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SS 返品は受付ないからな(おまけ編)
しおりを挟む――10分後。
先程から彼の吐息が首筋に当たってこそばゆい。
「ちょっと。くすぐったいんだけど」
「仕方ないだろ?」
「そうやって首に口を当てながら話すの、やめてよ」
「なんで?」
「くすぐったいから」
「慣れてくれ」
「もうっ! だからくすぐったいんだってば! 寝れないじゃない!」
振り返ってそう抗議すると、意図せず唇がフェルディナン様の鼻先に当たってしまった。
「お前っ、急に振り向くなよ。……キスしそうになっただろ」
「な、な、なに言ってんのよ」
「……してもいいか?」
「何を?」
「キス」
「…………ダメ」
「なんで?」
「だって。明日、父様にどんな顔して会ったらいいか、分からなくなるんだもん」
「お前なぁ。今、それ言うか? たしかに、そうかもしれないけど」
「今夜だって、無断外泊しちゃって。それだけでも、すんごい罪悪感なのに」
「それはっ……、俺が明日、ちゃんと謝るから。ローズは心配するな」
「ごめんね」
「いいから。……もう寝るか」
「うん」
「――だから、くすぐったいんだってば! 寝れないでしょ?」
「そのうち慣れるだろ?」
「ちょっと。この腕、離してよ」
「嫌だ」
その後も同じような問答を繰り返したけれど、結局、フェルディナン様は朝まで私を離してくれなかった。
翌朝は雨もすっかり上がり、綺麗に晴れた。
途中で父に手土産のお菓子を買うと、その足で実家へと謝罪に向かった。
目を赤く泣き腫らした私を見て、父はただでさえ迫力のある顔をさらに強張らせたけれど、菓子折りを手渡し仲直りしたことを伝えると、
「まあ、フェルディナン君も反省しているようだし……。これからはもっと、2人で分かり合う努力をしなさい」
とかなんとか言って、フェルディナン様にだけ「ちょっと来なさい」と言って別室へ連れて行ってしまったけれど、思ったよりも早々に私たちを解放してくれた。
本当は、背中を冷やしてもらっている途中からは酔いも冷めて、2人の会話の内容をしっかり覚えていることは、フェルディナン様には内緒にしておくことにした。
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