26 / 75
第1章:漂流の始まり――宮廷という伏魔殿
第26話:選んだ孤独と、降ろされた手
しおりを挟む
――翌日の夕方。
殿下の執務室を訪ねた。
「短い間でしたが、大変お世話になりました。殿下の御健勝、そして、帝国の繁栄と国民の幸せをお祈りしております」
そう言って、署名済みの離縁届と結婚指輪を差し出した。
結局、指輪のサイズは調整されないまま。
最後まで、私の指には合わなかった。
ま、これで私が成人したときか、数年して国際情勢が落ち着けば、自動的に離縁の手続きが行われるだろう。
でも、ネックレスには手を伸ばせなかった。
本来なら、指輪と一緒に返すべきなのかもしれない。
けれど、どうしても外せなかった。
ただの装飾品じゃなかったから。
これを返してしまったら、何かが音を立てて終わりそうで……怖かった。
「こんなに早急に出て行かなくともよいだろう?」
「『思い立ったが吉日』。帝国の諺ですよね?」
「……明日は、何時に発つ?」
そう尋ねた殿下の声が、なぜか少しだけ、寂しげに聞こえた。
「朝の8時に」
殿下は静かに立ち上がった。
視線を逸らさず、ゆっくりと歩み寄ってくる。
そして、何も言わずに、私を腕の中に囲った。
鼻先に、殿下の衣の香がふわりと漂い、彼の心音が、静かに響いた。
耳元に、低く、静かな声が落ちる。
「明日は、一緒に朝食を取ろう」
「……はい」
ほんの一瞬、彼の胸に頭を預けてから、一歩引いて距離を取る。
背筋を伸ばし姿勢を整えると、精一杯の美しいカーテシーをして、殿下にさよならを告げた。
執務室から出た瞬間、背筋を伸ばしていたはずの身体から力が抜けた。
廊下を歩き出した途端に視界が揺れ、涙が次から次へと溢れ出す。
自分で決めたことなのに――。
窓辺に差し込む夕暮れの光が、頬を赤く照らした。
王国より少し遅いその光は、淡く、優しく、祖母の眼差しのように思えた。
祖母の言葉が、ふと胸に蘇る。
「誰も褒めてくれなくてもね――ヘレナの頑張りは、ちゃんと私が見ているよ。
私がいなくなったら? ふふ、その時は、お天道様にお願いしておくの。
ヘレナのこと、ずっと見守ってくださいませ、とね」
……お祖母様。
「今の私も、見てくれていますか? ……少しだけ、お休みしてもいいでしょうか。居場所探し」
沈黙の中でしか聞こえない声が、届いた気がした。
きっと祖母なら、こう言ってくれる。
『森だって、冬には眠るのよ。春に芽吹くために。休むことも成長のうち。ヘレナもおんなじ、だいじょうぶ』
だから今は、涙のまま眠ろう。
……そう思ったのに、どうしてもあのことが気になっていた。
その夜、荷造りの合間に、私は宮廷画家を呼んだ。
「私がちゃーんと皇太子妃教育を受けていたことを、記録に残してほしいの」
そう言って、まともに使ったことのない執務机に腰かけた。
机の上には、会計学の教科書と、数字と符号の羅列が並ぶ2枚のシート。
そして背後の壁には、何かの構造を描いたような紙を貼りつけた。
勉強の補助資料に見せかけて。
「……私のノートにある数字の並びも、符号の形も、インクの濃淡も――一字一句違えずに描いてね?
