖がっているのは僕が居なかった事じゃない、いつか居なくなる未来だ。それがいつなのかは誰にも分からない。離れていれば今がその瞬間かもしれない。だからずっと不安で安心できなかったんだ。
心に受けた傷は時と共に風化していくものだ。だけど小さい頃に受けたショックは大きく、いとも容易く晶馬くんを幼子に戻してしまう。情緒不安定と悪い要因が重なり、その時の恐怖が今再び襲いかかっているのだ。
命が永遠でない僕らにはいつか必ず終わりがくる。だったら星になるその日までは決して離れず、共に生きよう──
そう決意しても命の残り時間はバラバラで、事故でもない限り最後はどちらかが残される。晶馬くんは小さい時に残される辛さを知ってしまい、当時の晶馬くんが今また怯えて震えている。
「ううーっ、ひっ、ひっく、ひっく。りぃ、りぃ……」
晶馬くんは胸元に顔を埋めていやいやをした。
「晶馬くん……」
大人ですら死別は耐え難いのに、晶馬くんはこんなに小さな時に永遠に会えない辛さを体験してしまったんだね。
だったら約束をあげよう。幼い仕草をする僕の大切な番よ、君が心から安心できるように、ずっと一緒にいられる保証をあげよう。
僕は思いを込めて言った。
「ねえ、僕は君の魔法使いだよ。君の願いを何でも叶えてあげる。僕に願いを言ってごらん」
晶馬くんは更に僕の胸の中で顔を振った。
「信じられない?僕は晶馬くんが信じれば何でも出来るんだよ。だって君の魔法使いだもの。君は僕に願いを言うだけで何でも叶う。さあ、言ってみて」
晶馬くんが顔を上げた。涙で瞳が揺れている。
「りぃ……」
ひくっ、ひくっ。
「言って。さあ」
あの時と同じ台詞で促す。
お願いだ、もう一度この手を取って。
「……いなくならないで。置いてっちゃ……やだ。ひとりにしないで」
「いいよ、分かった。約束する。君を置いていかない、一人で死んだりしないよ。晶馬くんと離れてる時は事故には絶対に遭わない、天災にも巻き込まれない。簡単だよ、警戒のアンテナを少し広げればいいだけだ。行く先の天気を予測し、交通機関の情報を掴み、運転手の健康状態や乗り合わせの客の様子を見て周りの危険も予測する」
晶馬くんが目を見開いた。
「晶馬くんが信じることが出来ればこの魔法は成立する。どう?僕を信じられる?僕にそれが出来ると思うかい?」
実際にそれらを行うのは容易いのだ。大切なのは晶馬くんが僕を信じられるかどうか。
晶馬くんが躊躇うように目線を逸らし、再び僕を見たあと下を向いて首を振った。
「お願い、晶馬くん。僕をずっと君の魔法使いでいさせて。君がうんと言わなければ僕は魔法使いになれないよ。君を幸せにしたいんだ」
僕を異能を操る化け物じゃなく、願いを叶える魔法使いにして。
「それが僕の唯一の願いなんだ」
僕はこの願いの中にさりげなく僕の望みを練り込んでいる。
この魔法の効果は君を安心させる事だ。僕がどんなに予測して事故を避けても、君が信じて安らぎを得られなければ成立しない。だからこの先晶馬くんが安心して暮らしていくなら、それは僕を信じている証明になる。君が信じ続ける限り、僕は君の魔法使いであり続けられるんだ。化け物じゃなく、魔法使いだ。だからこれはきみの願いじゃなく、僕の願い。
僕はずっと君の魔法使いでいたい。
それに分かってるかな、晶馬くん。
この魔法が本物だったかどうかは、僕たちが寿命を全うするまで分からない。だからずっと離れずに見ていなきゃならないんだよ。僕は、君の一生を僕に縛り付けたい。
晶馬くんは、あごからぼたぼたと落ち続ける涙の雫をそのままに、瞬きもせずに僕を見つめている。
お願い、晶馬くん。
僕を、君の魔法使いでいさせて。
コクンと晶馬くんが小さく頷いた。
ああ!これで僕はずっと晶馬くんの魔法使いだ。
この魔法は運命の鎖よりずっと重い。
「……愛してる」
僕は晶馬くんの唇に触れ、契約成立のキスをした。
マンションに帰りついて部屋のドアを開けると雑然とした廊下が広がっていた。ドアというドアが全て開けられ、廊下に服や小物が散らばっている。まるで泥棒にでも入られたかのような散らかり方だ。晶馬くんらしくない。顔から一気に血の気が引いた。
