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2章:新婚旅行は幻惑の都で…(後編)
30.紅薔薇と女騎士
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「急げ、皇帝と第一皇子は離宮にいるはずだ」
「ああ、『黒の卵』が使われたのだ。もはや手段を選んではいられない、混乱を利用するぞ」
王国軍の軍服に身を包んだ四人は互いに頷き、衛兵達が駆け回っている場内を悠々と進んで行った。
帝国貴族の協力者の手引きにより皇族たちの暗殺の為に侵入した四人。
しかし、その計画の状況は正直に言って芳しくない。
皇都にケヴィンが来たという情報を得てから嫌な予感はしていたのだが…
黄金の稲穂が皇都にいないこの時でなければ計画通りに事を運べない。
しかし、あのケヴィンがココにいるという事はその仲間たちが何処からか湧いてきて計画が邪魔される事は必死。
こちらもすぐさま動かなければならない。
所詮はこの命と引き換えに人を一人二人殺すだけの事なのだ。
―――――――――――――――――
「あーもう、姐さんがブチ切れるから…」
「んだと?どう見ても悪いのはケヴィンの野郎だろうが」
「前にも見た邪神の領域ってやつでしょこれ?」
「困ったわねぇ…これじゃあ中に入れないわよ?」
『紅薔薇』の四人はリーダーのリディアの頭を冷やすために連れ出した後、パーティー会場に入れなくなってしまい立ち往生していた。
傍には彼女らの下僕…ではなく夫である四人の紳士。
彼等は躊躇なく戦場であろう場所へ向かおうとする妻達の身を案じ、提案をした。
「なあリディア…できる事が無いのであれば我々も避難したほうがいいのでは?」
「非難??誰に文句言いに行くのさ…あの根暗どもにゃ会話なんて通じないんだから見つけたらぶち殺しておきゃあいいんだよ。ったく相変わらず甘ちゃんだね」
「いや、その”ひなん”では…いやいいです」
引き下がるという事を知らない妻達に"撤退"という言葉は少々難しすぎたようだ。
恐れを知らずガンガンと邪神の結界を蹴りながら突破方法を相談している『紅薔薇』達。
このような場合、夫としてできる最大のサポートは自分が引き下がる…である。
美人が取り柄の妻との夫婦生活で得た知恵だ。
「ケヴィンったら大丈夫かしら?」
「まあ、しぶとい奴だから死にはしないっしょ」
ケラケラと笑いながら中に入る方法を探る『紅薔薇』。
冒険者として場数を踏んで来た彼女らにとってはなんて事の無い状況であるが、周りはそうゆうわけにはいかない。
城の兵士たちも慌ただしく動いており、多くの兵が行ったり来たりと駆け回っていた。
ふと、その中の一団に違和感を感じたリディアはそれに声をかけた。
「おい、ちょいと待ちな」
リディアに声をかけられ立ち止まった兵士たち。
「な、なんだ?」
「ああ…やっぱり、あんた『紅き血潮』の奴等じゃないか…なんだって兵士の恰好なんかしてるんだい?」
「…ああ、いつまでも冒険者やってるわけにはいかないだろう?」
「国に仕えて真っ当に暮らそうってか?殊勝なこったねぇ」
「お前たち貴族とは違うからな…仕事があるんだ、もう行くぞ」
「ふーん…」
ヒラヒラと手を振り行っていいぞとジェスチャーするリディア。
それを気にする事もなく『紅き血潮』は去っていった。
―――――――――――――――――
皇城の周辺の警備をしていたメルキスは警備隊が慌ただしく動いているのに気が付き声をかけた。
「何事ですか?」
「ハッ!昼頃に裏門で騒ぎを起こした男が取調室で暴れて脱走したらしく…」
警備隊が説明をしていると、メルキスの耳に怒声が聞こえて来た。
「止まれ!!止まらんと斬るぞ!!!!」