殿下ってば、すっごく細かいの。計算間違いを見つけようものなら、どや顔で正してくるんだから!」
画家は一瞬、怪訝そうに眉をひそめた。
けれど、やがて黙って筆を走らせる。
この人は、寝グセの一本まで描き込むほど精密な人だ。
だから、数字の羅列だって「勉強用のメモ」として写すことに、何の違和感も覚えないだろう。
――むしろ、この異質な紙質に至るまで、きっちり再現してくれそうだ。
これは、ただの覚え書きじゃない。
数字の並びには、帳簿を扱ってきた者にしか分からない“裏”の匂いが漂っていた。
そして、図形を歪めたような符号も、図表も政策をまとめたような資料には見えなかった。
けれど、私にはそれを追及する権限も立場もない。
だから――せめて、残すことだけはしておこう。
消されてしまう前に、痕跡だけでも。
「……できあがったら、陛下に渡してちょうだい」
一瞬、筆先が止まった。
あの朝、冗談半分で「パトロンは陛下ね?」と口にした時と同じ反応。
先ほどから、ふわりと漂う気配。
帝国の威厳を象徴する竜涎香――アンバーグリスと呼ばれる、海の深みから生まれる芳香。
初めて謁見の間で陛下に拝したとき、玉座の周りに漂っていた。
初対面のときから、宮廷画家にも同じ匂いを感じていた。
あの時は気のせいだと思って笑い飛ばしたけれど――今なら分かる。
「あなたのパトロンは、陛下なのでしょう?」
「妃様……」
その沈黙は、筆よりも雄弁だった。
私には扱えないけれど、陛下ならきっと意味を見つけてくださるはず。
この小さな行為が、後に殿下の物語を動かすことになるなんて――この時の私はまだ知らなかった。
翌朝。
日の出とともに、宮殿を発った。
昨夜、挨拶は済ませた。
朝、食事を一緒にしようと誘われたけど、それは社交辞令の一環だと思うことにした。
殿下との、最後の約束だったかもしれないのに。
それを反故にしちゃったことに、胸の奥がチクりと痛んだ。
それでも、綺麗に、去りたかった。
せめて最後くらい、王国の女の誇りを持ちたかった。
――それが建前。
本当はただ、殿下の記憶に残る私が、少しでも綺麗であってほしかった。
涙を見せずに去る自信を、どうしても持てなかった。
王国では、別れの挨拶は抱擁するのがお決まりだ。
温もりを交わして、涙を見せても許される。
でも、帝国では――静かに、背筋を伸ばして去るのが美しいとされる。
だからきっと。
帝国流の“礼節”には――こっちのほうが、正しいのだろう。
――捨てられた、と思えたらよかったのに。
そうじゃないのが、ちょっとだけ、辛い。
『叔父くらいに思ってくれたらいい』と言われたけれど、そもそも私は、叔父という存在を知らない。
世間一般には「甘えられる存在」なのだとしたら、その言葉に、少しだけ憧れた。
でも私には、結局それがどういうものか、最後まで分からなかった。
それでも――私を離宮へ追いやることが、殿下の“優しさ”だったのなら。
その優しさに、今はすがらせてほしい。
――長年使われていなかった静寂を保つ森の離宮。
その扉を開けた先に、私の新しい物語が待っていることなど、まだ想像もしていなかった。
◆◆◆
ヘレナが離宮へ移る前に、最後に食事を共にしたかった。
朝。まだ空が明けきらぬ頃、家族用の食堂で席を整えて待った。
だが、8時を過ぎても彼女は来ない。
「……日の出とともに、発たれました」
侍従の言葉に、胸の奥がスッと沈んだ。
昨夜の挨拶が、最後だったのか。
綺麗に去りたかったのだろう。
帝国流の“礼節”を、彼女は誰よりも大切にしていた。
