ロリコンだった俺がある日突然何の脈絡もなくロリコンじゃなくなったから再びロリコンに戻りたい!

発酵物体A

文字の大きさ
110 / 115

15-1 憂鬱な1日の始まり

しおりを挟む
「はぁ……」

 学校につき、席に座って早々にため息をつく。
 と言っても、これが初めてじゃない。もうすでに、今日は何度も学校に来るまでにため息はついた。

「お~い。どうした、巧人? 元気ないじゃん」

 そんな俺に心配そうに声をかけてくる人物がいた。そんな稀有な奴はこのクラスには一人しかない。

「おぉ大輝……なんか久しぶり」
「ああ、うん。久しぶり……ってそうじゃなくて、どうしたんだよ巧人」

 戸惑いつつも俺に返事をして、さらに本当に心配そうにまた聞いてくる。
 あ~それにしてもマジで久しぶりな気がする。この1ヶ月ちょいくらい全然会話をした記憶がないしな。どうせだし、大輝に話をしてみるか。そうすれば、気が紛れたりするかもだし。

「実はな、現代文化研究部に部員が一人増えたんだ」
「へぇ~そうなんだ。それでそれがどうかしたのか? また、ロリコンじゃなくなるほどに重大な事件でも起こったとか?」
「さすがにそこまでじゃないが……俺にはすごく重大なことだな」

 そう……重要だ。死活問題だ。

「その増えた部員は後輩なんだが……そいつホモなんだ」
「あ~そうなんだ……。また大変な人が入ってきたね」
「ああ。しかもそいつ俺のことを好きだと言ってきやがって……」
「え? 確か巧人って既に一人……峰内くんに……」
「そうだよ、二人目なんだよ」

 大輝に言われて、その事実を突き付けられたようになって俺はため息をつく。ったく、なんで俺がこんな目に合わなきゃいけないんだ。何の罰だ。俺がそんなに悪いことをしたのか。

「ま、まぁいいんじゃない? モテモテだし……」
「いいわけあるか。どこに世界に、男に好かれて喜ぶやつがいるんだよ」
「一応、そういう世界になら……喜ぶ人もいるんじゃない?」
「俺はそんな世界の住人じゃない。ここの、ノーマルの世界の住人だ」

 そしていいと思っているなら、視線を泳がすな。ちゃんと俺をみてはっきりと言え。

「と、とにかく、今日は木曜で部活があるから、会うのが憂鬱だと。そう言う意味だね?」
「その通りだ」

 俺は話を反らして逃げた大輝のことは見逃して頷く。
 このままホモワールドについて談議なんてしていたくはないしな。
 それよりも今は望のことだ。

 あいつとはこの前の部活の帰りに会ったのが最後だが……あのとき、ちょっとかっこつけてしまった。あれでさらに好きになられてしまうってことも考えられるんだよな。
 いや、あれは仕方のないことだとは思っているが。それでもそうなってしまったのだと考えると……やっぱり嫌だ。

「まぁ……俺にはこれ以上は何も言えないけど……その、頑張ってな?」
「ああ今はその言葉だけでも、ありがたいぜ」

 そうしてチャイムが鳴りHRが始まるまで、とりとめもないくだらない話をしたのだった。


*****


「はぁ……」

 部室で自分の席についたところで、俺はため息をついた。
 今日は本当にため息が多いな。でもしかたないのことだ。

「どうしたんですか、先輩? ため息なんてついて?」
「いや……そういや、そうだったなって思ってな」
「?」

 望は俺の言葉に不思議そうに見上げてくる。
 ……そう、俺の右腕に抱き付いた状態で。

 そうだったんだ。結局、席の問題は何も解決していなかったな。完全に忘れていた。
 あの日はもう、それどころじゃなくなっていたからな。
 と、そんなことより今は――

「離れろ」

 俺は冷たい視線で望を睨みつける。ここまですれば、こいつも自分が迷惑かけていると気付いて、さっさと腕を離すだろう。

「ああ……その蔑んだような視線……最高にぞくぞくときます! もっと……もっとボクのことを見てください!」

 そしてさらに強く抱きつかれる。しかもこいつ……キラキラと何かを期待した目をしているし、頬がほんのり赤い。さらに、よだれが少しでている……。今ので興奮しやがったな。

(あーもう、変態の扱いって難しい!)

