君と紡ぐ未来 2nd 〜愛しい貴方と永遠を。この運命は『罪』ですか?〜

Kanade

文字の大きさ
6 / 17

4. 泣いてる暇はない

しおりを挟む

〈 ママ視点 〉

「まぁま」

  背中から可愛らしい声で呼ばれて、

「なぁに」

と答えた俺。

「まぁま」
「なぁに」

って、これ、エンドレスなんだよなぁ…。
  そんな訳で、掃除をしていた手を止めた俺はリビングに戻り、おんぶ紐で背中に背負っていた柚來を下ろして腕に抱き直し、リビングの一角の畳コーナーに腰を下ろした。

「まぁま」
「ん~? どうしたの?」

  笑顔で膝の上に乗せた柚來に語り掛ければ、にぱぁ…と満面の笑みで見上げてくる。
  柚來の両わきの下に手を差し込んで、座ったままで高い高いしてやると、「きゃあ!」と柚來が嬉しそうに声を上げた。

  ーーーーーーーーーーーーーーー

  現在いま、家には俺と柚來の2だ。
  平日の今日、大和は仕事に、絆と紡、今年1年生になった芽來は学校、陽咲は保育園に行っている。
  陽咲と柚來は現在、2歳3ヶ月。
  2年半前まで大和が働いているレストランでパートとして働いていた俺は、下の双子が生まれた後、1年間の産休の後に双子を保育園に入れて職場復帰する予定だった。けれど、産休明けを待たずに仕事を辞めた。
  双子が生後7ヶ月(修正月齢6ヶ月)の時、柚來の脚に障害が見つかったからだ。
  最初に気付いて声を上げたのは、いつものように柚來と遊んでくれていた紡だった。

「ママ、ゆらちゃんのあし、うごかないの?」

  そう指摘されて柚來を観察した俺は確かな違和感に今更ながらに気付いて、大和と相談して病院を受診。柚來の両下肢に麻痺が見られると診断された。

  柚來の両脚は膝から下に麻痺があり全く動かない。膝より上…大腿ふとももは辛うじて感覚はあるものの鈍く、成長しても自力歩行は困難でしょう…と言われた時は、あまりの衝撃に頭が真っ白になった俺。恐らく『先天性』…つまりと言われ、更なる衝撃に恥も外聞も捨てて、診察室だというのに、柚來を抱きしめて号泣した。
 
  何がいけなかったの…?
  俺、妊娠中に何かダメなことをしてしまったの…?

  診てくれた担当の先生は「お母さんの所為じゃありません。ご自分を責めないで」と言って下さった。大和も「渚の所為じゃない」と言ってくれた。確かにそうかも知れない。妊娠経過は順調だったんだ。胎児に異常があるなんて判る訳がない。

  でも、本当に…? 
  生まれる前には気付かなくても、生まれてからなら気付けたんじゃないの…?
  そんな囁きが聞こえた気がしたー。

  その日は、帰宅してからどう過ごしていたか、よく憶えていない。大和は「普通だった」と言っていたけれど…。よくよく聞けば、本当にだったらしい。不自然なくらいに。
  上の子供達が学校から帰宅しても柚來の脚の事を話さず、夕飯時からお風呂、上の子達が寝て、陽咲と柚來を寝かし付けて自分達がベッドに入るまで、…と。だから大和も、敢えてその日は子供達にはらしい。
  そして俺は…。

  翌朝、目が覚めたら、視界と頭の中がクリアだった。
  まるで付き物が落ちたかのように、くっきりと。
  自分でも驚いたけれど、「泣いてる場合じゃない!」って思ったんだ。
  我が子が一生歩けないかもしれないのに悲しくないのか! それでも親か!
って言う人もいると思うけどさ。
  だったら何? ずっと悲しんで泣いて、茫然としていたら、何かが変わるの? 時間が解決してくれるの?  
  悲しくないわけないだろ! 辛くないわけないじゃないか! 診断を聞いてからまだ1日も経ってないんだから!
  俺だって泣いて柚來の脚が治るのなら、何日、何年だって泣いて過ごすさ。でも、違うだろ?
  柚來は成長してるんだよ。脚が動かなくたって、体も…心だって日々成長していくんだ。だからこそ、泣いてる暇はないんだよ。俺と大和には。俺達はお父さんとお母さんなんだから。

  起きた大和が前日病院から帰宅して夜寝るまでの様子を聞いた俺は大和に謝り、自分の思いを語る。
  俺の言葉を聞いた大和は、大きく頷いたー。


  
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

オメガ判定されました日記~俺を支えてくれた大切な人~

伊織
BL
「オメガ判定、された。」 それだけで、全部が変わるなんて思ってなかった。 まだ、よくわかんない。 けど……書けば、少しは整理できるかもしれないから。 **** 文武両道でアルファの「御門 蓮」と、オメガであることに戸惑う「陽」。 2人の関係は、幼なじみから恋人へ進んでいく。それは、あたたかくて、幸せな時間だった。 けれど、少しずつ──「恋人であること」は、陽の日常を脅かしていく。 大切な人を守るために、陽が選んだ道とは。 傷つきながらも、誰かを想い続けた少年の、ひとつの記録。 **** もう1つの小説「番じゃない僕らの恋」の、陽の日記です。 「章」はそちらの小説に合わせて、設定しています。

クズ彼氏にサヨナラして一途な攻めに告白される話

雨宮里玖
BL
密かに好きだった一条と成り行きで恋人同士になった真下。恋人になったはいいが、一条の態度は冷ややかで、真下は耐えきれずにこのことを塔矢に相談する。真下の事を一途に想っていた塔矢は一条に腹を立て、復讐を開始する——。 塔矢(21)攻。大学生&俳優業。一途に真下が好き。 真下(21)受。大学生。一条と恋人同士になるが早くも後悔。 一条廉(21)大学生。モテる。イケメン。真下のクズ彼氏。

僕は君になりたかった

15
BL
僕はあの人が好きな君に、なりたかった。 一応完結済み。 根暗な子がもだもだしてるだけです。

白い部屋で愛を囁いて

氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。 シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。 ※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

奇跡に祝福を

善奈美
BL
 家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。 ※不定期更新になります。

《完結》僕が天使になるまで

MITARASI_
BL
命が尽きると知った遥は、恋人・翔太には秘密を抱えたまま「別れ」を選ぶ。 それは翔太の未来を守るため――。 料理のレシピ、小さなメモ、親友に託した願い。 遥が残した“天使の贈り物”の数々は、翔太の心を深く揺さぶり、やがて彼を未来へと導いていく。 涙と希望が交差する、切なくも温かい愛の物語。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

好きで好きで苦しいので、出ていこうと思います

ooo
BL
君に愛されたくて苦しかった。目が合うと、そっぽを向かれて辛かった。 結婚した2人がすれ違う話。

処理中です...