「晶馬くん、帰ったよ!」
開け放たれた部屋に飛び込んだけど肝心の晶馬くんがいない。どの部屋を探しても散らかっているのに、何処にもいない。
侵入者が部屋を荒らす中を晶馬くんが逃げ回ったのか?体中の毛穴から嫌な汗が一気に出た。
「晶馬くん!どこにいるの!」
クローゼットと僕の部屋が特に酷かった。クローゼットはあらゆる引き出しが開いて服が引き出され、床に落とされたものが廊下にまで点々と続いている。僕の部屋に行くと、僕が普段使っている小物やベッドのシーツ、掛け布団までもが無くなっている。
「……」
物取りにしては様子がおかしい。マキがこうなるまで放置しているのも変だ。
「晶馬くん!返事して!晶馬くん!」
最後に残ったのは最奥の部屋だ。そこは二人で篭もれるように音も匂いもシャットアウト出来るシェルターのような場所になっている。この部屋にいなければ……
「……ぃー、りぃー!りぃぃー!りぃぃー!」
ドアノブを引くと隙間から晶馬くんの声が聞こえてきた。
「晶馬くん!?」
急いで開けると部屋は真っ暗で、稀少種の目で暗視するとベッドで泣きじゃくる晶馬くんが見えた。
「りぃー!」
晶馬くんが転がるように降りて走ってくる。晶馬くんは自分の服の上に僕のシャツを着て、さらに僕のコートまで羽織っていた。途中で長いすそを踏んで転びかけたので慌てて掬って受け止めた。
「どうしたの晶馬くん!大丈夫?」
「りぃ……りぃ!りぃ!ぅわーん。ぁーん。りぃぃ、うぁーん。りぃぃ」
酷く泣いている。
目は腫れて鼻水も出て、涙で濡れてる顔に髪の毛が張り付いている。どれだけ長い間激しく泣いていたんだろう。手の甲で拭ってるけど涙は次々に零れてきて泣き止む気配がない。
一体何があったんだ……
「ぅあーん、ぅあぁ。りぃ、りぃー。りぃー」
「……」
ふと晶馬くんが座っていたベッドに目を向けると、不思議なものが見えた。
僕の部屋にあった筈のシーツや掛け布団、バスタオルやコートにネクタイ。その他の色々な布が撚り合わされ、ベッドの上で丸い堤防が築かれていた。堤防にはギターも揃いの茶碗も練り込まれていて、そこは歪に飛び出している。
楕円にへこんだ内側にはお菓子を入れていたキャンディポット、アルバム、僕のノート、腕時計、水晶の子馬。
なんとも奇妙で微笑ましいそれは……もしかして、巣?
Ωは激しく感情が高ぶると周りを大切なものや安心出来るもので囲い、その中で心を落ち着かせる本能がある。
晶馬くん、巣作りしちゃったんだ……
「可哀想に。不安だったんだね」
「りぃ、りぃ、りぃい……」
りぃ?
僕は両手で晶馬くんのあごを挟み、涙がポロポロとこぼれる顔をじっと見た。
僕がりぃなの?晶馬くん?
「……僕を呼んでいるの?」
晶馬くんがうんうんと頷いた。
「りぃ」
暗い部屋の中、一人でずっと僕を呼んでたのか。
「りぃぃ」
「……まるで小鳥が鳴いてるみたいだ」
晶馬くんはそれ以外の言葉を失ったみたいに僕のことを呼び続けていた。
迷子になった幼子のように泣き、全力で僕を呼んでいたんだ。僕はこんなにも求められていたのか。愛しくてたまらない。
目と頬をたどり、口の端から顎へ。流れ続ける涙をそっと吸い、髪のあちこちにキス。それでも止まらない涙を親指のはらで拭う。
「この前、晶馬くんは僕を大きな鳥に例えたね。だったら君は小鳥だ。可愛らしい僕の小鳥、泣かないでおくれよ」
「りぃ、りぃ」
泣き止もうと、「ひっ、ひっ」としゃくりあげるのに、涙は止まらない。
「りぃ……りぃー」
ひと時も離れたくないとしがみついてくる晶馬くんを抱えてベッドに向かった。掛布団で出来た、巣の柔らかな部分をそっと押し、ベッドの縁に並んで座る。
「困ったな、どうしたら泣き止んでくれるの?」
泣いているのは何故だろう。
雷を怖がっていたようだけど、音が遮断されるこの部屋でも僕を呼び続けたのだから雷はきっかけにすぎない筈だ。もっと根本的な問題なのだ。僕がいなかった事が悲しかったなら、今は安心している筈。未だに不安で恐怖に押しつぶされそうなこの子は、一体何に怯えてる?
