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第2章
第1話 21歳(微R)
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季節は巡り、夏が過ぎ、また冬が来る。
それを2回ほど繰り返し、その分だけ歳を重ねた。レイにとって、すっかりエディと生きる日常というものが当たり前に馴染んできていた。
レイは居候から恋人へと立場が変わったことで客間からエディの寝室の隣に部屋を移った。いつでも出て行けるようにと鞄に詰めていた荷物は今や、棚や専用の衣装部屋に並んでいる。成金趣味のようなキラキラしたシャンデリアは嫌だったから、自分の給金で素朴な照明を買い、他も自分の好みに家具を買い替えなどをしてすっかり落ち着く空間にした。
自分の部屋で寝泊まりさせたいから学生寮の雰囲気にしたのにとエディはぼやいていたが、どうやらあの部屋の既視感は学生寮の中でも高位貴族達が住む金剛寮を参考にしたかららしい。
自分が住んでいたのは平民も住む天藍寮だ。グレードダウンされた部屋だったから、既視感はあっても気付かなかった。
「エディ、おもたい」
「もうちょっとだけ……」
朝日が差し込む窓の外を眺めながら、重い腕をぺちぺち叩いて退いてくれと抗議するも聞いてくれない。自分自身、逞しい腕に包まれるのが嫌じゃないのも困りものだ。
レイは腕の中でエディに向き直り、足を絡めて自分も抱きつく。
「俺は休みだからいいけど、お前は仕事があるだろ」
「……行きたくないなぁ」
「こら。ちゃんと行かなきゃ駄目だろ、将校様」
学校を卒業してから今年で約3年目。エディは聖騎士見習いから今や将校と呼ばれる立場まで昇進していた。家の地位を考えればもっと上にもいけるらしいが、本人が実力以外を見ないでほしいと望んでいるためにまだその地位にいる。
まだまだ一番下っ端のレイとはえらい違いだ。やはり、エディはすごい。自慢の親友で、恋人。
そんなエディが行きたくないとごねながら抱きついてくるのが正直堪らなく感じる。レイはエディの首許に顔を近付け、甘く囁きながら指で肌をなぞった。
「帰ってきたら、好きにしていいから」
「……ちゃんと行きます」
「ん、えらい」
「おはようのキスは?」
「歯磨かないと絶対に嫌。……んふ、へへ、髭生えてる」
近頃のエディは益々顔立ちも大人らしくなって、甘さの上に勇ましさまで見えるようになった。薄らと生えた顎髭に触れ頬を撫でると、エディは益々レイを抱き締める腕に力を込めてきた。
「そりゃ髭だって生えるよ、男だし」
「俺は生えないんですけど。分けてくれよ少しくらい」
「気にしてる? 可愛い」
まだ寝起きでざらついた声で甘く囁かれ、レイはぴくんと身体を反応させてしまった。目敏く気付いたエディの手が素肌をなぞり、腰までまわる。
駄目だ、エディは今日も神殿に行くのに。清廉潔白な騎士様が朝から姦淫に耽るなんて、そんな。
「っ、ぁ、だめだって、えでぃ……」
「ちょっとだけ。レイ、愛してるよ」
「だめ、だめ……っ」
毎日のように求められている内に体力はついてきたけれど、朝からなんて無理だ。
食事量も増えて肉付きも多少良くなった身体を組み敷いたエディに獣のような視線で見下ろされながらも、駄目だと首を振る。
「お前、そろそろまた隣国行くんだろ……っ」
「だから、その分レイを補充させてよ。お願い」
「ばか、駄目だってあほ……っ!」
こうして求められることが満更でもないのが、一番駄目だ。
* * *
我ながら情けない夢を見た。
レイは飛び起きるなりお盛んな自分の脳内にげんなりしながら深く溜め息を吐き、のそりとベッドから降り着替えるために衣装部屋へと足を踏み入れた。
エディはいない。将校様になってすぐ、数年ぶりに隣国に行くよう命令を下されたからだ。今回は王女殿下の伴侶候補ではなく、純粋に司教様の護衛。部屋もちゃんと神殿に用意され、快適に暮らしているという手紙が王太子殿下には届いたらしい。
そう、また自分には届いていない。
エディの手紙なんて、腕輪をもらった時のメッセージカード以外に久しく手にしていない。またも盗まれているんだろうか、自分宛てのエディの手紙だけが消えている。
気味が悪いけれど、犯人はわからない。レイは考えても仕方のないことだと半ば諦めていた。
今日は仕事も休みだからと私服に着替え、変に興奮したのか汗を吸った寝間着は洗濯してもらうために洗濯室へと出しに行く。アンジーの手間を少しでも減らしたいから、ベッドのシーツもまとめて全部。
