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第10話 不毛大作戦!
恋だか変だか、何かそんな感じ(2)
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昨日の夜──お茶啜って何だかノンビリした挙句、アタシは酔ってもないのに力説した。
──この街には宇宙人、かなりの数いる筈や! それも悪い方の宇宙人がな!
桃太郎も酔ってもないのに憤った。
──ならば余が懲らしめてやらねばなるまい、と。
──そうや、懲らしめまくれ!
アタシ達はその時初めて意気投合したのだった。
つまり、会話にちょっとした行き違いがあって桃太郎はデートではなく、世直しの旅(日帰り)に出発したつもりなのだ。
べ、別にアタシのせいちゃう。
心の中でしつこく言い訳しながら、アタシはアンパンをかじった。
電柱の影から桃太郎(ホシ)を見張るのだ。
「リカさん、お腹がすきましたか?」
カメさんが不審げにアタシを見る。
まだ10時。朝寝坊のアタシは、さっき朝ごはんを食べたとこや。
「そういうわけちゃうねんけど、張り込みや尾行ったらやっぱりアンパンとコーヒー牛乳やろ。アタシ、古いタイプの人間やねん」
想像の中では「しっかり者のリカ警部」と「おっちょこちょいの部下のカメさん」や。
とにかく今日はそんな気分やねん。
まぁ、時期がアレやからTシャツと短パン、愛用の下駄やけど
刑事っぽくはないけども。
「あぁ、見てください。お2人、映画館へ向かっていますよ」
心の中で刑事ごっこしてたアタシの腕をカメさんがすごい力で引っ張る。
「痛いって! 肩外れるやろ! アタシ、外れたことあるねんって」
「す、すいません」
初デートの定番、映画館前でアタシらは立ち止まる。
「あれ、良さそうですね」
カメさんが指差したポスターは話題の邦画だ。
やさぐれた男の子と、かわいい女の子が寂しそうに笑っている写真。
『いつまでも、あなたは私の胸で笑ってる──』というキャッチコピーで既にカメさん、ウルウルきている。
「どうせ男の方が死ぬんや。展開読めるねん。ツマランわ! それより隣りの洋画見たいわ。最強ヒロインが人類を守る為、闘いまくるねん。かっこいいわー」
「そ、そうですか……」
ふと隣りを見て、カメさんが傷付いた表情なのに気付く。
「ごめんなさい。つまらんなんて言ってゴメンナサイ」
2人は、しかし映画館の前を素通りして商店街を抜けていった。
「何故ですかっ!」
カメさん、ショックを受けてる。
尾行の名目を借りて、泣ける純愛映画を見る気満々だったのだろう。
既に8人殺ってるマフィアのような外見のオッサンが、恋愛映画を見て声を殺して泣いている様をリアルに想像してしまった。
「イヤや……」
その間にも気を取り直したカメさんは、近くのカフェにアタシを引っ張って入った。
別に桃太郎たちがここに来たわけではない。
2人は向かいの本屋の店先で分厚いマンガ雑誌を立ち読みしている。
初デートでこれは、ちょっと痛い光景やで。
「ここ、イチゴのケーキが最高に可愛くておいしいんです。4層からなるムースが……」
2人の姿が見えるオープン席に陣取って、カメさんはバッグから怪しげな棒状の物を取り出した。
手元のボタンで伸縮自在の棒。
先端に小さなミラーと集音マイクが取り付けられている。
「高枝切バサミを改造しました。夕べ、徹夜で作りました」
これで離れた位置からでも、2人の様子を克明に観察できるというわけだ。
てか、せめて自撮り棒持ってきてほしかった。
改造しましたって……。
「……カメさん、アンタほとんど犯罪者やで?」
ああ、アタシの周り、急速にヘンなヤツ増えていく……。
運ばれてきたケーキに歓声をあげつつも、カメさんはマイクに連動した小型スピーカーに耳に澄ませた。
「しくじったなり!」
桃太郎の高い声がキンキン響いてきた。
続いてワンちゃんの震える高音が。
聞き取りづらいこと、この上ない。
「どどどどどどうしたんですか?」
いつも以上に緊張している喋り方だ。
「余はメガネを忘れてきてしもうた。これではマンガが読めぬ」
……メガネかよ。てか、マンガかよ。
アタシはげんなり溜め息をつく。
が、ワンちゃんは「キャッ!」と悲鳴をあげた。
「ききき緊張のあまり、桃さまのお顔を見られず、お眼鏡がないことに気付きませんでしたぁ。たた大変ですぅぅ。めめめ眼鏡だけはあたしのを使って下さいってわけにはいかないですから」
「うむ。視力が違うからの」
メガネ同士、その苦労が分かり合えるらしい。
おっ、意外といい兆候?
そう思ったところでワンちゃんもメガネを外した。
ヘンに自慢げにレンズの厚みを桃太郎に見せている。
「ああああたし、目が悪いんです。0.02くらいなんです。乱視も入ってるんですぅ」
「余は乱視はないが、視力はそれくらいじゃ」
何ちゅう会話や。
初デートって意識が、双方にあるとは思えない。
急にワンちゃんが頬を染めた。
「ああああたしたちって、似てますね……」
──不憫や。
──この街には宇宙人、かなりの数いる筈や! それも悪い方の宇宙人がな!