この子。
そう、この様子はあの時と同じ、幼い子供だ。発情期になったのに高村が現れず、死ぬ程もがき苦しんだあの時。あの時も晶馬くんは子供返りをした。
晶馬くんは極限まで追い詰められると幼子に戻ってしまうようだ。多分小さい時に心に傷を負い、許容範囲を超えるショックを受けると心が今でもその時に戻ってしまうのだろう。その傷とは一体……
そうか、分かった。おそらく晶馬くんは小さい頃に大切な人と死に別れているのだ。それも心の準備をする暇もなく、突然。その体験が僕がいなくなる事を恐れさせている。
人は大切なものを失った体験をすると、再びの喪失を恐れるようになる。この子が怖がっているのは僕が居なかった事じゃない、いつか居なくなる未来だ。それがいつなのかは誰にも分からない。離れていれば今がその瞬間かもしれない。だからずっと不安で安心できなかったんだ。
心に受けた傷は時と共に風化していくものだ。だけど小さい頃に受けたショックは大きく、いとも容易く晶馬くんを幼子に戻してしまう。情緒不安定と悪い要因が重なり、その時の恐怖が今再び襲いかかっているのだ。
命が永遠でない僕らにはいつか必ず終わりがくる。だったら星になるその日までは決して離れず、共に生きよう──
そう決意しても命の残り時間はバラバラで、事故でもない限り最後はどちらかが残される。晶馬くんは小さい時に残される辛さを知ってしまい、当時の晶馬くんが今また怯えて震えている。
「ううーっ、ひっ、ひっく、ひっく。りぃ、りぃ……」
晶馬くんは胸元に顔を埋めていやいやをした。
「晶馬くん……」
大人ですら死別は耐え難いのに、晶馬くんはこんなに小さな時に永遠に会えない辛さを体験してしまったんだね。
だったら約束をあげよう。幼い仕草をする僕の大切な番よ、君が心から安心できるように、ずっと一緒にいられる保証をあげよう。
僕は思いを込めて言った。
「ねえ、僕は君の魔法使いだよ。君の願いを何でも叶えてあげる。僕に願いを言ってごらん」
晶馬くんは更に僕の胸の中で顔を振った。
「信じられない?僕は晶馬くんが信じれば何でも出来るんだよ。だって君の魔法使いだもの。君は僕に願いを言うだけで何でも叶う。さあ、言ってみて」
晶馬くんが顔を上げた。涙で瞳が揺れている。
「りぃ……」
ひくっ、ひくっ。
「言って。さあ」
あの時と同じ台詞で促す。
お願いだ、もう一度この手を取って。
「……いなくならないで。置いてっちゃ……やだ。ひとりにしないで」
「いいよ、分かった。約束する。君を置いていかない、一人で死んだりしないよ。晶馬くんと離れてる時は事故には絶対に遭わない、天災にも巻き込まれない。簡単だよ、警戒のアンテナを少し広げればいいだけだ。行く先の天気を予測し、交通機関の情報を掴み、運転手の健康状態や乗り合わせの客の様子を見て周りの危険も予測する」
晶馬くんが目を見開いた。
「晶馬くんが信じることが出来ればこの魔法は成立する。どう?僕を信じられる?僕にそれが出来ると思うかい?」
実際にそれらを行うのは容易いのだ。大切なのは晶馬くんが僕を信じられるかどうか。
晶馬くんが躊躇うように目線を逸らし、再び僕を見たあと下を向いて首を振った。
「お願い、晶馬くん。僕をずっと君の魔法使いでいさせて。君がうんと言わなければ僕は魔法使いになれないよ。君を幸せにしたいんだ」
僕を異能を操る化け物じゃなく、願いを叶える魔法使いにして。
「それが僕の唯一の願いなんだ」
僕はこの願いの中にさりげなく僕の望みを練り込んでいる。
この魔法の効果は君を安心させる事だ。僕がどんなに予測して事故を避けても、君が信じて安らぎを得られなければ成立しない。だからこの先晶馬くんが安心して暮らしていくなら、それは僕を信じている証明になる。君が信じ続ける限り、僕は君の魔法使いであり続けられるんだ。化け物じゃなく、魔法使いだ。だからこれはきみの願いじゃなく、僕の願い。
僕はずっと君の魔法使いでいたい。
それに分かってるかな、晶馬くん。
この魔法が本物だったかどうかは、僕たちが寿命を全うするまで分からない。だからずっと離れずに見ていなきゃならないんだよ。僕は、君の一生を僕に縛り付けたい。
晶馬くんは、あごからぼたぼたと落ち続ける涙の雫をそのままに、瞬きもせずに僕を見つめている。
お願い、晶馬くん。
僕を、君の魔法使いでいさせて。
コクンと晶馬くんが小さく頷いた。
ああ!これで僕はずっと晶馬くんの魔法使いだ。
この魔法は運命の鎖よりずっと重い。
「……愛してる」
僕は晶馬くんの唇に触れ、契約成立のキスをした。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
119
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる