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1章:オラガ村にやってきた侯爵令嬢
18.追放令嬢と偽りの愛
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「その後の事は朦朧としていてあまり覚えていないのですが…
ただ覚えているのが、王都の家で新しい婚約者が決まったとの報告を受けた事。
それが厄介払いとしか思えない辺境の子爵家だったこと。
後はこの通り、殿下が用意させた馬車でこのフレポジェルヌ家へ赴いたしだいです…」
空になったワイングラスを見つめながら語るエルシャ。
ケヴィンはその話を聞きながらどうでもいい言葉についてつい反応してしまった…
「厄介払いとしか思えない辺境の子爵家…」
「…!!も、申し訳ございません!」
ボソッとこぼれてしまった言葉に血の気が引く思いで必死に謝罪してくるエルシャ。
「いや、本当のことを語ってくれてるなと実感してるだけだから気にするな…」
それよりもと続ける。
「姉貴達に任せてたから多分何度も確認されてるとは思うが…
エルシャ本人はこの結婚に納得しているのか?」
「侯爵家の娘として恥じない生き方をする義務があります。
家のためケヴィン様の下に嫁ぐのが私の使命なのです」
もしここでエルシャが嫌だと言ったのであれば…
多分ケヴィンは彼女を逃がしいただろう。
どんな手を使ってでも、自分がどのような汚名を着せられようとも…
それが、一度は夫となった男の務めとして。
だがその言葉はなかった。
エルシャの頭を撫でながら耳元で囁く。
「民を守り、貴族として正しいと思う道を貫く…カッコいいんだな」
「信じてくださるのですか?」
「ああ、妻の言う事だ…たとえ嘘でも騙されるのが夫の務めだろ?」
その言葉だけでエルシャの中にほっこりと安心感が生まれたような気がした。
あの日から、自分の下から様々な人が離れていき、自分の言葉は全て否定される…
もうきっと、自分は誰からも信用などされないのだろう…そんな事まで考えたりしていた。
ケヴィンのその言葉はエルシャにとって救いだったのかもしれない…
だからだろうか…?
そっと引き寄せられ、式場でされたように顎を引かれても何も抵抗する気になれなかったのは。
そして、エルシャは今日二度目…そして人生においての二度目のくちづけを奪われたのだった。
式場の時とは違う、ついばむような口づけに身動きが取れぬまま、されるがままになる…
そして、自分が何をされているのかに段々と気が付いてくると途端に羞恥心に包まれてきた。
ケヴィンはそのエルシャの様子に気が付いたのかそっと唇を離し…そして訊ねた。
「これから何をされるかは分かっているか?」
「………夫にお任せすればよい…と」
………
「ちなみにコウノトリやキャベツ畑ではないからな?」
「………夫婦が寝室で共に祈りを捧げる…でもない…ですよね?」
………
「…あぅ…肌を重ねる…まではわかってます…それ以上は未知です…」
ケヴィンは愕然とした…侯爵様に会う機会があったら娘の性教育について物申そう。
ここまで無知で来られると男が困る。
せめてカマトトを演じられるくらいの知識は欲しかった。
だが、ここまで来たら仕方がないと腹をくくりエルシャに言葉をかける。
「全部俺に任せてくれればいい…が、痛みがある事は理解しておいてくれ。
怖い思いをする事になる…泣き叫びたくなるかもしれない…
だがこれだけは知っておいて欲しい」
そう言ってエルシャの前で跪きながら手を取り囁く。
「このケヴィン・フレポジェルヌがエルシャルフィールに一目惚れをしたというのは真実だ。
そして、あなたを抱く時は私があなたを愛しているという事を忘れないで欲しい。
それがどう思われようが構わない…性格でも容姿でも身体でもお金、家柄、名誉…ただ一時の気まぐれ…
なんと思われようとも構わない…
それが例え偽りと思われたとしても何度だってさえずろう…」
そして、手の甲にキスをしながらその想いを言葉にした。
「私は貴方を愛している」
家族にいつも言われなれているはずのその言葉…
当たり前の言葉のはず…
なのにどうしたというのだろうか…
ケヴィンに見据えられて囁かれるその言葉でこれほどまでに心が動揺するのは…
―偽りの愛―
今日初めて出会った男からの愛の囁き…これが偽りでなくて何だというのか。
その軽薄でしかない言葉になぜこうも心が揺り動かされるのだろうか…
身体が熱くなり顔や耳の先までが火照ってくる…
これではまるで…
そう、それはあの結婚式の最中で感じたあの思いと同じ…
初めて出会ったはずの姫に愛を囁く騎士…
ストーリーの都合で展開されるハリボテの愛…
妹の読んでいた物語に度々出て来る都合のいい愛の言葉。
そしてエルシャの頭に一つの疑問が浮かび上がる。
それは結婚式場でも感じた違和感…
"結婚する相手を間違えておりませんか?"