「てか、涎つくからマジで離れろ! 汚い!」
「うへへ……。先輩に……ボクをマーキング……」

 うわああ!! こいつ……目がいってやがる! 今の言葉で変態に餌を与えてしまったか! 状況がさらに悪化するとは……俺としたことが一生の不覚!

「おい、誰か助けてくれ!」

 もう俺の手には負えないということで周りに助けを求める。
 こういうときは……そうだ。透だ。あいつは望と同じホモだし。この前もアイツのことを叱っていた。
 あいつならこの状況を打破してくれるに違いない――

「ふむ……。なるほど、そう言う考え方もあるか……。俺もいずれ巧人にマーキングを……。」

 冷静に見てんじゃねーよ! つーか、普通に不安になること考えるな!

 やはりダメだ。俺に対して邪な感情を持つやつに頼ったこと自体が間違いだった。やっぱこういう時は――

「絵夢、助けてくれ!」

 こいつが一番だ! アイコンタクトできるほどの仲。昨日は機嫌が悪くてあれだったけど……今日なら!

「う~ん……いいけど、実はさっきの望くんへの言葉攻めをみていたら……なんだか……ねぇ?」

 っく、ここで条件だと! いやらしい笑みを浮かべやがって。俺が断れないとわかっての行為だな。

「へへ……へへえ……先輩の匂いとボクの匂いを……交換」

 だ、だが今の望は人語が通用する相手ではない。このままだと俺が全身望色に染め上げられてしまう。背に腹は代えられないか。

「……今度またSMに付き合ってやるから……今は頼む!」

 俺がそう答えると絵夢は満足そうに微笑む。そして椅子を引いて席を立つと、俺の右側へと周り、軽く望の体を後ろから抑える。

「じゃあ……はい。これで逃げれる?」

 よし……絵夢がいなくなって左側にスペースが開いたし、俺に寄りかかっていた望もこれなら、引き離しても倒れ込むことなんて事態は起こらないだろう。

「ああ、十分だ」

 俺はそう返して望から逃げるように左側へ体を逸らし、腕を思いっきり引き抜く。
 これでようやく、望という脅威から逃れられたな……。その望はと言うと――

「先輩……せんぱ~い……」

 ご覧の様子で、未だに我を忘れていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

罰ゲームから始まった、五人のヒロインと僕の隣の物語

ノン・タロー
恋愛
高校2年の夏……友達同士で行った小テストの点を競う勝負に負けた僕、御堂 彼方(みどう かなた)は、罰ゲームとしてクラスで人気のある女子・風原 亜希(かざはら あき)に告白する。 だが亜希は、彼方が特に好みでもなく、それをあっさりと振る。 それで終わるはずだった――なのに。 ひょんな事情で、彼方は亜希と共に"同居”することに。 さらに新しく出来た、甘えん坊な義妹・由奈(ゆな)。 そして教室では静かに恋を仕掛けてくる寡黙なクラス委員長の柊 澪(ひいらぎ みお)、特に接点の無かった早乙女 瀬玲奈(さおとめ せれな)、おまけに生徒会長の如月(きさらぎ)先輩まで現れて、彼方の周囲は急速に騒がしくなっていく。 由奈は「お兄ちゃん!」と懐き、澪は「一緒に帰らない……?」と静かに距離を詰める。 一方の瀬玲奈は友達感覚で、如月先輩は不器用ながらも接してくる。 そんな中、亜希は「別に好きじゃないし」と言いながら、彼方が誰かと仲良くするたびに心がざわついていく。 罰ゲームから始まった関係は、日常の中で少しずつ形を変えていく。 ツンデレな同居人、甘えたがりな義妹、寡黙な同クラ女子、恋愛に不器用な生徒会長、ギャル気質な同クラ女子……。 そして、無自覚に優しい彼方が、彼女たちの心を少しずつほどいていく。 これは、恋と居場所と感情の距離をめぐる、ちょっと不器用で、でも確かな青春の物語。

処理中です...