エディが帰ってくるのは再来週だから、暫くは1人。注意してくるような人間もいないから朝食もとらなくていいかと、レイは図書室へと向かった。
もうこの家の中にある本は全て読んでしまった。今日は何を読み返そうか。
レイが書架を前にうんうんと唸っていると、不意に玄関のベルが鳴った。誰だろうか。エディもいない今、来客なんて数えるほどしかなかったのだが。
「はいはい、今出ますよーっと」
玄関に向かうまでの間に何度かベルが鳴らされていた。相手は随分と急ぎなのかそれともせっかちなのか、どちらにせよ少し面倒な来客かもしれない。
レイがそう思いながら覗き穴で向こうを確認すれば、玄関前には見知った王族が1人で立っていた。
エディにはレイが1人でいる間家に来るなと散々釘を刺されていたというのに、この人は。呆れながらもレイは鍵を開け、男と対面した。
「何してるんですか、ドリス殿下」
「緊急の用件だ。中に入れてくれ」
「エディから入れるなって言われてるんですけど」
「お前が女装しない限り俺の食指は動かんから安心しろ」
「うわ出たど変態」
態度を変えなくていいと言われてから、それこそ雲の上の人物だというのにレイはドリス殿下に対して気安い態度で接している。今もまた思わず出てしまった罵倒の言葉にドリス殿下は何も言わず、寧ろ笑っていた。
「お前なぁ……」
「そんなんだからいまだに許してもらえてないんですよ。っていうか、そのきっかけになった俺の家に1人で来るのどうかと思いますけど」
「ナズには監視魔法をつけてもらった。疚しいことは何もしない」
「されたら今すぐエディを呼びます」
「呼ぶな呼ぶな、今度は半殺しでも済まないことになる」
本人達の希望だけでは婚約を変えることはできず、結局ナズ殿下との婚約はそのままになっている。だがまだまだ許されることはないそうで、ドリスはこちらが有利であるはずの婚約だというのにすっかり尻に敷かれ、頭を上げることも許されていないらしい。
それなのに、監視魔法をつけてもらってまで本人がやってこなければいけない理由とはなんだろうか。レイは仕方がないと温室にドリス殿下を案内し、使用人もいないから自ら湯を沸かしお茶を用意した。
「毒見いります?」
「いや、いい。どうせ殺すなら2年前にやっていただろう? 淹れながらでいいから聞いてくれ」
紅茶を淹れながら、レイはドリス殿下の用件である話を聞くことにした。そういえば、もうドリス殿下とこうして会話をするようになってからもう2年近くが経ったのか。
時が経つのはあまりにも早い。
「来週から地方に行ってもらえないだろうか」
「……え、俺が?」
「嗚呼。表向きは新たな国立図書館の設立における責任者として。実態としては、その地域における神殿の調査を頼みたい」
「……神殿の」
神殿に関する秘密裏な調査。
緊急性のあるようなものには思えないが、突然来週には人を送り込まないといけないほどの何かがあるということなのだろうか。それも、神殿関係者と縁の深い自分が。
「お前くらいしかいないんだ、怪しまれずに送り込めるような低い立場の知り合いが」
「……いや、まぁ俺は下っ端ですけども」
「エドガーから多少は神殿のことも聞いているだろう? だからお前が適任だと思ってな」
「これ、エディ聞いてます?」
「言えるわけないだろ」
「……言わないとまた2年前みたいなことになりかねませんよ」
ドリス殿下の言葉足らずがそもそもの発端だったのだ。だから、今回はきちんと話を通すべき。
だが、ドリス殿下はドリス殿下で別の懸念があるらしく言葉を濁した。
「エドガーから他に伝わると面倒でな……近頃は闇魔法の使い手が各地に現れ始めたというのもある」
コルネリス伯爵令嬢が春の舞踏会で闇魔法の暴発をして以降、各地でたびたび闇魔法の使い手が観測されるようになった。強大な力だからこそ、あの時に印象に強く残った貴族は多かったのだろう。そして、その精神干渉の能力に惹かれた者も。
だからこそ、闇魔法の使い手と関わるかもしれないエディには言えない。ドリス殿下は小さな声で続けた。
「向かってほしい土地の神殿を守護する立場であるはずの聖者が、付近に住まう魔力の高い者、特に聖騎士達を侍らせているという噂だ。お前は弱いから精神干渉を受けたとしても何とかなる。最悪エドガーを呼び戻せばすぐに救助も可能だ。……行ってくれないだろうか」
「……それ、俺に拒否権あります?」
「ないな」
まったく、この人は。
その土地からなら手紙を出せばエディに届くだろうか。そう思いながら紅茶を一口だけ呷り、ふうと小さく溜め息を吐く。
「ないなら行くしかないじゃないですか。場所は何処なんですか」
「ヘンドリックス侯爵領だ。その聖者が侍らせている中にエドガーの兄、つまりは俺の従兄もいてな。様子を見てきてくれ」