だがこの言葉はまたしても発せらる事はなかった。
それはエルシャ自身の心によって…
恐れてしまったのだ…
この人を今ここで失ったら自分はこの先誰からも信じられない女になってしまうのではないか…
突貫工事で作られたハリボテの愛を囁く軽薄な男を失う事を…
返事をする事も質問することも出来ず…されど時は進み続ける。
この後に訪れるエルシャにとって今までの人生を完膚なきまでに破壊するための儀式…
握った手は震え、足が石になったように動かない。
焦るエルシャ…そこにケヴィンが一言…
「失礼する…」
そう言って足の動かないエルシャをお姫様抱っこで抱き上げた。
これに顔を紅潮させるエルシャにケヴィンは優しく微笑みかけ、隣の部屋のベッドへ連れていく。
突然にそして軽々と持ち上げられ驚きのあまり心臓の鼓動高鳴る。
エルシャを抱え歩き出したケヴィンが突然立ち止まりエルシャに言葉をかけた。
「そうだ…」
「?」
「俺は男に命令されてオッ勃てる趣味はないからな…俺が勃つのはエルシャに興奮するからだ」
「…立つ?」
エルシャそのよくわからない言葉に思わずアレンの足を見るが…
エルシャとどんな関係があるというのかが全く分からない…
そして、そのエルシャの反応にちょっとウケを狙ってみたアレンは失言を悟った。
「あー、忘れていい」
「えっと…はい…」
やはり思い付きのアドリブはよくない、信じられるのは日頃の鍛錬。
ハリボテの言葉ではなく入念に計算されつくした台本と、日々練習を続けた結果の言葉なのだ…
そんな風に思うケヴィンであった。
ただ覚えているのが、王都の家で新しい婚約者が決まったとの報告を受けた事。
それが厄介払いとしか思えない辺境の子爵家だったこと。
後はこの通り、殿下が用意させた馬車でこのフレポジェルヌ家へ赴いたしだいです…」
空になったワイングラスを見つめながら語るエルシャ。
ケヴィンはその話を聞きながらどうでもいい言葉についてつい反応してしまった…
「厄介払いとしか思えない辺境の子爵家…」
「…!!も、申し訳ございません!」
ボソッとこぼれてしまった言葉に血の気が引く思いで必死に謝罪してくるエルシャ。
「いや、本当のことを語ってくれてるなと実感してるだけだから気にするな…」
それよりもと続ける。
「姉貴達に任せてたから多分何度も確認されてるとは思うが…
エルシャ本人はこの結婚に納得しているのか?」
「侯爵家の娘として恥じない生き方をする義務があります。
家のためケヴィン様の下に嫁ぐのが私の使命なのです」
もしここでエルシャが嫌だと言ったのであれば…
多分ケヴィンは彼女を逃がしいただろう。
どんな手を使ってでも、自分がどのような汚名を着せられようとも…
それが、一度は夫となった男の務めとして。
だがその言葉はなかった。
エルシャの頭を撫でながら耳元で囁く。
「民を守り、貴族として正しいと思う道を貫く…カッコいいんだな」
「信じてくださるのですか?」
「ああ、妻の言う事だ…たとえ嘘でも騙されるのが夫の務めだろ?」
その言葉だけでエルシャの中にほっこりと安心感が生まれたような気がした。
あの日から、自分の下から様々な人が離れていき、自分の言葉は全て否定される…
もうきっと、自分は誰からも信用などされないのだろう…そんな事まで考えたりしていた。
ケヴィンのその言葉はエルシャにとって救いだったのかもしれない…
だからだろうか…?
