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第三章 取材orデート?
お昼ご飯
しおりを挟む二時間後。真琴と鷹城は昼食を摂っていた。
開放感のある広場は半分芝生になっている。真琴たちは大きな木の下にレジャーシートを敷いて、そこに腰を下ろした。
「パンダ、すごく可愛かったな。小さくて、お母さんパンダにずっと抱っこされてた」
鷹城が麦茶を飲みながら笑った。
「なんだか子犬みたいでしたよね。もふもふしてて、連れて帰りたくなりました」
にっこりと真琴も笑みを返す。
「それと、あのヤギには参ったぜ」
「ふふふ、先生は人間以外にもモテますね」
「うるせえ」
久々の動物園はとても楽しかった。ゾウや、シマウマや、ダチョウや、ワニや、チンパンジーがいた。眠ったり、餌を食べたり、毛繕いをする彼らを見ているだけで、ワクワクした。
他にもふれあいコーナーでは、ひよこや、うさぎや、ヤギがいて、自由に触ることが出来た。
鷹城はなぜかヤギに好かれ、尻を食べられそうになっていたのがおかしかった。
(あんなに笑ったの久しぶりだな。最近ずっと笑ってなかったから)
不思議だった。鷹城と一緒にいると、普段の暗い自分が嘘みたいに明るくなれる。
「さ、ご飯にしましょう」
真琴は持ってきたバスケットからランチボックスを取り出した。白にオレンジのラインが入ったシンプルなランチボックスは、真琴が用意したものだ。
中には、ゴマを振ったおにぎりや、油のいい匂いがする唐揚げや、黄色と白がマーブルになった卵焼き。
彩りには、真っ赤なミニトマトに、鮮やかなブロッコリー。箸休めに、枝豆をいれたひじきの煮物もある。
デザートに皮をうさぎのように剥いたリンゴも持ってきた。
「おっ、うまそう」
「すみません、簡単なものしか出来なくて」
「十分だよ。いただきます」
鷹城は「昼飯は買えばいい」と言ってくれた。しかしせっかく連れて行ってもらうのだから、と真琴がお礼も兼ねて早起きして作ったのだ。
「ん。すじこだ。俺すじこ好き」
鷹城がおにぎりを頬張った。
「三種類あるんです。すじこと、昆布と、ツナマヨ」
「最高のラインナップだな。全部食うよ。お前の飯は誰よりもうまい」
「あはは、大げさです」
お世辞だと分かっていたが、嬉しかった。
続いて鷹城は箸をとり、からあげを口に入れる。しょう油と、砂糖と、ショウガで味付けしただけのシンプルな唐揚げは、得意料理のひとつだ。
しばらく二人は食事を楽しんだ。
真琴はデザートのリンゴをもそもそと食べながら思う。
先月はあんなに淫らなことをしてたのに、今はこうして普通に向き合っている。
大人の付き合いとは、こうもあっさりとしたものだろうか。
きっと、鷹城にとって、誰かとセックスすることなど大した問題ではないのだろう。
今までの会話の内容から推察するに、百戦錬磨で、セックスの相手に困ったことはないらしい。
きっと躯を合わせたとしても、またすぐ会いたくなったり、寂しくなったりすることはないのだろう。
その証拠に、下宿初日にスマホでケンカしていた女性とは、未練なくスッパリ終わったみたいだ。
同様に真琴とも、こうして普通に接している。
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