君と紡ぐ未来 2nd 〜愛しい貴方と永遠を。この運命は『罪』ですか?〜

Kanade

文字の大きさ
8 / 17

6. 平和で幸せな毎日です

しおりを挟む

〈 ママ視点 〉

  週明け、俺は大和に、産休明けを待たずに仕事を辞める事を告げた。カフェ開店の為の経験値と資金を稼ぐ目的で始めた仕事だけれど、今は柚來と向き合う事を優先しようと思ったから。大和は反対しなかった。
  退職を決めた後は、病院の予約をして、柚來の診断をしてくれた医師に今後についての相談に行き、医師には定期的にリハビリに通う事を提案された。柚來の脚が治る事はないけれど、脚の機能回復が目的ではない。脚が動かない柚來だけれど、手や腕、上半身を上手に使う事で、この先、歩けなくとも生活の幅は広がるという。

「難しく考えなくても良いんですよ。リハビリなんていう仰々しいものではなく、遊びだと思って下さい。痛い事も怖い事もない。たくさん体を動かして楽しみながら身体に刺激を与える『遊び』です。お母さんも一緒に、柚來ちゃんと楽しく遊びましょう」

  医師に優しく言われ、目から鱗。ついでに涙も一緒に落ちた俺だった。

  それから直ぐ、芽來が通う保育園に空きがあるか確認して、1歳になったら保育園に入れる予定だった陽咲ひなたを、前倒しで保育園に預けた。朝陽が「預かるよ」と言ってくれたけれど、頻繁に預けるのは送迎含めて大変だから、やんわりとお断りした。あっさりと退いてくれた朝陽に、困った時は一番に連絡する事を約束させられたけれど…。

  その1ヶ月後から、柚來の週に1回の病院へのリハビリ遊び通いが始まった。初日は大和も一緒に行ったけれど、2回目以降は俺1人で連れて行った。乳幼児のリハビリには専用の部屋があって、そこにはたくさんの絵本や頭を使う知育玩具、体を使って遊ぶ玩具などがあり、初日から柚來は楽しそうに遊んだ。
  そして、『奇跡』は突然訪れた。
  病院に通い始めて半年あまり。陽咲と柚來が1歳の誕生日を迎えて更に1ヶ月が過ぎた頃だった。
  この頃の柚來は少し腕の力が付いてきていて、自分で寝返りは出来ないものの、うつ伏せにしてやれば腕を突っ張って上半身を持ち上げるようになったから、その日も柚來から50cmほど離れた場所に柚來と向かい合うように俺もうつ伏せになって、2人の間に玩具を置いて遊んでいた。遊ぶ…といっても、真ん中に置いた車の玩具を俺が前後に動かすだけだけれど。その動きを柚來が目で追う。
  その時だった。柚來がいきなり「う~~」と声を上げて腕から力を抜いてぺたんと胸を下に敷いたラグに付けたかと思ったら、床に付いた腕の力だけで、

ず……

前に進んだ。俺は声を発するのも瞬きするのも忘れ、何なら呼吸すら忘れ、柚來を見つめていた。

ず……ず……

  ずり這い(だと思う)で前に進んで車の玩具を手に取る柚來。だけれど、そのまま伸ばした腕を引き戻す事が出来ずに泣き出した柚來を、その声で我に返った俺は抱き上げた。背中をぽんぽんしてあやしながら、柔らかな頬に頬擦りをする。

「柚來~、凄いね~。偉いね~」

  言葉を掛けながら、俺は涙が止まらなかった。
  大丈夫。柚來は柚來のペースでちゃんと成長している。
  その日の夜、俺は大和と他の子供達に昼間の柚來の事を話した。皆、実際に見た訳でもないのに、我が事のように凄く喜んでくれて…。
  もちろん、柚來はまだ赤ちゃんで、今日ずり這いが出来たからといっていつでも出来る訳じゃない。柚來自身がと思わなければやらないだろうし…と、見られたらラッキーくらいのつもりで、家族全員で柚來の成長を見守って…。『初ずり這い』から半年も経つ頃には、うつ伏せにするとかなり高確率で這うようになって、途中で力尽きては泣き出して…。
  

