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2章:新婚旅行は幻惑の都で…(後編)
32.女騎士と鏡の悪魔
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「ウガァラーーーー!!!」
獣の様な雄叫びと共にモブールが会場に突入して来ると『邪神の聖域』に閉じ込められていたはずの人間達、そして偽ヒイロですらそちらに注目した。
「なんだなんだ???」
突然の乱入者に目を白黒させるケヴィン、そしてそれはエルシャとて例外ではない。
「あれは…モブール、何故ここに!?」
「お知り合いですか?」
「ええ…まあその…話せば長くなりますが…」
一言で言えば簡単に言えてしまうが、弁明をしなければならない立場ゆえに答弁が婉曲になるという意味で長くなる…
しかし、今ここでソレは言うまい。
(何故モブールがここに?)
もしや、エルシャ達にピンチに気が付き助けに来てくれたのか…?
そう思うも、よく考えるとあのモブールがそんなに義理堅いとも思えない。
今日一日で愚か者という人間について学習したエルシャは考え直す。
会場に到着したモブールは「フゥ!フゥ!」と激しく息を切らせながら会場を見渡すと…
ケヴィンの姿が目に移ったのか、そちらに向かって駆けだしてきた。
「ケヴィン!クソ野郎、テメェぶっ殺すっ!!!!」
「「「へ!???」」」
わざわざ『邪神の聖域』を突破してきた理由がケヴィン???
ケヴィン何やった?という視線が否応にも集まるが、勿論ケヴィンは一体何の事なのかさっぱりである。
だが、その中でエルシャだけがその行動を制止させようと動いた。
「モブール!おやめなさいっ!!!」
「っ!?」
エルシャの声に一瞬動揺するモブールであったがハンマーは既に振り下ろされている。
止まらないモブールであったがケヴィンにもエルシャの声が届いていた。
一瞬斬り捨てようかとも考えていたケヴィンであったがエルシャが制止しているという事は知り合いなのだろう。
モブールのハンマーを紙一重で避けそのまま当身を食らわせると「ゴフッ」という空気が漏れる音共にモブールは崩れ落ちた…
「…なんなんだコイツ???」
知り合いらしいエルシャに向かって抗議の視線を送るのだが…
「あのーそのーええっと…」
エルシャにも何故ここにモブールがいるのかは不明であり、いつになく言葉が詰まり目を泳がせるだけであった。
そうこうしている内に今度は別の来客が訪れる。
「ケヴィン殿!これは一体どうなっているのですか!?」
「メルキス!!」
『メルキス』…その名を聞いた瞬間、今まで戦ってきた皆から歓声が上がった。
ジリ貧の戦いを強いられ限界が近づいて来ようとしていたのだ。
皇国が誇る『剣聖』が増援に来てくれた…それで士気が上がらないわけが無かった。
そしてエルシャにもその名に聞き覚えがあった。
「メルキス…ハーケーンの近衛騎士団、『剣聖』のメルキス・コルノディエ様ですか!?」
「あら、王国でも有名なのですか?」
剣の技術的な面はエルシャにはわからないがその名声であれば知っている。
<剣聖>のEXスキルを持つ事を公に明かされており、数々の武勇と女性でありながら近衛騎士団において歴代最年少で部隊長になったと言われている御仁なのだ。
その名は王国までも伝わっており、当然エルシャも聞いた事があった。
そして、周りの様子や何より先程までギリギリの戦いを強いられていたケヴィンの期待に満ちた顔。
いかに戦いを知らないエルシャであってもその意味する所は分かる。
あの『最強の存在』に対抗しうる戦力が到着したのだという事を…
そのメルキスはと言うと、ケヴィン達と対峙する相手に目を向けていた。
「………ヒイロ殿?」
だがいつもと様子が違うような…
メルキスが眉をしかめているとケヴィンが説明した。
「気を付けろ、そいつはヒイロじゃない。『鏡の悪魔』とかいう邪神の僕だ」
「『鏡の悪魔』、たしか人が思う強き者の姿を写し出す悪魔でしたか…」
『邪神の僕』、その名を聞き大体の状況を察したメルキスはすぐに剣を構え…
そして「ハッ!」と息を吐くと偽ヒイロに向かって斬り込んでいった。
ハーケーン最高峰の剣技により、偽ヒイロに攻撃を仕掛けるメルキス。
偽ヒイロの方もそれをいなしていくのだが…
メルキスの連撃に徐々に後退していった。
(いける!)