――自分は、沈黙しか選ばなかった。
あの時、手を差し伸べれば、彼女の決意を揺らがせてしまう。
必死に自分の足で立とうとする姿を、止めることはできなかった。
だが、この沈黙こそが、彼女を最も深く傷つけたのだとしたら。
……自分の沈黙は、やはり罪だ。
***
ここまでお読みいただき、ありがとうございます(^^)
第1章 宮廷編はここまでとなります。
第2章 離宮編は、12/31から投稿再開いたします。
引き続き、ヘレナの旅路を一緒に見守っていただけますと嬉しいです。
殿下の執務室を訪ねた。
「短い間でしたが、大変お世話になりました。殿下の御健勝、そして、帝国の繁栄と国民の幸せをお祈りしております」
そう言って、署名済みの離縁届と結婚指輪を差し出した。
結局、指輪のサイズは調整されないまま。
最後まで、私の指には合わなかった。
ま、これで私が成人したときか、数年して国際情勢が落ち着けば、自動的に離縁の手続きが行われるだろう。
でも、ネックレスには手を伸ばせなかった。
本来なら、指輪と一緒に返すべきなのかもしれない。
けれど、どうしても外せなかった。
ただの装飾品じゃなかったから。
これを返してしまったら、何かが音を立てて終わりそうで……怖かった。
「こんなに早急に出て行かなくともよいだろう?」
「『思い立ったが吉日』。帝国の諺ですよね?」
「……明日は、何時に発つ?」
そう尋ねた殿下の声が、なぜか少しだけ、寂しげに聞こえた。
「朝の8時に」
殿下は静かに立ち上がった。
視線を逸らさず、ゆっくりと歩み寄ってくる。
そして、何も言わずに、私を腕の中に囲った。
鼻先に、殿下の衣の香がふわりと漂い、彼の心音が、静かに響いた。
耳元に、低く、静かな声が落ちる。
「明日は、一緒に朝食を取ろう」
「……はい」
ほんの一瞬、彼の胸に頭を預けてから、一歩引いて距離を取る。
背筋を伸ばし姿勢を整えると、精一杯の美しいカーテシーをして、殿下にさよならを告げた。
執務室から出た瞬間、背筋を伸ばしていたはずの身体から力が抜けた。
廊下を歩き出した途端に視界が揺れ、涙が次から次へと溢れ出す。
自分で決めたことなのに――。
窓辺に差し込む夕暮れの光が、頬を赤く照らした。
王国より少し遅いその光は、淡く、優しく、祖母の眼差しのように思えた。
祖母の言葉が、ふと胸に蘇る。
「誰も褒めてくれなくてもね――ヘレナの頑張りは、ちゃんと私が見ているよ。
私がいなくなったら? ふふ、その時は、お天道様にお願いしておくの。
ヘレナのこと、ずっと見守ってくださいませ、とね」
……お祖母様。
「今の私も、見てくれていますか? ……少しだけ、お休みしてもいいでしょうか。居場所探し」
沈黙の中でしか聞こえない声が、届いた気がした。
きっと祖母なら、こう言ってくれる。
『森だって、冬には眠るのよ。春に芽吹くために。休むことも成長のうち。ヘレナもおんなじ、だいじょうぶ』
だから今は、涙のまま眠ろう。
……そう思ったのに、どうしてもあのことが気になっていた。
その夜、荷造りの合間に、私は宮廷画家を呼んだ。
「私がちゃーんと皇太子妃教育を受けていたことを、記録に残してほしいの」
そう言って、まともに使ったことのない執務机に腰かけた。
机の上には、会計学の教科書と、数字と符号の羅列が並ぶ2枚のシート。
そして背後の壁には、何かの構造を描いたような紙を貼りつけた。
勉強の補助資料に見せかけて。
「……私のノートにある数字の並びも、符号の形も、インクの濃淡も――一字一句違えずに描いてね?
