二度目の人生を自由気ままに生きる俺の図~可愛いヒロインと美食とお酒でダンジョンワイワイ~

雨音 休

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第一章 家を買ってワイワイ編

115 仕事を滅せよ、休日後編。

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「ちょっとスティフ、何も言ってないんじゃないの?」


 俺は苦笑しつつ頬をかく、


「いま言うところなんだ」


 エヴリルたちはきょとんとした表情をしている。ハトが豆鉄砲をくらったような面だ。その表情がおっかしい。俺は説明を投げつけた。これでもくらえ。


「エヴリル、シノ、ボロック。今日からお前たちは、休日に音楽を習うんだぞ?」

「「ええ!?」」

「ぐるぅ?」


 魔獣たちが驚きの声を上げる。そりゃあそうだろうな。こいつらの人生に音楽なんて無縁だったろうに。いや、エヴリルとボロックの過去は知らんけど。だけど音楽に触れたことがあるような話は今のところ聞いていない。


 まあアレだよな。いわゆる共通の趣味作り。そして思い出作り。みんなで何かしようって訳。さらに言えば休日を家で鬱々としているよりも、だ。外に出て好き放題に楽器を奏でて歌を歌え。ストレス解消にはもってこいである。性格に合わなければ中止するけどさ。


 仕事を忘却の彼方に葬り去ろうという計画である。


 休日だけな。


 クレナチアの花びらが漂う空気の中。エヴリルがギター、シノがアコーディオン、ボロックがクフォン(箱の打楽器)をもらった。ピクニックシートを敷いて三人と一頭で座らせてもらう。


 女の子二人は興味津々に楽器をペタペタと触っていた。だけどボロックは困った顔をして箱を眺めている。まあ当然の反応だ。立方体をもらって喜ぶ狼がどこの世界にいるかって話。


 ヘミリーは素敵な曲を作ってきてくれたようで、ルタークと演奏してくれた。


 曲名、クレナチア。


 Jポップにもあるような柔らかなメロディーが流れる。聞きやすかった。美しい上に力強い。本当、作曲代を払わなきゃいけないよな。二人は遠慮して受け取らないんだろうけどさ。


 ただ楽器代は本当に後で払う。それは以前から約束していた。


 エヴリルとシノ、ボロックは聞き入っていた。演奏を聴きつつ、ぽーっとした表情で頬を染める。顎をかすかに動かしてリズムを取っていた。


 曲が終わるとみんなが拍手をした。赤黒のロリータ服が「すごいすごいっ、すごいわっ」と褒め称えている。ルタークとヘミリーは照れたようにはにかんで笑って、水筒の紅茶をゴクゴクと飲んだ。


 エヴリルがもらったギターを膝の上に乗せる。尊敬の眼差しを送った。


「あたしにも弾けるかしら?」

「すぐには無理だよ。だけど、練習次第だね」


 切り株に座っているルタークが照れたように笑って足を組み合わせる。


 ヘミリーがアコーディオンを置いてステータス画面を開いた。中から歌詞の書かれた紙を取り出す。俺たちに配った。営業スマイルとはまた別のふんわりとした笑顔を浮かべている。


「今日は声で歌いましょうね」とヘミリー。

「歌えるかな!?」とエヴリル。

「私も歌えるでしょうか?」とシノ。

「ぐるう、我は声に自信が無いぞ」とボロック。

「下手でも良いんだよ、ボロック」と俺。


 それぞれ歌詞をもらってそれを読む。少年少女の淡い恋を描いた詩だった。


 ルタークが声で拍子をとる。


「それじゃゆっくり行くから歌ってね。1,2、3、4!」

「クレアチアの咲く頃に~♪」


 ……おい、俺だけが歌っているんだが。中々歌えない二人と一頭。だけど繰り返すうちに音程を掴めてきたようで、やがて声を出すようになった。シノはちょっと恥ずかしそうな小声である。まあ子供だし、というか0才だし。胸サイズだけは大人なんだよな。


 エヴリルの声は甲高くて主張が強い。特徴的な響きであり面白い色合いである。


 代わってシノの声は繊細で色が薄い。だけど音感が良く、メロディーをすぐに理解したようだ。ルタークは彼女の声をハモりに向いていると言った。


 ボロックの声は、まあ狼である。犬が無理やり喋った感があった。笑えるけど笑っちゃいけない。たまに言葉じゃなくてガウガウと吠えている。


 二時間もすると休憩をしてみんなで昼食を摂った。もちろんルタークとヘミリーの分も俺が作ってきている。まあ適当に食ってくれや。


「また料理の腕を上げたね、スティフ」とルターク。


 まあな。っていうか簡単な料理しか作ってきてないけどな。サンドイッチなんぞ誰が作っても同じだろうに。特性の卵ソースだけどさ。


 今日は声で歌うことと、ドレミファソラシドを覚えたところで解散となる。最後、俺は楽器代を支払った。ヘミリーは人の良い笑みを浮かべて、銀貨五枚でいいよと言ってくれた。馬鹿お前、年上に恥じをかかせるな。金貨三枚を握らせてやった。


 楽器をステータスにしまい、みんなで帰宅する。


「るー、るー」

「ららー」


 歩行中、エヴリルとシノが歌の音色を口ずさんでいる。俺はこっそりと安心した。どうやら楽しめたようだ。休日ぐらい、仕事のことを忘れて欲しいよな。というか仕事は死んどけって。もう一生出てくんな。そして遊んで暮らしたい。


 職なんていうのは人間の一部に過ぎない。人生を楽しむという意味では、今日から習う音楽の方に重きが強いのかもしれなかった。そりゃあそうだ。仕事なんてくそ食らえ。働いたら負けだ。いや、働いているけどさ。


 ボロックも背筋をピンと伸ばして闊歩している。ご機嫌そうな表情。ルンルンとした足取り。今日は連れ出してやって本当に良かった。


 途中、食材屋に寄って夕飯の材料を買った。卵にタマネギに鶏肉と春菊。親子丼でも作るべ。他にもコーンスープと付け合わせにシーザーサラダの材料。


 明日からはまた大変なお仕事様である。頑張ってもらわないとな、お前たちにはさ。


 楽しい休日が待っているから頑張れる。知らんけどたぶんそうだ。まあ読者は仕事風景や事件を読みたいんだろうけどさ。ん? 読者って何だ?

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