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第10話 ギルドの責任ですわ
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「(あたくしよりも年上の受験者なんて……正直やり辛いですわね。普通、騎士団などの経験者は試験を受けずに冒険者になれるものですし……)」
試験官を務めることになったCランク冒険者のエリザは、内心で嘆息していた。
今回、試験を受けることになる予定であった見習いは、全部で三人。
いずれも天職を授かって間もない戦士たちばかりだったのだが、直前になって急遽、もう一人加えたいと言われてしまったのである。
そもそも天職を得たばかりの戦士たちを対象に、見習い期間と試験を設けるようになった最大の理由は、新人冒険者の死亡率が高かったことに起因する。
騎士団や商会の護衛団などと違い、かつての冒険者ギルドでは、新人の教育など一切行っていなかったのがその最大の理由だ。
せっかく冒険者を選んでくれた貴重な戦士を、簡単に死なせてしまっては大きな損失である。
それを防ぐのがこの試験の最大の目的なので、たとえ試験に落ちたとしても何度でも挑戦することができたりする。
「(それにしても天職が【農民】だなんて……この歳まで戦士らしい活動は何もしていなかったようですし……本当に大丈夫ですの? この試験、決してそんなに甘いものではありませんわ?)」
そんな不安を覚える彼女だが、あくまでも冒険者ギルドからの依頼を受けて試験官をしているだけだ。
「(まぁ、何かあったとしても、あたくしは知らないですわよ? ギルドの責任ですわ)」
そう楽観的に考えると、試験の概要について説明を始めた。
「今回の試験は、ダンジョンで行う予定ですわ。この領都から馬車で半日ほど行ったところにある『マーシェルの岩場洞窟』ですの。その名の通り、マーシェルという人が発見した岩場にあるダンジョンで、推奨冒険者ランクはBですわ。もちろん、これは攻略を目的とした探索の場合で、今回の目的地である地下五階であれば、あなた方でも十分に通用するはずですの」
そのダンジョンの地下五階。
この場にいる全員でパーティを組み、そこまで到達することが試験の内容だった。
「もっとも、地下五階に辿り着ければ、全員が合格、というわけではありませんわ。あたくしが試験官として同行し、各々の活躍をチェックさせていただきますの。個人の実力やパーティ内での立ち回りなどを見て、最終的に合否を判定させていただきますわ」
「(うーん……まさか、こんな年下の子たちと一緒にパーティを組むことになるなんてな)」
十二歳も離れた少年少女たちとダンジョンに挑むことになり、ルイスは戸惑っていた。
試験官でさえ、見た感じルイスよりも年下だろう。
三人の見習いたちは、当然ながら顔見知りのようだ。
一人はサラサラの金髪と、整った顔立ちが印象的な美少年。
立ち居振る舞いにどこか気品があって、育ちの良さを感じさせるため、なぜ騎士団ではなく冒険者を選んだのか不思議なほどだ。
もう一人はツンツンに逆立った赤い髪の少年。
先ほどの少年とは対照的に、こちらはいかにもやんちゃそうな雰囲気である。
そして最後の一人は、おどおどしている小柄な少女。
試験に向けて緊張しているのか、少し顔色も悪い。
「えっと、とりあえずよろしくお願いします」
「あ、はい。よろしくお願いします」
金髪の美少年に声をかけられ、応じるルイス。
すると赤髪の少年が噴き出した。
「ぶはっ、何で敬語なんすか! おれらよりずっと年上のはずっすよね? もっとフランクでいっすよ!」
「そ、そうか……じゃあ、そうさせてもらおう。俺も変に気を遣われるのは苦手だから、タメ口の方が助かる」
「そうするっす! あれ、これは敬語っすか? まぁ細かいことはいいっすね!」
金髪の少年が柔和に微笑み、同意を示した。
「僕もそうさせてもらうとしよう。一応、簡単に自己紹介しておくね。僕の名はジーク。天職は【パラディン】だよ」
「おれはリオっす! 天職は【赤魔導師】っす!」
最後の少女は、ぼそぼそと消え入りそうな声で言った。