殿下ってば、すっごく細かいの。計算間違いを見つけようものなら、どや顔で正してくるんだから!」
画家は一瞬、怪訝そうに眉をひそめた。
けれど、やがて黙って筆を走らせる。
この人は、寝グセの一本まで描き込むほど精密な人だ。
だから、数字の羅列だって「勉強用のメモ」として写すことに、何の違和感も覚えないだろう。
――むしろ、この異質な紙質に至るまで、きっちり再現してくれそうだ。
これは、ただの覚え書きじゃない。
数字の並びには、帳簿を扱ってきた者にしか分からない“裏”の匂いが漂っていた。
そして、図形を歪めたような符号も、図表も政策をまとめたような資料には見えなかった。
けれど、私にはそれを追及する権限も立場もない。
だから――せめて、残すことだけはしておこう。
消されてしまう前に、痕跡だけでも。
「……できあがったら、陛下に渡してちょうだい」
一瞬、筆先が止まった。
あの朝、冗談半分で「パトロンは陛下ね?」と口にした時と同じ反応。
先ほどから、ふわりと漂う気配。
帝国の威厳を象徴する竜涎香――アンバーグリスと呼ばれる、海の深みから生まれる芳香。
初めて謁見の間で陛下に拝したとき、玉座の周りに漂っていた。
初対面のときから、宮廷画家にも同じ匂いを感じていた。
あの時は気のせいだと思って笑い飛ばしたけれど――今なら分かる。
「あなたのパトロンは、陛下なのでしょう?」
「妃様……」
その沈黙は、筆よりも雄弁だった。
私には扱えないけれど、陛下ならきっと意味を見つけてくださるはず。
この小さな行為が、後に殿下の物語を動かすことになるなんて――この時の私はまだ知らなかった。
翌朝。
日の出とともに、宮殿を発った。
昨夜、挨拶は済ませた。
朝、食事を一緒にしようと誘われたけど、それは社交辞令の一環だと思うことにした。
殿下との、最後の約束だったかもしれないのに。
それを反故にしちゃったことに、胸の奥がチクりと痛んだ。
それでも、綺麗に、去りたかった。
せめて最後くらい、王国の女の誇りを持ちたかった。
――それが建前。
本当はただ、殿下の記憶に残る私が、少しでも綺麗であってほしかった。
涙を見せずに去る自信を、どうしても持てなかった。
王国では、別れの挨拶は抱擁するのがお決まりだ。
温もりを交わして、涙を見せても許される。
でも、帝国では――静かに、背筋を伸ばして去るのが美しいとされる。
だからきっと。
帝国流の“礼節”には――こっちのほうが、正しいのだろう。
――捨てられた、と思えたらよかったのに。
そうじゃないのが、ちょっとだけ、辛い。
『叔父くらいに思ってくれたらいい』と言われたけれど、そもそも私は、叔父という存在を知らない。
世間一般には「甘えられる存在」なのだとしたら、その言葉に、少しだけ憧れた。
でも私には、結局それがどういうものか、最後まで分からなかった。
それでも――私を離宮へ追いやることが、殿下の“優しさ”だったのなら。
その優しさに、今はすがらせてほしい。
――長年使われていなかった静寂を保つ森の離宮。
その扉を開けた先に、私の新しい物語が待っていることなど、まだ想像もしていなかった。
◆◆◆
ヘレナが離宮へ移る前に、最後に食事を共にしたかった。
朝。まだ空が明けきらぬ頃、家族用の食堂で席を整えて待った。
だが、8時を過ぎても彼女は来ない。
「……日の出とともに、発たれました」
侍従の言葉に、胸の奥がスッと沈んだ。
昨夜の挨拶が、最後だったのか。
綺麗に去りたかったのだろう。
帝国流の“礼節”を、彼女は誰よりも大切にしていた。
――自分は、沈黙しか選ばなかった。
あの時、手を差し伸べれば、彼女の決意を揺らがせてしまう。
必死に自分の足で立とうとする姿を、止めることはできなかった。
だが、この沈黙こそが、彼女を最も深く傷つけたのだとしたら。
……自分の沈黙は、やはり罪だ。
***
ここまでお読みいただき、ありがとうございます(^^)
第1章 宮廷編はここまでとなります。
第2章 離宮編は、12/31から投稿再開いたします。
引き続き、ヘレナの旅路を一緒に見守っていただけますと嬉しいです。
79
あなたにおすすめの小説
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
王太子妃は離婚したい
凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。
だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。
※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。
綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。
これまで応援いただき、本当にありがとうございました。
レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。
https://www.regina-books.com/extra/login
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる