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♡story♡

4章 急げ! 広樹に全てを話すんだ!

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亜伊「絶対に私が勝ちますわ」
領子「私が勝つに決まってる。そんなに広樹君のことを酷く扱えるってことは大切にしてない、好きじゃないってことでしょ?」
僕は負けるわけにいかない。
広樹「…………」
椅子に固定されたままの広樹は、何も言わずに亜伊と僕のやりとりを聞いていた。
領子「あなたに勝つ権利なんてない。広樹君はあなたのこと、好きじゃないし」
亜伊「なら、どうして広樹さんは私と別れなかったのです?」
領子「別れることができなかったからでしょ」
広樹が別れると言ったらまず、亜伊は暴走するだろう。自分という彼女がいながら、なぜ、他の女に目を向けたのかと。
僕は広樹に近付いていった。亜伊は持っていたカッターを僕に向ける。
亜伊「それ以上、広樹さんに近付いたらこれで刺しますわ」
領子「別に構わない」
亜伊「それに、転校してきたばかりの人に広樹さんは渡せませんわ。私達の赤い糸は切らせません」
亜伊の目は鋭くなった。
そして亜伊がカッターを振り上げた。
その時、図書室の扉が開き、3人の先生が入ってきた。
先生「おい!岩間!そこでそんなものを持って何をしている!」
亜伊は先生達に取り押さえられて、会議室に連れていかれた。
先生「……あなた達、怪我はない?」
最後に残っていた保健室の女の先生はそう言って心配してくれた。
広樹は椅子から解放された。そして自分の手で目隠しを取る。
領子「私は全然大丈夫です。でも広樹君が……」
広樹「……俺も大丈夫だよ。助けてくれてありがとう」
足や手から出た血は図書室の床を赤く染めていった。
先生「広樹君は保健室に行きましょう。領子さんは家に帰りなさい。お母さん、心配するから」
気づけば、もう5時だった。
僕は、先生に言われるがまま帰った。


【木曜日】

僕はどうしても気持ちが晴れなかった。
広樹はあの後どうなったのか……
教室の扉が開いて、誰かが入ってきた。
龍二「おはよ~って亜伊じゃないのか」
その言葉を聞いて、僕はむっとした。亜伊のどこがいいのか。
それより、早く広樹は来ないだろうか。
でも次に扉が開いて入ってきたのは先生だった。
結局、この日広樹は登校してこなかった。
もし、明日来なかったらどうしよう……という不安が押し寄せてくるなか、亜伊も登校してきてなかった。
亜伊は学校に来れなくなったのだろう。当たり前だ。あんなことをしたんだから。
でも、広樹はなぜ先生に呼び出されたと僕に嘘をついたのか。
嘘をついていなかったら、広樹をもっと早く見つけることができたじゃないか。
どうして…………


次の日の【金曜日】 (最終日)

僕はいつも通り教室で待っていた。
今日こそは来るだろうか?
来なかったら本当の気持ちを伝えられない。
ガラガラ
教室の扉が開く。
そこには、広樹がいた。
領子「広樹君……ッ!」
広樹「領子ちゃん………」
思わず喜ぶ。
広樹「あ、あの……この前はありがとう」
領子「いや、全然気にしてないから……!でも殺されなくて良かった」
広樹「……なぁ、俺のことが好きって本当?」
領子「えっ……」
まさか聞かれるとは思わなかった。
でもそんなの…………
領子「そんなの…………」
先生「2人とも、おはよーー!」 
担任の先生がいいところに来てしまった。
広樹「領子ちゃん、放課後……保健室に来て。話があるから」
領子「な、何で保健室……?」
広樹「今日、保健の先生は出張でいなくて。話すんだったら保健室の方が話しやすいなぁって思っただけ」
この会話は先生に聞かれていなかった。



放課後、保健室では……

領子「広樹君……怪我の方は大丈夫なの?」
ベッドの方まで歩いて行って、ベッドに座る僕と広樹。
広樹「あぁ、領子ちゃんが心配してくれたからね」
領子「嘘だ……で、話ってなに?」
広樹「俺のことが好きって本当?って話」
言いにくそうに広樹は僕に聞いてきた。
何も言わずに頷く僕。
広樹「そっかぁ……」
領子「逆に私のこと好きだって本当なの?」
広樹「もちろん、俺は領子ちゃんのことが本当に好きだよ」
長い沈黙。
僕は何かを喋ろうとしたが、何も喋ることがなく、ただ気まずい空気が流れていった。
そしてやっと、思い浮かんだ質問を聞こうとしたが、広樹に押されて聞くことができなかった。
広樹「じゃあ俺達、両思いってこと?」
領子「そういうことに……なるね」
ベッドに押し倒された僕。これで2回目なのであまり動揺しないはずだが、僕は動揺していた。
実は4ヶ月前、滑って転んだ広樹は僕を巻き込んで、僕を押し倒したような体勢になっていたのだ。いわゆる、床ドン……というやつか。風呂場だから当然裸。
そんなとき、うるさい龍二が来てしまったというわけだ。
もちろん、滑って転んだとこを見られていなかったので龍二からしたら、裸で二人がそういうことをしようとしている、と捉えられるだろう。
広樹「なら、このまま…………」
領子「ごめん、それは……できない」
もしここで広樹とヤったとしても、これは僕の体ではない。
広樹「何で?」
領子「…………」
本当のことなんて言えるわけない。
広樹「怖いの?」
領子「違うよ……」
別に怖いことなんてない。だけど……こんな体で広樹とヤるのは嫌だ。
せめて……本当の体で…………
広樹「それとも、これが本当の自分の姿じゃないから?」
領子「えっ……」


………広樹の意外な言葉に、思わず耳を疑った。
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