そっと引き寄せられ、式場でされたように顎を引かれても何も抵抗する気になれなかったのは。
そして、エルシャは今日二度目…そして人生においての二度目のくちづけを奪われたのだった。
式場の時とは違う、ついばむような口づけに身動きが取れぬまま、されるがままになる…
そして、自分が何をされているのかに段々と気が付いてくると途端に羞恥心に包まれてきた。
ケヴィンはそのエルシャの様子に気が付いたのかそっと唇を離し…そして訊ねた。
「これから何をされるかは分かっているか?」
「………夫にお任せすればよい…と」
………
「ちなみにコウノトリやキャベツ畑ではないからな?」
「………夫婦が寝室で共に祈りを捧げる…でもない…ですよね?」
………
「…あぅ…肌を重ねる…まではわかってます…それ以上は未知です…」
ケヴィンは愕然とした…侯爵様に会う機会があったら娘の性教育について物申そう。
ここまで無知で来られると男が困る。
せめてカマトトを演じられるくらいの知識は欲しかった。
だが、ここまで来たら仕方がないと腹をくくりエルシャに言葉をかける。
「全部俺に任せてくれればいい…が、痛みがある事は理解しておいてくれ。
怖い思いをする事になる…泣き叫びたくなるかもしれない…
だがこれだけは知っておいて欲しい」
そう言ってエルシャの前で跪きながら手を取り囁く。
「このケヴィン・フレポジェルヌがエルシャルフィールに一目惚れをしたというのは真実だ。
そして、あなたを抱く時は私があなたを愛しているという事を忘れないで欲しい。
それがどう思われようが構わない…性格でも容姿でも身体でもお金、家柄、名誉…ただ一時の気まぐれ…
なんと思われようとも構わない…
それが例え偽りと思われたとしても何度だってさえずろう…」
そして、手の甲にキスをしながらその想いを言葉にした。
「私は貴方を愛している」
家族にいつも言われなれているはずのその言葉…
当たり前の言葉のはず…
なのにどうしたというのだろうか…
ケヴィンに見据えられて囁かれるその言葉でこれほどまでに心が動揺するのは…
―偽りの愛―
今日初めて出会った男からの愛の囁き…これが偽りでなくて何だというのか。
その軽薄でしかない言葉になぜこうも心が揺り動かされるのだろうか…
身体が熱くなり顔や耳の先までが火照ってくる…
これではまるで…
そう、それはあの結婚式の最中で感じたあの思いと同じ…
初めて出会ったはずの姫に愛を囁く騎士…
ストーリーの都合で展開されるハリボテの愛…
妹の読んでいた物語に度々出て来る都合のいい愛の言葉。
そしてエルシャの頭に一つの疑問が浮かび上がる。
それは結婚式場でも感じた違和感…
"結婚する相手を間違えておりませんか?"
だがこの言葉はまたしても発せらる事はなかった。
それはエルシャ自身の心によって…
恐れてしまったのだ…
この人を今ここで失ったら自分はこの先誰からも信じられない女になってしまうのではないか…
突貫工事で作られたハリボテの愛を囁く軽薄な男を失う事を…
返事をする事も質問することも出来ず…されど時は進み続ける。
この後に訪れるエルシャにとって今までの人生を完膚なきまでに破壊するための儀式…
握った手は震え、足が石になったように動かない。
焦るエルシャ…そこにケヴィンが一言…
「失礼する…」
そう言って足の動かないエルシャをお姫様抱っこで抱き上げた。
これに顔を紅潮させるエルシャにケヴィンは優しく微笑みかけ、隣の部屋のベッドへ連れていく。
突然にそして軽々と持ち上げられ驚きのあまり心臓の鼓動高鳴る。
エルシャを抱え歩き出したケヴィンが突然立ち止まりエルシャに言葉をかけた。
「そうだ…」
「?」
「俺は男に命令されてオッ勃てる趣味はないからな…俺が勃つのはエルシャに興奮するからだ」
「…立つ?」
エルシャそのよくわからない言葉に思わずアレンの足を見るが…
エルシャとどんな関係があるというのかが全く分からない…
そして、そのエルシャの反応にちょっとウケを狙ってみたアレンは失言を悟った。
「あー、忘れていい」
「えっと…はい…」
やはり思い付きのアドリブはよくない、信じられるのは日頃の鍛錬。
ハリボテの言葉ではなく入念に計算されつくした台本と、日々練習を続けた結果の言葉なのだ…
そんな風に思うケヴィンであった。
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