ロリコンだった俺がある日突然何の脈絡もなくロリコンじゃなくなったから再びロリコンに戻りたい!

発酵物体A

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一年生 5月-3

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「というわけで、『友達初心者である俺と伊久留二人による友達らしいことを考える相談会』を第一回目の部活とします」

 あの後、伊久留とちょっと話しをした結果、俺たちはお互いに友達にはなったけどなにすればいいのかわかってないから、とりあえずやることを決めるってことになった。
 伊久留は、俺が宣言をするといつも通りの目を向けて一言だけ言った。

「ながい」
「そこはとりあえずおいておいてほしいんだが……」
「ん……わかった」

 伊久留は素直に頷く。う~ん……。調子狂うな。いや、伊久留はいつもこんなんか。
 俺は一つ咳払いをすると、話を元に戻す。

「で、だ。この現代文化研究部は俺と伊久留の場所。つまり、日常生活の延長線上でしかない。だから、内容はなんでもいい。ただ一緒に楽しくなれること、遊べることを考えるんだ」

 そう言い終わると、伊久留は小さく右手を上げる。

「なにか案があるのか?」
「ううん。それよりも最初の部活だから、一応自己紹介をしたい」

 なるほど。区切りって意味では重要なことかもな。

「わかった。じゃあ、俺からな」
「待って。どうせだから質問形式がいい」

 お互いの仲を深めるって意味では、あっているな。

「オッケー、名前を言ったら質問に変えよう」

 ということで、名前を言い合った後、お互いの質問が始まった。

「まずは俺から質問な」

 そうだな……最初だし普通な質問にするか。

「好きな食べ物は?」

 まぁこういう質問て正直答える意味が分からないんだけど。相手としても答えやすいだろう。

「伊久留は別に好き嫌いはない」
「…………」
「…………」
「……いや、なんかこたえようぜ!?」
「ちゃんと答えた」

 っく! なんか誤魔化された気分! 胸がモヤモヤする!

「次は伊久留の番」

 ま、まぁあっちも最初だし、そんなに変な質問はしてこな――

「好きな官能小説は?」
「知るか!」

 予想の斜め上すぎる質問に、思わず声を荒げて突っ込んだ。

「じゃあ好きな表現でもいい」
「だからしらねーって!」
「『月に照らされ私のあそこは怪しく濡れ光る。そこに這わせられる彼の荒々しい手。その若さゆえの力強さが私の体を喜ばせる。「あの人を裏切っている」と心の中で否定することさえ、今の私には背徳的感情をつのらせるだけの要因に過ぎない。私のすべては、もうすでに彼の虜になってしまっている』」
「うわ~……やめろ……。なんか想像できてしまう~~。どういう話なのか今のだけでわかってしまう~~」

 そして内容が気持ち悪すぎて嫌だ。

「巧人はNTRはダメみたい」
「大体それ、高校生にする質問じゃねーぞ! 俺たちまだ未成年! 未成年だから!」
「もっと規制すべきものなんていくらでもある」

 確かにインターネットの普及で簡単に情報が手に入れられるこの時代、それはその通りだろうけど。話がずれてるぞ。

「もう次の質問な」

 俺は仕切りなおすように、そう促す。

(正直、伊久留の質問がいきなりパンチが効きすぎてて、動揺しちまったが……。だからって俺からもあんな質問するのはあれだな。よし!)

「伊久留の趣味は?」

 どうだ? これならないなんて答えにはならないだろう? それに、これなら話題を展開するのには十分だし。さっき俺がした好きな食べ物よりも断然役立つはずだ。

「たくさんあるけど、強いて言うなら人間観察」

 人間観察って……い、いや! ここでひいてはダメだ!

「へ……へぇ……そういや伊久留って俺のことつけてきたりしてたみたんだもんな」
「あれは少し違うけど……でも巧人をつけるのは苦労した。さすが一流の相手だった」

 なんだろう。褒められているのかが微妙に分からない。

「次。巧人の好きな体位」
「なんでお前のはそんなエロ方面ばっかなんだよ!」

 そして今頃だがこいつ……。もしかして――

「お前ロリコンじゃないな!」
「最初から違うと言ってたとおもうけど」

 っち、騙されたぜ。まさか、仲間だと思っていたのに……。俺の心がガラスのごとく砕け散っていくようだ。
 そんな俺をよそに伊久留は催促をしてくる。

「それで、質問の答え」
「答えたくない。大体言ったとしてどうなるんだ」
「好きな食べ物だって同じようなもの」
「う……いや、だがああいうのは意外な時に役立ったりするから……」
「だったら、体位だって意外な時に役立つかもしれない」

 絶対にない。けど……

(意外な時に役立つとか言ったのは俺だしな……)

