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第21話 涎が出てるぞ
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「どちらも俺が作った果物なんだが、体力と魔力を回復させてくれるんだ」
「まさかの回復アイテム!?」
「そんなのを畑で栽培できるなんて、聞いたことないよ……?」
「怪我を治してくれるブドウもあるぞ」
「……そんなのあったら……もうあたしなんて、完全に要らない子じゃないですか……」
自身の存在価値を失って愕然とするコルットを余所に、リンゴに齧りつくルイス。
特技を使うには体力を消耗するのだが、このリンゴのお陰で一気に回復した。
「ほんとっす……っ! 魔力が充填していくのが分かるっす!」
「すごい……こんなに簡単に体力が回復するなんて……でも、そんなことより……」
「「美味すぎるうううううううううううううううっ!!」」
ジークとリオがそろって絶叫する。
「このミカン、甘さがヤバすぎっす! それに瑞々しくて、噛むと果汁が口の中に溢れてくるっす!」
「リンゴもすごく甘いよ! 蜂蜜を混ぜてるんじゃないかったくらい!」
「マジっすか!? ちょっ、リンゴも食べていいっすか!?」
「ぼ、僕もミカンの方も食べたい……っ!」
「構わないぞ。ブドウも食べるか?」
「「食べる!!」」
「あ、あたくしも欲しいですわ……っ!」
お近づきの印のトマトを貰えなかったエリザは、今度こそとばかりに要求した。
一方、コルットは遠慮しているようで、
「あ、あたしは大丈夫です……何もしてないですし……むしろ余計なことしかしてないですし……食べる資格なんてないです……じゅるり……」
「涎が出てるぞ? 気にせず食べろよ。元気も出るぞ」
「で、でも……」
「隙あり」
ルイスはブドウの一粒をコルットの口の中に投げ込んだ。
「っ!? うまあああああああああああああああああああっ!?」
そうしてひと時の休息(?)を取ったあと、ルイスはその両開きの巨大な扉を押した。
ズゴゴゴゴゴゴゴ……。
軽く押しただけで、轟音と共にほとんど自動的に扉が開いていく。
その先にあったのは、広大な空間だ。
ズゴゴゴゴゴゴゴ……。
中に入ると、再び大きな音を立てながら扉が勝手に閉まった。
これで逃げ道は塞がれた形である。
ルイスは畑で要塞を構築。
魔物を養分として吸収してきたことで、随分と立派なサイズになっていた。
「やっぱりこの中なら安心できるっす!」
「ボス相手でも、ある程度は耐えられそうだしね」
「でも、ボスはどこにいるんでしょう……?」
ルイスはその空間の真ん中あたりまで歩いていったが、ボスの姿はどこにも見当たらない。
そもそも隠れるところなどないような場所なのだ。
「おかしいな? どこにいるんだ?」
と、そのときだった。
「上ですわ!」
「っ!」
エリザの声で咄嗟に頭上を見上げたルイスが目にしたのは、天井から降ってくる巨大な影。
「ブモオオオオオオオオッ!!」
つい先ほどまでルイスがいた場所に、凄まじい地響きと共に着地するボスモンスター。
すんでのところで距離を取っていたルイスだが、巻き起こった衝撃波だけで吹き飛ばされそうになってしまった。
「こいつは……ミノタウロス? だが今までのとサイズが全然違うな。毛の色も違うし」
身の丈三メートルを超す巨大なミノタウロスだ。
しかもこれまで遭遇してきた普通種が黒や茶色の毛をしているのに対して、まるで返り血でも浴びたかのように真っ赤な毛色である。
「そのモンスターはブラッディミノタウロスっ……ミノタウロスの上位種ですの!」
その牛頭人身の上位種は、二本の巨大な斧を手にしていた。
咆哮を轟かせ、それを凄まじい勢いで振り回す。
「ブモオオオオオオオオオッ!!」
そのままルイス目がけて突進してきた。
一方のルイスも、鍬を構えて迎え撃つ。
「おらっ!」
ガキイイイイイイインッ!!