「あ、あたしは……コルット……一応、【聖女】です……」
彼らに続いて、ルイスも名乗る。
「俺はルイスだ。天職は……その……【農民】」
「「「【農民】?」」」
試験官を務めることになったCランク冒険者のエリザは、内心で嘆息していた。
今回、試験を受けることになる予定であった見習いは、全部で三人。
いずれも天職を授かって間もない戦士たちばかりだったのだが、直前になって急遽、もう一人加えたいと言われてしまったのである。
そもそも天職を得たばかりの戦士たちを対象に、見習い期間と試験を設けるようになった最大の理由は、新人冒険者の死亡率が高かったことに起因する。
騎士団や商会の護衛団などと違い、かつての冒険者ギルドでは、新人の教育など一切行っていなかったのがその最大の理由だ。
せっかく冒険者を選んでくれた貴重な戦士を、簡単に死なせてしまっては大きな損失である。
それを防ぐのがこの試験の最大の目的なので、たとえ試験に落ちたとしても何度でも挑戦することができたりする。
「(それにしても天職が【農民】だなんて……この歳まで戦士らしい活動は何もしていなかったようですし……本当に大丈夫ですの? この試験、決してそんなに甘いものではありませんわ?)」
そんな不安を覚える彼女だが、あくまでも冒険者ギルドからの依頼を受けて試験官をしているだけだ。
「(まぁ、何かあったとしても、あたくしは知らないですわよ? ギルドの責任ですわ)」
そう楽観的に考えると、試験の概要について説明を始めた。
「今回の試験は、ダンジョンで行う予定ですわ。この領都から馬車で半日ほど行ったところにある『マーシェルの岩場洞窟』ですの。その名の通り、マーシェルという人が発見した岩場にあるダンジョンで、推奨冒険者ランクはBですわ。もちろん、これは攻略を目的とした探索の場合で、今回の目的地である地下五階であれば、あなた方でも十分に通用するはずですの」
そのダンジョンの地下五階。
この場にいる全員でパーティを組み、そこまで到達することが試験の内容だった。
「もっとも、地下五階に辿り着ければ、全員が合格、というわけではありませんわ。あたくしが試験官として同行し、各々の活躍をチェックさせていただきますの。個人の実力やパーティ内での立ち回りなどを見て、最終的に合否を判定させていただきますわ」
「(うーん……まさか、こんな年下の子たちと一緒にパーティを組むことになるなんてな)」
十二歳も離れた少年少女たちとダンジョンに挑むことになり、ルイスは戸惑っていた。
試験官でさえ、見た感じルイスよりも年下だろう。
三人の見習いたちは、当然ながら顔見知りのようだ。
一人はサラサラの金髪と、整った顔立ちが印象的な美少年。
立ち居振る舞いにどこか気品があって、育ちの良さを感じさせるため、なぜ騎士団ではなく冒険者を選んだのか不思議なほどだ。
もう一人はツンツンに逆立った赤い髪の少年。
先ほどの少年とは対照的に、こちらはいかにもやんちゃそうな雰囲気である。
そして最後の一人は、おどおどしている小柄な少女。
試験に向けて緊張しているのか、少し顔色も悪い。
「えっと、とりあえずよろしくお願いします」
「あ、はい。よろしくお願いします」
金髪の美少年に声をかけられ、応じるルイス。
すると赤髪の少年が噴き出した。
「ぶはっ、何で敬語なんすか! おれらよりずっと年上のはずっすよね? もっとフランクでいっすよ!」
「そ、そうか……じゃあ、そうさせてもらおう。俺も変に気を遣われるのは苦手だから、タメ口の方が助かる」
「そうするっす! あれ、これは敬語っすか? まぁ細かいことはいいっすね!」
金髪の少年が柔和に微笑み、同意を示した。
「僕もそうさせてもらうとしよう。一応、簡単に自己紹介しておくね。僕の名はジーク。天職は【パラディン】だよ」
「おれはリオっす! 天職は【赤魔導師】っす!」
最後の少女は、ぼそぼそと消え入りそうな声で言った。
「あ、あたしは……コルット……一応、【聖女】です……」
彼らに続いて、ルイスも名乗る。
「俺はルイスだ。天職は……その……【農民】」
「「「【農民】?」」」
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