 仕方なく答えようと考え出す。だが、そこで一つ問題が出てきた。

「その前に体位なんてどんなのがあるのかよくわからないな」
「正常位、後背位、騎乗位、側位、立位とか」

 いや、言われても分からないし。
 俺が一向に悩んでいると、伊久留は口を開いた。

「わかった。じゃあ描く」
「え?」

 伊久留は突然として鞄からルーズリーフとシャーペンを取ると、絵をかき始めた。つーか絵うま! しかも早い。そうして数分後には10組近くの男女が……。

「とりあえずメジャーなのだけ描いた」
「メジャーって……半分近く知らないんだけど」

 男女の組の横に体位の名前が書いてあるけど、なんだよこの交差位って。
 しかも絵がうまいし。これリアル系のせいで生々しいというか。これが小学生だったら、まずかったかもしれないな。こんなところでおったててられないし。

「それで、どれ?」
「ああ……まぁ、これかな?」

 俺はとりあえず、対面座位と書かれていたものを指さした。すると伊久留は「なるほど……」と頷き、「どうして?」と聞いてきた。

「なんていうかこう……抱き合ってるところに愛を感じるというか。あと女性のほうが男性の体に足を巻き付けてるところとかも」

 俺、何必死に説明してんだろう……恥ずかしい。

「でも伊久留が描いたのは厳密には違っていて、これは巷では『だいしゅきホールド』と呼ばれてる」
「な、なんかすごい名前だな」

 それと、伊久留の口からそんな言葉を聞くのは、ギャップが……。
 とにかく、これ以上詳しく聞かれてもたまらない。はやく、次の話題に行こう。

「じゃあ、次に俺な」

 そうして考えようとする。が、特に何も出ない。……おかしいな。まだ二つしか聞いてないのに、止まるって。

 いや、わかる。わかるぞ。改めてなにか質問を考えるっていうのは何気に難しいことだからな。
 けど、俺と伊久留は互いにまだまだ何もしらない状態なんだぞ? 聞きたいこととかいくらでもあるはずだ。
 そうして考えてみると、思いのほかに、聞くべきことが頭によぎった。

「さっきも思ったけど、お前ってロリコンじゃないなら何なんだ?」
「オールマイティ」
「全部!?」

 全部って……いや何がだ? エロ方面全部ってこと? そう戸惑っていると、伊久留は続けた。

「巧人も知ってのとおり、伊久留は本を読んでる。その内容ってこと」
「あ、ああ。そういうことか」

 本の内容がオールマイティ……。普通の本も? まずい。もっと疑問がでてきた。いや、でも少なくとも官能小説とかなんとか言ってくるようなやつだ。そう言うのやつのほうがメインだろうな。

「じゃあその関係で、俺のロリコンって人間の存在もちゃんと理解しているわけだな?」

 俺の問いかけに小さくうなずく。

「シスコンやブラコンとかそういう類もちゃんと理解してる」

 ……それは理解しなくていい。というか、俺はしたくない。ブラコンなんて……異常だ。

「あとBLと百合もいける」

 ぅ……BL……。いやだ。これも理解したくない。気持ち悪くなる。そんなやつ、一生関わり合いたくない。
 百合は……まぁいい。小学生の女の子二人がいちゃついてる姿とか、すごくこう……クルし。うん……最高だな。

「純愛、痴漢、強姦でもOK」
「本当にお前、幅広いな……」

 けど、痴漢とか強姦とか……。俺はないな。というか、無理矢理ってのが嫌いだ。やっぱりお互いの気持ちが通じていてこそだろ。

「巧人はすごい」
「なんだよ。いきなり」
「本に出てくるロリコンって、どっちかというと酷いから」
「あー……」

 まぁ、確かにそうだろうな。それこそ、誘拐とかしてるのもあるし。ストーカーだし。不審者だし。

 そういう奴らっていうのは、自分のことしか考えてないんだ。相手のことを考えてない。最低だよ。
 本当に好きなら、望むものって相手の幸せのはずなんだ。たとえ、自分が目を向けていられなくても、相手に嫌われても。それでも、その人のことを考えて尽くす。そしてそれに喜びを感じる。それこそが俺の考えるロリコンだからな。

「次は伊久留の番」
「ああ。って言っても、もうエロ方面はマジでやめてくれよ」
「わかった」

 そう答えると、伊久留は何やら考え込む。さっきまでは結構ノータイムで来てたのにな。禁止したら他に質問することなかったのかよ。いや、俺も二問だけで何もでなくなったくらいだから人のこと言えないんだけどさ。

「巧人は今までに友達いた?」
「え? ……まぁ一応な」
「……ずるい」
「なにがだ!」

 伊久留の発言に思わず突っ込む。いや、ずるいってなんだよ。ずるいって。自分で作ってこなかったんだろうが。

「伊久留は巧人が初めての友達」
「ああ。まぁ、さっきも聞いたけどさ」
 これもさっき聞いたけど、友達作ってないのって、伊久留自身も納得してたんだろ? だったら、ずるいも何もないのにな。
 とりあえず、フォロー(何のかはしならい)をするように、伊久留に答える。

