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8-4 ロリコンじゃなくなったから……
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「ごめん、取り乱して」
少し時間が経って、あかりちゃんがしおらしく謝ってくる。だが、俺も焦ったように謝る。
「いや、俺のほうこそ、あかりちゃんのこと泣かせたりしてごめん!」
くそ、俺はなんて最低な奴だ。これはもう、切腹ものだ。
「別にいいって。悪いのは私だし、巧人は私のこと励まそうとしただけでしょ?」
ああ、あかりちゃん……君のその深い心は、まさに天使だよ。
「まぁ、女の子を抱きしめるとか、ちょっとやりすぎだけどね」
うわ、あげて落としたよ、この子。小悪魔や、これは俺を弄んでるで! ……俺はなんでテンパると、ちょくちょく似非関西弁がでるんだよ……。
でも、自分でも少しだけ意外だった。
『ダメだ。それ以上は』
『確かに、あかりちゃんにとってそう思えるだけの相手なのかもしれない。それでも、人を乏しめるようなことを、感情に任せて言う人間にはなっちゃいけない。それはいつか、後悔することになる』
あんなことを言うなんて、俺がロリコンだっとときには、もしかしたらできなかったかもしれない。俺が目指していたのは、彼女たちの幸せだけだったから。ただ、励ますことだけだっただろう。
けど、今回は違った。こうして、叱ることができたのは、俺が彼女たちを好きだって、それだけの盲目に取られていないからこそ、できたんだ。ある意味で、ロリコンでなくなったこともよかったのかもしれないな。
(まぁ、絶対に戻ってみせるがな)
「た~くと!」
俺がそう決意を固めていると、あかりちゃんが嬉しそうに、声を弾ませながら、俺に抱き付いてきた。
「へへぇ~……」
そうして、顔を綻ばせて、俺の胸にすりすりとしてくる。
「ねぇ、巧人」
「何?」
「お兄ちゃんって呼んでもいい?」
「え?」
俺は思わず、素っ頓狂な声を上げる。
え? お兄ちゃん? お兄ちゃんって、あのお兄ちゃん? それとも、「お、兄ちゃん!」って感じの下町的なノリのほう? ……あれ? お兄ちゃんってなんだっけ?
いや、とにかくだ。俺は呼ばれるわけにはいかない。そんな羨ましい展開になったら、俺以外のあかりちゃんファンに申し訳が立たない。嫉妬どころの話じゃないぞ。
俺がどうにか断ろうと、頭を悩ませていると、あかりちゃんは不安そうに、声をかけてくる。
「ダメ?」
さらに、小首を傾げで、目をうるうるとさせ、見上げるように見つめてくる。
ちょっと、それは反則だって!
くそ! 断れない! 受け入れるしかない!
(すまない、我らが同士よ。あかりちゃんにお兄ちゃんと呼ばれるこの超特権。許してくれ)
「わかった……いいよ」
「ほんと!? やった!」
そう言って笑うと、俺の体をぎゅっと抱きしめてくる。
「えへへへぇ……お兄ちゃん!」
な……なんていう可愛さだ!
くっ……! 本当にすまない。全世界のあかりちゃんファンおよび、ロリコンのみんな! こんな可愛い姿のあかりちゃんを独占してしまって! でも、あかりちゃんを悲しませるわけにもいかなかったんだ! わかってくれ!