誰しもがそれを見て思っただろう。
だが、メルキスが追撃をかけようとしたその瞬間。
『シューティング・スター』
突然、偽ヒイロの魔法によりいくつもの光球がばら撒かれると、その光球一つ一つから光の矢が放たれた。
バシンッ!
その魔法に反応したメルキスは一発目の矢を剣で弾くが、二の矢、三の矢を紙一重で躱すとその矢は地面に次々と穴をあけていく。
ステップでその矢を避け続けるもたまらず距離を取るメルキス。
「なるほど、確かにヒイロ殿の剣を真似ているようです…」
確かに強い…
だが、メルキスの目には焦りも不安もなく、あるのは確信のみであった。
「ですが、剣だけであれば勝てます。ケヴィン殿、魔法を潰してください!」
「さっすが『剣聖』様ぁ!!!よっしゃ、希望見えて来た!!」
メルキスの確信、それはケヴィンとであれば例えヒイロのコピーであっても負けないという事。
「えっとぉー、私はどうしましょうかねぇ?」
蚊帳の外にされていたカルディエの問いかけにチラリとケヴィンを見てから答える。
「怪盗カルディエ…なぜあなたがココにいるのかは敢えて聞きません。
今は味方という事でよろしいですか?」
「ええ、それで構わないわ」
「わかりました、ですが貴方には何度も出し抜かれていてどうにも苦手です。
なので私は貴方を無視します、勝手に合わせなさい」
「はいはーい」
そしてメルキスはついて来た兵たちにも号令を出す。
「他の者はゴーレムの対処を!」
「「「ハッ!!」」」
兵たちは直ちに会場で先に戦っていた騎士達の支援にまわった。
そして、メルキスとカルディエ、そしてケヴィン達は再び偽ヒイロと対峙する。
「『皇国の剣聖』メルキス・コルノディエ、参る!!」
獣の様な雄叫びと共にモブールが会場に突入して来ると『邪神の聖域』に閉じ込められていたはずの人間達、そして偽ヒイロですらそちらに注目した。
「なんだなんだ???」
突然の乱入者に目を白黒させるケヴィン、そしてそれはエルシャとて例外ではない。
「あれは…モブール、何故ここに!?」
「お知り合いですか?」
「ええ…まあその…話せば長くなりますが…」
一言で言えば簡単に言えてしまうが、弁明をしなければならない立場ゆえに答弁が婉曲になるという意味で長くなる…
しかし、今ここでソレは言うまい。
(何故モブールがここに?)
もしや、エルシャ達にピンチに気が付き助けに来てくれたのか…?
そう思うも、よく考えるとあのモブールがそんなに義理堅いとも思えない。
今日一日で愚か者という人間について学習したエルシャは考え直す。
会場に到着したモブールは「フゥ!フゥ!」と激しく息を切らせながら会場を見渡すと…
ケヴィンの姿が目に移ったのか、そちらに向かって駆けだしてきた。
「ケヴィン!クソ野郎、テメェぶっ殺すっ!!!!」
「「「へ!???」」」
わざわざ『邪神の聖域』を突破してきた理由がケヴィン???