  そんな事を繰り返しながら、2歳を過ぎた現在いまでは、かなりの速さで這うようになった。通常のハイハイよりかは遅いけれど、ホントにずり這い?っていうくらいので。しかも、追うのは何故かいつも芽來なんだよな。陽咲もなんか芽來にベッタリだし…。あのどっしりした感じが安心するのかなぁ。
  でもさ、陽咲、柚來、少し離れたところで絆兄ちゃんと紡兄ちゃんが寂しそうにしてるぞ~。
  なんて事を日々思ってる俺。
  こんな感じで俺達家族7人、平和な毎日を送ってる。
  幸せだなぁ~。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

オメガ判定されました日記~俺を支えてくれた大切な人~

伊織
BL
「オメガ判定、された。」 それだけで、全部が変わるなんて思ってなかった。 まだ、よくわかんない。 けど……書けば、少しは整理できるかもしれないから。 **** 文武両道でアルファの「御門 蓮」と、オメガであることに戸惑う「陽」。 2人の関係は、幼なじみから恋人へ進んでいく。それは、あたたかくて、幸せな時間だった。 けれど、少しずつ──「恋人であること」は、陽の日常を脅かしていく。 大切な人を守るために、陽が選んだ道とは。 傷つきながらも、誰かを想い続けた少年の、ひとつの記録。 **** もう1つの小説「番じゃない僕らの恋」の、陽の日記です。 「章」はそちらの小説に合わせて、設定しています。

クズ彼氏にサヨナラして一途な攻めに告白される話

雨宮里玖
BL
密かに好きだった一条と成り行きで恋人同士になった真下。恋人になったはいいが、一条の態度は冷ややかで、真下は耐えきれずにこのことを塔矢に相談する。真下の事を一途に想っていた塔矢は一条に腹を立て、復讐を開始する——。 塔矢(21)攻。大学生&俳優業。一途に真下が好き。 真下(21)受。大学生。一条と恋人同士になるが早くも後悔。 一条廉(21)大学生。モテる。イケメン。真下のクズ彼氏。

僕は君になりたかった

15
BL
僕はあの人が好きな君に、なりたかった。 一応完結済み。 根暗な子がもだもだしてるだけです。

白い部屋で愛を囁いて

氷魚彰人
BL
幼馴染でありお腹の子の父親であるαの雪路に「赤ちゃんができた」と告げるが、不機嫌に「誰の子だ」と問われ、ショックのあまりもう一人の幼馴染の名前を出し嘘を吐いた葵だったが……。 シリアスな内容です。Hはないのでお求めの方、すみません。 ※某BL小説投稿サイトのオメガバースコンテストにて入賞した作品です。

奇跡に祝福を

善奈美
BL
 家族に爪弾きにされていた僕。高等部三学年に進級してすぐ、四神の一つ、西條家の後継者である彼が記憶喪失になった。運命であると僕は知っていたけど、ずっと避けていた。でも、記憶がなくなったことで僕は彼と過ごすことになった。でも、記憶が戻ったら終わり、そんな関係だった。 ※不定期更新になります。

《完結》僕が天使になるまで

MITARASI_
BL
命が尽きると知った遥は、恋人・翔太には秘密を抱えたまま「別れ」を選ぶ。 それは翔太の未来を守るため――。 料理のレシピ、小さなメモ、親友に託した願い。 遥が残した“天使の贈り物”の数々は、翔太の心を深く揺さぶり、やがて彼を未来へと導いていく。 涙と希望が交差する、切なくも温かい愛の物語。

十七歳の心模様

須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない… ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん 柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、 葵は初めての恋に溺れていた。 付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。 告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、 その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。 ※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。

好きで好きで苦しいので、出ていこうと思います

ooo
BL
君に愛されたくて苦しかった。目が合うと、そっぽを向かれて辛かった。 結婚した2人がすれ違う話。

処理中です...