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第32話 だから勝手に煽らないで
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「ファン氏の試験の結果ですが、五分間、最後まで試験官を相手に戦い抜くことができましたので、合格となります」
試験監督を務めるギルド職員のパロンが、ファンの試験合格を表明する。
「おめでとう。これで晴れて正式な冒険者だね」
「ええ」
ポッツでも冒険者をやれているくらいなので、元々合格は間違いないだろうとは思っていた。
ただ今回、ギエナ相手に互角の戦いをみせたことで、すでにファンにはCランク冒険者に相当する実力があると分かった。
僕が年下のせいで印象が薄れてしまうかもしれないが、ファンも明らかに並みの十一歳ではない。
というか、僕は前世の知識があったからであって、それがない(はず)ファンの方が、実はすごい気がする。
「では、続いてセリウス氏の試験となります。……が、少し休憩が必要そうですね」
「あ? オレは全然疲れてなんかねぇし、今すぐにでも試験ができるぜ?」
強がるギエナ。
「じゃあせめて、傷だけでも治しておいてよ。ヒール」
「っ……」
第二階級白魔法のヒールを使う。
全体的に軽い傷ばかりだったので、すぐに消えていった。
「お前、白魔法を使えるのか?」
「うん」
「おいおい、そしたらこの試験方法じゃねぇだろ? ヒーラーは希少で、どんなパーティからも引く手数多だ。戦闘能力のあるなしなんて関係ねぇ。むしろこの試験方法で不合格にさせちまったらギルドにとって大損失だ」
ギエナの意見に、パロンも同意を示す。
「確かにおっしゃる通りですね。どうやら事前確認が不足していたようです。すぐに試験を別のものに……」
「その必要はないよ」
僕はパロンの言葉を遮るように断言した。
「白魔法だけじゃなくて魔法全般使えるから。今から別の試験に替えるなんて面倒だし、とりあえずこのままやってみようよ」
「セリウスなら余裕で倒せるわ」
また煽るようなことを言うファン。
ギエナのこめかみがピクピクと動いた。
「セリウスは私の数倍は強いもの。五分どころか、一分で終わるわ」
「だから勝手に煽らないで!」
「おい、ボウズ……てめぇも随分と威勢がいいじゃねぇか?」
ギエナが睨みつけてくる。
僕が言ってるんじゃないからね?
会場の中心でギエナと距離を置いて向かい合う。
「つーか、魔法使い単体で前衛職とやり合うのは、相当なスキルが必要だぜ?」
「心配ないわ。セリウスはそこらの前衛職程度、軽くあしらえるもの」
「僕の代わりに返事するの、やめてもらえる?」
パロンが例のごとく試験開始を宣言するや否や、ギエナが一気に間合いを詰めてきた。
「そこまで自信があるんなら、ぜひとも見せてもらおうじゃねぇか!」
迫りくるギエナに対し、僕は素早く魔法陣を展開した。
「シャドウバインド」
第二階級の黒魔法で、影をその場に固定することで動けなくさせることができる。
「……は? ぐがっ!?」
いきなり身体が硬直し、ギエナは勢いよく転倒した。
「なんだ、こいつは!?」
「動きを封じる魔法だよ」
「くそっ、ぜんぜん動けねぇっ!」
とはいえ、まったく微動だにできなくなるわけではない。
影を拘束する力を上回る力があれば、強引に身体を動かすことも可能だ。
ただ、拘束力はこちらが費やす魔力に比例する。
僕が膨大な魔力を注ぎ込んでいれば、そうそう凌駕されるはずはなかった。
「このまま五分、待ち続ければ合格になるよね?」
「ちょっ、待てよ!? ずるいだろ! こんなんで、五分逃げ切るつもりか!?」
「そうだよ」
試験内容的に、あえてがっつり戦う意味なんてないしね。
別に僕は、ファンのように好戦的でも負けず嫌いでもないのだ。
やがて五分が経過した。
ギエナは途中までは必死に拘束から逃れようとしていたものの、無理だと悟ったのか、残り二分くらいは諦めたように大人しくしていた。
「試験終了となります。間違いなく既定の基準を満たされましたので、セリウス氏も合格となります」
これで僕も無事に正式な冒険者になれたようだ。
影の拘束から解放してやると、ギエナはため息交じりに立ち上がる。
てっきりあれこれ文句を言われるかと思いきや、
「……どうやら本当にヤバいのはてめぇの方だったみたいだな。そっちの猫娘と違って、まったく底が見えねぇ。そもそも今のは黒魔法だろう? 白魔法と黒魔法、その両方を使えるやつなんて、聞いたこともねぇぞ……」
毒気を抜かれたように苦笑している。
こうして僕たちは無事に試験に合格。
この後、正式な冒険者証を発行してもらえるということで窓口に向かうと、イレアが待ってくれていた。
「二人ともおめでとう。うちのギルドでは見習いからの昇格が過去最速。さらにセリウスくんは、歴代最年少での冒険者よ」
ちなみに最初はポッツと同じEランクからだ。
実績を積み上げていくことで上位ランクへの昇格が可能だが、昇格のためには最低限の年数が必要らしい。
Dランクには冒険者になってから最低一年、Cランクには冒険者になってから最低二年、Bランクには冒険者になってから最低三年……という感じで、一年ずつ延びていくようだ。
なお、AランクやSランクには、また別の基準が存在しているらしい。
「問題行動などがあれば、その期間が延びることもあるから気を付けてね」
試験監督を務めるギルド職員のパロンが、ファンの試験合格を表明する。
「おめでとう。これで晴れて正式な冒険者だね」
「ええ」
ポッツでも冒険者をやれているくらいなので、元々合格は間違いないだろうとは思っていた。
ただ今回、ギエナ相手に互角の戦いをみせたことで、すでにファンにはCランク冒険者に相当する実力があると分かった。
僕が年下のせいで印象が薄れてしまうかもしれないが、ファンも明らかに並みの十一歳ではない。
というか、僕は前世の知識があったからであって、それがない(はず)ファンの方が、実はすごい気がする。
「では、続いてセリウス氏の試験となります。……が、少し休憩が必要そうですね」
「あ? オレは全然疲れてなんかねぇし、今すぐにでも試験ができるぜ?」
強がるギエナ。
「じゃあせめて、傷だけでも治しておいてよ。ヒール」
「っ……」
第二階級白魔法のヒールを使う。
全体的に軽い傷ばかりだったので、すぐに消えていった。
「お前、白魔法を使えるのか?」
「うん」
「おいおい、そしたらこの試験方法じゃねぇだろ? ヒーラーは希少で、どんなパーティからも引く手数多だ。戦闘能力のあるなしなんて関係ねぇ。むしろこの試験方法で不合格にさせちまったらギルドにとって大損失だ」
ギエナの意見に、パロンも同意を示す。
「確かにおっしゃる通りですね。どうやら事前確認が不足していたようです。すぐに試験を別のものに……」
「その必要はないよ」
僕はパロンの言葉を遮るように断言した。
「白魔法だけじゃなくて魔法全般使えるから。今から別の試験に替えるなんて面倒だし、とりあえずこのままやってみようよ」
「セリウスなら余裕で倒せるわ」
また煽るようなことを言うファン。
ギエナのこめかみがピクピクと動いた。
「セリウスは私の数倍は強いもの。五分どころか、一分で終わるわ」
「だから勝手に煽らないで!」
「おい、ボウズ……てめぇも随分と威勢がいいじゃねぇか?」
ギエナが睨みつけてくる。
僕が言ってるんじゃないからね?
会場の中心でギエナと距離を置いて向かい合う。
「つーか、魔法使い単体で前衛職とやり合うのは、相当なスキルが必要だぜ?」
「心配ないわ。セリウスはそこらの前衛職程度、軽くあしらえるもの」
「僕の代わりに返事するの、やめてもらえる?」
パロンが例のごとく試験開始を宣言するや否や、ギエナが一気に間合いを詰めてきた。
「そこまで自信があるんなら、ぜひとも見せてもらおうじゃねぇか!」
迫りくるギエナに対し、僕は素早く魔法陣を展開した。
「シャドウバインド」
第二階級の黒魔法で、影をその場に固定することで動けなくさせることができる。
「……は? ぐがっ!?」
いきなり身体が硬直し、ギエナは勢いよく転倒した。
「なんだ、こいつは!?」
「動きを封じる魔法だよ」
「くそっ、ぜんぜん動けねぇっ!」
とはいえ、まったく微動だにできなくなるわけではない。
影を拘束する力を上回る力があれば、強引に身体を動かすことも可能だ。
ただ、拘束力はこちらが費やす魔力に比例する。
僕が膨大な魔力を注ぎ込んでいれば、そうそう凌駕されるはずはなかった。
「このまま五分、待ち続ければ合格になるよね?」
「ちょっ、待てよ!? ずるいだろ! こんなんで、五分逃げ切るつもりか!?」
「そうだよ」
試験内容的に、あえてがっつり戦う意味なんてないしね。
別に僕は、ファンのように好戦的でも負けず嫌いでもないのだ。
やがて五分が経過した。
ギエナは途中までは必死に拘束から逃れようとしていたものの、無理だと悟ったのか、残り二分くらいは諦めたように大人しくしていた。
「試験終了となります。間違いなく既定の基準を満たされましたので、セリウス氏も合格となります」
これで僕も無事に正式な冒険者になれたようだ。
影の拘束から解放してやると、ギエナはため息交じりに立ち上がる。
てっきりあれこれ文句を言われるかと思いきや、
「……どうやら本当にヤバいのはてめぇの方だったみたいだな。そっちの猫娘と違って、まったく底が見えねぇ。そもそも今のは黒魔法だろう? 白魔法と黒魔法、その両方を使えるやつなんて、聞いたこともねぇぞ……」
毒気を抜かれたように苦笑している。
こうして僕たちは無事に試験に合格。
この後、正式な冒険者証を発行してもらえるということで窓口に向かうと、イレアが待ってくれていた。
「二人ともおめでとう。うちのギルドでは見習いからの昇格が過去最速。さらにセリウスくんは、歴代最年少での冒険者よ」
ちなみに最初はポッツと同じEランクからだ。
実績を積み上げていくことで上位ランクへの昇格が可能だが、昇格のためには最低限の年数が必要らしい。
Dランクには冒険者になってから最低一年、Cランクには冒険者になってから最低二年、Bランクには冒険者になってから最低三年……という感じで、一年ずつ延びていくようだ。
なお、AランクやSランクには、また別の基準が存在しているらしい。
「問題行動などがあれば、その期間が延びることもあるから気を付けてね」
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