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2章:新婚旅行は幻惑の都で…(前編)
15.フレポジ夫人と怪盗カルディエ
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【歌劇:怪盗カルディエ】
これは皇都メルシュトゥームに実在する怪盗カルディエを歌劇にした舞台。
カルディエは予告状を送りつけた上で盗みを働くという劇場型の盗賊であった。
美術館、金持ちの屋敷、皇都の時計塔の針を盗んだことも…
時計塔の針についてはいつの間にか返されていた事も皇都民の度肝をぬいたのだが。
姿を変え、トリックを用い、華麗な曲芸で警備を躱す…
夜の皇都を舞う美しい怪盗に人々は次第に魅了されるようになっていた。
事態を重く見た皇家は送り付けられた予告状に対抗するように警備兵を送るようになったのだ。
ここまで聞くと、単なる泥棒なのだから歌劇になる程の人気であったとしても皇家がそれを許すわけが無かった。
だが、カルディエが怪盗として人気であるのは彼女が"義賊"であったという所だ。
送り付けられた予告状を理由に貴族や富豪の邸宅へ警備兵を派遣する皇家。
カルディエはそんな場所へ悠々と潜り込み予告通りに盗みを行う…
警備兵達の前に数々の不正を白日の下へと晒しながら…
カルディエの盗みの成功と共に暴かれる悪行の数々。
悪によって巨大な悪に立ち向かうダークヒーローに皇都民は夢中になっていったのである。
盗まれた美術品も後日返却される事も多かった事もその名を轟かせる事に拍車をかけた。
歌劇の方もカルディエの華麗な曲芸を意識し、初っ端からド派手なアクションシーンからスタートした。
ワイヤーを使い音楽に合わせて客席を縦横無人に飛び回るカルディエの姿…
それを客席の間を走り回りながらも何とか捕えようとする警備役の演者たち。
エルシャもその初めて見る演出に一瞬で物語の世界に引き込まれるのであった。
………
……
…
―――――――――――――――――――――――
劇に夢中になり年相応の喜怒哀楽を見せてくれるエルシャにケヴィンは連れてきて良かったと心から思う。
本来ならもっとそばで一緒に楽しみ、心と体の距離を大いに近づける所なのだが…
その役目をまんまとコーデリアに奪われ隣にいるのは皇子様。
野郎二人の会話が面白いわけもなく…そして案の定無粋な話を振ってきた。
「ところで、稲穂を少々仕入れたいのだが…」
やっぱり…
そう思いつつため息をつき丁重にお断りをする。
「時期外れです…言ったでしょう、自国の戻って次期領主としての仕事に専念するって」
「だが今ここにいるじゃないか?」
「それは単に新婚旅行として遊びに来ただけですって。エルシャとのデートが最優先事項ですから。
ヒイロはまだ?もうすぐ義弟になるんですから使い倒してやればいいでしょう」
だがその言葉に皇子は残念そうに首を振って応える。
「まだ戻ってきてないな。他の連中には既に依頼を出しているんだが…
まあいい、最近また奴らが動き出したみたいでな…話だけは聞いておいてくれ」
「…まさか例の連中が息を吹き返したって事じゃないでしょうね」
「残念ながら…」
「勘弁してくれ…なら、なおさらエルシャを巻き込むような真似は出来ませんよ。
言っておきますが、彼女は戦いに関してはからっきしですからね」
「妹からも彼女の人となりは聞いているからわかっている。勿論埋め合わせもするさ」
「…なら、この後晩飯食べに行くんでエルシャが喜びそうな店紹介してくださいよ」
「心得た…」
言うとコルディーニは指でチョイチョイと付き人を呼び寄せ耳打ちで指示をだす。
それを横目に演劇の方を鑑賞するケヴィンであったが…
「それにしても酷い演目ですね…」
「そうか?私は面白いと思うが…今から再演を望まれているほど人気があるぞ?」
「人の純情なんだと思っているんだか…」
カルディエは姿を変え、とある貴族の男を誑かして貴族たちに近づく…
カルディアの変装だと気づかずに鼻の下を伸ばしながら愛を囁く軽薄な男がどうしても毎朝鏡で見る人物とダブってしまう。
それはどうやらエルシャも同じだったようでその貴族の男が登場するたびに首を傾げつつケヴィンと見比べてくるのだ…
友人がカルディエを疑ってもひたすら信じ続ける貴族の男。
カルティエが正体を現し本物の御令嬢が現れ、挙句その御令嬢は他の男性と恋仲という事実を突きつけられ…
やけくそで今度はカルティエに猛烈アタックを始めてしまう。
しかしそれも優雅に躱していくカルティエがかけた言葉が…
『怪盗は盗むのが仕事で捕まらないことがプライドなのよ?』
ケヴィンは貴賓室から怒鳴りたくなった…
「人の失恋を忠実に再現するんじゃねー!!」…と
そして、演劇の最後にその男が叫ぶのだ…
『娼婦に渡した手切れ金が無駄になっちまったじゃねーか!』
会場が笑い声に包まれて幕が下りる…
