92 / 96
最終章 未来へ
明けましておめでとう
しおりを挟む
「あ、ありがとうございます……。すごく、素敵です。大切に、たいせつに、します」
真琴はなぜか目頭が熱くなり、声が揺れた。
(どうしよ、めちゃくちゃ嬉しい)
鷹城からの初めてのプレゼント。見るからに高級そうで、中央の十字架が品よく輝いている。肌にしっとりと馴染み、つけていることを忘れそうなほど軽い。男がしていても違和感のない、ユニセックスなデザインで、洒落ている。
こんなセンスの良い贈り物をもらったのは生まれて初めてで、真琴は甘い痛みに胸がぎゅうぎゅう締めつけられた。
(こんなことされたらもっと、もっと好きになっちゃうよ)
「よく似合ってるぜ。きれいだよ」
鷹城と真琴は向き合った。
「今はこれしか渡せないけど、いつか左手の薬指用の指輪を贈るからな。その時は、もらってくれ」
鷹城が小さな十字架を手に取って、そっと口づけた。それから顔を上げると、真琴を見詰めて優しく笑う。
(ああ、もう……!)
真琴は愛おしさにたまらなくなり、思わず鷹城の首に抱きついた。
「おっと」
鷹城が優しく抱き留める。真琴はぐりぐりと額を彼の肩にこすりつけた。
「先生好きです、世界中の誰よりも、好きです……!」
「ん。俺もだよ」
と、真琴の髪を撫でる。
「でもおれの方がずーっと、ずううっと、好きですからっ」
「なんだそれ」
鷹城が苦笑した。
「だからおれの方が好きなんです。十年経っても、百年経っても、絶対に好きですからね」
「あはは、分かったよ」
鷹城が真琴に口づけた。暖かく甘いキス。二人はひしと抱き合い、互いの体温を確かめ合う。そして、またベッドに逆戻りした。
鷹城の腕の中で、真琴は思う。
愛することがこれ程幸福をもたらすとは、想像していなかった。
それ以上に、愛されることがこんなに満たされるなんて、知らなかった。
(全部先生が教え導いてくれたんだ……)
その時、遠くから除夜の鐘が聞こえた。二人は静かに見詰め合いながら、耳を澄ませる。
「もうすぐ年が明けますね」
「ああ」
鷹城が体をひねり、サイドボードの目覚まし時計を取った。二人でうつ伏せになり、長針が十二時の文字盤を指すのを見届ける。
しばらくして長い針が頂点を指した。
二人は顔を見合わせて、にっこりと笑う。
「明けましておめでとうございます」
と真琴。
「ああ、明けましておめでとう。今年もよろしくな」
鷹城も笑みを浮かべる。
「はい」
二人はもう一度キスをした。そしてまた笑う。
「先生、お餅は何で食べますか?」
「あんこかきなこ」
「やっぱり!」
朝日のような明るい顔で、真琴が笑った。その表情を、鷹城が愛おしそうに見詰めている。
真琴の胸では銀の十字架が輝き、きらきらと光っていた。
最終話・了
真琴はなぜか目頭が熱くなり、声が揺れた。
(どうしよ、めちゃくちゃ嬉しい)
鷹城からの初めてのプレゼント。見るからに高級そうで、中央の十字架が品よく輝いている。肌にしっとりと馴染み、つけていることを忘れそうなほど軽い。男がしていても違和感のない、ユニセックスなデザインで、洒落ている。
こんなセンスの良い贈り物をもらったのは生まれて初めてで、真琴は甘い痛みに胸がぎゅうぎゅう締めつけられた。
(こんなことされたらもっと、もっと好きになっちゃうよ)
「よく似合ってるぜ。きれいだよ」
鷹城と真琴は向き合った。
「今はこれしか渡せないけど、いつか左手の薬指用の指輪を贈るからな。その時は、もらってくれ」
鷹城が小さな十字架を手に取って、そっと口づけた。それから顔を上げると、真琴を見詰めて優しく笑う。
(ああ、もう……!)
真琴は愛おしさにたまらなくなり、思わず鷹城の首に抱きついた。
「おっと」
鷹城が優しく抱き留める。真琴はぐりぐりと額を彼の肩にこすりつけた。
「先生好きです、世界中の誰よりも、好きです……!」
「ん。俺もだよ」
と、真琴の髪を撫でる。
「でもおれの方がずーっと、ずううっと、好きですからっ」
「なんだそれ」
鷹城が苦笑した。
「だからおれの方が好きなんです。十年経っても、百年経っても、絶対に好きですからね」
「あはは、分かったよ」
鷹城が真琴に口づけた。暖かく甘いキス。二人はひしと抱き合い、互いの体温を確かめ合う。そして、またベッドに逆戻りした。
鷹城の腕の中で、真琴は思う。
愛することがこれ程幸福をもたらすとは、想像していなかった。
それ以上に、愛されることがこんなに満たされるなんて、知らなかった。
(全部先生が教え導いてくれたんだ……)
その時、遠くから除夜の鐘が聞こえた。二人は静かに見詰め合いながら、耳を澄ませる。
「もうすぐ年が明けますね」
「ああ」
鷹城が体をひねり、サイドボードの目覚まし時計を取った。二人でうつ伏せになり、長針が十二時の文字盤を指すのを見届ける。
しばらくして長い針が頂点を指した。
二人は顔を見合わせて、にっこりと笑う。
「明けましておめでとうございます」
と真琴。
「ああ、明けましておめでとう。今年もよろしくな」
鷹城も笑みを浮かべる。
「はい」
二人はもう一度キスをした。そしてまた笑う。
「先生、お餅は何で食べますか?」
「あんこかきなこ」
「やっぱり!」
朝日のような明るい顔で、真琴が笑った。その表情を、鷹城が愛おしそうに見詰めている。
真琴の胸では銀の十字架が輝き、きらきらと光っていた。
最終話・了
応援ありがとうございます!
3
お気に入りに追加
107
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる