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街へ

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勇者が城に来て数日がすぎた。
人間界に戻るのもあと2日。

ミカエラを含め他の従者たちも城にレオがいることにも慣れた様子だ。
ある2人を除けば…。

「あ、いた!アル!イル!今日は一緒に街に出ない?」

朝から城のバルコニーで日光浴をしていたアルとイルはミカエラの声にぴくんと耳を反応させた。

「…どうしたの急に」
「なんか用でもあるの?」

寝そべりながらミカエラの方を見ることなく返事する2人は一見乗り気でないように見えるが、尻尾はゆらゆらと揺れている。

その姿に目を細めたミカエラは、2人のそばにいくと
「ちょっと見たいお店があるの!久しぶりに3人でお出かけしましょう」とにっこりと笑った。

2人も「わかったよ」「しょうがないなあ」としぶしぶと言ったように立ち上がる。
そんな2人の腕を取ってミカエラは嬉しそうに歩き始めた。



さかのぼること数時間前。
朝の仕度をしていたミカエラはノアに髪を編んでもらうように頼んでいた。
長い髪は邪魔になることも多く、歩き回る日はこうして編んでもらうようにしている。

「どこかへ出かけるんですか?」
「ええ。アルとイルを誘って町へ行こうと思って」
「珍しいですね」
「最近アルもイルも元気ないなって思って」

ミカエラは数日前魔物相手に戦ったときのことを思い出していた。
「あの日だって、いつもだったら私が戦ってるのを見て『オレらも混ぜて―!』って飛んでくるでしょう?
なのに、一度も来なかったから。
…遊びに行ったら少しは元気が出ると思うの」

そう言ったミカエラにノアは小さく呟いた。
「女王は鋭いのか鈍いのかつくづく分からない人ですね」
「えっなに?」
「いえ、なにも。アルもイルも喜ぶでしょう」
「そうだといいな」

ミカエラは、2人が元気がない理由に1つだけ心当たりがあった。
それはレオだ。

レオが泊まることになったあの日から、2人の様子がどこかおかしい。

単純に人間のレオがここにいることが気に食わないのかしら。
獣としての特性が強い2人は他の魔物よりも鼻も耳も利くから、他の人よりレオの存在が気になってしまうのかもしれない。

でも2人に城に残らなくてもいいって言っても首を横に振るし…。


ここ2日悩んでいたミカエラはアルとイルが元気になるように、街へと遊びに誘うことにしたのだ。
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