人の魂の叫びをオチ使わないで欲しい…
………
……
…
―――――――――――――――――――――――
演劇鑑賞を終え二人と別れた後はコルディーニ皇子の紹介してくれた店へと向かう。
そこでエルシャは初めてのハーケーン料理に舌鼓を打った。
海が近い事もあってエルシャが昔好きだった海産物が多く出され表情からして大満足が見て取れるほど。
お酒もハーケーン産のワインを飲むのかと思いきや…
エルシャが海の向こうの国で作られたお酒に目を引かれたためソレを頼むことにした。
ハーケーン産のワインは有名で珍しくはないため飲んだ事のないものを飲みたかったらしい。
そして屋敷に戻る頃にはケヴィンが見たことが無いほど…そしてエルシャ自身ですら経験した事が無いほどに酔いが回っていた。
エルシャは自分でもわかるほど浮かれていた。
それは、ちょっと前までのエルシャでは絶対に経験できないと考えていた事をその身で体験したこと…
いや、むしろ立場が違っていても国外への旅行などそうそうできるものではない。
それほどの経験をしたのだ。
それはまるで本当に夢を見ているかのような一日、浮かれるなという方がおかしい。
そんなエルシャを眺めながら尋ねるケヴィン。
「楽しんでくれたか?」
「もちろんです、まるで…お姫様気分?」
両手で口を隠しながらもこぼれてしまう笑顔とクスクスという笑い声…
ケヴィンもその普段とは違うエルシャを心の底から魅力的だと感じ、自然と手を差し出していた。
「それではエルシャルフィール姫…今宵、あなたに愛を囁くことをお許しください」
ケヴィンの囁きに胸が高鳴り顔が紅潮する。
エルシャが今まで感じたことが無いようなフワフワとした感情に自然とケヴィンの手を取る。
「…許します」
そう言ってまるでダンスに誘われるかのように抱きしめられ…
そして名残惜しいと思っていた今日という日の続きがある事に胸を躍らせるのであった。
………
……
…
そして、一夜明け…
酔いも覚め、正気に戻ったエルシャはベッドから這い出る。
そして目の前に広がる皇都の街並みに賢者は頭を抱えた…
「いや…勝手にトンネルつなげちゃダメでしょうに!?」
エルシャの頭の中に昨日先送りにしてしまった様々な問題が噴出するのであった。
主に"国防"とか"責任問題"とか"国防"とか"外交問題"とか"国防"とかである…
「お父様はこの事に薄々感づいていたから私をケヴィン様の下へと嫁がせたのでしょうか…?」
"王国の爪の先"と呼ばれた僻地が唐突に国家の最先端基地になろうとしている…
そんな場所に侯爵令嬢である自分が嫁がされる…
これを偶然にで片付けられる程エルシャは柔軟ではない。
"千里眼を持つ"と呼ばれる理由の一端を垣間見たエルシャは自身の父親に畏れの様なものを感じるのであった。
これは皇都メルシュトゥームに実在する怪盗カルディエを歌劇にした舞台。
カルディエは予告状を送りつけた上で盗みを働くという劇場型の盗賊であった。
美術館、金持ちの屋敷、皇都の時計塔の針を盗んだことも…
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事態を重く見た皇家は送り付けられた予告状に対抗するように警備兵を送るようになったのだ。
ここまで聞くと、単なる泥棒なのだから歌劇になる程の人気であったとしても皇家がそれを許すわけが無かった。
だが、カルディエが怪盗として人気であるのは彼女が"義賊"であったという所だ。
送り付けられた予告状を理由に貴族や富豪の邸宅へ警備兵を派遣する皇家。
カルディエはそんな場所へ悠々と潜り込み予告通りに盗みを行う…
警備兵達の前に数々の不正を白日の下へと晒しながら…
カルディエの盗みの成功と共に暴かれる悪行の数々。
悪によって巨大な悪に立ち向かうダークヒーローに皇都民は夢中になっていったのである。
盗まれた美術品も後日返却される事も多かった事もその名を轟かせる事に拍車をかけた。
歌劇の方もカルディエの華麗な曲芸を意識し、初っ端からド派手なアクションシーンからスタートした。
ワイヤーを使い音楽に合わせて客席を縦横無人に飛び回るカルディエの姿…
それを客席の間を走り回りながらも何とか捕えようとする警備役の演者たち。
エルシャもその初めて見る演出に一瞬で物語の世界に引き込まれるのであった。
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劇に夢中になり年相応の喜怒哀楽を見せてくれるエルシャにケヴィンは連れてきて良かったと心から思う。
本来ならもっとそばで一緒に楽しみ、心と体の距離を大いに近づける所なのだが…
その役目をまんまとコーデリアに奪われ隣にいるのは皇子様。
野郎二人の会話が面白いわけもなく…そして案の定無粋な話を振ってきた。
「ところで、稲穂を少々仕入れたいのだが…」
やっぱり…
そう思いつつため息をつき丁重にお断りをする。
