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第2章:新たな漂流先――森の離宮
第31話:父子の決意
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◆◆◆アルフォンス殿下の執務室
「――なんだと」
静かな執務室に、カランと乾いた音が落ちた。
彼女から贈られた万年筆が、硬い床に転がる。
護衛打ち切り――。
守るために離宮へ移したはずの彼女を、まだ追い詰めるのか。
「……愚かな真似を」
低く吐き捨てる。
ロレーヌ派のやり口だ。見え透いている。
机の二重底に指をかける。
そこには、父から託された3枚の書類が納められている。
どこから入手したものかは知らされていない。
だが、確かに不正の影を示していた。
「……必ず明かしてみせる」
5年前の痛みを、2度と繰り返させはしない。
今度こそ炙り出す。芽のうちに摘み、根ごと断ち切る。
冷酷非道と囁かれるなら――その評判すら、利用してみせる。
――だが。
同じ場所でひっそりと眠っている離縁届。
指先が、そこに留まる。
「……笑っているだろうか」
勝気な顔が脳裏に浮かぶ。
彼女に不満の矛先を向けることは、2度と許さない。
◆◆◆ 陛下の執務室
離宮に忍ばせていた影からの報告を受ける。
「……やはり動いたか。あの派閥の浅ましい手筋は、昔から変わらぬ」
静かに息を吐いた。
アルフォンスは、自ら証を掴み、敵を一掃する力を持っている。
あれは、次期皇帝の器だ。
だが、あやつはまだ若い。
血が熱く、守りたいものに対しては無謀にもなる。
エレナ――。
あの娘には、息子を支える才覚と胆力がある。
だが同時に、矢面に立たされやすい。
だからこそ、伏せておかねばならぬ。
彼女が証を掴んだと知れば、あやつは必ず彼女を庇い、己を危うくする。
それだけは避けねばならぬ。
5年前と同じ轍は踏まない。
机の引き出しに目を落とす。
不正の証を写した3枚の紙――あれをアルフォンスに託した。
灯火は渡した。
だが、刃を振るうのは息子自身だ。
父としては酷かもしれぬ。
だが、帝国を背負う者には、それ以外に道はない。
「……義娘を、決して守りの輪から外すな」
「御意」
たしかな決意を秘めた影の声が、冷たい石壁に残響した。
「――なんだと」
静かな執務室に、カランと乾いた音が落ちた。
彼女から贈られた万年筆が、硬い床に転がる。
護衛打ち切り――。
守るために離宮へ移したはずの彼女を、まだ追い詰めるのか。
「……愚かな真似を」
低く吐き捨てる。
ロレーヌ派のやり口だ。見え透いている。
机の二重底に指をかける。
そこには、父から託された3枚の書類が納められている。
どこから入手したものかは知らされていない。
だが、確かに不正の影を示していた。
「……必ず明かしてみせる」
5年前の痛みを、2度と繰り返させはしない。
今度こそ炙り出す。芽のうちに摘み、根ごと断ち切る。
冷酷非道と囁かれるなら――その評判すら、利用してみせる。
――だが。
同じ場所でひっそりと眠っている離縁届。
指先が、そこに留まる。
「……笑っているだろうか」
勝気な顔が脳裏に浮かぶ。
彼女に不満の矛先を向けることは、2度と許さない。
◆◆◆ 陛下の執務室
離宮に忍ばせていた影からの報告を受ける。
「……やはり動いたか。あの派閥の浅ましい手筋は、昔から変わらぬ」
静かに息を吐いた。
アルフォンスは、自ら証を掴み、敵を一掃する力を持っている。
あれは、次期皇帝の器だ。
だが、あやつはまだ若い。
血が熱く、守りたいものに対しては無謀にもなる。
エレナ――。
あの娘には、息子を支える才覚と胆力がある。
だが同時に、矢面に立たされやすい。
だからこそ、伏せておかねばならぬ。
彼女が証を掴んだと知れば、あやつは必ず彼女を庇い、己を危うくする。
それだけは避けねばならぬ。
5年前と同じ轍は踏まない。
机の引き出しに目を落とす。
不正の証を写した3枚の紙――あれをアルフォンスに託した。
灯火は渡した。
だが、刃を振るうのは息子自身だ。
父としては酷かもしれぬ。
だが、帝国を背負う者には、それ以外に道はない。
「……義娘を、決して守りの輪から外すな」
「御意」
たしかな決意を秘めた影の声が、冷たい石壁に残響した。
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