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第7話 探偵 帰省する (弘前編) 中編
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「あれは、葵の姉が作り出したものじゃよ」
お婆さんの言葉は、部屋全体の空気を鉛のように重く変えた。 ぼくの額に、嫌な汗が滲む。
「葵のお姉さんが作った? 操られているのではなく、自らの意思で?」
「いや、違う!! 花崎に利用されたのじゃ!」
お婆さんには苦渋の表情で、手にした煙管をギリギリと握りしめた。
「それを話すには、わしと花崎の『罪』について話さねばならん」
葵のお婆さんは、遠い過去を見るような目で語り始めた。
「四十年前わしは、ある男と共に『魂』の研究をしておった」
「ある男?」
「先代の花崎コンツェルン会長花崎 募じゃ」
ぼくは息を呑んだ。 名前は聞いたことがある。花崎 募といえば、一代で花崎コンツェルンを巨大財閥まで押し上げた伝説の経営者だ。今では教科書にも載るほどの偉人である。
「待ってください。なぜそんな大物が一緒に研究を? そもそも、なぜそこで葵のお姉さんが関わるんです?」
ぼくが質問攻めにすると、お婆さんは鋭い眼光を向けた。
「話は最後まで聞け!」
バキッ!!
お婆さんの手の中で、硬い煙管が真っ二つに折れた。
「ひぃっ!」
ぼくは口をチャックした。黙って聞こう。口を挟んだら、あの煙管のようにへし折られる。
ん、ん! とお婆さんは咳払いをして続けた。
「わしらはまだ若かったのじゃ。当時大学生だった募は、目には見えない幽霊や魂を科学で証明しようとしておった」
「その時、同じ大学に通っていたわしがイタコだと知り、興味を持って近づいてきた。一緒に研究をしていくうちに、わしらは惹かれ合ったのじゃよ。あの時は若かったな」
(えっ! 待って。花崎コンツェルンの先代と葵のお婆ちゃん、大学で出会ったの!? 何それ、すごいラブコメ展開)ぼくは脳内でツッコミを入れたが、命が惜しいので顔には出さなかった。
「だが、大学を卒業し、あやつは会社を立ち上げ、わしはイタコとして家を継いだ。二人は別々の道を歩んだのじゃ」
「それから三十年が経ち突然、あやつから連絡があった」
お婆さん様の声が低くなる。
「久々に会い、意気投合する中、あやつは言った。『大学の研究の続きをしよう』とな。『今は金がある。あの時できなかった、魂の研究を完成させよう』
「わしは賛同した。また大学の頃のように、純粋に真理を追い求めたかったのじゃ」
お婆さんは新品の煙管を取り出し、火をつけて深く紫煙を吸い込んだ。
「そこで完成したのが『人工の魂』じゃ」
部屋に緊張が走る。
「完成した人工の魂これを試してみたい。わしと花崎は、研究者としての好奇心に駆られた」
「だが、これを人体に使うことは、全ての倫理に背くことになる。わしらは躊躇った。じゃが、結局は好奇心には勝てなかったのじゃ」
お婆さんの手が震えている。
「その時偶然、ニュースが流れた。ある家族が交通事故に遭い、全員が命を落としたとな」
「え?」
「わしらは花崎の財力とコネを使い、その事故現場から二人の娘の遺体を手に入れた。そして人工の魂を入れ、蘇生実験を行った」
お婆さんはぼくを見据え、懺悔するように告げた。
「実験は成功した。魂を得て蘇ったその二人こそが、葵と、姉の橙花じゃよ」
ぼくは、言葉を失った。 頭が真っ白になる。 思考が追いつかない。
いつも事務所で毒舌を吐いている葵。 ぼくの飴煎餅を勝手に食べる葵。 セーラー服を仕事後と言い張り着ていた葵。
彼女は――もうすでに、死んでいたのだ。
お婆さんの言葉は、部屋全体の空気を鉛のように重く変えた。 ぼくの額に、嫌な汗が滲む。
「葵のお姉さんが作った? 操られているのではなく、自らの意思で?」
「いや、違う!! 花崎に利用されたのじゃ!」
お婆さんには苦渋の表情で、手にした煙管をギリギリと握りしめた。
「それを話すには、わしと花崎の『罪』について話さねばならん」
葵のお婆さんは、遠い過去を見るような目で語り始めた。
「四十年前わしは、ある男と共に『魂』の研究をしておった」
「ある男?」
「先代の花崎コンツェルン会長花崎 募じゃ」
ぼくは息を呑んだ。 名前は聞いたことがある。花崎 募といえば、一代で花崎コンツェルンを巨大財閥まで押し上げた伝説の経営者だ。今では教科書にも載るほどの偉人である。
「待ってください。なぜそんな大物が一緒に研究を? そもそも、なぜそこで葵のお姉さんが関わるんです?」
ぼくが質問攻めにすると、お婆さんは鋭い眼光を向けた。
「話は最後まで聞け!」
バキッ!!
お婆さんの手の中で、硬い煙管が真っ二つに折れた。
「ひぃっ!」
ぼくは口をチャックした。黙って聞こう。口を挟んだら、あの煙管のようにへし折られる。
ん、ん! とお婆さんは咳払いをして続けた。
「わしらはまだ若かったのじゃ。当時大学生だった募は、目には見えない幽霊や魂を科学で証明しようとしておった」
「その時、同じ大学に通っていたわしがイタコだと知り、興味を持って近づいてきた。一緒に研究をしていくうちに、わしらは惹かれ合ったのじゃよ。あの時は若かったな」
(えっ! 待って。花崎コンツェルンの先代と葵のお婆ちゃん、大学で出会ったの!? 何それ、すごいラブコメ展開)ぼくは脳内でツッコミを入れたが、命が惜しいので顔には出さなかった。
「だが、大学を卒業し、あやつは会社を立ち上げ、わしはイタコとして家を継いだ。二人は別々の道を歩んだのじゃ」
「それから三十年が経ち突然、あやつから連絡があった」
お婆さん様の声が低くなる。
「久々に会い、意気投合する中、あやつは言った。『大学の研究の続きをしよう』とな。『今は金がある。あの時できなかった、魂の研究を完成させよう』
「わしは賛同した。また大学の頃のように、純粋に真理を追い求めたかったのじゃ」
お婆さんは新品の煙管を取り出し、火をつけて深く紫煙を吸い込んだ。
「そこで完成したのが『人工の魂』じゃ」
部屋に緊張が走る。
「完成した人工の魂これを試してみたい。わしと花崎は、研究者としての好奇心に駆られた」
「だが、これを人体に使うことは、全ての倫理に背くことになる。わしらは躊躇った。じゃが、結局は好奇心には勝てなかったのじゃ」
お婆さんの手が震えている。
「その時偶然、ニュースが流れた。ある家族が交通事故に遭い、全員が命を落としたとな」
「え?」
「わしらは花崎の財力とコネを使い、その事故現場から二人の娘の遺体を手に入れた。そして人工の魂を入れ、蘇生実験を行った」
お婆さんはぼくを見据え、懺悔するように告げた。
「実験は成功した。魂を得て蘇ったその二人こそが、葵と、姉の橙花じゃよ」
ぼくは、言葉を失った。 頭が真っ白になる。 思考が追いつかない。
いつも事務所で毒舌を吐いている葵。 ぼくの飴煎餅を勝手に食べる葵。 セーラー服を仕事後と言い張り着ていた葵。
彼女は――もうすでに、死んでいたのだ。
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