ロリコンだった俺がある日突然何の脈絡もなくロリコンじゃなくなったから再びロリコンに戻りたい!

発酵物体A

文字の大きさ
59 / 115

一年生 5月-4

しおりを挟む
 そうやって何度か、質問を交互に繰り返して、質問することがなくなり終わる。

「じゃあ、話を戻して、何をするか、考えるか」

 俺がそう言うと、伊久留はこくりと頷く。
 さて、しかしどうしたものか。部活は=友達と遊ぶ、で相違はないが、それが出てこない。というより、たった二人で何ができるのだろう。う~む……。
 考えていると、伊久留が小さく手を挙げた。

「何か思いついたのか?」
「違う。伊久留は友達ってものが初めてだからよくわからない。だから巧人に全部任せる」
「任せるって……ずるいな、お前」
「巧人は友達いた。だったらまずはそのときにやっていたことを思い出してみればいい」
「え? うーん……」

 言われて、思い返してみる。
 まず、唯愛のことでからかわれて……からかわれて……うん。ダメだな。ろくなこと覚えてない。唯一別のことで思い出せたのは、給食のプリン奪われただ。
 とにかく、いいことっていうか楽しかったこととか何もないぞ。

「……とりあえず、しりとりでもするか?」

 役に立たない記憶はどこかに投げ捨てて、どうにか絞り出し答える。発想力のなさが恨めしい。そして、二人でやってもそんなに面白いと思わない。

 さらに、もっと言うが、俺はしりとりを面白いと思ったことがない。なのに、何故しりとりと言うものを選んだ。いや、何も頭に出てこなかっただけだけど。
 後悔している俺とは裏腹に以外にもやる気で「わかった」と、伊久留は始めた。

「りす」
「す」
「すす」
「スイス」
「スーツケース」
「水素ガス」
「スペース」
「スパイス」
「スクールバス」
「スキーハウス」
「ステンドグラス」
「スライドガラス」
「ステータス」
「ステンレス」
「スフィンクス」
「ステゴサウルス」
「ストロベリーアイス」
「スパゲティーミートソース」

 …………。
 ………………。

「スフェノスポンディルス」
「スミレヌレバカケス」
「スキウルミムス」
「ステラーカケス」
「ストラディヴァリウス」
「スンダスローロリス」
「駿河上臈杜鵑草」
「……っく」

 ……ダメだ。もう『す』で始まって『す』で終わるものが思いつかない。

「俺の負けだ……」

 そう言って降参する。にしても――

「ところで、なんで俺たちは『す』縛りでしりとりしてたんだ?」
「巧人が始めたから」

 俺は何となくで特に理由なんてなかったけど……伊久留もそうだったか。
 けど、お互いに『す』縛りというか『す』責めはつらいな。以外に続いてびっくりしたけど。やっぱり、そんなに面白くないな。しりとりなんて。

「じゃあ……何するか?」

 次にやることを考えるために、そう口に出して聞いてみる。が、伊久留は何もを言わずにじっとこちらを見るだけだった。
 本当に言っていた通り、全部丸投げなのな。まぁいいさ。それならそれで。

 俺は開き直って、また一人で考え出す。
 えっと、どこまで考えてたっけ? ……そうだ、二人で何ができるのかか。でもそれで何も出なくてしりとりとか言ったんだ。

 けど、しりとりってどっちかというと大人数でやるものな気がする。というより、遊びって話になると大人数でやることが大半か。
 そこで、一つ疑問に思うことがあった。

「そういやさ、さっき類は友を呼ぶ~って言ってたけど、伊久留はこの部はどうするんだ? 今は二人で使ってるけど、増やす予定ってあるのか?」

 正直、そこでBLがどうとかの話をしていたから、聞き流したいことでもあったが、勇気を持ってたずねる。

「来るものは拒まない。それが伊久留の考え。巧人も自分の友達を呼んでもいい。ここは巧人と伊久留のものだから」
「ああ、わかった」

 って言っても、友達なんて今は大輝くらいしかいないが。でも、なるほどな。これから先、メンバーが増える可能性はあるのか。

 そうだとすると、伊久留と二人で過ごすのは、それまでになる。それがいつ来るのか。早いのか、ずっと来ないのか。そこは考えたところで仕方はないかもしれないが、それは発想を変えるのには役立つ。

 俺は今まで二人でもできることを考えていたが、そうじゃなく、二人だからできることで考えるんだ。
 と言っても、何か劇的に変わるわけじゃない。すぐには案だって思いつかない。それでも、その心持ちの上で考えることは大切なはずだ。
 あとは……そうだな。俺が伊久留とやりたいと思うことってのを組み込めば何か……。