それに応えるのは男の獣の様な雄叫び。
すぐに現場へと駆け付けたメルキスであったが、そこで目に飛び込んで来たものは異常な光景であった。
何処にでもよくいるような冒険者風の男が怒声を放ちながら、男を取り囲もうとする警備隊を手に持ったハンマーでなぎ倒していく…
明らかにおかしいその光景にすぐに味方に指示を送るメルキス。
「魔術師!あの男のスキル鑑定を!!」
「ハッ!………でました、<怒り>?…おそらく『条件スキル』です!!」
それを聞いて思わず舌打ちをするメルキス。
『条件スキル』―――分類上は一般的な<スキル>ではある。
特定の条件を満たした場合に効果を発揮する類の<スキル>なのだが、その効力に問題があった。
勿論その条件や効果も様々ではあるものの、条件さえ整えば<EXスキル>並みの能力を発揮可能性があるという代物。
そして、<怒り>というスキル名と目の前の状況から察するに、あの男はその条件を満たしてしまっている。
そうであれば、とても一般の警備隊員が相手を出来る相手ではない。
すぐさま前に飛び出し警告するメルキス。
「そこの男、止まりなさい!止まらなければ実力行使します」
しかしその声が男に届く事は無く、メルキスに対してハンマーが振り下ろされた。
その異常に鋭いハンマーの一撃を咄嗟に剣で弾き返すのだが…
「ぐぅっ!」
完全にスキルだよりで理性の欠片も感じられない無茶苦茶な動き。
だが、迷いも保身もないがゆえにその一撃は重かった。
その一撃に思わず眉をしかめ、バックステップで後方へと下がった。
ジンジンと手に痺れが伝わってくる…
(追撃が来るとマズい…!)
メルキスは必ず来るであろう追撃に対応するため、痺れる手で何とか剣を持ち直す。
…が、それを無視して男はメルキスに背を向け走って行ってしまった。
(どうゆう事…?)
一瞬考え、そして男の向かった先に気が付いたのだった。
「いけないっ!!」
メルキスはすぐに男を追って皇城へと走ったのであった。
「ああ、『黒の卵』が使われたのだ。もはや手段を選んではいられない、混乱を利用するぞ」
王国軍の軍服に身を包んだ四人は互いに頷き、衛兵達が駆け回っている場内を悠々と進んで行った。
帝国貴族の協力者の手引きにより皇族たちの暗殺の為に侵入した四人。
しかし、その計画の状況は正直に言って芳しくない。
皇都にケヴィンが来たという情報を得てから嫌な予感はしていたのだが…
黄金の稲穂が皇都にいないこの時でなければ計画通りに事を運べない。
しかし、あのケヴィンがココにいるという事はその仲間たちが何処からか湧いてきて計画が邪魔される事は必死。
こちらもすぐさま動かなければならない。
所詮はこの命と引き換えに人を一人二人殺すだけの事なのだ。
―――――――――――――――――
「あーもう、姐さんがブチ切れるから…」
「んだと?どう見ても悪いのはケヴィンの野郎だろうが」
「前にも見た邪神の領域ってやつでしょこれ?」
「困ったわねぇ…これじゃあ中に入れないわよ?」
『紅薔薇』の四人はリーダーのリディアの頭を冷やすために連れ出した後、パーティー会場に入れなくなってしまい立ち往生していた。
傍には彼女らの下僕…ではなく夫である四人の紳士。
彼等は躊躇なく戦場であろう場所へ向かおうとする妻達の身を案じ、提案をした。
「なあリディア…できる事が無いのであれば我々も避難したほうがいいのでは?」
「非難??誰に文句言いに行くのさ…あの根暗どもにゃ会話なんて通じないんだから見つけたらぶち殺しておきゃあいいんだよ。ったく相変わらず甘ちゃんだね」
「いや、その”ひなん”では…いやいいです」
引き下がるという事を知らない妻達に"撤退"という言葉は少々難しすぎたようだ。
