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最終章 未来へ

明けましておめでとう

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「あ、ありがとうございます……。すごく、素敵です。大切に、たいせつに、します」

 真琴はなぜか目頭が熱くなり、声が揺れた。

(どうしよ、めちゃくちゃ嬉しい)

 鷹城からの初めてのプレゼント。見るからに高級そうで、中央の十字架が品よく輝いている。肌にしっとりと馴染み、つけていることを忘れそうなほど軽い。男がしていても違和感のない、ユニセックスなデザインで、洒落ている。
 こんなセンスの良い贈り物をもらったのは生まれて初めてで、真琴は甘い痛みに胸がぎゅうぎゅう締めつけられた。

(こんなことされたらもっと、もっと好きになっちゃうよ)

「よく似合ってるぜ。きれいだよ」

 鷹城と真琴は向き合った。

「今はこれしか渡せないけど、いつか左手の薬指用の指輪を贈るからな。その時は、もらってくれ」

 鷹城が小さな十字架を手に取って、そっと口づけた。それから顔を上げると、真琴を見詰めて優しく笑う。

(ああ、もう……!)

 真琴は愛おしさにたまらなくなり、思わず鷹城の首に抱きついた。

「おっと」

 鷹城が優しく抱き留める。真琴はぐりぐりと額を彼の肩にこすりつけた。

「先生好きです、世界中の誰よりも、好きです……!」
「ん。俺もだよ」

 と、真琴の髪を撫でる。

「でもおれの方がずーっと、ずううっと、好きですからっ」
「なんだそれ」

 鷹城が苦笑した。

「だからおれの方が好きなんです。十年経っても、百年経っても、絶対に好きですからね」
「あはは、分かったよ」

 鷹城が真琴に口づけた。暖かく甘いキス。二人はひしと抱き合い、互いの体温を確かめ合う。そして、またベッドに逆戻りした。
 鷹城の腕の中で、真琴は思う。
 愛することがこれ程幸福をもたらすとは、想像していなかった。
 それ以上に、愛されることがこんなに満たされるなんて、知らなかった。

(全部先生が教え導いてくれたんだ……)

 その時、遠くから除夜の鐘が聞こえた。二人は静かに見詰め合いながら、耳を澄ませる。

「もうすぐ年が明けますね」
「ああ」

 鷹城が体をひねり、サイドボードの目覚まし時計を取った。二人でうつ伏せになり、長針が十二時の文字盤を指すのを見届ける。
 しばらくして長い針が頂点を指した。
 二人は顔を見合わせて、にっこりと笑う。

「明けましておめでとうございます」

 と真琴。

「ああ、明けましておめでとう。今年もよろしくな」

 鷹城も笑みを浮かべる。

「はい」

 二人はもう一度キスをした。そしてまた笑う。

「先生、お餅は何で食べますか?」
「あんこかきなこ」
「やっぱり!」

 朝日のような明るい顔で、真琴が笑った。その表情を、鷹城が愛おしそうに見詰めている。
 真琴の胸では銀の十字架が輝き、きらきらと光っていた。
 最終話・了
  
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