「……私はただ甘えたかっただけなのかもしれない。こうやって普通な私のままで」
あかりちゃんは声の調子を変え、真面目な話をする。
「気づかせてくれてありがとう。私、なんだか前向きになれた」
「俺は当然のことを言っただけだよ」
「そうだとしても、巧人が認めてくれた私は、私なんだってそう思えたもん。だから、ありがとうって言葉……素直に受け取ってよ」
「……うん。どういたしまして」
なんだか、変な気分だな。こんな風に感謝されたことなんてなかったし。ちょっと気恥ずかしい。
「それに、他の誰が私をどう思っていても、お兄ちゃんはずっと一緒にいてくれるもんね!」
あかりちゃんのその言葉を聞き、俺もあることを話しかけた。
「きっとさ。あかりちゃんのお母さんも、俺と同じだったんじゃないかな? あかりちゃんが一人で頑張っているから、だからこそ、自分は関わらないようにしたんだと思うんだ。子離れってやつかな……」
「それは巧人の考えでしょ? ……信じることはできないよ」
「じゃあ、ちょっと強引な方法だけど……」
俺は耳打ちしてみる。
「ええー……本当にこんなこと言うの?」
「大丈夫! これに何も言ってこない親は親じゃないよ!」
「うーん……でも、巧人は何の反応もしなかったわけだし……」
「俺と親とのスタンスは似ているけど、厳密には違うからね! 俺のほうはさらに込み入るから!」
「……なんか、聞かないほうがいいってことはわかった」
そうしてため息をつくあかりちゃんを見た後、俺は腕時計で時間を確認する。その俺の様子を見たあかりちゃんも、俺の時計をのぞき込んできた。
「あ、私そろそろ帰らないと」
「そうなの? 一人で帰れる?」
「馬鹿にしないでよね! それ、巧人がついてきたいだけじゃないの?」
「過保護なんだよ」
「うちは放任主義なのでまにあってま~す」
あかりちゃんはさっきまでの自分と違う言葉を言う。やっぱりまだ、俺の言葉を信用できてないみたいだ。
「とにかく、そう言ってみるといいよ。きっと、あかりちゃんの思っていることが違っているって分かると思うから」
「まぁ……巧人が言うなら、言ってはみるけど」
「うん……じゃ、俺も帰るね」
抱きついていたあかりちゃんを俺から離すと、立ちがりながらそう言う。
「あ、待ってよ」
あかりちゃんは俺を引き止め、ケータイを見せてくる。
「お互いの連絡先、交換しよ?」
なんだと!? おいおい、どうするよ、マイブラザー&シスター。さっきの『あかりちゃんにお兄ちゃんと呼ばれる』ってだけでも、相当のことだったのに、まさか連絡先の交換ですか。これはもう、お前らの反感を買うどころではないよな。ここは断ろう。
「あかりちゃん俺、ちょっと――」
「ダメなの?」
うぐっ! また、その目か! 上目づかいは反則だぞ! いっそしゃがむか。あかりちゃんの目線より下になるか。いや、それは馬鹿みたいだな。やめよう。
とにかく、ここはその場しのぎでいいから言い訳をしよう。
「いや、交換したいのはやまやまなんだけど、ケータイを今は持ってなくて」
「え? 右ポケットに入ってるじゃん」
「あ、いや! これは拾い物で……」
「拾い物? どこで拾ったの?」
「え? えっと……会場」
「じゃあ落とした人は困ってるよね! 館内放送してもらわないとね!」
「あ、ごめん。これ俺のだわ。俺が落として俺が拾ったんだわ。俺の落とし物だわ」
「なんだ~そうだったんだ~。じゃあこれで交換できるよね?」
「あ~……でも、落とした時の衝撃で、電源がつかなくなったんだよね~」
「そうなんだ~。じゃあ……はい! この紙に私の連絡先書いたから、直ったら私に連絡してね!」
「え? …………」
……まずい。もう言い訳ができない。完全に追い詰められた。どうしよう。
俺が紙を受け取らずにいると、あかりちゃんは悲しそうに目を俯かせ、しおらしい声を出した。
「どうして受け取ってくれないの? ……やっぱり、迷惑だったんだ。巧人は私のこと、そう思ってたんだ……。お兄ちゃんとか呼んで……私だけ本気になって……馬鹿みたい」
「あかりちゃん……」