「時期外れです…言ったでしょう、自国の戻って次期領主としての仕事に専念するって」
「だが今ここにいるじゃないか?」
「それは単に新婚旅行として遊びに来ただけですって。エルシャとのデートが最優先事項ですから。
ヒイロはまだ?もうすぐ義弟になるんですから使い倒してやればいいでしょう」
だがその言葉に皇子は残念そうに首を振って応える。
「まだ戻ってきてないな。他の連中には既に依頼を出しているんだが…
まあいい、最近また奴らが動き出したみたいでな…話だけは聞いておいてくれ」
「…まさか例の連中が息を吹き返したって事じゃないでしょうね」
「残念ながら…」
「勘弁してくれ…なら、なおさらエルシャを巻き込むような真似は出来ませんよ。
言っておきますが、彼女は戦いに関してはからっきしですからね」
「妹からも彼女の人となりは聞いているからわかっている。勿論埋め合わせもするさ」
「…なら、この後晩飯食べに行くんでエルシャが喜びそうな店紹介してくださいよ」
「心得た…」
言うとコルディーニは指でチョイチョイと付き人を呼び寄せ耳打ちで指示をだす。
それを横目に演劇の方を鑑賞するケヴィンであったが…
「それにしても酷い演目ですね…」
「そうか?私は面白いと思うが…今から再演を望まれているほど人気があるぞ?」
「人の純情なんだと思っているんだか…」
カルディエは姿を変え、とある貴族の男を誑かして貴族たちに近づく…
カルディアの変装だと気づかずに鼻の下を伸ばしながら愛を囁く軽薄な男がどうしても毎朝鏡で見る人物とダブってしまう。
それはどうやらエルシャも同じだったようでその貴族の男が登場するたびに首を傾げつつケヴィンと見比べてくるのだ…
友人がカルディエを疑ってもひたすら信じ続ける貴族の男。
カルティエが正体を現し本物の御令嬢が現れ、挙句その御令嬢は他の男性と恋仲という事実を突きつけられ…
やけくそで今度はカルティエに猛烈アタックを始めてしまう。
しかしそれも優雅に躱していくカルティエがかけた言葉が…
『怪盗は盗むのが仕事で捕まらないことがプライドなのよ?』
ケヴィンは貴賓室から怒鳴りたくなった…
「人の失恋を忠実に再現するんじゃねー!!」…と
そして、演劇の最後にその男が叫ぶのだ…
『娼婦に渡した手切れ金が無駄になっちまったじゃねーか!』
会場が笑い声に包まれて幕が下りる…
人の魂の叫びをオチ使わないで欲しい…
………
……
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演劇鑑賞を終え二人と別れた後はコルディーニ皇子の紹介してくれた店へと向かう。
そこでエルシャは初めてのハーケーン料理に舌鼓を打った。
海が近い事もあってエルシャが昔好きだった海産物が多く出され表情からして大満足が見て取れるほど。
お酒もハーケーン産のワインを飲むのかと思いきや…
エルシャが海の向こうの国で作られたお酒に目を引かれたためソレを頼むことにした。
ハーケーン産のワインは有名で珍しくはないため飲んだ事のないものを飲みたかったらしい。
そして屋敷に戻る頃にはケヴィンが見たことが無いほど…そしてエルシャ自身ですら経験した事が無いほどに酔いが回っていた。
エルシャは自分でもわかるほど浮かれていた。
それは、ちょっと前までのエルシャでは絶対に経験できないと考えていた事をその身で体験したこと…
いや、むしろ立場が違っていても国外への旅行などそうそうできるものではない。
それほどの経験をしたのだ。
それはまるで本当に夢を見ているかのような一日、浮かれるなという方がおかしい。
そんなエルシャを眺めながら尋ねるケヴィン。
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両手で口を隠しながらもこぼれてしまう笑顔とクスクスという笑い声…
ケヴィンもその普段とは違うエルシャを心の底から魅力的だと感じ、自然と手を差し出していた。
「それではエルシャルフィール姫…今宵、あなたに愛を囁くことをお許しください」
ケヴィンの囁きに胸が高鳴り顔が紅潮する。
エルシャが今まで感じたことが無いようなフワフワとした感情に自然とケヴィンの手を取る。
「…許します」
そう言ってまるでダンスに誘われるかのように抱きしめられ…
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「いや…勝手にトンネルつなげちゃダメでしょうに!?」
エルシャの頭の中に昨日先送りにしてしまった様々な問題が噴出するのであった。
主に"国防"とか"責任問題"とか"国防"とか"外交問題"とか"国防"とかである…
「お父様はこの事に薄々感づいていたから私をケヴィン様の下へと嫁がせたのでしょうか…?」
"王国の爪の先"と呼ばれた僻地が唐突に国家の最先端基地になろうとしている…
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