「高校ってことなら、俺だって伊久留が初めての友達だぜ?」
「でも、巧人はもう大輝もいる。二人。伊久留は巧人、一人。二倍。……ずるい」
「だから何がずるいんだよ!」

 大体、大輝は大輝でどっちかというと苦手な部類だし。今は伊久留といるほうが多いし、それにこっちのほうがまだ話が合うからな。

「でも考えようによっては友達が一人だったら、それはもう恋人」

 どんな理論だよ。だったら俺たちは恋人なのかよ。
 今度の意味不明な発言にはさすがに呆れて、心の中だけで突っ込んだ。

 伊久留がすねて(表情が変わらないからそうだとは言えないけど)話がどんどんと脱線していくので、俺はまとめるように言った。

「人数じゃないだろ? 大事なのはさ。なんていうか質だろ?」
「1+1=2」

 言いたいことは何となくわかるけど、やっぱり何となくわかんねーな、それ。
 今の伊久留には何か言っても無駄だな。仕方ない。面倒だけど話すか。色々と照れ臭い部分もあるけど。

「俺は確かに友達は居たけど、それだけだ。俺は伊久留に『無理にしてたか?』って聞いたよな? それが俺だったんだよ。一緒に居た……っていうか、あっちのほうからこっちに来てさ。俺のことからかうだけからかって。俺はそれが嫌だったよ」
「じゃあどうして友達だったの?」
「知らないよ。あっちがそう言っていたからかな? 本当にずっと一緒にはいたし。それで友達だったんだよ。……伊久留はさ、一緒に居て楽しくないやつと、過ごしたいと思うか?」
「…………」

 俺の問いに伊久留は静かに首を横に振った。

「そういうことだよ、俺が言いたいのは。本当は友達ってのは、無理に作るものじゃないんだ。一緒に居て楽しいと思えるやつと過ごして、自然とできるものなんだよ」
「巧人は楽しい?」
「どうだろうな? それはまだよくわからないけど、俺は伊久留と友達になれてよかったなって。一緒に居たいってそう思ってるよ」
「……うん。伊久留も、巧人と友達になれてよかった」

 そう答える伊久留の顔が少し微笑んでいるのが分かった。これも、伊久留のことがわかってきたってことか。友達っぽいな。
 けど、やっぱ気恥ずかしいな。面と向かって友達になれてよかったとか言い合うなんて。俺は恥ずかしさを紛らわすように、言葉を続けた。

「まぁ、友達作るうんぬんは、俺も人のこと言えないから気にすんなよ?」
「ううん。伊久留はその通りだと思った。だからその言葉を覚えておく」

 っく……なんだかもっと恥ずかしく感じてきた。特に相手が真面目に話してきてるってことが。
 ……いや、でもそうだよな。真面目に感動してくれたんだ。だったらそれでいい。胸を張ろう。

「伊久留はまだ友達一人だけど、もっと増える」
「ああ、そうだ。まだ入学して一ヶ月くらいだし、まだまだ増やせるよ」

 現に俺は今更増えた人間だ。説得力があるだろう。俺の言葉に伊久留はうんっとうなずく。

「類は友を呼ぶ。きっとBLの男みたいな人もやってくる」
「おい!? やめろ、怖いこと言うな!」

 ただでさえ、俺は唯愛という変態だけで苦労しているのに、これ以上周りに変態が増えてたまるか。変態の友達だって伊久留だけで十分だ。もうお腹パンパンだ。

 大体BLって想像したばっかだし……うぇ……。お願いだから、俺にはかかわらないでくれ。できることなら、ガチムチ系の趣味で合ってくれ。そうすれば、マンに一つも俺には絶対来ないはずだ。
 俺の反応に伊久留は少し考え込んでから声をかけてきた。

「巧人」
「なんだよ」
「頑張ってこの部にハーレムを作るんだぞ」
「作んねーよ!」

 親指立てていきなり何を言ってるんだ、こいつは。『だぞ』とか、キャラぶれだぞ、おい。あれか? BLがダメだから、女だけってことでハーレムか? 頭がいかれてるぜ。

 つーか、俺が愛を注ぐのは、はるかちゃん(8)たちって決まってるし! それにあれはハーレムじゃない。小学校のみんなの笑顔は全世界みんなのものだ。みんなで愛でるものだ。独り占めとかありえない。

「まぁ作られても困る。そうしたら伊久留はここに入れない」
「自分はメンバーに入ってねーんだな」

 いや、入っていても困るけど。そんな疑問とも呼べない戯言を聞いて、伊久留はいつになく嬉しそうな表情を俺に向けて答えた。

「だって伊久留は巧人の友達だから」
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