桃太郎も酔ってもないのに憤った。
──ならば余が懲らしめてやらねばなるまい、と。
──そうや、懲らしめまくれ!
アタシ達はその時初めて意気投合したのだった。
つまり、会話にちょっとした行き違いがあって桃太郎はデートではなく、世直しの旅(日帰り)に出発したつもりなのだ。
べ、別にアタシのせいちゃう。
心の中でしつこく言い訳しながら、アタシはアンパンをかじった。
電柱の影から桃太郎(ホシ)を見張るのだ。
「リカさん、お腹がすきましたか?」
カメさんが不審げにアタシを見る。
まだ10時。朝寝坊のアタシは、さっき朝ごはんを食べたとこや。
「そういうわけちゃうねんけど、張り込みや尾行ったらやっぱりアンパンとコーヒー牛乳やろ。アタシ、古いタイプの人間やねん」
想像の中では「しっかり者のリカ警部」と「おっちょこちょいの部下のカメさん」や。
とにかく今日はそんな気分やねん。
まぁ、時期がアレやからTシャツと短パン、愛用の下駄やけど
刑事っぽくはないけども。
「あぁ、見てください。お2人、映画館へ向かっていますよ」
心の中で刑事ごっこしてたアタシの腕をカメさんがすごい力で引っ張る。
「痛いって! 肩外れるやろ! アタシ、外れたことあるねんって」
「す、すいません」
初デートの定番、映画館前でアタシらは立ち止まる。
「あれ、良さそうですね」
カメさんが指差したポスターは話題の邦画だ。
やさぐれた男の子と、かわいい女の子が寂しそうに笑っている写真。
『いつまでも、あなたは私の胸で笑ってる──』というキャッチコピーで既にカメさん、ウルウルきている。
「どうせ男の方が死ぬんや。展開読めるねん。ツマランわ! それより隣りの洋画見たいわ。最強ヒロインが人類を守る為、闘いまくるねん。かっこいいわー」
「そ、そうですか……」
ふと隣りを見て、カメさんが傷付いた表情なのに気付く。
「ごめんなさい。つまらんなんて言ってゴメンナサイ」
2人は、しかし映画館の前を素通りして商店街を抜けていった。
「何故ですかっ!」
カメさん、ショックを受けてる。
尾行の名目を借りて、泣ける純愛映画を見る気満々だったのだろう。
既に8人殺ってるマフィアのような外見のオッサンが、恋愛映画を見て声を殺して泣いている様をリアルに想像してしまった。
「イヤや……」
その間にも気を取り直したカメさんは、近くのカフェにアタシを引っ張って入った。
別に桃太郎たちがここに来たわけではない。
2人は向かいの本屋の店先で分厚いマンガ雑誌を立ち読みしている。
初デートでこれは、ちょっと痛い光景やで。
「ここ、イチゴのケーキが最高に可愛くておいしいんです。4層からなるムースが……」
2人の姿が見えるオープン席に陣取って、カメさんはバッグから怪しげな棒状の物を取り出した。
手元のボタンで伸縮自在の棒。
先端に小さなミラーと集音マイクが取り付けられている。
「高枝切バサミを改造しました。夕べ、徹夜で作りました」
これで離れた位置からでも、2人の様子を克明に観察できるというわけだ。
てか、せめて自撮り棒持ってきてほしかった。
改造しましたって……。
「……カメさん、アンタほとんど犯罪者やで?」
ああ、アタシの周り、急速にヘンなヤツ増えていく……。
運ばれてきたケーキに歓声をあげつつも、カメさんはマイクに連動した小型スピーカーに耳に澄ませた。
「しくじったなり!」
桃太郎の高い声がキンキン響いてきた。
続いてワンちゃんの震える高音が。
聞き取りづらいこと、この上ない。
「どどどどどどうしたんですか?」
いつも以上に緊張している喋り方だ。
「余はメガネを忘れてきてしもうた。これではマンガが読めぬ」
……メガネかよ。てか、マンガかよ。
アタシはげんなり溜め息をつく。
が、ワンちゃんは「キャッ!」と悲鳴をあげた。
「ききき緊張のあまり、桃さまのお顔を見られず、お眼鏡がないことに気付きませんでしたぁ。たた大変ですぅぅ。めめめ眼鏡だけはあたしのを使って下さいってわけにはいかないですから」
「うむ。視力が違うからの」
メガネ同士、その苦労が分かり合えるらしい。
おっ、意外といい兆候?
そう思ったところでワンちゃんもメガネを外した。
ヘンに自慢げにレンズの厚みを桃太郎に見せている。
「ああああたし、目が悪いんです。0.02くらいなんです。乱視も入ってるんですぅ」
「余は乱視はないが、視力はそれくらいじゃ」
何ちゅう会話や。
初デートって意識が、双方にあるとは思えない。
急にワンちゃんが頬を染めた。
「ああああたしたちって、似てますね……」
──不憫や。
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