恐れを知らずガンガンと邪神の結界を蹴りながら突破方法を相談している『紅薔薇』達。
このような場合、夫としてできる最大のサポートは自分が引き下がる…である。
美人が取り柄の妻との夫婦生活で得た知恵だ。
「ケヴィンったら大丈夫かしら?」
「まあ、しぶとい奴だから死にはしないっしょ」
ケラケラと笑いながら中に入る方法を探る『紅薔薇』。
冒険者として場数を踏んで来た彼女らにとってはなんて事の無い状況であるが、周りはそうゆうわけにはいかない。
城の兵士たちも慌ただしく動いており、多くの兵が行ったり来たりと駆け回っていた。
ふと、その中の一団に違和感を感じたリディアはそれに声をかけた。
「おい、ちょいと待ちな」
リディアに声をかけられ立ち止まった兵士たち。
「な、なんだ?」
「ああ…やっぱり、あんた『紅き血潮』の奴等じゃないか…なんだって兵士の恰好なんかしてるんだい?」
「…ああ、いつまでも冒険者やってるわけにはいかないだろう?」
「国に仕えて真っ当に暮らそうってか?殊勝なこったねぇ」
「お前たち貴族とは違うからな…仕事があるんだ、もう行くぞ」
「ふーん…」
ヒラヒラと手を振り行っていいぞとジェスチャーするリディア。
それを気にする事もなく『紅き血潮』は去っていった。
―――――――――――――――――
皇城の周辺の警備をしていたメルキスは警備隊が慌ただしく動いているのに気が付き声をかけた。
「何事ですか?」
「ハッ!昼頃に裏門で騒ぎを起こした男が取調室で暴れて脱走したらしく…」
警備隊が説明をしていると、メルキスの耳に怒声が聞こえて来た。
「止まれ!!止まらんと斬るぞ!!!!」
それに応えるのは男の獣の様な雄叫び。
すぐに現場へと駆け付けたメルキスであったが、そこで目に飛び込んで来たものは異常な光景であった。
何処にでもよくいるような冒険者風の男が怒声を放ちながら、男を取り囲もうとする警備隊を手に持ったハンマーでなぎ倒していく…
明らかにおかしいその光景にすぐに味方に指示を送るメルキス。
「魔術師!あの男のスキル鑑定を!!」
「ハッ!………でました、<怒り>?…おそらく『条件スキル』です!!」
それを聞いて思わず舌打ちをするメルキス。
『条件スキル』―――分類上は一般的な<スキル>ではある。
特定の条件を満たした場合に効果を発揮する類の<スキル>なのだが、その効力に問題があった。
勿論その条件や効果も様々ではあるものの、条件さえ整えば<EXスキル>並みの能力を発揮可能性があるという代物。
そして、<怒り>というスキル名と目の前の状況から察するに、あの男はその条件を満たしてしまっている。
そうであれば、とても一般の警備隊員が相手を出来る相手ではない。
すぐさま前に飛び出し警告するメルキス。
「そこの男、止まりなさい!止まらなければ実力行使します」
しかしその声が男に届く事は無く、メルキスに対してハンマーが振り下ろされた。
その異常に鋭いハンマーの一撃を咄嗟に剣で弾き返すのだが…
「ぐぅっ!」
完全にスキルだよりで理性の欠片も感じられない無茶苦茶な動き。
だが、迷いも保身もないがゆえにその一撃は重かった。
その一撃に思わず眉をしかめ、バックステップで後方へと下がった。
ジンジンと手に痺れが伝わってくる…
(追撃が来るとマズい…!)
メルキスは必ず来るであろう追撃に対応するため、痺れる手で何とか剣を持ち直す。
…が、それを無視して男はメルキスに背を向け走って行ってしまった。
(どうゆう事…?)
一瞬考え、そして男の向かった先に気が付いたのだった。
「いけないっ!!」
メルキスはすぐに男を追って皇城へと走ったのであった。
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