「……伊久留。こうしよう」

 頭の中に思いついたそれを提案した。……さて、どうなるか。ある意味で楽しみだな。

*****

「……さて、そろそろいいだろう」

 部室の外に出て10分程経ち、そう思って再び中に入る。
 伊久留は椅子の横に立ち、こちらをみていた。

「……待たせたか?」
「……ううん」

 そんな会話を交わしながら、近くに寄っていく。
 そして俺は照れ臭そうに、言葉を続ける。

「でも、驚いたよ。まさか、俺みたいなやつにあんな手紙を出してくるなんて」
「そんなことない。あなたはとてもいい人。だから伊久留は……」

 そこで伊久留は恥ずかしそうに俯く。身長さもせいもあって顔はよく見えないが、耳が少し赤いのは分かった。
 その反応が何だか面白くて、ついいじめてみたくなる。

「好きになった?」

 相手の止めてしまったその続く言葉を、優しい声色で耳元にささやく。
 伊久留は一瞬びくっと体を震わせると、さらに赤くなっていく。

「けど、その好きな『俺』は、こんなこと……するのかな?」
「あ……」

 肩を軽く押して、後ろの机の上へと倒す。伊久留はぽーっとした目で見上げてくる。

「ダ……メ……」

 どうにか絞り出すようにそう言ったが、そこには説得力もなにもない。頬を染め、期待に満ちた眼差し。それは彼女にとっての無意識なのか、行動のいちいちが、いじめたくなる。だから俺はまた、ささやいた。

「でもさ……。好きになったっていうんなら、当然その先だってわかってるよね? こういうこと……望んでいたんでしょ?」

 仰向けになった伊久留の上に、俺は覆いかぶさるように身を寄せる。すぐ目の前には伊久留の顔。少し近づけただけで、どこかが触れ合いそうなほどだ。
 そんな状態で伊久留を見つめるが、顔を反らしたりはしてこない。つまりは……そういうことだろう。
 俺は、ゆっくり、ゆっくりと顔を近づけ、熱い口づけを――

「……で、どうだ?」

 はせずに、体を引き上げて、真顔で伊久留に聞いた。
 まぁ、当然だ。あれより先のシミュレーションなんて、できるわけがないし。俺のファーストキス(俺が覚えている限りで)をこんな場所でこんな形、しかも伊久留になんてささげたくはないからな。
 伊久留も机の上から降りて立ち上がると、答えた。

「もっと強引でいい」
「本当か? あれでも結構なものだと思うけどな。なんか不安なんだけど」
「そんなことない。今回のようなタイプは、強引さが重要。相手に全部を委ねてる。支配されたいと願ってる」
「そういうもんか?」
「凌辱系作品のヒロインだったら快楽堕ちしてるような感じ」
「嫌な情報だな、それは」

 その余計な一言がなければ、まだ納得できたんだが。

「まぁ、伊久留の意見は参考にはなるけどさ。偏りが激しいような気がするぞ」
「それは仕方ない。伊久留が持ってるのは全部、創作上の知識」
「いや、そりゃそうだろうけどよ」

 逆に違っていたほうが驚くし。

「もっと、普通な感じにならないのか? せめて、純愛な設定にしてくれ」
「今回もそうだった」

 確かに、手紙で呼びだされてってことだし、日常的に会っていた相手からってのも、その通りではあるけど。

「展開速すぎだろ。しかも俺側のほうはすごく余裕だったし。押し倒すのも早いって。もっと告白の返事とか先にやれよ」
「男はみんなせっかち」
「偏見だろ」

 いきなり何を言ってるんだ、こいつは。

「でも、あんまり長くしてもシミュレーション的には面倒だと思う」

 まぁ、そうだろうな。俺が提案したこれは、俺にとって重要だったからだし。それに、その重要なのは、告白のポイントじゃなく、雰囲気作りからの濡れ場であるわけで。

(俺だって、いつそういうことがあるかわからないからな!)

 もしも、かなたちゃん(10)から求められたりして、ちゃんとリードできないと格好がつかないしな。
 そうそうあることではないだろうけど、備えあれば憂いなし。準備しておいて損はない。

 そして伊久留なら、身長が小学生レベルなので、その辺の立ち回りがつかめるからやりやすい。さらに、こんな状況だ。二人きり以外ではできない。

 というわけで、俺が伊久留とやりたくて二人でないとできないこと、としてこのシミュレーションをやることになった。伊久留にも説明したら、さっきの大まかな流れと自分たちのキャラ設定を軽く説明された。そしてその結果――が今というわけだ。

「とりあえず、もう一回やってみようぜ」
「……やっぱりせっかち」

 本当に急かしてしまったせいで何も言えない。
 俺は話をそらすように、調子を変えて喋る。

「でも、思ったよりは楽しいな。このシミュレーション」
「巧人が面白いなら伊久留はそれでいい」
「なんだよ、それだと俺だけが楽しんでるみたいじゃないか」
「そうじゃなくて、巧人が楽しければ、伊久留も楽しい」

 そう答える伊久留は確かに、楽しそうにしていた。俺はそれが嬉しく思った。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢

さら
恋愛
 名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。  しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。  王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。  戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。  一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

処理中です...