ケヴィン何やった?という視線が否応にも集まるが、勿論ケヴィンは一体何の事なのかさっぱりである。
だが、その中でエルシャだけがその行動を制止させようと動いた。
「モブール!おやめなさいっ!!!」
「っ!?」
エルシャの声に一瞬動揺するモブールであったがハンマーは既に振り下ろされている。
止まらないモブールであったがケヴィンにもエルシャの声が届いていた。
一瞬斬り捨てようかとも考えていたケヴィンであったがエルシャが制止しているという事は知り合いなのだろう。
モブールのハンマーを紙一重で避けそのまま当身を食らわせると「ゴフッ」という空気が漏れる音共にモブールは崩れ落ちた…
「…なんなんだコイツ???」
知り合いらしいエルシャに向かって抗議の視線を送るのだが…
「あのーそのーええっと…」
エルシャにも何故ここにモブールがいるのかは不明であり、いつになく言葉が詰まり目を泳がせるだけであった。
そうこうしている内に今度は別の来客が訪れる。
「ケヴィン殿!これは一体どうなっているのですか!?」
「メルキス!!」
『メルキス』…その名を聞いた瞬間、今まで戦ってきた皆から歓声が上がった。
ジリ貧の戦いを強いられ限界が近づいて来ようとしていたのだ。
皇国が誇る『剣聖』が増援に来てくれた…それで士気が上がらないわけが無かった。
そしてエルシャにもその名に聞き覚えがあった。
「メルキス…ハーケーンの近衛騎士団、『剣聖』のメルキス・コルノディエ様ですか!?」
「あら、王国でも有名なのですか?」
剣の技術的な面はエルシャにはわからないがその名声であれば知っている。
<剣聖>のEXスキルを持つ事を公に明かされており、数々の武勇と女性でありながら近衛騎士団において歴代最年少で部隊長になったと言われている御仁なのだ。
その名は王国までも伝わっており、当然エルシャも聞いた事があった。
そして、周りの様子や何より先程までギリギリの戦いを強いられていたケヴィンの期待に満ちた顔。
いかに戦いを知らないエルシャであってもその意味する所は分かる。
あの『最強の存在』に対抗しうる戦力が到着したのだという事を…
そのメルキスはと言うと、ケヴィン達と対峙する相手に目を向けていた。
「………ヒイロ殿?」
だがいつもと様子が違うような…
メルキスが眉をしかめているとケヴィンが説明した。
「気を付けろ、そいつはヒイロじゃない。『鏡の悪魔』とかいう邪神の僕だ」
「『鏡の悪魔』、たしか人が思う強き者の姿を写し出す悪魔でしたか…」
『邪神の僕』、その名を聞き大体の状況を察したメルキスはすぐに剣を構え…
そして「ハッ!」と息を吐くと偽ヒイロに向かって斬り込んでいった。
ハーケーン最高峰の剣技により、偽ヒイロに攻撃を仕掛けるメルキス。
偽ヒイロの方もそれをいなしていくのだが…
メルキスの連撃に徐々に後退していった。
(いける!)
誰しもがそれを見て思っただろう。
だが、メルキスが追撃をかけようとしたその瞬間。
『シューティング・スター』
突然、偽ヒイロの魔法によりいくつもの光球がばら撒かれると、その光球一つ一つから光の矢が放たれた。
バシンッ!
その魔法に反応したメルキスは一発目の矢を剣で弾くが、二の矢、三の矢を紙一重で躱すとその矢は地面に次々と穴をあけていく。
ステップでその矢を避け続けるもたまらず距離を取るメルキス。
「なるほど、確かにヒイロ殿の剣を真似ているようです…」
確かに強い…
だが、メルキスの目には焦りも不安もなく、あるのは確信のみであった。
「ですが、剣だけであれば勝てます。ケヴィン殿、魔法を潰してください!」
「さっすが『剣聖』様ぁ!!!よっしゃ、希望見えて来た!!」
メルキスの確信、それはケヴィンとであれば例えヒイロのコピーであっても負けないという事。
「えっとぉー、私はどうしましょうかねぇ?」
蚊帳の外にされていたカルディエの問いかけにチラリとケヴィンを見てから答える。
「怪盗カルディエ…なぜあなたがココにいるのかは敢えて聞きません。
今は味方という事でよろしいですか?」
「ええ、それで構わないわ」
「わかりました、ですが貴方には何度も出し抜かれていてどうにも苦手です。
なので私は貴方を無視します、勝手に合わせなさい」
「はいはーい」
そしてメルキスはついて来た兵たちにも号令を出す。
「他の者はゴーレムの対処を!」
「「「ハッ!!」」」
兵たちは直ちに会場で先に戦っていた騎士達の支援にまわった。
そして、メルキスとカルディエ、そしてケヴィン達は再び偽ヒイロと対峙する。
「『皇国の剣聖』メルキス・コルノディエ、参る!!」
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