「……もうやだこの王族」
エディの故郷にエディなしで向かう。
憂鬱だ。彼の家族にはまだ会ったことすらないのに。
それを2回ほど繰り返し、その分だけ歳を重ねた。レイにとって、すっかりエディと生きる日常というものが当たり前に馴染んできていた。
レイは居候から恋人へと立場が変わったことで客間からエディの寝室の隣に部屋を移った。いつでも出て行けるようにと鞄に詰めていた荷物は今や、棚や専用の衣装部屋に並んでいる。成金趣味のようなキラキラしたシャンデリアは嫌だったから、自分の給金で素朴な照明を買い、他も自分の好みに家具を買い替えなどをしてすっかり落ち着く空間にした。
自分の部屋で寝泊まりさせたいから学生寮の雰囲気にしたのにとエディはぼやいていたが、どうやらあの部屋の既視感は学生寮の中でも高位貴族達が住む金剛寮を参考にしたかららしい。
自分が住んでいたのは平民も住む天藍寮だ。グレードダウンされた部屋だったから、既視感はあっても気付かなかった。
「エディ、おもたい」
「もうちょっとだけ……」
朝日が差し込む窓の外を眺めながら、重い腕をぺちぺち叩いて退いてくれと抗議するも聞いてくれない。自分自身、逞しい腕に包まれるのが嫌じゃないのも困りものだ。
レイは腕の中でエディに向き直り、足を絡めて自分も抱きつく。
「俺は休みだからいいけど、お前は仕事があるだろ」
「……行きたくないなぁ」
「こら。ちゃんと行かなきゃ駄目だろ、将校様」
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まだまだ一番下っ端のレイとはえらい違いだ。やはり、エディはすごい。自慢の親友で、恋人。
そんなエディが行きたくないとごねながら抱きついてくるのが正直堪らなく感じる。レイはエディの首許に顔を近付け、甘く囁きながら指で肌をなぞった。
「帰ってきたら、好きにしていいから」
「……ちゃんと行きます」
「ん、えらい」
「おはようのキスは?」
「歯磨かないと絶対に嫌。……んふ、へへ、髭生えてる」
近頃のエディは益々顔立ちも大人らしくなって、甘さの上に勇ましさまで見えるようになった。薄らと生えた顎髭に触れ頬を撫でると、エディは益々レイを抱き締める腕に力を込めてきた。
「そりゃ髭だって生えるよ、男だし」
「俺は生えないんですけど。分けてくれよ少しくらい」
「気にしてる? 可愛い」
まだ寝起きでざらついた声で甘く囁かれ、レイはぴくんと身体を反応させてしまった。目敏く気付いたエディの手が素肌をなぞり、腰までまわる。
駄目だ、エディは今日も神殿に行くのに。清廉潔白な騎士様が朝から姦淫に耽るなんて、そんな。
「っ、ぁ、だめだって、えでぃ……」
「ちょっとだけ。レイ、愛してるよ」
「だめ、だめ……っ」
毎日のように求められている内に体力はついてきたけれど、朝からなんて無理だ。
食事量も増えて肉付きも多少良くなった身体を組み敷いたエディに獣のような視線で見下ろされながらも、駄目だと首を振る。
「お前、そろそろまた隣国行くんだろ……っ」
「だから、その分レイを補充させてよ。お願い」
「ばか、駄目だってあほ……っ!」
こうして求められることが満更でもないのが、一番駄目だ。
* * *
我ながら情けない夢を見た。
レイは飛び起きるなりお盛んな自分の脳内にげんなりしながら深く溜め息を吐き、のそりとベッドから降り着替えるために衣装部屋へと足を踏み入れた。
エディはいない。将校様になってすぐ、数年ぶりに隣国に行くよう命令を下されたからだ。今回は王女殿下の伴侶候補ではなく、純粋に司教様の護衛。部屋もちゃんと神殿に用意され、快適に暮らしているという手紙が王太子殿下には届いたらしい。
そう、また自分には届いていない。
エディの手紙なんて、腕輪をもらった時のメッセージカード以外に久しく手にしていない。またも盗まれているんだろうか、自分宛てのエディの手紙だけが消えている。
気味が悪いけれど、犯人はわからない。レイは考えても仕方のないことだと半ば諦めていた。
今日は仕事も休みだからと私服に着替え、変に興奮したのか汗を吸った寝間着は洗濯してもらうために洗濯室へと出しに行く。アンジーの手間を少しでも減らしたいから、ベッドのシーツもまとめて全部。
エディが帰ってくるのは再来週だから、暫くは1人。注意してくるような人間もいないから朝食もとらなくていいかと、レイは図書室へと向かった。
もうこの家の中にある本は全て読んでしまった。今日は何を読み返そうか。
レイが書架を前にうんうんと唸っていると、不意に玄関のベルが鳴った。誰だろうか。エディもいない今、来客なんて数えるほどしかなかったのだが。