俺は……なんて最低なやつなんだ。泣かせるなんて……ロリコンの風上にもおけないぜ。
「あかりちゃん、ごめん。受け取るからちょっと意地悪してただけだから。ね?」
俺は焦るように、そう言う。あかりちゃんは、下を向いているため、顔が見えない。あかりちゃんの体は震えだし、そして――俺に笑顔を向けた。
「なんてね!」
「え?」
「騙された? 演技だよ、演技!」
あかりちゃんは楽しげな様子で笑い声をもらす。俺はそれに安心して、ため息をつく。
「おどかさないでよね。もう」
「あはは。ごめんね! だって受け取ろうとしないんだもん」
あかりちゃん、何だかキャラ変わったな。何と言うか子供っぽい。いや、今まで知っていたあかりちゃんとは違っていたと思ったら、また変わって……めんどくさいな。
「それじゃ、はい!」
あかりちゃんは俺の手を握ると、紙をその手に持たせた。そして――
「じゃあね、お・に・い・ちゃん!」
俺に笑顔を向けそう言うと、部屋を出て行った。
(あかりちゃん、君の考えは被害妄想だ。だから、きっとうまくいくよ)
その後、数分して俺も部屋を出た。
少し時間が経って、あかりちゃんがしおらしく謝ってくる。だが、俺も焦ったように謝る。
「いや、俺のほうこそ、あかりちゃんのこと泣かせたりしてごめん!」
くそ、俺はなんて最低な奴だ。これはもう、切腹ものだ。
「別にいいって。悪いのは私だし、巧人は私のこと励まそうとしただけでしょ?」
ああ、あかりちゃん……君のその深い心は、まさに天使だよ。
「まぁ、女の子を抱きしめるとか、ちょっとやりすぎだけどね」
うわ、あげて落としたよ、この子。小悪魔や、これは俺を弄んでるで! ……俺はなんでテンパると、ちょくちょく似非関西弁がでるんだよ……。
でも、自分でも少しだけ意外だった。
『ダメだ。それ以上は』
『確かに、あかりちゃんにとってそう思えるだけの相手なのかもしれない。それでも、人を乏しめるようなことを、感情に任せて言う人間にはなっちゃいけない。それはいつか、後悔することになる』
あんなことを言うなんて、俺がロリコンだっとときには、もしかしたらできなかったかもしれない。俺が目指していたのは、彼女たちの幸せだけだったから。ただ、励ますことだけだっただろう。
けど、今回は違った。こうして、叱ることができたのは、俺が彼女たちを好きだって、それだけの盲目に取られていないからこそ、できたんだ。ある意味で、ロリコンでなくなったこともよかったのかもしれないな。
(まぁ、絶対に戻ってみせるがな)
「た~くと!」
俺がそう決意を固めていると、あかりちゃんが嬉しそうに、声を弾ませながら、俺に抱き付いてきた。
「へへぇ~……」
そうして、顔を綻ばせて、俺の胸にすりすりとしてくる。
「ねぇ、巧人」
「何?」
「お兄ちゃんって呼んでもいい?」
「え?」
俺は思わず、素っ頓狂な声を上げる。
え? お兄ちゃん? お兄ちゃんって、あのお兄ちゃん? それとも、「お、兄ちゃん!」って感じの下町的なノリのほう? ……あれ? お兄ちゃんってなんだっけ?
いや、とにかくだ。俺は呼ばれるわけにはいかない。そんな羨ましい展開になったら、俺以外のあかりちゃんファンに申し訳が立たない。嫉妬どころの話じゃないぞ。
俺がどうにか断ろうと、頭を悩ませていると、あかりちゃんは不安そうに、声をかけてくる。
「ダメ?」
さらに、小首を傾げで、目をうるうるとさせ、見上げるように見つめてくる。
ちょっと、それは反則だって!
くそ! 断れない! 受け入れるしかない!
(すまない、我らが同士よ。あかりちゃんにお兄ちゃんと呼ばれるこの超特権。許してくれ)
「わかった……いいよ」
「ほんと!? やった!」
そう言って笑うと、俺の体をぎゅっと抱きしめてくる。
「えへへへぇ……お兄ちゃん!」
な……なんていう可愛さだ!
くっ……! 本当にすまない。全世界のあかりちゃんファンおよび、ロリコンのみんな! こんな可愛い姿のあかりちゃんを独占してしまって! でも、あかりちゃんを悲しませるわけにもいかなかったんだ! わかってくれ!