ルイスが繰り出した鍬の一撃とボスの斧が激突し、強烈な金属音が響き渡る。
一見すると、体格でも武器のサイズでも劣るルイスが、圧倒的な不利に思えたが、
「「「ボスの斧を、弾き返したあああああああっ!?」」」
力負けしたのはボスの方だった。
「ブモッ!?」
まさか斧を弾かれるとは思ってもいなかったのか、驚きの声を漏らすブラッディミノタウロス。
「ルイス、なんて腕力してるっすか!?」
「農作業で鍛えたからな」
「それはきっとあたくしたちの知ってる農作業じゃないですの……」
「まさかの回復アイテム!?」
「そんなのを畑で栽培できるなんて、聞いたことないよ……?」
「怪我を治してくれるブドウもあるぞ」
「……そんなのあったら……もうあたしなんて、完全に要らない子じゃないですか……」
自身の存在価値を失って愕然とするコルットを余所に、リンゴに齧りつくルイス。
特技を使うには体力を消耗するのだが、このリンゴのお陰で一気に回復した。
「ほんとっす……っ! 魔力が充填していくのが分かるっす!」
「すごい……こんなに簡単に体力が回復するなんて……でも、そんなことより……」
「「美味すぎるうううううううううううううううっ!!」」
ジークとリオがそろって絶叫する。
「このミカン、甘さがヤバすぎっす! それに瑞々しくて、噛むと果汁が口の中に溢れてくるっす!」
「リンゴもすごく甘いよ! 蜂蜜を混ぜてるんじゃないかったくらい!」
「マジっすか!? ちょっ、リンゴも食べていいっすか!?」
「ぼ、僕もミカンの方も食べたい……っ!」
「構わないぞ。ブドウも食べるか?」
「「食べる!!」」
「あ、あたくしも欲しいですわ……っ!」
お近づきの印のトマトを貰えなかったエリザは、今度こそとばかりに要求した。
一方、コルットは遠慮しているようで、
「あ、あたしは大丈夫です……何もしてないですし……むしろ余計なことしかしてないですし……食べる資格なんてないです……じゅるり……」
「涎が出てるぞ? 気にせず食べろよ。元気も出るぞ」
「で、でも……」
「隙あり」
ルイスはブドウの一粒をコルットの口の中に投げ込んだ。
「っ!? うまあああああああああああああああああああっ!?」
そうしてひと時の休息(?)を取ったあと、ルイスはその両開きの巨大な扉を押した。
ズゴゴゴゴゴゴゴ……。
軽く押しただけで、轟音と共にほとんど自動的に扉が開いていく。
その先にあったのは、広大な空間だ。
ズゴゴゴゴゴゴゴ……。
中に入ると、再び大きな音を立てながら扉が勝手に閉まった。
これで逃げ道は塞がれた形である。
ルイスは畑で要塞を構築。
魔物を養分として吸収してきたことで、随分と立派なサイズになっていた。
「やっぱりこの中なら安心できるっす!」
「ボス相手でも、ある程度は耐えられそうだしね」
「でも、ボスはどこにいるんでしょう……?」
ルイスはその空間の真ん中あたりまで歩いていったが、ボスの姿はどこにも見当たらない。
そもそも隠れるところなどないような場所なのだ。
「おかしいな? どこにいるんだ?」
と、そのときだった。
「上ですわ!」
「っ!」
エリザの声で咄嗟に頭上を見上げたルイスが目にしたのは、天井から降ってくる巨大な影。
「ブモオオオオオオオオッ!!」
つい先ほどまでルイスがいた場所に、凄まじい地響きと共に着地するボスモンスター。
すんでのところで距離を取っていたルイスだが、巻き起こった衝撃波だけで吹き飛ばされそうになってしまった。
「こいつは……ミノタウロス? だが今までのとサイズが全然違うな。毛の色も違うし」
身の丈三メートルを超す巨大なミノタウロスだ。
しかもこれまで遭遇してきた普通種が黒や茶色の毛をしているのに対して、まるで返り血でも浴びたかのように真っ赤な毛色である。
「そのモンスターはブラッディミノタウロスっ……ミノタウロスの上位種ですの!」
その牛頭人身の上位種は、二本の巨大な斧を手にしていた。
咆哮を轟かせ、それを凄まじい勢いで振り回す。
「ブモオオオオオオオオオッ!!」
そのままルイス目がけて突進してきた。
一方のルイスも、鍬を構えて迎え撃つ。
「おらっ!」
ガキイイイイイイインッ!!
ルイスが繰り出した鍬の一撃とボスの斧が激突し、強烈な金属音が響き渡る。
一見すると、体格でも武器のサイズでも劣るルイスが、圧倒的な不利に思えたが、
「「「ボスの斧を、弾き返したあああああああっ!?」」」
力負けしたのはボスの方だった。
「ブモッ!?」
まさか斧を弾かれるとは思ってもいなかったのか、驚きの声を漏らすブラッディミノタウロス。
「ルイス、なんて腕力してるっすか!?」
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「それはきっとあたくしたちの知ってる農作業じゃないですの……」
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