ソウキ王朝偽典・菜緒虎伝

那田野狐

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40話 菜緒虎、再びジャンにやって来た

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港湾都市ジャンに入港した菜緒虎は入国手続きを済ませると、港の北の端にポツンと建つ一軒家に向かう。
扉にかかる看板にはとぐろを巻く蛇を鎖で模したデザイン。
奴隷ギルド認定の奴隷商の建物である。

「これがこの4人の奴隷としての契約書です」
「はい確かに」
菜緒虎は奴隷商に火候と幹部3人の身柄と奴隷契約書を引き渡す。
火候と幹部の3人は既に魏府王国に身請けされる事が決まっている。
奴隷というよりは捕虜として身代金との交換である。

「お代は4人で白金貨1枚と大金貨40枚(青銅貨1400万枚)。支払いは如何いたしましょう?お金、宝石、なんならうちの商品どれいでも構いませんよ?」
それがしそれがしを相手に奴隷のセールスですか」
「はは、ソロモンで商売してる人間なら食糧を安く卸してくれるミカワヤ商会の菜緒虎さんと縁を結ぶチャンスを逃したりしませんよ」
奴隷商はからからと笑う。

「もっとも私たち的には、ソロモンの悪徳な奴隷商会を潰してくれた。それだけで十分ですがね」
いきなり奴隷商の口調のトーンが下がる。

詳しく聞くと、菜緒虎たちがソロモンで前のミカワヤ商会の裏事業を潰した挙句乗っ取ったという事は、奴隷ギルドでは周知の事実らしい。
回覧が遅ければ、同業者から敵対者に間違われて、刺客を送られた可能性もあったという。

「勉強させてもらいます」という奴隷商の言葉に、菜緒虎は代金受け取りを引き延ばしてもらう事にした。

次に菜緒虎が訪れたのは、刀の制作を依頼したドワーフの鍛冶師ドアホーの工房だ。

「おう。よく来た。刀が出来たとことづけた記憶はないから、進捗確認かな?」
目の下にややクマはあるが、晴れやかな顔でドアホーは尋ねる。

「ええ、意外に早くこちらに来る用事が出来まして」
菜緒虎の言葉に、ドアホーの板海苔みたいな眉の片方がぴくんと上がる。
が、すぐに何か悟ったような顔になる。

「まぁいい。お前さんが注文したモノはたった今できた。来るがいい」
ドアホーに案内され菜緒虎はドアホーの工房に入る。

工房の中には武器が種類ごとに陳列され、それぞれの武器の下には値段が書き込まれたカードが置いてあった。

カードの内容は・・・

・ダガー     刃渡り10センチ前後   片刃と両刃 銀貨5枚~
・クロー     刃渡り5センチ前後    片刃と両刃 銀貨8枚~ 3本2組 中古有り
・ショートソード 刃渡り50センチ前後   片刃と両刃 金貨2枚~ 中古有り
・ロングソード  刃渡り1メートル前後   両刃    金貨5枚~ 中古有り

おそらく、気に入った武器のカードを持ってカウンターにもっていくと奥から該当する武器が出てくるか注文となるのだろう。

そして・・・
・革の鞘のオーダーメイド承ります。エデル工房
・防具のことならエム・カワ商店
・冒険道具ならぷぷ屋
・酒のヤマイチ

値札の下に、名前の書かれたカードが置かれている。おそらくは商業ギルドの広告だろう。
試しに一枚とってみると、裏に簡単な地図と営業日が書かれていた。
簡単な広告ちらしのようだ。

「待たせたな」
カウンターの奥から布に包まれた一振りの剣を持ったドアホーが現れる。

「柄は仮のものだが」
そう言ってドアホーは包みを開く。
出てきたのは見た目は白木で作った木刀。
菜緒虎は柄を握り鞘を抜く。

カチャリ

刃の長さは2尺3寸7分。センチ換算だと約71~72センチ。刃は重ねが厚く肉付き豊か。切先は長く反りは浅い。直刃に刻まれる模様は小乱刃。
刃先に冷たい光が走る。

「あの後に、ワ国の戦士が持ち込んできた、折れた長物を脇差に作り直す機会に恵まれてな」
訳を話して刀の一部を手に入れ、短期間でここまでのモノを作り上げることが出来たのだという。
恐るべしドワーフである。

「バランスを確かめてくれ。調整後に引き渡すのでいい銘でも考えておいてくれ。そして、いずれこの刀を越える業物を作って見せるので期待してくれ」
そう言ってドアホーはサムズアップして気持ちのいい微笑みを浮かべた。
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