「……私はただ甘えたかっただけなのかもしれない。こうやって普通な私のままで」
あかりちゃんは声の調子を変え、真面目な話をする。
「気づかせてくれてありがとう。私、なんだか前向きになれた」
「俺は当然のことを言っただけだよ」
「そうだとしても、巧人が認めてくれた私は、私なんだってそう思えたもん。だから、ありがとうって言葉……素直に受け取ってよ」
「……うん。どういたしまして」
なんだか、変な気分だな。こんな風に感謝されたことなんてなかったし。ちょっと気恥ずかしい。
「それに、他の誰が私をどう思っていても、お兄ちゃんはずっと一緒にいてくれるもんね!」
あかりちゃんのその言葉を聞き、俺もあることを話しかけた。
「きっとさ。あかりちゃんのお母さんも、俺と同じだったんじゃないかな? あかりちゃんが一人で頑張っているから、だからこそ、自分は関わらないようにしたんだと思うんだ。子離れってやつかな……」
「それは巧人の考えでしょ? ……信じることはできないよ」
「じゃあ、ちょっと強引な方法だけど……」
俺は耳打ちしてみる。
「ええー……本当にこんなこと言うの?」
「大丈夫! これに何も言ってこない親は親じゃないよ!」
「うーん……でも、巧人は何の反応もしなかったわけだし……」
「俺と親とのスタンスは似ているけど、厳密には違うからね! 俺のほうはさらに込み入るから!」
「……なんか、聞かないほうがいいってことはわかった」
そうしてため息をつくあかりちゃんを見た後、俺は腕時計で時間を確認する。その俺の様子を見たあかりちゃんも、俺の時計をのぞき込んできた。
「あ、私そろそろ帰らないと」
「そうなの? 一人で帰れる?」
「馬鹿にしないでよね! それ、巧人がついてきたいだけじゃないの?」
「過保護なんだよ」
「うちは放任主義なのでまにあってま~す」
あかりちゃんはさっきまでの自分と違う言葉を言う。やっぱりまだ、俺の言葉を信用できてないみたいだ。
「とにかく、そう言ってみるといいよ。きっと、あかりちゃんの思っていることが違っているって分かると思うから」
「まぁ……巧人が言うなら、言ってはみるけど」
「うん……じゃ、俺も帰るね」
抱きついていたあかりちゃんを俺から離すと、立ちがりながらそう言う。
「あ、待ってよ」
あかりちゃんは俺を引き止め、ケータイを見せてくる。
「お互いの連絡先、交換しよ?」
なんだと!? おいおい、どうするよ、マイブラザー&シスター。さっきの『あかりちゃんにお兄ちゃんと呼ばれる』ってだけでも、相当のことだったのに、まさか連絡先の交換ですか。これはもう、お前らの反感を買うどころではないよな。ここは断ろう。
「あかりちゃん俺、ちょっと――」
「ダメなの?」
うぐっ! また、その目か! 上目づかいは反則だぞ! いっそしゃがむか。あかりちゃんの目線より下になるか。いや、それは馬鹿みたいだな。やめよう。
とにかく、ここはその場しのぎでいいから言い訳をしよう。
「いや、交換したいのはやまやまなんだけど、ケータイを今は持ってなくて」
「え? 右ポケットに入ってるじゃん」
「あ、いや! これは拾い物で……」
「拾い物? どこで拾ったの?」
「え? えっと……会場」
「じゃあ落とした人は困ってるよね! 館内放送してもらわないとね!」
「あ、ごめん。これ俺のだわ。俺が落として俺が拾ったんだわ。俺の落とし物だわ」
「なんだ~そうだったんだ~。じゃあこれで交換できるよね?」
「あ~……でも、落とした時の衝撃で、電源がつかなくなったんだよね~」
「そうなんだ~。じゃあ……はい! この紙に私の連絡先書いたから、直ったら私に連絡してね!」
「え? …………」
……まずい。もう言い訳ができない。完全に追い詰められた。どうしよう。
俺が紙を受け取らずにいると、あかりちゃんは悲しそうに目を俯かせ、しおらしい声を出した。
「どうして受け取ってくれないの? ……やっぱり、迷惑だったんだ。巧人は私のこと、そう思ってたんだ……。お兄ちゃんとか呼んで……私だけ本気になって……馬鹿みたい」
「あかりちゃん……」
俺は……なんて最低なやつなんだ。泣かせるなんて……ロリコンの風上にもおけないぜ。
「あかりちゃん、ごめん。受け取るからちょっと意地悪してただけだから。ね?」
俺は焦るように、そう言う。あかりちゃんは、下を向いているため、顔が見えない。あかりちゃんの体は震えだし、そして――俺に笑顔を向けた。
「なんてね!」
「え?」
「騙された? 演技だよ、演技!」
あかりちゃんは楽しげな様子で笑い声をもらす。俺はそれに安心して、ため息をつく。
「おどかさないでよね。もう」
「あはは。ごめんね! だって受け取ろうとしないんだもん」
あかりちゃん、何だかキャラ変わったな。何と言うか子供っぽい。いや、今まで知っていたあかりちゃんとは違っていたと思ったら、また変わって……めんどくさいな。
「それじゃ、はい!」
あかりちゃんは俺の手を握ると、紙をその手に持たせた。そして――
「じゃあね、お・に・い・ちゃん!」
俺に笑顔を向けそう言うと、部屋を出て行った。
(あかりちゃん、君の考えは被害妄想だ。だから、きっとうまくいくよ)
その後、数分して俺も部屋を出た。
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