「はいはい、今出ますよーっと」
玄関に向かうまでの間に何度かベルが鳴らされていた。相手は随分と急ぎなのかそれともせっかちなのか、どちらにせよ少し面倒な来客かもしれない。
レイがそう思いながら覗き穴で向こうを確認すれば、玄関前には見知った王族が1人で立っていた。
エディにはレイが1人でいる間家に来るなと散々釘を刺されていたというのに、この人は。呆れながらもレイは鍵を開け、男と対面した。
「何してるんですか、ドリス殿下」
「緊急の用件だ。中に入れてくれ」
「エディから入れるなって言われてるんですけど」
「お前が女装しない限り俺の食指は動かんから安心しろ」
「うわ出たど変態」
態度を変えなくていいと言われてから、それこそ雲の上の人物だというのにレイはドリス殿下に対して気安い態度で接している。今もまた思わず出てしまった罵倒の言葉にドリス殿下は何も言わず、寧ろ笑っていた。
「お前なぁ……」
「そんなんだからいまだに許してもらえてないんですよ。っていうか、そのきっかけになった俺の家に1人で来るのどうかと思いますけど」
「ナズには監視魔法をつけてもらった。疚しいことは何もしない」
「されたら今すぐエディを呼びます」
「呼ぶな呼ぶな、今度は半殺しでも済まないことになる」
本人達の希望だけでは婚約を変えることはできず、結局ナズ殿下との婚約はそのままになっている。だがまだまだ許されることはないそうで、ドリスはこちらが有利であるはずの婚約だというのにすっかり尻に敷かれ、頭を上げることも許されていないらしい。
それなのに、監視魔法をつけてもらってまで本人がやってこなければいけない理由とはなんだろうか。レイは仕方がないと温室にドリス殿下を案内し、使用人もいないから自ら湯を沸かしお茶を用意した。
「毒見いります?」
「いや、いい。どうせ殺すなら2年前にやっていただろう? 淹れながらでいいから聞いてくれ」
紅茶を淹れながら、レイはドリス殿下の用件である話を聞くことにした。そういえば、もうドリス殿下とこうして会話をするようになってからもう2年近くが経ったのか。
時が経つのはあまりにも早い。
「来週から地方に行ってもらえないだろうか」
「……え、俺が?」
「嗚呼。表向きは新たな国立図書館の設立における責任者として。実態としては、その地域における神殿の調査を頼みたい」
「……神殿の」
神殿に関する秘密裏な調査。
緊急性のあるようなものには思えないが、突然来週には人を送り込まないといけないほどの何かがあるということなのだろうか。それも、神殿関係者と縁の深い自分が。
「お前くらいしかいないんだ、怪しまれずに送り込めるような低い立場の知り合いが」
「……いや、まぁ俺は下っ端ですけども」
「エドガーから多少は神殿のことも聞いているだろう? だからお前が適任だと思ってな」
「これ、エディ聞いてます?」
「言えるわけないだろ」
「……言わないとまた2年前みたいなことになりかねませんよ」
ドリス殿下の言葉足らずがそもそもの発端だったのだ。だから、今回はきちんと話を通すべき。
だが、ドリス殿下はドリス殿下で別の懸念があるらしく言葉を濁した。
「エドガーから他に伝わると面倒でな……近頃は闇魔法の使い手が各地に現れ始めたというのもある」
コルネリス伯爵令嬢が春の舞踏会で闇魔法の暴発をして以降、各地でたびたび闇魔法の使い手が観測されるようになった。強大な力だからこそ、あの時に印象に強く残った貴族は多かったのだろう。そして、その精神干渉の能力に惹かれた者も。
だからこそ、闇魔法の使い手と関わるかもしれないエディには言えない。ドリス殿下は小さな声で続けた。
「向かってほしい土地の神殿を守護する立場であるはずの聖者が、付近に住まう魔力の高い者、特に聖騎士達を侍らせているという噂だ。お前は弱いから精神干渉を受けたとしても何とかなる。最悪エドガーを呼び戻せばすぐに救助も可能だ。……行ってくれないだろうか」
「……それ、俺に拒否権あります?」
「ないな」
まったく、この人は。
その土地からなら手紙を出せばエディに届くだろうか。そう思いながら紅茶を一口だけ呷り、ふうと小さく溜め息を吐く。
「ないなら行くしかないじゃないですか。場所は何処なんですか」
「ヘンドリックス侯爵領だ。その聖者が侍らせている中にエドガーの兄、つまりは俺の従兄もいてな。様子を見てきてくれ」
「……もうやだこの王族」
エディの故郷にエディなしで向かう。
憂鬱だ。彼の家族にはまだ会ったことすらないのに。
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